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復讐者・森本勝 Ⅸ
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俺の部隊に、新たに《ハイヴ》の攻略の命令が降った。
南米ボリビアのジャングルにある、レベル4の《ハイヴ》だ。
もう何度か《ハイヴ》攻略作戦は経験しているが、今回は石神家の剣聖の方ではなく、亜紀さんが来て下さるそうだ。
亜紀さんはもう「虎」の軍の全員に《ディアブロ・アキ》として知れ渡り、戦場の最強戦力の一人と認識されていた。
だから亜紀さんが同行することで、俺の部隊は大いに喜んだ。
それに何と言っても亜紀さんは人気者だ。
非常に若いが、明るく美しく頼りになる人間とみんな知っている。
《ハイヴ》の攻略はもう手順が決まっており、気を緩めなければ犠牲者も出ない。
ただ、敵も戦略を備えるようになって、決して油断は出来ない。
最奥部のとんでもなく強い奴が攻撃前に出て来ることもあったのだ。
森本の前隊がそれにやられた。
もちろん石神さんや司令本部はその対抗手段を考えており、襲撃隊は分散しない作戦が構築されている。
複数体の《地獄の悪魔》が来ようと、分散しない限りそれに対応出来る。
特に亜紀さんの場合は、《地獄の悪魔》を短時間で制圧できるし、超攻撃機《ニーズヘッグ》が常に出撃の準備をしている。
《ニーズヘッグ》は世界のどこでも4分で到着出来るように配備されていた。
まあ、その「4分」が問題なのだが。
でも、この隊では俺も「魔法陣」を扱える。
数体の《地獄の悪魔》ならば、何とかなるだろう。
ならなければ、その時だ。
ボリビアのジャングルがデュールゲリエによって整地され、俺たちは「タイガーファング」で現地に降りた。
目標の《ハイヴ》から20キロ離れた地点だった。
亜紀さんを筆頭に俺の「桜隊」200名とデュールゲリエ50体。
《ハイヴ》の周辺数キロから、ライカンスロープや妖魔たちの防衛ラインがある。
大抵はそれほど強くはない連中だった。
霊素観測レーダーを積んだ哨戒偵察機「ウラール」が上空を旋回し、霊素の観測をしている。
その「ウラール」から通信が入った。
「《ハイヴ》から13キロ離れた地点に、妖魔の霊素反応があります」
「なんだ? どういうことか説明してくれ」
作戦には無い建造物だった。
もちろん建物自体は以前からあったのかもしれないが、攻撃目標とは認識されていなかったのだ。
そこに今、妖魔反応がある。
「詳細は分かりませんが、《ハイヴ》とは別な「業」の軍の設備かもしれません。念のためにそちらも潰しておいていただけますか?」
「了解。とにかく小隊を向かわせ調査させる」
「お願いします」
作戦にはない行動だったが、俺は現場指揮官として川尻の小隊を向かわせた。
それほどの距離は無いので、何かあれば本隊もすぐに対応出来るだろうと判断した。
俺たちは《ハイヴ》周辺の防衛ラインに入り、予定通り爆撃機「ウロボロス」によって《シャンゴ》の空爆が始まる。
俺たちはその間に《ハイヴ》に接近し、周辺のライカンスロープと妖魔を撃破しつつ前進した。
亜紀さんは既に上空に上がり、どんな状況にも対処できるように備えていてくれている。
また「ウラール」から通信が来た。
「強大な霊素反応! 5体の《地獄の悪魔》が出現します!」
「なんだと!」
5体とは多い。
以前にもあった、別なトンネルを抜けて奥底の強力な妖魔が先に出て来たのだろう。
最初から俺たちを誘い込む罠だったのだ。
だが、亜紀さんであれば何とかなるはずだった。
5体ともなれば、それなりに時間は掛かるだろうが。
「先ほど報告した13キロ離れた地点にもゲート出現! 《地獄の悪魔》の霊素反応!」
「何!」
6体目か!
「ゲート」を使ってくるとは考えなかった俺の迂闊だった。
川尻の部下たちは誰も「飛行:鷹閃花」を習得していない。
すぐに通信兵に川尻たちの退却を命じた。
しかし、もう既に《地獄の悪魔》が出現し、川尻たちの退路を断つ位置から攻撃を始めたようだ。
亜紀さんはこちらの5体の《地獄の悪魔》の対応で動けない。
川尻から連絡が入った。
「自分たちのことはお構いなく! 何とか凌ぎます!」
「!」
その通信だけで分かった。
川尻たちは状況全体を把握し、覚悟を決めたようだった。
俺も亜紀さんの応援に入らなければならない。
5体もの《地獄の悪魔》の攻撃は、既に本隊も晒されていた。
その時、誰かが飛んだ。
「今のは誰だ!」
「森本少尉のようです! あいつの小隊はまだここにいます! 一人で飛び出した模様!」
「なんだと、あの野郎!」
俺は命じていないし、森本が行ってもどうにもならない。
あいつは何のつもりで川尻の小隊に向かったのか。
「飛行:鷹閃花」の使える森本は、何人かでも運び出すつもりか?
だが今は考えている時間が無い。
とにかく急いでここにいる《地獄の悪魔》を殲滅し、川尻たちの所へ向かうだけだ。
「デュールゲリエ20体で川尻たちの救援に迎え! 戦闘ではなく、出来るだけ救出してくれ!」
即座に20体が飛んだ。
《地獄の悪魔》の攻撃の中で救援するのは困難だろうと思った。
しかし今はこれしか出来ない。
俺は目の前の《地獄の悪魔》へ向かった。
本体の前にいるのは、巨大な蜘蛛の体形の40メートル、異様に細い9本の腕を持つ12メートル、鹿の角を拡げたような30メートル、楕円形の卵のような15メートル、そして布を被ったお化けのような3メートルだった。
布お化けは前に「砂漠の虎作戦」で遭遇した奴だ。
通信担当がアラスカに「ニーズヘッグ」の出撃を要請している。
あと数分のはずだ。
亜紀さんが俺たちを攻撃しようとした蜘蛛型に「魔法陣/ブリューナク」を撃った。
腹部に大きな穴が空き、そのまま手足が千切れ飛ぶ。
俺も部隊に「カサンドラ」を布お化けの周辺に集中砲火させ、俺が「魔法陣/槍雷」を撃ち込んだ。
俺の威力ではレジストされるようだが、確実にダメージを与えているのが分かる。
「あいつに吸気をさせるな! 身体の側面の鰓が開いたら近くの地面をぶっ飛ばせ!」
『はい!』
上級ソルジャーたちが鹿角型に「カサンドラ」のロングソードモードで攻撃している。
あのタイプは確か、空中から雷撃を放って来る奴だ。
南米の《ハイヴ》攻略で「虎」の軍が遭遇している。
亜紀さんが卵型に「魔法陣・ブリューナク」を撃った。
レジストされる。
初めて見るタイプだが、防御力に秀でているようだ。
9本腕が8本で合掌した。
頭頂の9本目が手刀を振り下ろすように下へ薙ぐのが見えた。
「全員回避!」
部隊が二つに割れて攻撃を回避した。
9本腕からの地面が激しく爆発しながら裂けて行く。
とんでもない威力だ。
やはり5体もの《地獄の悪魔》は容易くない。
最強戦力の亜紀さんでも瞬殺は出来ない。
周辺の警戒網の妖魔やライカンスロープたちも集まって来る。
その対応も指示した。
《地獄の悪魔》たちの動きも観察し、攻撃の度に回避命令を出した。
デュールゲリエたちは独自の判断で、主に俺たちの防御に当たってくれている。
俺は必死に戦い指示を出しながら、川尻たちのことを思った。
あいつらは……
南米ボリビアのジャングルにある、レベル4の《ハイヴ》だ。
もう何度か《ハイヴ》攻略作戦は経験しているが、今回は石神家の剣聖の方ではなく、亜紀さんが来て下さるそうだ。
亜紀さんはもう「虎」の軍の全員に《ディアブロ・アキ》として知れ渡り、戦場の最強戦力の一人と認識されていた。
だから亜紀さんが同行することで、俺の部隊は大いに喜んだ。
それに何と言っても亜紀さんは人気者だ。
非常に若いが、明るく美しく頼りになる人間とみんな知っている。
《ハイヴ》の攻略はもう手順が決まっており、気を緩めなければ犠牲者も出ない。
ただ、敵も戦略を備えるようになって、決して油断は出来ない。
最奥部のとんでもなく強い奴が攻撃前に出て来ることもあったのだ。
森本の前隊がそれにやられた。
もちろん石神さんや司令本部はその対抗手段を考えており、襲撃隊は分散しない作戦が構築されている。
複数体の《地獄の悪魔》が来ようと、分散しない限りそれに対応出来る。
特に亜紀さんの場合は、《地獄の悪魔》を短時間で制圧できるし、超攻撃機《ニーズヘッグ》が常に出撃の準備をしている。
《ニーズヘッグ》は世界のどこでも4分で到着出来るように配備されていた。
まあ、その「4分」が問題なのだが。
でも、この隊では俺も「魔法陣」を扱える。
数体の《地獄の悪魔》ならば、何とかなるだろう。
ならなければ、その時だ。
ボリビアのジャングルがデュールゲリエによって整地され、俺たちは「タイガーファング」で現地に降りた。
目標の《ハイヴ》から20キロ離れた地点だった。
亜紀さんを筆頭に俺の「桜隊」200名とデュールゲリエ50体。
《ハイヴ》の周辺数キロから、ライカンスロープや妖魔たちの防衛ラインがある。
大抵はそれほど強くはない連中だった。
霊素観測レーダーを積んだ哨戒偵察機「ウラール」が上空を旋回し、霊素の観測をしている。
その「ウラール」から通信が入った。
「《ハイヴ》から13キロ離れた地点に、妖魔の霊素反応があります」
「なんだ? どういうことか説明してくれ」
作戦には無い建造物だった。
もちろん建物自体は以前からあったのかもしれないが、攻撃目標とは認識されていなかったのだ。
そこに今、妖魔反応がある。
「詳細は分かりませんが、《ハイヴ》とは別な「業」の軍の設備かもしれません。念のためにそちらも潰しておいていただけますか?」
「了解。とにかく小隊を向かわせ調査させる」
「お願いします」
作戦にはない行動だったが、俺は現場指揮官として川尻の小隊を向かわせた。
それほどの距離は無いので、何かあれば本隊もすぐに対応出来るだろうと判断した。
俺たちは《ハイヴ》周辺の防衛ラインに入り、予定通り爆撃機「ウロボロス」によって《シャンゴ》の空爆が始まる。
俺たちはその間に《ハイヴ》に接近し、周辺のライカンスロープと妖魔を撃破しつつ前進した。
亜紀さんは既に上空に上がり、どんな状況にも対処できるように備えていてくれている。
また「ウラール」から通信が来た。
「強大な霊素反応! 5体の《地獄の悪魔》が出現します!」
「なんだと!」
5体とは多い。
以前にもあった、別なトンネルを抜けて奥底の強力な妖魔が先に出て来たのだろう。
最初から俺たちを誘い込む罠だったのだ。
だが、亜紀さんであれば何とかなるはずだった。
5体ともなれば、それなりに時間は掛かるだろうが。
「先ほど報告した13キロ離れた地点にもゲート出現! 《地獄の悪魔》の霊素反応!」
「何!」
6体目か!
「ゲート」を使ってくるとは考えなかった俺の迂闊だった。
川尻の部下たちは誰も「飛行:鷹閃花」を習得していない。
すぐに通信兵に川尻たちの退却を命じた。
しかし、もう既に《地獄の悪魔》が出現し、川尻たちの退路を断つ位置から攻撃を始めたようだ。
亜紀さんはこちらの5体の《地獄の悪魔》の対応で動けない。
川尻から連絡が入った。
「自分たちのことはお構いなく! 何とか凌ぎます!」
「!」
その通信だけで分かった。
川尻たちは状況全体を把握し、覚悟を決めたようだった。
俺も亜紀さんの応援に入らなければならない。
5体もの《地獄の悪魔》の攻撃は、既に本隊も晒されていた。
その時、誰かが飛んだ。
「今のは誰だ!」
「森本少尉のようです! あいつの小隊はまだここにいます! 一人で飛び出した模様!」
「なんだと、あの野郎!」
俺は命じていないし、森本が行ってもどうにもならない。
あいつは何のつもりで川尻の小隊に向かったのか。
「飛行:鷹閃花」の使える森本は、何人かでも運び出すつもりか?
だが今は考えている時間が無い。
とにかく急いでここにいる《地獄の悪魔》を殲滅し、川尻たちの所へ向かうだけだ。
「デュールゲリエ20体で川尻たちの救援に迎え! 戦闘ではなく、出来るだけ救出してくれ!」
即座に20体が飛んだ。
《地獄の悪魔》の攻撃の中で救援するのは困難だろうと思った。
しかし今はこれしか出来ない。
俺は目の前の《地獄の悪魔》へ向かった。
本体の前にいるのは、巨大な蜘蛛の体形の40メートル、異様に細い9本の腕を持つ12メートル、鹿の角を拡げたような30メートル、楕円形の卵のような15メートル、そして布を被ったお化けのような3メートルだった。
布お化けは前に「砂漠の虎作戦」で遭遇した奴だ。
通信担当がアラスカに「ニーズヘッグ」の出撃を要請している。
あと数分のはずだ。
亜紀さんが俺たちを攻撃しようとした蜘蛛型に「魔法陣/ブリューナク」を撃った。
腹部に大きな穴が空き、そのまま手足が千切れ飛ぶ。
俺も部隊に「カサンドラ」を布お化けの周辺に集中砲火させ、俺が「魔法陣/槍雷」を撃ち込んだ。
俺の威力ではレジストされるようだが、確実にダメージを与えているのが分かる。
「あいつに吸気をさせるな! 身体の側面の鰓が開いたら近くの地面をぶっ飛ばせ!」
『はい!』
上級ソルジャーたちが鹿角型に「カサンドラ」のロングソードモードで攻撃している。
あのタイプは確か、空中から雷撃を放って来る奴だ。
南米の《ハイヴ》攻略で「虎」の軍が遭遇している。
亜紀さんが卵型に「魔法陣・ブリューナク」を撃った。
レジストされる。
初めて見るタイプだが、防御力に秀でているようだ。
9本腕が8本で合掌した。
頭頂の9本目が手刀を振り下ろすように下へ薙ぐのが見えた。
「全員回避!」
部隊が二つに割れて攻撃を回避した。
9本腕からの地面が激しく爆発しながら裂けて行く。
とんでもない威力だ。
やはり5体もの《地獄の悪魔》は容易くない。
最強戦力の亜紀さんでも瞬殺は出来ない。
周辺の警戒網の妖魔やライカンスロープたちも集まって来る。
その対応も指示した。
《地獄の悪魔》たちの動きも観察し、攻撃の度に回避命令を出した。
デュールゲリエたちは独自の判断で、主に俺たちの防御に当たってくれている。
俺は必死に戦い指示を出しながら、川尻たちのことを思った。
あいつらは……
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