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タカさん教 Ⅳ

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 笑顔で言った。

 「えーと、今日は「カタ研」裏部長の私が仕切らせていただきまーす」
 「「「「「……」」」」」

 みんな笑顔じゃなかった。 
 タカさんにもらった「カタ研」の部室のマンション。
 私の手配で銀座の「和菓子処 大角玉屋」で大福などを一杯買って来た。
 ここのいちご大福は六花さんが大好きなので、響子ちゃんの分と一緒に先に届けている。
 六花さんが、あの眩しい笑顔でお礼を言っていた。
 なのにどうして君たちは笑顔じゃないのかね!

 「それで「タカさん教」のことが今日の議題です」

 今朝、テレビで「タカさん教」のことが報道されていて、偶然にタカさんがそれを見てしまったことをみんなに話す。
 双子が呆れた顔で言った。

 「亜紀ちゃん、やっちゃったよねー」
 「前からちょっと心配してた」
 「なんでよ! じゃあ言ってよー!」
 「何度も言ったじゃん」
 「……」

 そうでしたー、言われてましたー。

 「で、でもさ! タカさんを崇拝するっていいことじゃん!」
 「本気で思ってる?」
 「あれは不味いよ」
 
 ルーとハーは容赦ない。

 「あ、あんたらも一緒にやったじゃん!」
 「私たちは不良を締めただけ」
 「あっちから来たからね」
 「亜紀ちゃんがそいつらに「タカさんに祈れー」って言ってただけじゃん」
 「マジメにやるあいつらもねー」
 「……」

 そう言ってる間にも、双子はパクパク大福を食べている。
 私は柳さんや真夜と真昼にも食べるように勧めた。

 「おいしーですねー」
 「亜紀さん、御馳走様です!」
 「亜紀ちゃん、半分出すよ」
 「いいですよ。今日は私の問題で集まってもらってますから」

 ルーとハーは最初から遠慮なく食べてるし、お礼も無い。

 「あー、自覚はあるんだー」
 「まあ、美味しいから許すけどね」
 「あんたらさー」

 でも本当に美味しいのでみんなでニコニコ食べた。

 「栗大福さいこー!」
 「杏子もいいね!」
 「やっぱでもイチゴ大福かなー」
 「それは言えるね!」
 「さっき、六花さんに響子ちゃんの分と届けたよ」
 「喜んでたでしょ?」
 「うん!」
 「お姉ちゃん、私杏子もう一つもらっていい?」
 「真昼ちゃん、遠慮しないで! どんどん行って!」
 「はい!」
 「酒どらっててのもいいね!」
 「ブランデーどらも美味しいよ!」
 
 30個ずつ買ってる。
 余りそうもない。
 ハーが抹茶を淹れると言ってくれた。
 やっぱり和菓子によく合う。

 「ところでさ、どーすんの?」
 
 いい加減食べた所で、ルーが言った。

 「石神さんに謝ろう」
 「ちょっと待って柳ちゃん! それは不味いよ!」
 「あの「Ωカメムシ」の時を忘れたの!」
 「でも、正直に言った方が……」
 「いやいや、また恐ろしいことになるよ!」
 「亜紀ちゃん、棒になったじゃん!」
 「ほら、柳ちゃんも後から棒だったじゃん!」
 「でも、最初に謝ってれば!」

 ルーが言った。

 「まあ、今回のことは全部亜紀ちゃんだしー」
 「私たちは大丈夫だよ?」
 「あんたら! 散々食い散らかしたのにぃ!」
 「「ワハハハハハ!」」

 笑っているが、ちゃんと双子も考えてくれているのは分かる。
 時々目を合わせて「高速思考」をしているのだ。

 「亜紀ちゃん、今、教徒は何人?」
 「えーと、1200人が毎日祈ってる」
 「多いねぇ」
 「うん……」

 散々調子乗ってやったからなー。

 「そいつらって、他に何かやってんの?」
 「月に1回集会開いてる」
 「何やってんの!」
 「え、いつも「タカさん、バンザイ!」って、みんなでやってる」
 「アホなの?」
 「なんだとぉー!」
 「やんのかぁ!」
 「ごめんなさい」

 すいません。

 「お金とか取ってないよね?」
 「も、もちろんだよ!」

 何人か、被害者の方々に弁済させているけどー。
 そういうことも話すと、双子が軽蔑した顔で私を見た。
 柳さんは頭を抱えている。

 「その件って、タカさんに報告してる?」
 「え、いやあの……してません」
 「でも、千万グループ使ってるんだよね?」
 「う、うん」
 「「最高にまずいじゃん!」」
 「面目ない……」

 そうだよなー。

 「あのね、亜紀ちゃん、いい? 千万グループはタカさんが立ち上げたんだよ? 私たちが勝手にいいようにしていいわけないじゃん!」
 「うん、本当にごめんなさい」
 「多分、バレたらその人たちもタカさんに叱られるよ?」
 「それは困りますぅー」

 千万の人たちは関係無いのだ。
 私だったから、気持ちよく協力してくれただけなのに。
 本当にごめんなさい!

 「どうすっかなー」
 「ど、どうなる?」
 「こりゃ追い出されるね」
 「!」

 一瞬で血の気が退いた。
 あの「Ωカメムシ」事件が脳裏によみがえった。
 もうあんなことは絶対に嫌!
 タカさんと離れたくないよー!
 思わず涙が流れた。

 「ルーちゃん、それは私たちで何とかしようよ」
 「私からもお願いします!」
 「私も!」

 柳さん、真夜と真昼がかばってくれた。
 ありがとー!

 「まあ、まずは「タカさん教」の解散かな」
 「それはマストだよね」
 「え、折角こんな盛り上がってるのに?」
 「「亜紀ちゃん!」」
 「ごめんなさい!」
 「「もう!」」

 やっぱりダメかー。

 「まあさ、いろいろ検討したけど、やっぱ柳ちゃんの言う通り、タカさんには早目に話した方が良さそうだね」
 「私たちもとばっちりはありそうだけど、うん、一緒に怒られてあげるよ」
 「ほんとにぃ!」
 「「うん! 姉妹じゃん!」」
 「ルー! ハー!」

 「亜紀ちゃん、私も一緒に怒られるよ」
 「亜紀さん、もちろん私も!」
 「私もです! 調子に乗っちゃったのは一緒ですから!」
 「柳さん! 真夜! 真昼!」
 「まあ、私は全然関わってないけどね」
 「柳さーん!」
 「ウソウソ、一緒に謝るよ!」
 「ありがとうござしますぅー!」

 ちょっと心配だけど、みんなありがとうさんだぁー!
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