富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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道間家 緊急防衛戦

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 7月の上旬。
 いつもの美しい着物姿の母上を玄関までお見送りした。
 母上と五平所は、毎日「道間城」の建設現場に出掛けられている。
 基礎工事が終わる所で、様々な結界や霊的防衛機構を組み込まれているそうだ。
 父上は私たちのために、「道間城」を建設することを決めらえた。
 これまでここも襲われたことはある。
 でもそれは他の場所に比べて比較歴小規模なものだった。
 母上や私たちが重要な拠点、重要な人物とは見做されていなかったのだ。
 ただ、父上の大切な人間というだけで、戦力としてはさほどのことと考えられていたせいだ。
 「業」にとっては先に潰したい拠点や戦力が他に幾らでもあった。
 皇紀兄様などは、だから何度も襲われているし、六花母様の故郷「紅市」も大きな戦力で襲われた。
 蓮花様の研究所も途轍もない軍団に何度も襲われている。
 ここ道間家は戦力としてはそれほど高くないと考えられていたのだ。
 それは「業」が道間家の血筋を亡ぼしたと思っているためだ。
 母上が以前お話し下さった。
 母上のお兄様方お二人は無残に殺されたのだと。
 そして本家に繋がる濃い血を引いた方々も全員殺された。
 母上だけはハイファによって護られ、唯一生き残ったのだと。
 私はそのお話を伺い、「業」との深い因縁を感じた。
 「業」は道間家から強力な者が生まれることを知っていたのだ。
 だから血筋を根絶やしにした。
 私は自分の生まれた運命を強く感じたのだ。
 私は必ず力を身に着けて、父上と共に「業」と戦う。
 母上の怨敵である「業」を必ず降して見せる。

 これまでは「業」は母上を襲わなかった。
 道間の直系であるにも関わらず、手を出しては来なかった。
 私が生まれてからもそれは同じだった。
 父上の関係者として襲われたことはあれど、それほど大規模な襲撃ではなかったのだ。
 恐らく、「業」は自分が直系の血を逃したことに気付いていないのかもしれない。
 ただ、母上の父親であった宇羅がそれに気付いていないということは、私には理解出来なかった。
 宇羅がまさか母上を見逃しているとも思えない。
 宇羅は完全に「業」に取り込まれており、絶対の服従を誓っているはずだった。

 それに、父上も道間家が本格的に狙われないように、敢えてあまり強固な防衛施設を置かなかったし、デュールゲリエも100体しか置かれなかった。
 元々道間家には結界もあり、護衛の妖魔たちもいたので、それで十分だった。
 でも、父上は今後道間家も本格的に狙われる可能性を考えておられた。
 だから「道間城」を建設し、私たちを絶対に護るように考えて下さっている。
 ただ、途轍もない要塞となるため、建設には時間がかかる。




 「では、天狼、行って参ります」
 「はい母上」

 今日の母上は夏らしく淡い水色の地に華麗な蓮の花をあしらった置物を着ていらっしゃる。
 いつも本当に美しい。

 「奈々と夜羽を頼みましたよ。ああ、奈々を武器庫へは決して入れないように」
 「はい、分かっております」

 口ではそう言っていたが、母上は笑っておられた。

 「まったく、あの子は旦那様のお血のせいか、銃器に並々ならぬ興味を持ってしまって」
 「アハハハハ、確かにそうなのでしょうね。父上はお若い頃に戦場で大分活躍されていたそうですから」
 「困ったものですが、まあ仕方がないでしょう。では留守を頼みましたよ」
 「はい、行ってらっしゃいませ、母上」

 母上は五平所と一緒に「道間城」へ行かれる。
 まだ完成はしばらく先だそうだが、徐々に威容を示すかのように建築が進んでいる。
 私も何度か見せて頂いているが、父上のなさることはどこまでも偉大だと思った。
 西洋の城を模した外見に、アラスカと同じく「ヘッジホッグ」が聳え立つものになるそうだ。
 全体の設計模型が完成しており、私と奈々も見せて頂いている。
 実際の建築はまだ周囲の外壁を優先して作られているそうだ。
 巨大な城の方はまずは地下の構造が進んでいる。
 本当に楽しみだ。

 「天狼、偉大な道間家に見合った、世界に誇れるものを作るからな」
 「はい!」

 父上が以前にそうおっしゃっていた。
 みんなで設計模型を見ながら父上が説明して下さった。
 父上は道間家を「偉大」とおっしゃって下さった。
 そのことが無性に嬉しかった。
 
 母上たちが出掛け、すぐに蓑原たちが迎えに来た。
 今日も鍛錬を始めるのだ。

 「奈々、私はまた鍛錬をするが、お前はどうする?」
 「夜羽と一緒にお傍におります。万一のために」
 「そうか、では頼むぞ」

 私は蓑原たちと一緒に庭で鍛錬を始めた。
 奈々は私たちが見える縁側に座り、揺りかごの夜羽の傍で本を読んでいる。
 多分、また銃器に関するものだろう。
 奈々はとにかく武器が好きだ。
 特に銃器。
 母上は父上の血のせいだろうとおっしゃっておられたが、まさしくそうだと私も感ずる。
 父上が一通りの武器をここに置かれ、母上や蓑原たちに扱い方の訓練もして下さった。
 敵によっては銃器が有効な場合もあるからだ。
 私と奈々も見せて頂いていたが、奈々は特に夢中になっていた。
 父上のように武器を華麗に扱う人生をなぞりたい気持ちはよく分かる。
 私には「道間家」の技の修練があるので付き合えないが、奈々には好きなようにさせてやりたい。
 まだ4歳にして好きなことを見つけるのは良いことだ。
 きっと父上のようなあらゆる武器に精通するのも面白いだろう。

 そのようなことを考えながら鍛錬に集中していった。
 京都の夏は厳しい。
 時々奈々を見ると、夜羽に内輪で風を送ってやっていた。
 優しい妹だ。
 私は鍛錬に集中した。
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