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「虎」の軍 新体制
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中南米、アフリカでの《ハイヴ》攻略は着々と進んでいった。
周囲の防衛ラインの掃討、《シャンゴ》による爆撃、そして最後に最奥の強敵の殲滅。
当初は《ハイヴ》の構造も分からず、攻略には手間取ったし危険なこともあったが、そのうちに大体、中隊規模(数百人)と石神家剣聖クラスが2人もいれば、安定して攻略出来るようになった。
だが、次第に敵も対抗手段を嵩じてきて、最初から《地獄の悪魔》クラスの強敵を複数体地表に出して来たり、また様々な罠を仕掛けるようにもなってきた。
そのためにほぼ無傷で攻略して来たものが、次第に負傷者を出すようにもなって来た。
当初を除けばそこまでのところは死者はいなかったし、重傷者もそれほど多くは無かった。
複数の《地獄の悪魔》が出て来ることに対しては、まあ何体出て来ても剣聖であれば余裕で相手出来るようになっていた。
石神家の鍛錬が一層激しくなり、もう剣聖クラスであれば何が出てこようと、無理なく斃すことが出来る。
しかし、「業」の側もやられるばかりではなかった。
《シャンゴ》の投下と同時に最奥から出て攻撃を始めたり、また複数体が同時出現することもあった。
また、別な場所に誘導して、今度は「ゲート」を使っての同時攻撃まで展開された。
既に犠牲者が出ており、俺たちは一旦《ハイヴ》攻略を見直すことになった。
これまでの反撃に対する迎撃法と、また今後展開される新たな作戦についても検討される。
重要なことは、《地獄の悪魔》に対抗できる戦力が俺たちにはまだ少ないということだった。
要は「魔方陣」の使用を許可している人間が少ない。
石神家でも剣聖たちしか自在に使えないようにしている。
万一にも「魔方陣」が敵に知られて対抗策を取られると、俺たちもジリ貧だ。
「魔方陣」は俺たちの決定的な戦力なのだ。
一応「魔方陣」は石神家の剣士の一部にも伝授している。
また聖、亜紀ちゃん、皇紀、双子、柳と風花もだ。
しかし、マクシミリアンの「虎騎士隊」やルイーサの「グレイプニル」にも伝えていない。
「虎」の軍の指令本部の長、ターナー大将にも、まだその存在すら教えていない。
それだけの機密なのだ。
斬、竹流、それに栞、六花、鷹には教えてはいるが、使用は厳禁にしている。
「紅六花」の幹部の一部も同じだ。
今後、この問題をどうするのかを考えなければならない。
俺は盛岡へ飛んで、石神家にいる聖に相談した。
戦闘に関しては、聖が最も頼りになる。
石神家へ行くと、虎蘭が走って来た。
可愛らしい。
俺も笑顔で抱き締めてやった。
「よう!」
「高虎さん! ようこそ!」
「まあ、俺はここの当主だからな。ようこそじゃねぇよな」
「でも、全然来ませんよね?」
「怒貪虎さんだってそうだろう?」
「あ、比べる気ですか?」
「ごめんなさい……」
虎蘭が笑って俺をみんなの所へ連れて行った。
丁度今日の鍛錬を終えて片付けている所だ。
当然、その時間を狙ってきたぞー。
「聖!」
「トラ!」
聖が手を挙げて嬉しそうな顔をした。
「虎白さん、どうも」
「おお、遅かったじゃねぇか」
「すいません。いろいろ用事が重なって」
「まあいい。明日はやってけよな」
「はい!」
今晩聖と話したら、明日の午前中で帰るつもりだ。
他の剣士たちとも挨拶し、みんなで山を降りた、
天丸も元気そうで、もう何の心配も無さそうだ。
夕飯には虎蘭と虎水も誘った。
オマール海老を沢山持って来たので、頭や殻を使ったフュメ(出汁)でどうにかしようと考えていた。
あとは聖たちの家にある材料を見て決めればいい。
他には珍しく山羊肉を持って来たので、ガーリックステーキにでもするつもりだった。
聖たちの家に完熟トマトが結構あったので、俺の好きなカプレーゼを作った。
オマール海老を下茹でした後でオリーブオイルで表面を焼き上げ、殻と頭を使ったフュメを掛ける。
付け合わせは柔らかく煮込んだカブとニンジンだ。
山羊肉は虎蘭のリクエストで香草焼きに仕上げた。
「トラの料理はいつも美味いな!」
「おう、どんどん喰ってくれな。天丸はいろんなものを喰って来ただろう?」
「まあな、遠征に行けば珍しいものも喰ったぜ」
「山羊のお肉も食べました?」
「ああ、日本じゃ珍しいけど、海外じゃ結構な。ネパールに行った時には毎日のように食べたよ」
「そうなんですか」
まあ、はっきり言って俺は牛の方が好きだ。
「トラ、この肉はどうしたんだ?」
「双子がな」
「ああ、あいつらか」
「うちの山で山羊が迷い込んでよ。見つけた瞬間に狩ってた」
「「ワハハハハハハ!」」
「「アハハハハハハ!」」
聖はルーとハーが野生動物を狩ることを知っている。
虎蘭と虎水も良く知ってる。
「そういえばマンロウとか御坂はどうしてる?」
「今はそれぞれの家に戻って、技の伝授をしているはずです」
「石神家もオープンになったなぁ」
「まあ、まだまだ一部ですよ。虎白さんが、全員の底上げをしたいようです」
「ありがたいことだ」
日本に今も残っている強力な武術の家を、全体的により一層強くしてくれるつもりなのだ。
石神家の技もどんどん教え、各流派の技の展開まで教えている。
虎白さんは前に俺に言ってくれた。
俺の前に沢山の精鋭を並べるのだと。
本当にその通りにしようとしてくれている。
食事を終え、片づけてから俺は話を始めた。
「虎蘭と虎水は「魔方陣」を使えるな?」
「「はい」」
「天丸も存在は知っているよな?」
「ああ、まだ教えてもらっちゃいないけどな」
「まあそう先でも無いだろう。お前の実力は虎白さんも認めている。それでな、今《ハイヴ》の攻略が行き詰ってんだ」
俺は敵が複数の《地獄の悪魔》を運用することで、その対応策に悩んでいることを伝えた。
「これまでは剣聖が二人も出向けばどうにでもなった。でも先日は5体に加え、少し離れた場所にもう1体出た。亜紀ちゃんが出ていたんだけどな」
「亜紀さんでも厳しかったんですか」
「いや、同時に相手出来ればまだな。でも、問題は離れた場所に「ゲート」で出現した奴だ。別働部隊が目の前に出現した《地獄の悪魔》に対抗出来ずに、一人の男が犠牲になってみんなを逃がした」
「トラ、そいつは大事な奴だったんだな」
聖が俺の心を読んで、そう言った。
こいつにはいつも見透かされてしまう。
「まあな。でも、そういうことも言っていられない。この手を使われれば、部隊はどんどん分断されて撃破されちまう。数体を相手にしているうちに、他の奴らがな。だからどうしたものかと思っているんだ」
天丸に同席させたのは、聞かせても構わないというつもりだった。
戦争自体の経験が無い天丸に何かを期待していたわけでもない。
しかし俺が説明した状況に、天丸が意外な意見をくれた。
周囲の防衛ラインの掃討、《シャンゴ》による爆撃、そして最後に最奥の強敵の殲滅。
当初は《ハイヴ》の構造も分からず、攻略には手間取ったし危険なこともあったが、そのうちに大体、中隊規模(数百人)と石神家剣聖クラスが2人もいれば、安定して攻略出来るようになった。
だが、次第に敵も対抗手段を嵩じてきて、最初から《地獄の悪魔》クラスの強敵を複数体地表に出して来たり、また様々な罠を仕掛けるようにもなってきた。
そのためにほぼ無傷で攻略して来たものが、次第に負傷者を出すようにもなって来た。
当初を除けばそこまでのところは死者はいなかったし、重傷者もそれほど多くは無かった。
複数の《地獄の悪魔》が出て来ることに対しては、まあ何体出て来ても剣聖であれば余裕で相手出来るようになっていた。
石神家の鍛錬が一層激しくなり、もう剣聖クラスであれば何が出てこようと、無理なく斃すことが出来る。
しかし、「業」の側もやられるばかりではなかった。
《シャンゴ》の投下と同時に最奥から出て攻撃を始めたり、また複数体が同時出現することもあった。
また、別な場所に誘導して、今度は「ゲート」を使っての同時攻撃まで展開された。
既に犠牲者が出ており、俺たちは一旦《ハイヴ》攻略を見直すことになった。
これまでの反撃に対する迎撃法と、また今後展開される新たな作戦についても検討される。
重要なことは、《地獄の悪魔》に対抗できる戦力が俺たちにはまだ少ないということだった。
要は「魔方陣」の使用を許可している人間が少ない。
石神家でも剣聖たちしか自在に使えないようにしている。
万一にも「魔方陣」が敵に知られて対抗策を取られると、俺たちもジリ貧だ。
「魔方陣」は俺たちの決定的な戦力なのだ。
一応「魔方陣」は石神家の剣士の一部にも伝授している。
また聖、亜紀ちゃん、皇紀、双子、柳と風花もだ。
しかし、マクシミリアンの「虎騎士隊」やルイーサの「グレイプニル」にも伝えていない。
「虎」の軍の指令本部の長、ターナー大将にも、まだその存在すら教えていない。
それだけの機密なのだ。
斬、竹流、それに栞、六花、鷹には教えてはいるが、使用は厳禁にしている。
「紅六花」の幹部の一部も同じだ。
今後、この問題をどうするのかを考えなければならない。
俺は盛岡へ飛んで、石神家にいる聖に相談した。
戦闘に関しては、聖が最も頼りになる。
石神家へ行くと、虎蘭が走って来た。
可愛らしい。
俺も笑顔で抱き締めてやった。
「よう!」
「高虎さん! ようこそ!」
「まあ、俺はここの当主だからな。ようこそじゃねぇよな」
「でも、全然来ませんよね?」
「怒貪虎さんだってそうだろう?」
「あ、比べる気ですか?」
「ごめんなさい……」
虎蘭が笑って俺をみんなの所へ連れて行った。
丁度今日の鍛錬を終えて片付けている所だ。
当然、その時間を狙ってきたぞー。
「聖!」
「トラ!」
聖が手を挙げて嬉しそうな顔をした。
「虎白さん、どうも」
「おお、遅かったじゃねぇか」
「すいません。いろいろ用事が重なって」
「まあいい。明日はやってけよな」
「はい!」
今晩聖と話したら、明日の午前中で帰るつもりだ。
他の剣士たちとも挨拶し、みんなで山を降りた、
天丸も元気そうで、もう何の心配も無さそうだ。
夕飯には虎蘭と虎水も誘った。
オマール海老を沢山持って来たので、頭や殻を使ったフュメ(出汁)でどうにかしようと考えていた。
あとは聖たちの家にある材料を見て決めればいい。
他には珍しく山羊肉を持って来たので、ガーリックステーキにでもするつもりだった。
聖たちの家に完熟トマトが結構あったので、俺の好きなカプレーゼを作った。
オマール海老を下茹でした後でオリーブオイルで表面を焼き上げ、殻と頭を使ったフュメを掛ける。
付け合わせは柔らかく煮込んだカブとニンジンだ。
山羊肉は虎蘭のリクエストで香草焼きに仕上げた。
「トラの料理はいつも美味いな!」
「おう、どんどん喰ってくれな。天丸はいろんなものを喰って来ただろう?」
「まあな、遠征に行けば珍しいものも喰ったぜ」
「山羊のお肉も食べました?」
「ああ、日本じゃ珍しいけど、海外じゃ結構な。ネパールに行った時には毎日のように食べたよ」
「そうなんですか」
まあ、はっきり言って俺は牛の方が好きだ。
「トラ、この肉はどうしたんだ?」
「双子がな」
「ああ、あいつらか」
「うちの山で山羊が迷い込んでよ。見つけた瞬間に狩ってた」
「「ワハハハハハハ!」」
「「アハハハハハハ!」」
聖はルーとハーが野生動物を狩ることを知っている。
虎蘭と虎水も良く知ってる。
「そういえばマンロウとか御坂はどうしてる?」
「今はそれぞれの家に戻って、技の伝授をしているはずです」
「石神家もオープンになったなぁ」
「まあ、まだまだ一部ですよ。虎白さんが、全員の底上げをしたいようです」
「ありがたいことだ」
日本に今も残っている強力な武術の家を、全体的により一層強くしてくれるつもりなのだ。
石神家の技もどんどん教え、各流派の技の展開まで教えている。
虎白さんは前に俺に言ってくれた。
俺の前に沢山の精鋭を並べるのだと。
本当にその通りにしようとしてくれている。
食事を終え、片づけてから俺は話を始めた。
「虎蘭と虎水は「魔方陣」を使えるな?」
「「はい」」
「天丸も存在は知っているよな?」
「ああ、まだ教えてもらっちゃいないけどな」
「まあそう先でも無いだろう。お前の実力は虎白さんも認めている。それでな、今《ハイヴ》の攻略が行き詰ってんだ」
俺は敵が複数の《地獄の悪魔》を運用することで、その対応策に悩んでいることを伝えた。
「これまでは剣聖が二人も出向けばどうにでもなった。でも先日は5体に加え、少し離れた場所にもう1体出た。亜紀ちゃんが出ていたんだけどな」
「亜紀さんでも厳しかったんですか」
「いや、同時に相手出来ればまだな。でも、問題は離れた場所に「ゲート」で出現した奴だ。別働部隊が目の前に出現した《地獄の悪魔》に対抗出来ずに、一人の男が犠牲になってみんなを逃がした」
「トラ、そいつは大事な奴だったんだな」
聖が俺の心を読んで、そう言った。
こいつにはいつも見透かされてしまう。
「まあな。でも、そういうことも言っていられない。この手を使われれば、部隊はどんどん分断されて撃破されちまう。数体を相手にしているうちに、他の奴らがな。だからどうしたものかと思っているんだ」
天丸に同席させたのは、聞かせても構わないというつもりだった。
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