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《エアリアル》訪問 Ⅱ

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 食事を終えて、歯を磨いてからキッチさんたちと「紫苑六花公園」に行った。

 毎日、「紅六花」の誰かが僕と遊んでくれる。
 駐車場でサッカーをしたり、「花岡」の訓練をする。
 「リッカランド」や「紅バギー」に連れて行ってもくれる。
 みんな、とても優しい。

 キッチさんがハーレーの後ろに乗っけてくれた。

 「吹雪、しっかり掴まってろよ!」
 「はい!」

 他に4人の人たちが一緒に来て、一人は「レッドオーガ」に乗っている。
 おっきなバイクだけど、「ぶき」が一杯あるらしい。
 どこかへ出掛ける時には、いつも誰かが「レッドオーガ」でごえいしてくれるのだ。
 今日はカリンさんが乗ってる。
 カリンさんは特別戦闘力が高いらしい。
 結構、護衛で一緒にいてくれる人だ。
 怒るとコワイらしいけど、カリンさんは綺麗でとても優しい。

 公園に着くと、土曜日だからか、今日もたくさんの人が来ていた。
 「紫苑六花公園」は地元の人に人気の場所で、よく散歩している人が多い。
 僕たちが入ると、何人かが気付いて手を振って挨拶してくれる。
 「紅六花」の人たちは街の人たちに慕われていて、顔も知られている。
 僕のことも知っている人もいて、近くに来て話し掛けてくれる。

 「こんにちはー、吹雪ちゃん!」
 「こんにちはー!」

 顔見知りの人は結構近くまで来るけど、僕にさわる人はいない。
 そういうことになっているそうだ。
 キッチさんが笑顔で僕に言った。

 「いつも吹雪は大人気だな!」
 「エヘヘヘヘヘヘヘ!」

 キッチさんが手をつないでくれ、他の人たちも自然に僕の周囲を歩いてくれる。
 僕を護ってくれているのだと分かっている。
 しばらくいろんな人と挨拶し、話をした。
 花壇に行き、ちょっと遊戯で運動もした。
 ラクさんが冷たい麦茶を水筒から飲ませてくれる。
 僕の周囲にはいつのまにか人が集まって来た。
 
 「あちゃー、やっぱ吹雪に集まって来たかー」
 「しょがないよ。吹雪、カワイイもん!」
 「そうなんだよなー」

 人だかりの中から、一人の綺麗な女の人がニコニコして近づいて来た。

 「みなさん! こんにちは!」
 「ああ、夏音か! こっちに帰って来てたか!」
 「はい! 夏休みなんで。あの、竹流君は元気ですかね?」
 「ああ、元気でやってるよ。週に一度は連絡を受けて話しているよ」
 「そうですか!」

 竹流さんのことは知っている。
 お父さんが認める「虎」の軍の最強戦士の一人で、今はアゼルバイジャンに行っているはずだ。
 何度か会ってもいるし、静かで優しい人だ。
 夏音さんは初めてだ。
 竹流さんのことを知っている人らしい。
 僕が黙って見ていると、ラクさんが僕に夏音さんのことを話してくれた。
 竹流さんと親しくしていた人で、キッチさんの「らいばる」ということらしい。
 「らいばる」ってなんだろ?

 「ラク! 余計なことを吹雪に言うな!」
 「アハハハハハハハ!」

 キッチさんが赤い顔をしていた。
 そして恥ずかしそうに夏音さんに話しかけた。

 「夏音も頑張ってるか?」
 「はい、勉強大変ですけど」
 「看護学校だもんな。総長も苦労してたよ」
 「はい!」
 「竹流には夏音が元気だって伝えておく」
 「ありがとうございます!」

 夏音さんが僕の頭を撫でてくれた。
 いつもは誰かが近付くと、「紅六花」の人たちが触らないように止める。
 でも、夏音さんは誰も止めなかった。

 「吹雪ちゃんは本当に綺麗だね!」
 「ありがとうございます!」
 
 しばらく夏音さんも一緒に公園を回った。
 夏音さんは途中で勉強があるからと帰って行った。
 そのうちに僕たちの周囲をますます大勢の人が取り囲んでいた。

 「うーん、今日はこのへんで限界かなぁ」
 「吹雪がいちゃぁなぁ。ベンチで休もうと思ったけど、そろそろ帰るか」
 「吹雪がいるとしょうがねぇよなぁ」
 
 キッチさんたちが、そんな話をしていた。
 その時、背の高い外人さんが輪の中から抜けて近づいて来た。
 
 「ちょっと止まれ!」

 外人さんは背の高い金髪の綺麗な女性だった。
 カリンさんがコワイ顔で叫んだ。

 「お前だ! おい!」

 キッチさんたちが僕の前に立つ。
 後ろから、更に4人の外人さんが近付いて来た。
 そっちは男の人だ。
 5人は笑顔で近付いて来る。
 何か言っているが、生憎誰も言葉が分からない。

 「How cute!(なんてカワイイの!)」

 「なんて言ってる!」
 「分かんねぇよ!」
 「「霊素観測レーダー」の反応は!」
 「ねぇ! 普通の人間のようだ!」

 端末を見ていたキッチさんが叫んだ。
 その時、誰かが言った。

 「おい、虎の旦那の病院で、栞さんが襲撃されたよな!」
 「ああ! 《デモノイド》かぁ! 気配を消すのが上手い連中だってなぁ!」
 「キッチ! 吹雪を連れて逃げろ!」
 「おう!」
 「やるぞ!」
 「「「オウ!」」」

 金髪の女の人が叫んだ。

 「Just a second!(ちょっと待って!)」

 金髪の女の人が慌てて何か叫んでいたが、カリンさんが突っ込んで、金髪の女の人に殴りかかった。
 瞬間に男の人が間に入って庇って、ぶっ飛ばされた。
 後ろの金髪の人も一緒に転がって行く。

 「気を付けろ! 「螺旋花」をレジストしやがった!」

 「マテ! ワレワレハ「タイガー・ホール」ダァ!」

 一人の男の人が叫んだ。

 「「「「「!」」」」」
 「ん?」

 5人の人たちが両手を上に上げていた。
 金髪の女の人は、鼻から血を流していた。
 キッチさんが僕から手を放して言った。

 「おい」
 「「「「……」」」」
 「誰だよ、《デモノイド》って言ったの!」
 「「「「……」」」」

 キッチさんがタケさんに電話していた。

 「このバッカヤロウ!」

 タケさんの怒鳴り声が、僕にも聞こえた。
 キッチさんが青い顔をして必死に謝ってた。
 なんだろね?
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