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パムッカレ 緊急防衛戦 Ⅴ

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 夜になり、いつものように虎白さんから酒に誘われた。
 今日は怒貪虎さんもいる。
 飲める人(?)なのは知っている。
 まあ、石神家はみんな酒がべらぼうに強い。

 「虎蘭よ、ちょっとやり過ぎだぜ」
 
 虎白さんがそう言うのは滅多なことではない。
 みんな手足が千切れるほどやっても、誰もそんな風には言わない。
 それほどに、明らかに虎蘭はやり過ぎなのだ。

 「高虎、お前から何か言えよ」
 「そんな、虎白さんが言えばいいじゃないですか」

 俺が言うと、虎白さんが険しい顔で怒鳴る。

 「俺が言っても聞かねぇから言ってんだろう!」
 「俺だって同じですよ!」
 「虎蘭はお前に惚れてんだ!」
 「知りませんよ!」

 なんなんだ。

 「ケロケロ」
 「はい、でも……」
 「ケロケロ」
 「分かりました。高虎もそれでいいな?」
 「はい?」

 頭を引っぱたかれた。
 だって分かんねぇんだもん!

 「怒貪虎さんはよ、お前にそろそろ秘策を出せって言ってんだよ! そうすりゃ、虎蘭も無茶をしなくなるだろうってことだ」
 「!」
 「あんだろ?」
 「ケロケロ」
 「おい!」

 そろそろ俺も行くつもりだった。
 ただ、この人らにあれを教えるのは、ちょっと躊躇していたのだ。
 でも、もうそうも言っていられない。

 「分かりましたよ。じゃあ、明日の朝に連れて行きます」
 「連れてく? どこにだよ?」
 「思い切りぶっ放せる場所ですよ。ここじゃ不味い。それに俺たちの最大の機密ですから」
 「なんだよ、そりゃ」
 「今は話せません。ああ、剣聖だけ連れて行きます」
 「おう、分かった。全員に言っておく」

 「ケロケロ」
 「はい!」
 「おい! ちゃんと話せよ!」
 
 だからなんだよ!

 「お前よ、《オロチランド》で、ふざけた名前のジェットコースターを作っただろう!」
 「あ、あれ?」

 今の「ケロケロ」でどんだけ長い文を喋ったんだよ!

 「あれはほら、世界最高って意味を持たせたくて」
 「なんだと?」
 「だって! 虎白さんたちも乗りに来たじゃないですか!」
 「うるせぇ!」
 「随分楽しんでたって報告聞いてますよ! 「スーパードドンコ」は8回も乗ったって!」
 「バカヤロウ!」

 「ケロケロ」
 「え、いや、そういうわけじゃ」
 「ケロケロ」
 「え、そうなんです? まあ、そういうことなんですけどね」
 「ケロケロ」
 「ええ、凄かったですよ! みんな大喜びでした」
 
 なんて?

 「おい、許してやるってよ。今度怒貪虎さんも行くそうだ」
 「え!」
 「あんだよ! 文句あんのかよ!」
 「い、いえ、そうじゃないんですけど」

 カエルが乗るのかよ!

 「ケロケロ」
 「はい。あれ乗る時は、両手を放してるのが勇気の印なんですよ!」
 「ケロケロ!」
 「え、いや、逆立ちはどうでしょう」
 「ケロケロ!」
 「本気ですか! まあ、分かりました」
 
 なんて?

 「怒貪虎さんが一番前に跨って乗るってよ」
 「え!」
 「いいだろ?」
 「……」

 もう知らん。
 だけど、なんでこの人らは「スーパードドンコ」が好きなの?





 翌朝。
 俺はグランマザーに迎えに来させた。
 直径50メートルの五角形のUFOが鍛錬場に来る。

 『……』

 みんな口を開けて驚いている。
 怒貪虎さんまでもが。

 「じゃあ、みなさん、乗り込んで下さい。コワクないですよー」

 虎白さんが物凄い顔で俺を睨んでいたが、ビビったわけじゃない的な顔になって黙って乗り込んだ。
 他の剣聖や怒貪虎さんも乗る。
 怒貪虎さんの表情は分からん。

 「ロボー!」

 既に中にいたロボが大喜びで俺に抱き着いて来た。
 あそこへ行くんじゃ、こいつが必要だ。
 グランマザーに言って、大阪の皇紀に預けていたのを乗せて来てもらった。

 「おお、ロボじゃんか」
 「はい。万一の場合はロボが何とかしてくれますんで」
 「?」

 ロボが怒貪虎さんや虎白さんたちにも身体を擦りつけて行く。
 特に虎蘭には嬉しそうに挨拶していた。
 虎蘭は最近見せなかった笑顔になっている。
 まあ、良かった。

 「トラ!」
 「よう聖、大分良くなったみてぇだな」
 「ああ、もう大丈夫だ」

 聖も連れて来てもらっている。
 口では大丈夫と言っているが、最近起き上がれるようになったばかりだ。
 まだ動きがぎこちない。
 でも、こいつはやるつもりだ。
 聖が虎白さんたちに挨拶していた。
 他の剣聖たちも懐かしそうに聖と話す。
 
 「おい、高虎」
 「はい、なんですか?」

 虎白さんが緊張した顔をしている。
 ざまぁ。

 「これ、なんなんだよ?」
 「アラスカで皇紀の結婚式の時に見せたでしょう? 大銀河連合のUFOですよ」
 「なんでそんなもんに乗ってんだよ?」
 「宇宙に行くからに決まってるでしょう」

 頭を引っぱたかれた。

 「聞いてねぇぞ!」

 あんたもいつも全然俺に説明しないよね!

 「話せないんですよ! 絶対に「業」には知られたくないんですから!」
 「こんなもんが来たらバレるだろう!」
 「そういうことじゃないんです!」

 単に虎白さんたちを驚かせたかっただけ。

 「このやろう。それでこれからどこ行くんだよ?」
 「《虎星》です。俺が所有する惑星で」
 「なんだと!」
 「あそこなら「業」の目を気にせずになんでも出来ます。聖は前に連れてってますけどね。ああ、うちの子どもらも」
 「お前、そんな……」
 
 UFOはマザーシップの中へ入り、すぐに出発した。
 巨大なマザーシップは、スクリーンで全員が見てまた驚愕していた。
 俺は移動の間、《虎星》について全員に話した。
 聖がまた初めて聞くような顔をしている。
 こいつは……

 「じゃあ、宇宙の闘技大会で優勝したから、その賞品なのかよ?」
 「まあ、そういうことです。初めは断ってたんですけどね。でもでかい技を試すのに丁度良くて」
 「ケロケロ」
 「え! それじゃ、あの「魔法陣」か!」
 「その通りです」

 流石に怒貪虎さんは理解が早い。
 前に教えた「魔法陣」が、まだまだ出力を上げられることを感じ取っていた。

 「「魔法陣」は、虎葉さんは知りませんでした。俺たちの唯一のアドバンテージですよ」
 「でも、聖は使ってダメだったんだろう?」
 「あれは大分出力を抑えたものでした。でかい威力で撃つと、いろいろと不味いんで」
 「ああ、怪物が出るんだったな」
 「そうです。でも、もうそうも言っていられない。それに、異次元の怪物が出るってことは、「界離」も無効ってことじゃないですかね?」
 『!』

 全員が驚いていた。
 虎白さんたちは虎葉さんが編み出した「界離」の攻略を主に模索していた。
 あれを出されれば、手の打ちようがないからだ。
 15分後、俺たちは《虎星》に到着し、降下艇に乗り込んで地上に降りた。

 怒貪虎さんも虎白さんも他の剣士も、全員が唖然としている。
 なんだか、いい気持ちだったぜぇ!
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