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不死者の軍「グレイプニル」 Ⅵ
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降下してから4時間が経った。
まだ地下1キロといったところか。
《ハイヴ》は様々だが、2キロ以下ということはない。
俺と聖で強襲した《ハイヴ》では一気に最下層まで穴を空けて突入した。
今回は《ハイヴ》の内部構造と研究機器などを詳細に調べるため、下層への侵入を慎重にしていたため、これだけの時間を要している。
それでも、俺の感覚では相当に早い。
レベル7のこの《ハイヴ》は、中にいる敵も相当に強いし多い。
最上層の《地獄の悪魔》は予想外だったし、その下の敵も《地獄の悪魔》ではなかったが、各々が強い連中が配備されていた。
それらを「グレイプニル」の兵士が簡単に平らげて行ったのだ。
ルイーサが何となく不満そうな顔をしていたので黙っていたが、俺は「グレイプニル」の兵士たちに満足していた。
一度休憩をさせてやりたかった。
「おい、そろそろ休憩にしないか?」
「必要無い。あ奴らは1ヶ月はこのまま活動出来る」
「俺が腹減ったんだよ!」
ルイーサが苦い顔をして食事の用意を命じた。
何が出て来るかと思ったが、10人が掛けられるでかいテーブルが用意され、次々に皿が並べられていく。
どっから持って来た?
椅子は俺とルイーサの分だけだ。
離れた場所で温められた料理が盛られて行く。
そういう用意まであった。
ここは戦場なのだが。
「おい、こんな豪華な食事なのかよ!」
「美獣を連れているのだ。当然だろう」
「俺、いつもレーションか握り飯だぞ?」
「それは食事ではないな」
「おい!」
どれほど無駄な荷物を持って来ているのか。
まあ、「グレイプニル」にとっては何のこともなかっただろうが。
俺は食事を始めたが、ルイーサが不満げな顔をしている。
他の連中は士官たちが打ち合わせをし、他の兵士たちは各々次の準備をしている。
全然休憩じゃねぇ。
何事か考えているルイーサに問うた。
「何か感じているのか?」
「そうではない。わが僕たちの不甲斐なさだ」
「おい、十分にやっているだろう」
「遅すぎる。もう最下層の敵を平らげている予定だった」
「それは無理だぜ。ここはレベル7のハイレベルの《ハイヴ》なんだ」
「ふん、われにとっては他愛のない遊園地よ」
「そうだってよ、これで十分以上だぜ」
「美獣に言われては仕方がないな」
そうは言ってもルイーサは機嫌が悪かった。
ルイーサは攻略のスピードが遅いと感じているようだったが、俺が連れているデュールゲリエたちの調査の進捗を考えると丁度良かった。
まあ、俺がルイーサに頼んだのは《ハイヴ》の攻略だったので、不満は分かるのだが。
単に敵を撃破して《ハイヴ》を潰すだけならば、もっと早く終わっているに違いない。
だが、なるべく研究施設やシステムを破壊しないで行くやり方なので、このペースは十分に早いのだ。
一度床に穴を空け、下の階層をある程度把握してから本格的な大穴を空ける。
そうやってここまで来たのだ。
機材や構造を無駄に壊さないためには必要な措置だった。
食事を終え紅茶を飲んでいると、やはりルイーサが我慢できずに叫んだ。
「美獣、ここからはわれがやる」
「おい、重要な施設を破壊してもらっちゃ困るんだ」
「われに任せよ。お前が満足するようにやる」
「大丈夫かよ?」
ルイーサが微笑んで立ち上がった。
その美し過ぎる顔を見ては、俺も強くは言えなかった。
やはり、この女にも惚れているのだ。
ルイーサが立ち上がったことで、「グレイプニル」の400人全てが壁の端に整列した。
俺には分からないが、ルイーサの眷族はルイーサから特別な指示を何らかの方法で受け取れるようだった。
それは「グレイプニル」の動きを観ていると分かる。
時々、指揮官のヴェンダーの指示とは違う動きがあり、その度にヴェンダーがルイーサに向けて頭を下げていた。
恐らくはヴェンダーや兵士同士も何らかの意思疎通の手段があるのだろうと感じた。
ノスフェラトゥの特殊性だ。
ルイーサが「グレイプニル」の兵士たちに向かって言った。
「お前たちには失望した。われの連れ合いである美獣がいるというのに、何たる体たらくか」
おい!
「美獣もお前たちの力を見くびっている」
びってねぇよ!
「ここからは一気に行くぞ」
ルイーサの言葉で「グレイプニル」の全員が姿勢を一層正した。
何をするのかとも思ったが、もうこうなってはルイーサに任せるしかない。
この《ハイヴ》はいろいろと調べたかったのだが、ルイーサに任せるしかないかと思い始めていた。
ルイーサから立ち上る闘気が尋常な量ではなかったからだ。
ルイーサがあのスケールメイルの豪奢なドレスのまま空中に跳ね、舞を舞った。
そして床の中心に立ち、両手を伸ばして下に向けた。
ルイーサの身体が輝き、「グレイプニル」の連中が感嘆の唸り声を挙げた。
その瞬間、ルイーサの足元が爆発し、轟音が響き続けた。
数分それは続き、ルイーサの輝きが納まる頃に轟音も消えた。
ルイーサは空中に浮いたままであり、その足下に20メートルの真円の穴が空いていた。
十メートル以上の厚さの床は、切断面が鮮やかに磨き上げられたかのような切り口になっていた。
「グレイプニル」の全員がルイーサのことを褒め称えていた。
ルイーサは両手を拡げ、皆を黙らせた。
「美獣の血のお陰で、これほどの《ローザヘル(薔薇地獄)》を撃ち出せたぞ。皆、観たであろうな」
また歓声が響く。
「美獣、お前にわれの最上の戦いを捧げよう! われらは必ず勝つぞ!」
大歓声。
「お、おう」
よく分かんないんですけどー。
下層に行ったデュールゲリエの一体が戻って来て俺に言った。
「石神様、中心部が全て消滅しています」
「ああ、そうだな」
「恐らくは重要な施設や機材は中心部に多くあったようでして」
「あ?」
「今回の作戦の調査面では、もうあまり成果は出ないかと」
「……」
貫通した円の縁に立ち、ルイーサは上機嫌でニコニコと笑っている。
「おう、まあ出来るだけ頼むわ」
「かしこまりました」
ルイーサが俺に寄って来た。
ニコニコだ。
「美獣、どうした? 何かあったか?」
デュールゲリエが俺に報告に来たので聞いているのだろう。
「ああ、何でもねぇ。一瞬で最下層まで大穴が空いたんで驚いているようだぜ」
「フフフ、当然だ。われの力を振るったのだから」
「流石だな!」
「あまり褒めるな。まだまだ全力でもないのだしな」
「そうなのかよ!」
俺、泣きてぇよ!
「最下層の大妖魔も殺してくれたぞ。呆気ないものだな」
「ここのは随分と強かっただろうに!」
「フフフ、われの前では何ほどのものでもない。一瞬だ」
「そうなのか! すげぇな!」
「ワハハハハハハハ!」
あのー、だからー。
「まあ、われに任せておればよい。今回は美獣は楽しんでくれ」
「おう! ありがとうな!」
「よいよい」
楽しくねぇんだけどー。
《ニルヴァーナ》の情報を掴みたかったんだけどー。
まあ、俺と聖の時もひでぇもんだった。
最初はしょうがねぇか。
しかし、うちにはぶっ壊す一方の連中が多すぎだぜぇ。
俺とルイーサで最下層まで降り、ひしゃげて無様に死んでいる5体の《地獄の悪魔》見た。
ルイーサと大笑いし、俺はルイーサを抱き締めて褒め称えた。
ルイーサが満足そうな顔で俺にキスをした。
もう、これでいいや。
まだ地下1キロといったところか。
《ハイヴ》は様々だが、2キロ以下ということはない。
俺と聖で強襲した《ハイヴ》では一気に最下層まで穴を空けて突入した。
今回は《ハイヴ》の内部構造と研究機器などを詳細に調べるため、下層への侵入を慎重にしていたため、これだけの時間を要している。
それでも、俺の感覚では相当に早い。
レベル7のこの《ハイヴ》は、中にいる敵も相当に強いし多い。
最上層の《地獄の悪魔》は予想外だったし、その下の敵も《地獄の悪魔》ではなかったが、各々が強い連中が配備されていた。
それらを「グレイプニル」の兵士が簡単に平らげて行ったのだ。
ルイーサが何となく不満そうな顔をしていたので黙っていたが、俺は「グレイプニル」の兵士たちに満足していた。
一度休憩をさせてやりたかった。
「おい、そろそろ休憩にしないか?」
「必要無い。あ奴らは1ヶ月はこのまま活動出来る」
「俺が腹減ったんだよ!」
ルイーサが苦い顔をして食事の用意を命じた。
何が出て来るかと思ったが、10人が掛けられるでかいテーブルが用意され、次々に皿が並べられていく。
どっから持って来た?
椅子は俺とルイーサの分だけだ。
離れた場所で温められた料理が盛られて行く。
そういう用意まであった。
ここは戦場なのだが。
「おい、こんな豪華な食事なのかよ!」
「美獣を連れているのだ。当然だろう」
「俺、いつもレーションか握り飯だぞ?」
「それは食事ではないな」
「おい!」
どれほど無駄な荷物を持って来ているのか。
まあ、「グレイプニル」にとっては何のこともなかっただろうが。
俺は食事を始めたが、ルイーサが不満げな顔をしている。
他の連中は士官たちが打ち合わせをし、他の兵士たちは各々次の準備をしている。
全然休憩じゃねぇ。
何事か考えているルイーサに問うた。
「何か感じているのか?」
「そうではない。わが僕たちの不甲斐なさだ」
「おい、十分にやっているだろう」
「遅すぎる。もう最下層の敵を平らげている予定だった」
「それは無理だぜ。ここはレベル7のハイレベルの《ハイヴ》なんだ」
「ふん、われにとっては他愛のない遊園地よ」
「そうだってよ、これで十分以上だぜ」
「美獣に言われては仕方がないな」
そうは言ってもルイーサは機嫌が悪かった。
ルイーサは攻略のスピードが遅いと感じているようだったが、俺が連れているデュールゲリエたちの調査の進捗を考えると丁度良かった。
まあ、俺がルイーサに頼んだのは《ハイヴ》の攻略だったので、不満は分かるのだが。
単に敵を撃破して《ハイヴ》を潰すだけならば、もっと早く終わっているに違いない。
だが、なるべく研究施設やシステムを破壊しないで行くやり方なので、このペースは十分に早いのだ。
一度床に穴を空け、下の階層をある程度把握してから本格的な大穴を空ける。
そうやってここまで来たのだ。
機材や構造を無駄に壊さないためには必要な措置だった。
食事を終え紅茶を飲んでいると、やはりルイーサが我慢できずに叫んだ。
「美獣、ここからはわれがやる」
「おい、重要な施設を破壊してもらっちゃ困るんだ」
「われに任せよ。お前が満足するようにやる」
「大丈夫かよ?」
ルイーサが微笑んで立ち上がった。
その美し過ぎる顔を見ては、俺も強くは言えなかった。
やはり、この女にも惚れているのだ。
ルイーサが立ち上がったことで、「グレイプニル」の400人全てが壁の端に整列した。
俺には分からないが、ルイーサの眷族はルイーサから特別な指示を何らかの方法で受け取れるようだった。
それは「グレイプニル」の動きを観ていると分かる。
時々、指揮官のヴェンダーの指示とは違う動きがあり、その度にヴェンダーがルイーサに向けて頭を下げていた。
恐らくはヴェンダーや兵士同士も何らかの意思疎通の手段があるのだろうと感じた。
ノスフェラトゥの特殊性だ。
ルイーサが「グレイプニル」の兵士たちに向かって言った。
「お前たちには失望した。われの連れ合いである美獣がいるというのに、何たる体たらくか」
おい!
「美獣もお前たちの力を見くびっている」
びってねぇよ!
「ここからは一気に行くぞ」
ルイーサの言葉で「グレイプニル」の全員が姿勢を一層正した。
何をするのかとも思ったが、もうこうなってはルイーサに任せるしかない。
この《ハイヴ》はいろいろと調べたかったのだが、ルイーサに任せるしかないかと思い始めていた。
ルイーサから立ち上る闘気が尋常な量ではなかったからだ。
ルイーサがあのスケールメイルの豪奢なドレスのまま空中に跳ね、舞を舞った。
そして床の中心に立ち、両手を伸ばして下に向けた。
ルイーサの身体が輝き、「グレイプニル」の連中が感嘆の唸り声を挙げた。
その瞬間、ルイーサの足元が爆発し、轟音が響き続けた。
数分それは続き、ルイーサの輝きが納まる頃に轟音も消えた。
ルイーサは空中に浮いたままであり、その足下に20メートルの真円の穴が空いていた。
十メートル以上の厚さの床は、切断面が鮮やかに磨き上げられたかのような切り口になっていた。
「グレイプニル」の全員がルイーサのことを褒め称えていた。
ルイーサは両手を拡げ、皆を黙らせた。
「美獣の血のお陰で、これほどの《ローザヘル(薔薇地獄)》を撃ち出せたぞ。皆、観たであろうな」
また歓声が響く。
「美獣、お前にわれの最上の戦いを捧げよう! われらは必ず勝つぞ!」
大歓声。
「お、おう」
よく分かんないんですけどー。
下層に行ったデュールゲリエの一体が戻って来て俺に言った。
「石神様、中心部が全て消滅しています」
「ああ、そうだな」
「恐らくは重要な施設や機材は中心部に多くあったようでして」
「あ?」
「今回の作戦の調査面では、もうあまり成果は出ないかと」
「……」
貫通した円の縁に立ち、ルイーサは上機嫌でニコニコと笑っている。
「おう、まあ出来るだけ頼むわ」
「かしこまりました」
ルイーサが俺に寄って来た。
ニコニコだ。
「美獣、どうした? 何かあったか?」
デュールゲリエが俺に報告に来たので聞いているのだろう。
「ああ、何でもねぇ。一瞬で最下層まで大穴が空いたんで驚いているようだぜ」
「フフフ、当然だ。われの力を振るったのだから」
「流石だな!」
「あまり褒めるな。まだまだ全力でもないのだしな」
「そうなのかよ!」
俺、泣きてぇよ!
「最下層の大妖魔も殺してくれたぞ。呆気ないものだな」
「ここのは随分と強かっただろうに!」
「フフフ、われの前では何ほどのものでもない。一瞬だ」
「そうなのか! すげぇな!」
「ワハハハハハハハ!」
あのー、だからー。
「まあ、われに任せておればよい。今回は美獣は楽しんでくれ」
「おう! ありがとうな!」
「よいよい」
楽しくねぇんだけどー。
《ニルヴァーナ》の情報を掴みたかったんだけどー。
まあ、俺と聖の時もひでぇもんだった。
最初はしょうがねぇか。
しかし、うちにはぶっ壊す一方の連中が多すぎだぜぇ。
俺とルイーサで最下層まで降り、ひしゃげて無様に死んでいる5体の《地獄の悪魔》見た。
ルイーサと大笑いし、俺はルイーサを抱き締めて褒め称えた。
ルイーサが満足そうな顔で俺にキスをした。
もう、これでいいや。
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