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パムッカレ 緊急防衛戦 XⅣ

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 そして諸見さんは「龍槍」を撃ち出した。
 諸見さんの得意技と聞いている。
 巨大な槍のような光が伸びて、《刃》に向かった。
 《刃》はそれをレジストしようとしたが、かわせずに吹き飛んだ。
 スゴイ!

 亜紀ちゃんの「最後の涙」ですら何の影響も無かったのに、上位技でもない「龍槍」で《刃》をぶっ飛ばした。
 亜紀ちゃんは間髪入れずに倒れた《刃》に「ブリューナク」や「轟閃花」などをぶち込んで行く。
 私も、別な位置から「オロチブレイカー」を撃った。
 《刃》はその中で立ち上がり、私と亜紀ちゃんに何かを撃って来た。
 石神家の剣技だ!
 亜紀ちゃんが最大の高速移動で私を抱えて何とか回避した。
 それでも背中に痛みが走る。
 浅く斬られたようだ。
 亜紀ちゃんも背中を負傷した。
 幾つもの鋭い刃が飛翔して来たのだ。
 やはり石神家の剣技は凄まじい。

 諸見さんがまた「龍槍」を撃った。
 《刃》はまたもレジスト出来ずにまともに受ける。
 諸見さんは多くの技を習得するよりも、幾つかの技を熱心に繰り返して来た。
 あの人柄が浮かび上がるような生真面目な鍛錬だった。
 だから、《刃》にも通じる見事な「龍槍」を撃てるのだ。
 本当に尊敬する。

 でも、身体は飛んでも、《刃》にダメージはほとんどないように見えた。
 私と亜紀ちゃんは、また《刃》に攻撃を続ける。
 《刃》も激しく攻撃を始めた。
 私たちではない。
 前方の避難民に向けてだ。
 自分にダメージが無いのを悟って、本来の襲撃に切り替えたのだ。
 「ファブニール」が大破し、乗り込もうとしていた避難民が多数殺された。
 集まっていたソルジャーは何とか耐えていたが、何人か膝をついている。
 生き残った避難民たちの中で、一人「Ωコンバットスーツ」を着込んでいる人がいた。
 あれが保奈美さんだろう!
 まだ生きている!
 多分、「Ωコンバットスーツ」が最大出力で保奈美さんを護ったに違いない。
 石神さんとの絆が深い人ほど、「Ωコンバットスーツ」は能力を上げて行くと聞いていた。
 それに保奈美さんは竹流君から「花岡」を習ったと聞いている。
 そのこととの相乗効果だろう。

 《刃》が前に向かってくる。
 私と亜紀ちゃんは必死に攻撃を続ける。
 聖さんが来るまで、何とか持ちこたえないと!

 アラスカから、超攻撃型戦闘機「ニーズヘッグ」が4機来た。
 すぐさま、《刃》に向かって攻撃を開始する。
 凄まじい威力で、《刃》も立ち止まった。
 これまで極秘の機体だったのだが、石神さんが出撃を命じたのだろう。
 高速で移動しながら、《刃》に攻撃を加え、離脱を繰り返している。
 航空機ではあり得ない変幻自在な高速機動をしている。
 そして強力な火力で凄まじい攻撃を見舞って行く。
 《刃》も壮絶な攻撃に耐えかね、腕を2本吹き飛ばされた。

 「諸見さん! 今のうちに保奈美さんを!」

 通信で連絡したが、諸見さんは動かない。
 生き残ったソルジャーたちが保奈美さんを護りながら移動を始めた。
 諸見さんはどうしたのだろう?
 まさか負傷したのか。
 心配ではあったが、私と亜紀ちゃんは「ニーズヘッグ」と共に攻撃を続けるしかなかった。
 今は1秒でも《刃》を食い止めなければ。
 聖さんがもうすぐ来るはずだ。
 なんとかそれまで踏ん張らないと。

 《刃》の3本目の腕が飛んだ。
 もはや完全に移動を止めて、「ニーズヘッグ」の攻撃を凌ぐことに専念しているように見えた。
 その時、《刃》の全身が光った。

 「虎相!」

 前に石神家の人たちがやっているのを見たことがある。
 全身が燃えて、技の威力が格段に増す。
 嫌な予感が走った。
 諸見さんが前に出たのを見た。
 やはり《刃》の戦闘力の上昇を感じたのだろう。

 「諸見さん!」

 私には一瞬で分かった。
 諸見さんは最初からそのつもりだったのだ!
 《刃》と刺し違えるつもりで、あそこに立っていたのだ。
 保奈美さんを何としても護るために、自分が命を擲つつもりでいたんだ!
 諸見さんの隣から更に前に誰かが飛び出した。
 殲滅戦装備のデュールゲリエ。
 その機体はまっすぐに《刃》に突っ込んで行き、自爆した。

 「綾さん!」
 「!」

 諸見さんの叫び声が聞こえた。
 なんてこと! なんてこと! なんてこと!
 今、諸見さんの隣から飛び出した殲滅戦装備のデュールゲリエ。
 じゃあ、あれは綾さんだったのか!
 その綾さんが《刃》の前で爆散した。
 「桜花」か!
 その寸毫の間で諸見さんが《刃》の前に立って構えた。

 《虎槍》

 あれは、諸見さんの固有技だ!
 真面目な努力家の諸見さんが到達した、独自の境地。
 石神さんに憧れ、石神さんのために命を使いたいといつも言っていた諸見さん。
 「龍槍」の数倍の太さの巨大な柱のようなものが伸びて行く。
 《刃》にぶつかり、激しく火花を散らした。
 《刃》が沈黙した。
 動かない。
 動かない。
 動かない。

 「!」

 数秒後、諸見さんの全身が千切れ飛んだ。

 「諸見さん!」

 《刃》の攻撃だったはずだが、その《刃》も動けないでいた。
 《刃》は、残った一本の腕で諸見さんを肉片に変えた。
 そして、その位置から、前方の避難民たちに向かって何かを放った。
 そこにいた多くの避難民が吹き飛んだ。

 「「!」」

 亜紀ちゃんが「魔法陣」を描こうとした。
 物凄い形相になっている。
 咄嗟に私が止める。

 「柳さん! もうこれしかない!」
 「ダメ! 石神さんが絶対に使うなって!」
 「でも!」
 「亜紀ちゃん!」

 亜紀ちゃんに吹っ飛ばされた。
 ダメだ、私では亜紀ちゃんは止められない。
 上空から急速接近する何かが来た。
 霊素解析レーダーからの情報が来る。

 「茜さん!」
 「!」

 亜紀ちゃんも気付いた。
 
 「保奈美さん! 今行きます!」
 
 茜さんと葵だ。
 私は亜紀ちゃんの腕を引っ張って二人に近づく。

 「あそこに保奈美さんがいる!」
 「はい!」
 「絶対に護ろう!」
 「もちろん!」

 四人で地上に向かった。
 亜紀ちゃんも多少冷静さを取り戻した。
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