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未来への希望 Ⅴ
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時間も遅くなってきたので、六花と吹雪を連れて上に上がった。
ロボもついてくる。
三人でソファに並んで座る。
「トラ、明日は帰っちゃうんですよね?」
「ああ、また来るよ。あいつらがいるから寂しくはないだろ?」
「うん。でもトラに会いたい」
「なんだよ、お前そんな甘えん坊だったか?」
「そうですよ!」
六花が俺に抱き着く。
隣で吹雪がニコニコしている。
俺たちが仲良しなのが嬉しいのだろう。
吹雪の頭を撫でてやる。
「まあ、今日はもう寝ろよ。一緒に寝てやるから」
「うん、でもトラはみんなの所にいて」
「なんだよ、さっきと違うじゃねぇか」
「トラはそういうのがいい」
「なんなんだ」
俺は笑って六花と吹雪と一緒に風呂に入った。
あまり長湯はせずに早目に上がる。
ベッドに吹雪と一緒に横たえ、軽くキスをした。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい、トラ」
「吹雪もぐっすり寝ろよな」
「はい!」
「ロボもな」
「にゃ」
灯を消して、しばらく横にいた。
六花が何かを思い出したようだ。
「あ、そうだ」
「なんだ?」
「虎蘭さん」
「なに?」
「虎曜日ですよね?」
「な!」
なんで知ってんの!
すぐに六花が笑ってタネを明かした。
「麗星さんから連絡が来ました」
「なんで?」
「え、私が曜日係だからですよ?」
「いや、そういうことじゃなくてさ!」
「すぐに分かりましたって。もう子どもも出来たらしいじゃないですか」
「そうなのかよ!」
「知らなかったんですか?」
「知らねぇよ!」
「はぁ」
「何でため息!」
「トラ、しっかりして下さい」
「う、うん……」
多分、虎蘭本人ですら知らねぇ。
そして、俺はこうなっては最大の不安を口にした。
「栞には話してくれてんの?」
「え? いいえ?」
「そ、そうなの」
「だって」
「なんだよ?」
「コワイじゃないですか」
「!」
俺もコワイよー!
「鷹さんには話ときますね」
「あ、ああ……」
「じゃあ、もう行って下さい」
「俺ももう寝ようかなー」
「ダメですよ。みんな待ってるんですから」
「そう?」
「しっかりして下さいね」
「うん」
俺はそっとドアを閉めて下に降りた。
下ではまだ大騒ぎだった。
俺の子どもたちがあちこちのテーブルで話して盛り上げている。
そういうことが出来る人間になってきた。
俺は亜紀ちゃんに呼ばれ、幹部たちのテーブルに行く。
自然に他の連中も椅子を持って来て集まった。
よしこはまた酔って、そろそろ潰れそうだ。
「お前、呑み方が荒すぎだぞ」
「すいまへん」
「まあいいけどよ」
嬉しいからに決まっている。
酒が飲める人間にとって、嬉しい酒ほど美味いものはない。
亜紀ちゃんが「リッカランド」が楽しかったと言っていた。
「何も壊してないだろうな?」
「大丈夫ですよ! 亜紀ちゃん、イイ子ですよ!」
「そうかよ」
みんなが笑う。
タケが言った。
「そういえば、あたしらみんなで《御虎》にも行って来たんです」
「ああ、いい街だろう?」
「はい! それにあの「オロチランド」! あれは最高です!」
「アハハハハハ!」
「「オロチホイール」もいいですけど、何と言ってもあの「スーパードドンコ」ですね!」
「ワハハハハハハハ!」
他の連中もそうだそうだと言う。
「あれよ、石神家でも大人気なんだよ。今度、怒貪虎さんも行くって」
「そうなんですか!」
「先頭車両に跨るって言っててよ。向こうの担当者に許可するように言っといた」
「大変ですね」
「そうなんだよ!」
ヒロミが俺に聞いて来た。
「石神さん、あの《ミトラ祭壇》ってなんなんですか?」
「ああ、あれか」
前であれば、俺にも分からないと応えていたのだが。
でも、ヒロミや他の連中も、とにかく美しく不思議なものだと感動していた。
今は案内人もいて、角度によって見えるものが変わることもちゃんと紹介してくれているそうだ。
「アレはずっと謎のままだったんだがな。お前らも知っての通り、最初は双子が修学旅行で手に入れたものなんだよ」
「はい、フィリピンの魔法大学の儀式だったとか」
「ああ。俺が受け取りにっていうか、どうしようもなくて呼ばれて行ったのな。そうしたら、俺の中に入っちゃった」
「はい?」
そこは俺にも分からん。
まあ、俺と保奈美の子のようなものなのだから、そういうことだったのだろうとしか分からない。
恐らくは、時空間を超越しての出来事だったのだ。
時間軸を行き来する能力がアレにはあるのだ。
俺は百家や静江さんの予言があった話もし、それで《御虎》に先に祭壇を作っていたと話した。
「お前らも報告で知っているだろうが、《御虎》シティは大規模な「業」の攻撃を受けた。何しろ一兆を超える規模の大軍勢だ。これまでで最高の数だよな? でも、《ミトラ祭壇》から天使たちが顕われて、たちまち敵を撃破した。防衛システムも配備してたソルジャーたちの出番もねぇ。フィルシャーも頭を抱えてたよ」
みんなが笑う。
「今はまだ詳しくは話せないが、俺が一ヶ月眠っている間に保奈美と20年も過ごしたんだ。その中で《ミトラ祭壇》の意味が分かった」
「え、ソレ、教えてもらえないんですか?」
「まだな。済まないが機密事項だと思ってくれ。まだ知っている人間は数人しかいない。あそこの司令官のフィルシャーにも話してねぇんだ」
「そうなんですか、じゃあしょうがないですね。でも、あれって本当に綺麗なものですよね。この世のものではないような。私なんかには表現のしようもありませんが」
「そうか、ありがとうな」
タケがスマホで《御虎》シティへ行った時の写真を見せてくれた。
どの写真も、みんなが楽しそうにしている。
亜紀ちゃんがまたみんなで行こうと言った。
是非そうしたいものだ。
御堂も連れて行きたい。
《美虎》については、御堂、聖、蓮花、それにターナー大将にしか話していない。
今は機密だと言ったのだが、別に公表しても問題はないはずだが。
それでも、俺はまだ秘しておきたかった。
保奈美と俺の子なのだと話すのは、まだ先にしたい。
もう一度、あそこへ行ってからだ。
俺が自分の子として会ってからにしたかったのだ。
ああ、美虎に会いたい。
ロボもついてくる。
三人でソファに並んで座る。
「トラ、明日は帰っちゃうんですよね?」
「ああ、また来るよ。あいつらがいるから寂しくはないだろ?」
「うん。でもトラに会いたい」
「なんだよ、お前そんな甘えん坊だったか?」
「そうですよ!」
六花が俺に抱き着く。
隣で吹雪がニコニコしている。
俺たちが仲良しなのが嬉しいのだろう。
吹雪の頭を撫でてやる。
「まあ、今日はもう寝ろよ。一緒に寝てやるから」
「うん、でもトラはみんなの所にいて」
「なんだよ、さっきと違うじゃねぇか」
「トラはそういうのがいい」
「なんなんだ」
俺は笑って六花と吹雪と一緒に風呂に入った。
あまり長湯はせずに早目に上がる。
ベッドに吹雪と一緒に横たえ、軽くキスをした。
「じゃあ、おやすみ」
「おやすみなさい、トラ」
「吹雪もぐっすり寝ろよな」
「はい!」
「ロボもな」
「にゃ」
灯を消して、しばらく横にいた。
六花が何かを思い出したようだ。
「あ、そうだ」
「なんだ?」
「虎蘭さん」
「なに?」
「虎曜日ですよね?」
「な!」
なんで知ってんの!
すぐに六花が笑ってタネを明かした。
「麗星さんから連絡が来ました」
「なんで?」
「え、私が曜日係だからですよ?」
「いや、そういうことじゃなくてさ!」
「すぐに分かりましたって。もう子どもも出来たらしいじゃないですか」
「そうなのかよ!」
「知らなかったんですか?」
「知らねぇよ!」
「はぁ」
「何でため息!」
「トラ、しっかりして下さい」
「う、うん……」
多分、虎蘭本人ですら知らねぇ。
そして、俺はこうなっては最大の不安を口にした。
「栞には話してくれてんの?」
「え? いいえ?」
「そ、そうなの」
「だって」
「なんだよ?」
「コワイじゃないですか」
「!」
俺もコワイよー!
「鷹さんには話ときますね」
「あ、ああ……」
「じゃあ、もう行って下さい」
「俺ももう寝ようかなー」
「ダメですよ。みんな待ってるんですから」
「そう?」
「しっかりして下さいね」
「うん」
俺はそっとドアを閉めて下に降りた。
下ではまだ大騒ぎだった。
俺の子どもたちがあちこちのテーブルで話して盛り上げている。
そういうことが出来る人間になってきた。
俺は亜紀ちゃんに呼ばれ、幹部たちのテーブルに行く。
自然に他の連中も椅子を持って来て集まった。
よしこはまた酔って、そろそろ潰れそうだ。
「お前、呑み方が荒すぎだぞ」
「すいまへん」
「まあいいけどよ」
嬉しいからに決まっている。
酒が飲める人間にとって、嬉しい酒ほど美味いものはない。
亜紀ちゃんが「リッカランド」が楽しかったと言っていた。
「何も壊してないだろうな?」
「大丈夫ですよ! 亜紀ちゃん、イイ子ですよ!」
「そうかよ」
みんなが笑う。
タケが言った。
「そういえば、あたしらみんなで《御虎》にも行って来たんです」
「ああ、いい街だろう?」
「はい! それにあの「オロチランド」! あれは最高です!」
「アハハハハハ!」
「「オロチホイール」もいいですけど、何と言ってもあの「スーパードドンコ」ですね!」
「ワハハハハハハハ!」
他の連中もそうだそうだと言う。
「あれよ、石神家でも大人気なんだよ。今度、怒貪虎さんも行くって」
「そうなんですか!」
「先頭車両に跨るって言っててよ。向こうの担当者に許可するように言っといた」
「大変ですね」
「そうなんだよ!」
ヒロミが俺に聞いて来た。
「石神さん、あの《ミトラ祭壇》ってなんなんですか?」
「ああ、あれか」
前であれば、俺にも分からないと応えていたのだが。
でも、ヒロミや他の連中も、とにかく美しく不思議なものだと感動していた。
今は案内人もいて、角度によって見えるものが変わることもちゃんと紹介してくれているそうだ。
「アレはずっと謎のままだったんだがな。お前らも知っての通り、最初は双子が修学旅行で手に入れたものなんだよ」
「はい、フィリピンの魔法大学の儀式だったとか」
「ああ。俺が受け取りにっていうか、どうしようもなくて呼ばれて行ったのな。そうしたら、俺の中に入っちゃった」
「はい?」
そこは俺にも分からん。
まあ、俺と保奈美の子のようなものなのだから、そういうことだったのだろうとしか分からない。
恐らくは、時空間を超越しての出来事だったのだ。
時間軸を行き来する能力がアレにはあるのだ。
俺は百家や静江さんの予言があった話もし、それで《御虎》に先に祭壇を作っていたと話した。
「お前らも報告で知っているだろうが、《御虎》シティは大規模な「業」の攻撃を受けた。何しろ一兆を超える規模の大軍勢だ。これまでで最高の数だよな? でも、《ミトラ祭壇》から天使たちが顕われて、たちまち敵を撃破した。防衛システムも配備してたソルジャーたちの出番もねぇ。フィルシャーも頭を抱えてたよ」
みんなが笑う。
「今はまだ詳しくは話せないが、俺が一ヶ月眠っている間に保奈美と20年も過ごしたんだ。その中で《ミトラ祭壇》の意味が分かった」
「え、ソレ、教えてもらえないんですか?」
「まだな。済まないが機密事項だと思ってくれ。まだ知っている人間は数人しかいない。あそこの司令官のフィルシャーにも話してねぇんだ」
「そうなんですか、じゃあしょうがないですね。でも、あれって本当に綺麗なものですよね。この世のものではないような。私なんかには表現のしようもありませんが」
「そうか、ありがとうな」
タケがスマホで《御虎》シティへ行った時の写真を見せてくれた。
どの写真も、みんなが楽しそうにしている。
亜紀ちゃんがまたみんなで行こうと言った。
是非そうしたいものだ。
御堂も連れて行きたい。
《美虎》については、御堂、聖、蓮花、それにターナー大将にしか話していない。
今は機密だと言ったのだが、別に公表しても問題はないはずだが。
それでも、俺はまだ秘しておきたかった。
保奈美と俺の子なのだと話すのは、まだ先にしたい。
もう一度、あそこへ行ってからだ。
俺が自分の子として会ってからにしたかったのだ。
ああ、美虎に会いたい。
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