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「虎」の軍 新体制 Ⅱ
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天丸が遠慮がちに手を挙げて言った。
もちろん、誰もが真剣に聴こうとしている。
「俺は軍隊のことはド素人だけどな。一つ思い出したのは、格闘技のトーナメント試合では、時々「リザーバー」というのがいるんだ」
「ああ、いるな?」
俺も格闘技は好きなのでよく知っている。
試合の途中で負傷したり、何らかの事情で出場できなくなる選手が出る場合がある。
その場合不戦勝で次の試合が片付く場合もあるが、別な選手がリザーバーとして登録してあり、代理試合が行なわれることもあるのだ。
トーナメント試合は一つのショーなので、観客を不戦勝試合で飽きさせないためだ。
「戦争で言うとなぁ、主力の人間が何らかの負傷なり事情で戦場で戦えなくなったとするよ。そういう場合に控えの人間を用意しておくってことかなぁ」
聖が答えた。
「なるほどな。でもよ、そういうことなら最初から数人一緒に行動させるぜ」
戦場では一対一の試合とは異なるのだ。
「まあ、そういうことか。そうだよな。別に離れた場所で控えてる必用ねぇもんな」
俺は考え込んでいた。
「聖、今のはちょっと考えてみてもいいかもしれねぇぞ?」
「トラ、どういうことだ?」
「最近は《ハイヴ》の攻略戦を進めている。それで敵も対抗手段を考えて来たって状況だ。《地獄の悪魔》の早い段階での出撃や、複数での出撃、陽動のような作戦まである」
「ああ、そうだな。先日も森本って奴がそれで戦死したんだよな?」
「そうだ。でもな、《ハイヴ》事態は結構近い場所にあることも多いんだ」
「ああ?」
「だからな、互いに同時攻略で連携を取って行くことは有効かもしれねぇ」
「なるほど、そういうことか!」
「おい、どういうことだ?」
聖はすぐに分かったが、天丸がまだ理解していない。
「要はさ、3つの《ハイヴ》を攻略するとする。出来るだけ近い場所での作戦展開だ。最初の一つ目を攻略している最中は、他の2部隊はまだ戦闘を始めない。そうすれば一つ目の《ハイヴ》で想定外の事態が起こっても、すぐに他の2部隊が応援に来れる」
「そうか、そういうことか!」
「時間差で作戦を展開すれば、3部隊で効率よく攻略できるだろう」
俺は更に考えていた。
「それにな、それでも更に上を行く陽動作戦なりがあるかもしれねぇ。そういう戦略にも対応出来るようにしておきたい」
「トラ、そっちはなんだ?」
「攻撃部隊の背後を護る部隊だ。桜の大隊は陽動作戦に嵌められた。だからよ、不測の事態に背面を護る部隊が対応するようにしたいな」
「おう、それはいいな」
「《Hýdrā(ハイドラ)=背虎》、どうだ、いい名前じゃないか?」
「いいじゃねぇか」
「トラ、カッコイイな!」
「ギリシャ神話の怪物で、一説では100の首を持つとされている。だから100人の精鋭部隊で構成するのもいいかもな」
「100人か、いい数だな。本当の精鋭であれば、そのくらいがいい。大所帯だと動きがどうしても鈍るしな」
やはり聖は戦場のことがよく分かっている。
聖自身も、30から100の小隊規模で作戦行動をすることが多い。
指揮官が縦横無尽に指揮できる数なのかもしれない。
虎蘭が言った。
「高虎さん、それに特別な救援チームはどうですか?」
「おう、話してくれよ!」
「衛生兵は各部隊にいるとは思いますが、もっと救援に特化したチームです。戦場が大きく動いた場合、即座に兵士の撤退が必用になるでしょう?」
「おお、そうだよな! ボリビアの戦闘でも川尻の部隊が孤立してしまった。救援にデュールゲリエたちを20体向かわせたが、それでは足りなかったんだな」
「そうですよね? だから、もっと救援の技能、機能にすぐれたチームがいれば、柔軟に対応出来るのではないかと」
「虎蘭、すばらしいぞ! 丁度よ、茜と葵が救護者になりたいって言ってたんだ。今もアラスカでそのための訓練に励んでいるよ」
「じゃあ、そのお二人を中核に。「飛行:鷹閃花」の習得と、ある程度の攻撃力と防御力、その装備を」
「お前、冴えてんな!」
「ありがとうございます!」
非常に面白い話が出た。
だが、言って見れば今出たアイデアは贅沢な軍隊のものだ。
人材が豊富で攻撃主力の他に、主力を護るための部隊や傷病兵ばかりではなく全軍の救助が出来る部隊。
まあ、俺たちは侵攻作戦は殆ど無いので、兵站の人員が必要ないことは大きい。
襲撃が即座に行ない、作戦工合が終われば撤退する戦略なので、確かに人員には余裕が出来る。
もちろんこれまでも十分な戦力を準備しての作戦遂行ではあった。
それが最近は根底から崩れている。
そのことへの対抗策でもある。
俺たちは同時進行で戦力の増強を常に図ってもいるが、自ずと限界がある。
「業」の側でも戦力の増強が著しい。
以前は多数の人間や妖魔の犠牲の上で強力な妖魔の召喚をして来た。
それが、恐らくは「業」自身の進展があり、ある程度は自在に《地獄の悪魔》の召喚が出来るようになったと考えられた。
それはアラスカの《ウラノス》や蓮花研究所の《ロータス》といった戦略に秀でた超量子コンピューターの解析結果でもある。
俺たちは偵察衛星「御幸」によって世界的に妖魔を始めとする霊素の観測がどんどん進んでいる。
それらのデータ解析によっても、生贄の必要無く《地獄の悪魔》級の妖魔を召喚しているようなのだ。
しかもそれだけではない。
以前に石神家の虎葉さんの能力をコピーしたように、「業」は《地獄の悪魔》の複製を創れる可能性があった。
そして更に恐ろしいことに、単なる複製ではなく、融合などの能力を持ち合わせている可能性も示唆されていた。
つまり、今後は《地獄の悪魔》の更に恐ろしく強い奴が出て来ることも考えられる。
戦争には死者、負傷者が付きまとうものだが、俺たちは出来るだけ戦力を減らしたくはない。
俺たちは夜遅くまで様々な話をした。
非常に有意義な時間となった。
もちろん、誰もが真剣に聴こうとしている。
「俺は軍隊のことはド素人だけどな。一つ思い出したのは、格闘技のトーナメント試合では、時々「リザーバー」というのがいるんだ」
「ああ、いるな?」
俺も格闘技は好きなのでよく知っている。
試合の途中で負傷したり、何らかの事情で出場できなくなる選手が出る場合がある。
その場合不戦勝で次の試合が片付く場合もあるが、別な選手がリザーバーとして登録してあり、代理試合が行なわれることもあるのだ。
トーナメント試合は一つのショーなので、観客を不戦勝試合で飽きさせないためだ。
「戦争で言うとなぁ、主力の人間が何らかの負傷なり事情で戦場で戦えなくなったとするよ。そういう場合に控えの人間を用意しておくってことかなぁ」
聖が答えた。
「なるほどな。でもよ、そういうことなら最初から数人一緒に行動させるぜ」
戦場では一対一の試合とは異なるのだ。
「まあ、そういうことか。そうだよな。別に離れた場所で控えてる必用ねぇもんな」
俺は考え込んでいた。
「聖、今のはちょっと考えてみてもいいかもしれねぇぞ?」
「トラ、どういうことだ?」
「最近は《ハイヴ》の攻略戦を進めている。それで敵も対抗手段を考えて来たって状況だ。《地獄の悪魔》の早い段階での出撃や、複数での出撃、陽動のような作戦まである」
「ああ、そうだな。先日も森本って奴がそれで戦死したんだよな?」
「そうだ。でもな、《ハイヴ》事態は結構近い場所にあることも多いんだ」
「ああ?」
「だからな、互いに同時攻略で連携を取って行くことは有効かもしれねぇ」
「なるほど、そういうことか!」
「おい、どういうことだ?」
聖はすぐに分かったが、天丸がまだ理解していない。
「要はさ、3つの《ハイヴ》を攻略するとする。出来るだけ近い場所での作戦展開だ。最初の一つ目を攻略している最中は、他の2部隊はまだ戦闘を始めない。そうすれば一つ目の《ハイヴ》で想定外の事態が起こっても、すぐに他の2部隊が応援に来れる」
「そうか、そういうことか!」
「時間差で作戦を展開すれば、3部隊で効率よく攻略できるだろう」
俺は更に考えていた。
「それにな、それでも更に上を行く陽動作戦なりがあるかもしれねぇ。そういう戦略にも対応出来るようにしておきたい」
「トラ、そっちはなんだ?」
「攻撃部隊の背後を護る部隊だ。桜の大隊は陽動作戦に嵌められた。だからよ、不測の事態に背面を護る部隊が対応するようにしたいな」
「おう、それはいいな」
「《Hýdrā(ハイドラ)=背虎》、どうだ、いい名前じゃないか?」
「いいじゃねぇか」
「トラ、カッコイイな!」
「ギリシャ神話の怪物で、一説では100の首を持つとされている。だから100人の精鋭部隊で構成するのもいいかもな」
「100人か、いい数だな。本当の精鋭であれば、そのくらいがいい。大所帯だと動きがどうしても鈍るしな」
やはり聖は戦場のことがよく分かっている。
聖自身も、30から100の小隊規模で作戦行動をすることが多い。
指揮官が縦横無尽に指揮できる数なのかもしれない。
虎蘭が言った。
「高虎さん、それに特別な救援チームはどうですか?」
「おう、話してくれよ!」
「衛生兵は各部隊にいるとは思いますが、もっと救援に特化したチームです。戦場が大きく動いた場合、即座に兵士の撤退が必用になるでしょう?」
「おお、そうだよな! ボリビアの戦闘でも川尻の部隊が孤立してしまった。救援にデュールゲリエたちを20体向かわせたが、それでは足りなかったんだな」
「そうですよね? だから、もっと救援の技能、機能にすぐれたチームがいれば、柔軟に対応出来るのではないかと」
「虎蘭、すばらしいぞ! 丁度よ、茜と葵が救護者になりたいって言ってたんだ。今もアラスカでそのための訓練に励んでいるよ」
「じゃあ、そのお二人を中核に。「飛行:鷹閃花」の習得と、ある程度の攻撃力と防御力、その装備を」
「お前、冴えてんな!」
「ありがとうございます!」
非常に面白い話が出た。
だが、言って見れば今出たアイデアは贅沢な軍隊のものだ。
人材が豊富で攻撃主力の他に、主力を護るための部隊や傷病兵ばかりではなく全軍の救助が出来る部隊。
まあ、俺たちは侵攻作戦は殆ど無いので、兵站の人員が必要ないことは大きい。
襲撃が即座に行ない、作戦工合が終われば撤退する戦略なので、確かに人員には余裕が出来る。
もちろんこれまでも十分な戦力を準備しての作戦遂行ではあった。
それが最近は根底から崩れている。
そのことへの対抗策でもある。
俺たちは同時進行で戦力の増強を常に図ってもいるが、自ずと限界がある。
「業」の側でも戦力の増強が著しい。
以前は多数の人間や妖魔の犠牲の上で強力な妖魔の召喚をして来た。
それが、恐らくは「業」自身の進展があり、ある程度は自在に《地獄の悪魔》の召喚が出来るようになったと考えられた。
それはアラスカの《ウラノス》や蓮花研究所の《ロータス》といった戦略に秀でた超量子コンピューターの解析結果でもある。
俺たちは偵察衛星「御幸」によって世界的に妖魔を始めとする霊素の観測がどんどん進んでいる。
それらのデータ解析によっても、生贄の必要無く《地獄の悪魔》級の妖魔を召喚しているようなのだ。
しかもそれだけではない。
以前に石神家の虎葉さんの能力をコピーしたように、「業」は《地獄の悪魔》の複製を創れる可能性があった。
そして更に恐ろしいことに、単なる複製ではなく、融合などの能力を持ち合わせている可能性も示唆されていた。
つまり、今後は《地獄の悪魔》の更に恐ろしく強い奴が出て来ることも考えられる。
戦争には死者、負傷者が付きまとうものだが、俺たちは出来るだけ戦力を減らしたくはない。
俺たちは夜遅くまで様々な話をした。
非常に有意義な時間となった。
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