上 下
2,785 / 2,806

タカさん教 Ⅱ

しおりを挟む
 石神さんが出勤した。
 非常に何か言いたげだったが、出勤の時間なので何も言わずに出て行った。
 一応は助かった!
 亜紀ちゃんと目を合わせる。
 とにかく急いで対策を立てないと。

 「亜紀ちゃん、アレ、まずいよ!」
 「そうですね、どうしましょう、柳さん!」

 亜紀ちゃんは顔が青くなっている。
 それにしても、まさかあのことがテレビにまで取り上げられるなんて!
 ネットで結構な数が挙がっているのは知っていたけど、石神さんはあまりネットを見ないので安心していた。

 「なんとか対処しないと」
 「どうするの?」
 「あ、ラインで集合かけますか!」
 「ああ、もう辞めさせた方がいいよ」
 「うーん……」
 「亜紀ちゃん、まだやるの!」
 「だって、折角大勢の人間に広まってるのに」
 「亜紀ちゃん!」

 まったく呆れた。
 亜紀ちゃんのことは大好きなんだけど、時々暴走するこの癖は毎回困っている。
 まあ、石神さんのことが大好きでの、今回のことなのだが。
 だから私も黙っていた。
 というか、後から付き合うようにもなった。
 あー、私も悪い。

 「真夜と真昼にも知らせないとね」
 「そうですよね! じゃあ、今日は「カタ研・タカさん教分科会会議」を!」
 「もう!」
 「ルーとハーも出席させます」
 「……」

 仕方ない。
 みんなで考えよう……





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 数年前。
 タカさんに動画サイトでの「悪人狩り」が見つかって、相当叱られた。
 だからもうネットには挙げずに、ただ狩るだけにするようになった。
 悪人は多いからね!

 「じゃー、今日も! 悪人狩り! 行くよ!」
 「亜紀さん、ちょっと!」

 さーて、今日はどこにすっかなぁ!

 「亜紀さん、こないだ石神さんに怒られたじゃないですかぁ!」

 確かに調子に乗って悪人狩りの動画をサイトにアップしてたのは不味かった。
 でも、そういうことじゃないんだなぁー。

 「真夜、いいこと教えてあげる」
 「なんです?」
 「「止められて止まるようなものは大したことじゃない。止められてもやるような奴が、俺は好きだな」!」
 「はぁ」
 「タカさんの言葉だよ! もう最高にカッコイイ!」
 「まあ、そうですかね」
 「ね!」
 「はぁ」

 真夜も分かってくれた。
 よしよし。
 
 「じゃー、真昼も呼ぶかぁ!」
 「行くんですね、やっぱ」
 「うん!」

 真夜が真昼に連絡してくれた。
 真夜と真昼は以前に比べて格段に強くなった。
 私と双子で結構鍛えている。
 もう二人とも第二階梯を自在に扱える中級ソルジャーの実力であり、今ももっと強くなろうと頑張ってる!
 流石私の親友とその妹だぁ!

 真昼に連絡し、池袋の北口で待ち合わせることにした。
 あそこは一時カラーギャングが一杯いたけど、一時廃れて今また悪人が勢いを増している。
 いい狩場だぁ!


 


 真昼はちゃんと制服を着替えてから来ていた。
 双子に貰ったカシミアのアニヘショのセーターに黒いデニムで、足はヴィトンのショートブーツ。
 アニヘショはウサギとタランチュラだ。
 私は白のタートルネックに赤のライダースジャケット、下は革のパンツで足はタカさんが一杯持ってるベルルッティのスカー。
 真夜は白のブラウスにシャネルのピンクの革ジャケット、下は白の綿のパンツで足はコンバースのオールスター。
 真夜はスタイルがいいし、服のセンスもいいな!
 だから私も服を買う時には真夜にいつも付き合って貰って、アドバイスしてくれている。
 真昼も真夜の妹だけあって、いい趣味だ。
 姉の服装を見て、自然に感性が育つのだろう。
 私がタカさんの服装に影響されているのと同じだ。
 タカさん、バンザイ!

 「夕飯の用意までに帰んないとね」
 「はぁ、もう帰りません?」
 「なーに、真夜? お腹空いてるの?」
 「いえ、そういうわけじゃなく」
 「まあ、じゃあ軽くなんかつまみに行こうか! そういえば私もちょっと何か口に入れたいな」

 私はいつでも食事が入るぜ!
 池袋には美味しいお店が一杯あるし。

 「まあ、いいですけど。ところで今日の夕飯はなんです?」
 「うん、鳥の香草焼き! タカさんが大好きだからね!」
 「ああ、いいですね! 私も前に石神さんが作ってくれたのをいただきました!」
 「美味しかったでしょ!」
 「最高ですよ! あんなに美味しいものは滅多に!」
 「私も頂きました! あれ、大好きですよ!」
 「だよね! タカさんに作り方は教わってるから……」

 私たちが話していると、5人組に囲まれた。
 みんな痩せた体形で噛み応えは無さそうだ。
 でも、悪人に区別はないぜ!
 一人の長身の借り上げ金髪が近付いて話し掛けてきた。
 顔がこれでもかって安っぽい。
 
 「ねぇねぇ、タカさんって誰?」
 「あ?」
 「何か食べに行くの? じゃあ、俺らが案内するよ」
 「なんだ、てめぇら?」

 私たちの会話を聞いていたようだ。
 ロックオンかぁ!

 「いいじゃん! ほら、俺らのマンション、近いからさ、そこで御馳走するよ」
 「フランクフルトとか」
 「「「「「ギャハハハハハハハ!」」」」」

 悪人来たぁ!
 しかもいい感じのゲスだぁ!
 
 「本当に近いの?」
 「ああ、すぐそこ。俺らで金出し合って借りてんだ」

 人通りのあるとこは、思い切りできないしなー。
 丁度いいのかなー。

 「そうなんだ、じゃあ行こうか」
 「ほんとかよ!」
 「フランクフルト一杯あっから!」
 「「「「「ギャハハハハハハハ!」」」」」
 「ウフフフフフ」

 真夜を見ると、呆れた顔をしながらも、口元が笑ってた。
 やっぱ悪人はいいよね!

 「それ、アニヘショだろ? いいね!」
 「ありがとうございます」

 年端の行かない真昼にまで声を掛けて来る。
 もう相当なゲスだ。
 真昼も口元が緩んでいる。
 ルーとハーに気に入られている人間だ。
 悪人をぶっ飛ばすのが楽しいに決まってる。
 
 さー、今日はどこまでやっかなぁー!
 殺しはしないけど、手足は折るかなぁー!

 あ、なんか小瓶を出して後ろで笑ってる。
 ヤバいやつかぁ。
 小声で私たちが相当な美人だって話し合ってる。
 いいぜぇ、とっくり味わわせてやるぜぇ。

 真夜と真昼と肩を組んだ。

 「楽しみだね!」
 「「はい!」」

 男たちが笑った。
 その顔が歪むのが楽しみだぁ!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました

氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。 ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。 小説家になろう様にも掲載中です

双葉病院小児病棟

moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。 病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。 この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。 すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。 メンタル面のケアも大事になってくる。 当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。 親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。 【集中して治療をして早く治す】 それがこの病院のモットーです。 ※この物語はフィクションです。 実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。

イケメンドクターは幼馴染み!夜の診察はベッドの上!?

すずなり。
恋愛
仕事帰りにケガをしてしまった私、かざね。 病院で診てくれた医師は幼馴染みだった! 「こんなにかわいくなって・・・。」 10年ぶりに再会した私たち。 お互いに気持ちを伝えられないまま・・・想いだけが加速していく。 かざね「どうしよう・・・私、ちーちゃんが好きだ。」 幼馴染『千秋』。 通称『ちーちゃん』。 きびしい一面もあるけど、優しい『ちーちゃん』。 千秋「かざねの側に・・・俺はいたい。」 自分の気持ちに気がついたあと、距離を詰めてくるのはかざねの仕事仲間の『ユウト』。 ユウト「今・・特定の『誰か』がいないなら・・・俺と付き合ってください。」 かざねは悩む。 かざね(ちーちゃんに振り向いてもらえないなら・・・・・・私がユウトさんを愛しさえすれば・・・・・忘れられる・・?) ※お話の中に出てくる病気や、治療法、職業内容などは全て架空のものです。 想像の中だけでお楽しみください。 ※お話は全て想像の世界です。現実世界とはなんの関係もありません。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 ただただ楽しんでいただけたら嬉しいです。 すずなり。

イケメン歯科医の日常

moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。 親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。 イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。 しかし彼には裏の顔が… 歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。 ※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。

処理中です...