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「般若」でお祝いパーティ Ⅲ

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 俺が麗星たちのテーブルに行こうとすると、士王がついてきた。
 麗星パイ狙いだろう。
 麗星、天狼、奈々、五平所、院長夫妻のテーブル。

 「麗星さーん!」
 「まあ、士王ちゃん!」

 士王が麗星に抱き着き、遠慮なくオッパイを揉む。
 今日の麗星は白地に星空の蝶の柄だ。
 蓮花が夜羽の産着と一緒に麗星のために仕立てたものだった。
 士王はちゃんと袖から手を通して直にオッパイを掴んでいる。
 麗星は下着を付けていないはずだった。
 まったく、こいつの野望は凄まじい。
 麗星は怒るでもなく、笑って触らせてやっていた。

 「士王ちゃんは本当にお胸がお好きなんですね」
 「まあ、どうしたもんかと思ってるんだけどなぁ」
 「あなたさまの御子ですから」
 「意味が分からん」

 天狼が立ち上がり、椅子を空けて俺を麗星の隣に座らせた。
 すぐに睡蓮が椅子を持って来て天狼に謝って座らせてから、士王の頭を引っぱたいて自分の席に戻した。
 
 「天狼、虎白さんに可愛がってもらったんだってな?」
 「はい! わたくしが道間の者なのに、技もたくさん教えて下さいました」
 「そうか。相当お前のことが気に入ったらしいぞ。俺にも将来が楽しみだって言ってたぞ」
 「ほんとうですか!」

 天狼が顔を輝かせて喜び、奈々が自分も可愛がってもらったのだと言った。

 「ああ、そうだってな。奈々はカワイイからな!」
 「うん!」
 
 天狼が、俺の親父の話を沢山聞いたのだと言った。
 そんな話は虎白さんから聞いていない。
 本当に天狼が好きになったのだろう。

 「おじいさまは御立派な方です!」
 「俺にとってはおっかない人だったんだけどな。まあ、でも俺も大好きだよ」
 「はい!」

 五平所がこないだ奈々にロケットランチャーをぶち込まれた話をして、俺が爆笑した。

 「石神様! その直後にバレットM82ですよ! 本当に死ぬかと思いました!」
 「まあ、奈々は五平所のことが大好きだからなぁ」
 「うん!」

 五平所が苦笑し、院長たちが驚いていた。

 「石神様にご相談したくて」
 「まあ、もうちょっとの辛抱だよ。そのうちにこいつは外に向かっていく」
 「はい?」
 「響子がまた夢を観たんだ。まだ内容は言えないけどな」
 「さようでございますか」
 「あと5年もすればな」
 「そ、そんなにですか……」

 麗星が笑って、天狼が自分が護ると言っていた。
 五平所が「よろしくお願いします、マジで」と言っていた。

 「院長、一度道間家へ行ってみますか?」
 「ああ、さっきもお誘いを受けたんだ。楽しみだよ」
 「そうですか。とにかく食事が美味くてですねぇ」
 「あなたさま! 是非道間家でお暮しを!」
 「アハハハハハハハ!」

 麗星が院長のことで俺に聞いて来た。

 「あなたさま、蓼科様は「鬼の王」が御守りしているのだと伺っていましたが」
 「ああ、「鬼理流」という鬼族の王な。眷族が相当な数に上るらしいな」
 「一度、わたくしもお会いすることは出来ましょうか?」
 「そうか?」

 俺はテーブルのみんなを連れて、店の外へ出た。

 「院長、鬼理流を呼んで下さい。麗星たちに紹介したいと」
 「あ、ああ」

 院長が「鬼理流」と呼んだ。
 その瞬間に、目の前に体長3メートルの逞しい鬼が姿を現わした。
 店の中から全員が飛び出して来る。
 表でバーベキューを焼いていた亜紀ちゃんたちも驚いていた。
 ルーとハーが慌ててみんなに説明している。

 「「「「ぷー! ぷー! ぷー! ……」」」」

 麗星、五平所、天狼、奈々があのナゾの警戒音を叫んでいた。

 「鬼理流、俺の妻の一人麗星とその子どもたちの天狼、奈々だ。それと麗星の右腕の五平所。お前に会いたかったんだとよ」
 「さようでございますか。よしなに」
 「おう、ああ、なんだか目一杯みたいだから、もう消えてくれ。これからも院長と静子さんを頼むな」
 「はい、必ず」

 鬼理流が姿を消し、白目を剥いていた麗星たちも落ち着きを取り戻した。

 「おい、大丈夫か?」
 「あ、あ、あなたさま……」
 「なんだよ、折角来てくれたのに」
 「あれはとんでもありません! あれは妖魔の王ではありませんか!」
 「そうです! あれほどの者、あやうく神経が焼き切れるところですぞ!」
 「え? 俺、ちゃんと「鬼族の王」って言ったよな?」
 「「「「!」」」」

 麗星も「鬼の王」って言ってたじゃん。
 天狼が奈々を抱き締めていた。
 
 「まさか! 本当に「王」をまた味方に付けたのでございますか!」
 「そう話したろう?」
 「そうですけど! あなたさま! いい加減になさいませ!」
 「なんで怒られてんの?」

 ルーとハーがみんなを宥めてまた中へ入った。
 マクシミリアンは知らなかったので、説明を求めて来た。
 俺も一応麗星たちに謝って中へ連れて行った。
 テーブルで、麗星と五平所が冷酒を煽った。

 「ところでさ、前から聞きたかったんだけど」
 「なんでございますか?」
 「あの「ぷーぷー」ってナニ?」
 「はい?」
 「ほら、さっきも四人で言ってたじゃん」
 「なんのことでございますか?」
 「「「?」」」
 「……」

 麗星も五平所も真面目な顔で分からないと言った。
 なんなの? 





 食事も落ち着いて来たので、俺がギターを弾き、亜紀ちゃんたちが下品な演芸を見せた。
 斬が謡をやり、鷹が合わせて舞った。
 全然聞いていなかったが、二人で練習していたらしいので驚いた。
 六花も響子が以前に飽きて捨てたフルートを演奏し、みんなが驚いていた。
 大使夫人会では何度か披露している。
 麗星が篠笛を吹き、五平所が笙で合わせた。
 見事な演奏だった。
 早乙女が『怜花』『久留守』という詩を朗読し、みんなが笑いを堪えてなんとか拍手した。
 御堂と俺で、ヴァイオリンとギターのセッションをした。
 『御堂』だ。
 栞が電子ピアノで『士王』を弾いた。
 譜面は俺が起こして、うちの地下のピアノで練習していたのだ。

 「おい、次は『斬』って創ってやるよ」
 「よろしく頼む」

 斬が頭を下げて来たので、逆に俺が驚いた。
 風花が電子ピアノを弾き、皇紀が『冬の旅』を歌った。
 久し振りに皇紀の歌を聴いた。
 マクシミリアンが自分も良いかと聞いて来た。
 
 「なんだよ、遠慮なくやれよ」

 マクシミリアンがパーセルの『聖セシリアの祝日のための頌歌』の《第3曲 「聴け! 聴け! 樹木はそれぞれ」》を朗々と歌った。
 覚えている。
 あいつがうちに来た時に地下室で聴かせてやったものだ。
 マクシミリアンは、あれから練習してたのか。
 見事な歌唱だった。

 またみんなで席を移動しながら話し、楽しんだ。
 俺は珍しく楽しんでガンガン飲んだため、相当酔っていた。

 六花がマンションから、あの不思議な水晶を持って来た。
 ルーとハーが護衛について移動していた。
 俺が桐の箱から出した水晶を見て、みんなに紹介した。

 「これはなぁ! 六花がまさに出産するというときにぃ、キョウさんがとつぜんあらわれてだなぁ……」

 酔った、舌の回らない口調で説明して行った。
 それでもみんなが周囲に集まって来る。

 「……ということだぁ! な、スゴイだろ!」

 みんなが笑って拍手した。
 俺も笑いながら、水晶を撫でた。
 羽入と紅がまた遠慮して来ないので、二人を呼んで撫でさせた。

 「こいつらもさ、おれのだいじなにんげんたちなんだ」
 「「石神さん……」」
 「こんど、ちょっとにんむがあってな。あぶなかったらたのむな」
 
 水晶がちょっと光った感じがした。
 俺もまた撫でた。
 
 「ギンちゃーん! かわいいねー!」

 その瞬間、水晶が激しく輝いた。
 全員が何が起きたか分からずに叫んだ。
 もちろん、慌てて取り乱すことは無かった。

 恐らく数秒で終わったが、みんなしばらく視力が戻らなかった。
 激しい光で瞳孔の調整に時間が掛かったのだ。

 「おい、石神、今のはなんだ?」

 御堂が俺に聞いて来た。

 「あ? ああ、わかんね」
 「おい!」
 
 めんどくさくなって、俺は叫んだ。

 「おし! じゃあ、さいごに「ヒモダンス」! やっぞ!」
 「「「「「「はい!」」」」」」
 「にゃ!」

 亜紀ちゃん、皇紀、ルー、ハー、柳とロボが返事し、亜紀ちゃんと双子がすぐに服を脱ぎだした。
 もちろん俺も脱ぐのだが、亜紀ちゃんたちは栞と桜花たちがあわててテーブルクロスを持って来て身体を隠した。
 頭をひっぱたいて服を着せる。
 その間時間がかかって、俺は全裸で立って待っていた。

 「はやくぅー」

 みんなで「ヒモダンス」をやる。
 みんなが爆笑し、多くの人間が一緒に踊った。

 その後で酔った俺がよろけて転んだ。
 亜紀ちゃんが大笑いで起こしてくれ、そのまま解散になった。
 俺はパンツだけ履かされて、みなさんを見送った。
 ローマ教皇たちがニコニコして帰って行った。
 マクシミリアンは爆笑して、また呼べと言っていた。
 青が俺を心配し、少し休んで行けと言った。
 俺はパンツ一枚で片づけを手伝うと言ったが、亜紀ちゃんに担がれて家に帰った。





 次に響子と「般若」に行った時、青に言われた。

 「赤虎、お前のことは好きなんだけどよ」
 「おう」
 「うちは上品な店だからな」
 「……」
 「二度とあんなことはすんなよ?」
 「すまんね」

 響子が爆笑していた。
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