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みんなで御堂家! Ⅲ

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 少し前で車を停めて響子を着替えさせ、柳に電話をさせた。
 いつものことだが、この暑い中、みなさんが玄関前で待っていてくれた。
 
 「御堂!」
 「石神!」
 「石神さん!」

 みんなで挨拶する。
 俺は暑いのでと言い、すぐに中へ入って頂いた。
 子どもたちが急いで荷物を運び、柳が響子を抱きかかえて中へ入った。
 ロボは飛び出して澪さんに挨拶した。
 こいつは澪さんが大好きだ。
 オロチも当然出迎えてくれ、俺が首を抱き締めてやる。

 「オロチ! 元気そうだな!」

 嬉しそうに頭を揺らす。
 ニジンスキーたちもいるので、それぞれ頭を撫でてやる。
 またでかくなっていた。
 もう8メートルはある。
 軒下は大丈夫か?
 響子が近付き、オロチが長い舌で響子の頭を撫でて響子が喜んだ。

 広間に入り、冷たい麦茶をいただく。
 子どもたちは食材を厨房へ運んでから戻って来た。
 俺は正巳さんたちに土産を渡し、久し振りの挨拶をした。

 「やっと石神さんたちがいらしてくれた!」

 正巳さんが喜んでくれている。

 「すいません。本当に忙しくて。やっと来れましたよ」
 「でも一泊かぁ」
 「アハハハハ、申し訳ありません。柳と亜紀ちゃんもやっとアフリカから戻って来たところで」
 「そうだってなぁ。柳、逞しくなったな」
 「あの、私、一応女の子なんですけどー!」
 「ワハハハハハハハ!」

 みんなで笑った。
 一通りみんなで楽しく話し、昼食を頂いた。
 俺のリクエストでほうとう鍋にしてもらっている。
 準備がそれほど面倒でないようにだ。
 でも、やはり天ぷらなどが大量にあった。
 お手伝いの方々がどんどん運んで下さる。
 ジャングルマスターも来た。

 「なんだ、こっちにいたのかよ」
 「タイガーが来るって聞いたからな」
 「パピヨンは?」
 「あいつは《ミトラ》で忙しい。宜しくと言っていた」
 「そうか、後で顔を出すからな」

 俺は響子を正巳さんたちにあらためて紹介した。

 「響子さん、慣れない日本家屋だろうけどゆっくりして下さい」
 「ありがとうございます!」

 食事の後で、響子は休ませてもらった。
 奥の部屋で布団を引いてもらう。
 響子は珍しいフカフカの布団に喜んでいた。
 ロボも隣で一緒に寝る。
 こいつはいつも寝ている。
 子どもたちは自由にさせ、俺は御堂と話した。

 「三人とも、無事に生まれて良かったな」
 「ああ。栞は襲われたけどよ」
 「「業」にとっては、まだ特別な人なんだなぁ」
 「そうらしい。今後も気を付けておかないとな」

 御堂は一時は激務でやつれていたが、今は健康そうだ。
 やっと政務に馴れて来たのだろう。

 「今後は栞さんはどこに住むんだ?」
 「当座は蓮花の研究所だな」
 「石神の家は?」
 「夏休みが終わると子どもたちも学校だしよ」
 「ああ、そうか」
 「それによ。斬がいつまでも俺の家にいるとウザいんだよ!」
 「アハハハハハハハ!」

 もちろん防衛システムの関係だ。
 俺の家でもタヌ吉の結界があるからそうそう問題は無いのだが、やはり万全なのは蓮花研究所だ。
 それに、栞を放っておくとあいつは必ず外に出たがる。
 桜花たちでは止められないだろう。

 「来月には六花も戻って来る。その後少ししたら栞は蓮花の所かな」
 「そうか」

 俺は青の「般若」で出産祝いをするので、御堂にも来て欲しいと頼んだ。

 「ああ、調整するよ。最近は少しは余裕が出て来たんだ」
 「そうか。それじゃいよいよアレを始めなきゃな」
 「アレかぁ」

 俺たちには、以前から計画していることがある。
 日本を大々的に変えるために必要な措置だった。
 御堂の人気は衆院選以降も衰えるどころか、ますます上がっている。
 御堂の打ち出す政策が国民に大きな評価を得て、確実に改革しているためだ。
 経済的な成功が評価されがちだが、その点では本当に見事な成果を挙げている。
 「御堂グループ」が世界的に高評価を受ける実績を上げ、技術改革や雇用改革、流通革命を成し遂げた。
 特に流通は「セールスマン・ルート問題」を解決した量子コンピューターによる超合理的な運輸を実現した。
 政府としても経済改革を実施し、世界的に盤石な体制を築いた。
 今、「御堂グループ」を中心とした日本企業の株価は高騰を続け、政府の税収も格段に上がっている。
 そして教育面を中心に、様々な改革も行なった。
 長らく押さえ込まれて来た軍事面でも、「業」の脅威が現実となり軍備を求める流れが出来た。
 更にジャングルマスターが情報操作を続け、御堂、日本の評価はうなぎ登りだ。
 だから、俺たちの計画は確実に実現出来る。

 「中南米とアフリカで確信したよ。世界戦争が始まる」
 「覚悟はしているよ」
 「俺がいない世界が懐かしいだろう?」

 御堂が前に「石神のいない世界には興味がない」と言っていたことへの揶揄だ。

 「バカを言うな。ちょっとだけしか後悔してないよ」
 「ワハハハハハハハ!」

 久し振りに御堂といろいろな話をした。
 やはり御堂と話すのは最高に楽しい。

 「聖がようやく動けるようになった。今度会いに行くよ」
 「そうか。僕もそのうちに会いたいな」
 「ああ、必ず機会を作るよ」

 「千歌ってさ、斬が名付けたんだぜ?」
 「そうなのか!」
 「斬の奴、最初は恥ずかしがってたけどよ。栞が頼んだら即答よ。あいつ、何となく考えてやがったな」
 「アハハハハハハハ!」
 「俺が歌が上手いってさ。だからだって言いやがった」
 「それは凄いな!」
 「な! まさかあいつが俺の歌を気に入ってるなんてなぁ。俺もびっくり!」
 「アハハハハハハハ!」

 話題は尽きないが、3時になり、みんなを集合させた。
 《御虎》シティへ出掛けるのだ。
 子どもたちは「オロチランド」で遊び、俺はその間にパピヨンに会いに行った。

 「よう、随分と頑張ってくれてるらしいな!」
 「タイガー! 久し振りだな。ああ、今忙しいんだ」
 「そう言うなよ!」
 「じゃあ、ちょっと相談がある」
 「おう!」

 パピヨンはアラスカの幻想都市《アヴァロン》を下敷きに、更なる幻想都市を創ろうとしていた。
 ようやく50%が完成し、中心部は微調整に入っている。
 何しろ広大な都市なので、建設に時間が掛かる。
 ただ、それでも一般の建設計画とは格段にスピードが違う。
 クロピョンがいるからだ。
 パピヨンはクロピョンの能力を知り、無茶苦茶な計画もどんどん出して来る。
 山を30メートル高くし、平野部を3メートル下げてくれなど、途方も無いことも簡単に出来てしまう。
 それを知った時、パピヨンは狂喜した。
 今日もそういった普通では不可能な注文が多々あった。
 俺は笑って引き受け、三日後にデータで送れと言った。

 パピヨンの事務所を出て、俺も「オロチランド」に向かった。
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