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パムッカレ 緊急防衛戦 Ⅱ
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ハンヴィで街に入ると、すぐに綾さんが言った。
午後2時を回っていた。
「諸見さん、お食事をして下さい」
「ああ、じゃあ、家に戻りますか」
まだ月岡さんが借りて下さった一軒家には行っていない。
自分はそこで綾さんに食事を作ってもらおうと思った。
「いいえ、どうかここで。もう大分いつものお食事のお時間を過ぎてますから」
「はい」
そう言われて気付いたが、そう言えば空腹を感じていた。
あまりにも楽しくて、そんなことも忘れていた。
綾さんが近くのテラスのあるレストランに自分を導いた。
きっと綾さんが情報を集めて決めてくれたんだろう。
綾さんのAIは瞬時に様々な情報を走査出来る。
「あそこにしましょう」
「はい」
「美味しそうですよ。あ、あの人、日本人じゃないでしょうか?」
「え?」
少し前に、綺麗なお店が見えた。
洋食のレストランのようで、恐らく観光客相手の店だろう。
見ると、テラスで二人の女性が食事をしていた。
そのうちの一人は黒髪で、明らかにアジア系だった。
もう一人は金髪の欧米人に見えるが、楽しそうに二人で話している。
綾さんが自分の手を引いて、店に入った。
テラスで食事をしたいと言うと、店員が案内してくれた。
先ほどのテーブルのお二人に、綾さんが話しかける。
どうやらその二人も遅い昼食を食べようとしているようだった。
「あの、失礼ですが、日本人の方ですか?」
「え、はい! あなたたちも?」
「はい! よろしければご一緒しても?」
日本人の女性がもう一人に聞いた。
「ええと、ベス、構わない?」
「いいよ、ホーミー。最近よく日本人と会うね」
「うん。じゃあ、どうぞご一緒に」
「ありがとうございます」
綾さんが瞬く間に仲良くなり、一緒に座った。
綾さんは話し下手の自分のために、時々こうやって見知らぬ人との仲を持ってくれることがある。
自分に多くの人と触れ合わせ、友人知人関係を増やそうとしてくれるのだ。
そのお陰でアラスカや他の場所でも、随分と仲良くして下さる方が増えた。
特に「虎」の軍の中では、自分などが前に石神さんと直接お会いしたことを知り、興味を持って下さる方が多い。
自分たちは英語で会話した。
まだ不得意なこともあるが、自分も大分英語に慣れて来たからだ。
綾さんから英語の特訓も受けた。
「あの、自分は諸見と言います。こちらは綾さん」
「私は西野です。こちらは同僚のジャクソン。どうぞよろしく」
綾さんが会話を盛り立ててくれ、一緒に食事をした。
西野さんたちは海鮮パスタで、自分は綾さんがステーキを頼んだ。
食事をしながら楽しく話し、自分は不意に気付いた。
「あの、西野さんってもしかして、前にアゼルバイジャンにいらっしゃいませんでした?」
「えぇ! そうですけど、どうしてそれを?」
「やっぱり!」
竹流君から話を聞いていた。
アゼルバイジャンの街で長いこと外国で暮らしている美しい日本人の女性と出会い、仲良くなったのだと。
竹流君はよくうちにも遊びに来てくれ、一緒に綾さんの料理を食べていた。
その時に聞いていたのだ。
確か、西野さんというお名前だった。
竹流君に聞いた通り、年の頃は40歳前後か。
「西野さん、竹流君を知ってますよね?」
「はい! えぇ、じゃああなたたちも「虎」の軍なんですか!」
自分は思わず綾さんを見た。
自分たちの身分を明かしてもいいものかどうか。
「大丈夫ですよ、諸見さん。この方はネームドの竹流様が認められた「友人」です」
「なるほど、そう言えば竹流君は幹部クラスだったですね」
「竹流君って、そんなに偉い人だったんですか!」
「ええ、そう言ってませんでしたか?」
西野さんは驚いていた。
確かに、竹流君はまだ十代の少年だ。
今や世界最大の軍事組織「虎」の軍の幹部と言われてはびっくりもするだろう。
自分が西野さんに説明した。
「最高司令官から認められた特別な人間なんですよ。ああ、竹流君は神様って呼んでいますけどね」
「はい、確かにそうでした! 本当に尊敬していて!」
しばらく竹流君の話になった。
ここで新たに編入されたというジャクソンさんにも、西野さんが竹流君のことを話していく。
少しはアゼルバイジャンでの竹流君の話はされていたようだ。
「西野さんがお元気そうで良かった。竹流君に話してもいいですか?」
「構いません。ああ、また竹流君に会いたくなってきました」
「竹流君も同じでしょう。いつか縁があれば」
「本当に! でもこうやってまた竹流君を知っている人に会えたんですもの」
「そうですね。本当に御縁ですね」
言葉の上手くない自分が、こうやって初めてお会いした人と話が出来る。
綾さんのお陰だ。
英語がそれほど上手くはない自分は、時々西野さんと日本語で会話した。
綾さんが気遣って、ジャクソンさんに通訳し、ジャクソンさんも会話に加わった。
西野さんたちは、あれからパムッカレの近郊まで移動したそうだ。
「竹流君にはついに話せなかったんですが、実は私たちは「国境なき医師団」なんです」
「ああ、その組織は自分も知ってます。戦場で医療活動をしているという」
「はい。でも私たちの団は少々特殊で。団長の独断で活動場所を選んでまして」
「そうなんですか」
「随分とあちこちに移動するんです」
綾さんが気付いた。
「あの、この辺りに紛争はありませんよね?」
「はい。でも、団長が近くこの辺りで戦争が起きるという情報を得たそうです。ですから準備も兼ねて、今から移動して来たんですよ」
「そうなんですね……」
「私にも分かりません。今はあまりやることもないので、ちょっとバカンス気分でよく街にも出てるんです」
「そうですか」
竹流君の話で盛り上がり、随分と話し込んだ。
「では、そろそろ戻らないといけませんので」
「そうですか、今日は楽しかったです」
「こちらこそ! 竹流君に宜しく御伝え下さい。頂いたスーツなどは大切にしていますと」
「分かりました。ああ、もしも本当にここで戦争が起きて危なくなったら、どうかすぐにパムッカレの基地へ避難して下さい。竹流君の「友人」であれば、いつでも中へ入れますから」
「そうですか! 何から何まで! その時はそうさせてもらいます」
西野さんは、竹流君が言っていた通り、明るく爽やかな方だった。
竹流君から西野さんが長い間恋人を探していると聞いたが、今日はその話は出来なかった。
自分などが知っていていい話でもないだろう。
素敵な方と知り合えた。
午後2時を回っていた。
「諸見さん、お食事をして下さい」
「ああ、じゃあ、家に戻りますか」
まだ月岡さんが借りて下さった一軒家には行っていない。
自分はそこで綾さんに食事を作ってもらおうと思った。
「いいえ、どうかここで。もう大分いつものお食事のお時間を過ぎてますから」
「はい」
そう言われて気付いたが、そう言えば空腹を感じていた。
あまりにも楽しくて、そんなことも忘れていた。
綾さんが近くのテラスのあるレストランに自分を導いた。
きっと綾さんが情報を集めて決めてくれたんだろう。
綾さんのAIは瞬時に様々な情報を走査出来る。
「あそこにしましょう」
「はい」
「美味しそうですよ。あ、あの人、日本人じゃないでしょうか?」
「え?」
少し前に、綺麗なお店が見えた。
洋食のレストランのようで、恐らく観光客相手の店だろう。
見ると、テラスで二人の女性が食事をしていた。
そのうちの一人は黒髪で、明らかにアジア系だった。
もう一人は金髪の欧米人に見えるが、楽しそうに二人で話している。
綾さんが自分の手を引いて、店に入った。
テラスで食事をしたいと言うと、店員が案内してくれた。
先ほどのテーブルのお二人に、綾さんが話しかける。
どうやらその二人も遅い昼食を食べようとしているようだった。
「あの、失礼ですが、日本人の方ですか?」
「え、はい! あなたたちも?」
「はい! よろしければご一緒しても?」
日本人の女性がもう一人に聞いた。
「ええと、ベス、構わない?」
「いいよ、ホーミー。最近よく日本人と会うね」
「うん。じゃあ、どうぞご一緒に」
「ありがとうございます」
綾さんが瞬く間に仲良くなり、一緒に座った。
綾さんは話し下手の自分のために、時々こうやって見知らぬ人との仲を持ってくれることがある。
自分に多くの人と触れ合わせ、友人知人関係を増やそうとしてくれるのだ。
そのお陰でアラスカや他の場所でも、随分と仲良くして下さる方が増えた。
特に「虎」の軍の中では、自分などが前に石神さんと直接お会いしたことを知り、興味を持って下さる方が多い。
自分たちは英語で会話した。
まだ不得意なこともあるが、自分も大分英語に慣れて来たからだ。
綾さんから英語の特訓も受けた。
「あの、自分は諸見と言います。こちらは綾さん」
「私は西野です。こちらは同僚のジャクソン。どうぞよろしく」
綾さんが会話を盛り立ててくれ、一緒に食事をした。
西野さんたちは海鮮パスタで、自分は綾さんがステーキを頼んだ。
食事をしながら楽しく話し、自分は不意に気付いた。
「あの、西野さんってもしかして、前にアゼルバイジャンにいらっしゃいませんでした?」
「えぇ! そうですけど、どうしてそれを?」
「やっぱり!」
竹流君から話を聞いていた。
アゼルバイジャンの街で長いこと外国で暮らしている美しい日本人の女性と出会い、仲良くなったのだと。
竹流君はよくうちにも遊びに来てくれ、一緒に綾さんの料理を食べていた。
その時に聞いていたのだ。
確か、西野さんというお名前だった。
竹流君に聞いた通り、年の頃は40歳前後か。
「西野さん、竹流君を知ってますよね?」
「はい! えぇ、じゃああなたたちも「虎」の軍なんですか!」
自分は思わず綾さんを見た。
自分たちの身分を明かしてもいいものかどうか。
「大丈夫ですよ、諸見さん。この方はネームドの竹流様が認められた「友人」です」
「なるほど、そう言えば竹流君は幹部クラスだったですね」
「竹流君って、そんなに偉い人だったんですか!」
「ええ、そう言ってませんでしたか?」
西野さんは驚いていた。
確かに、竹流君はまだ十代の少年だ。
今や世界最大の軍事組織「虎」の軍の幹部と言われてはびっくりもするだろう。
自分が西野さんに説明した。
「最高司令官から認められた特別な人間なんですよ。ああ、竹流君は神様って呼んでいますけどね」
「はい、確かにそうでした! 本当に尊敬していて!」
しばらく竹流君の話になった。
ここで新たに編入されたというジャクソンさんにも、西野さんが竹流君のことを話していく。
少しはアゼルバイジャンでの竹流君の話はされていたようだ。
「西野さんがお元気そうで良かった。竹流君に話してもいいですか?」
「構いません。ああ、また竹流君に会いたくなってきました」
「竹流君も同じでしょう。いつか縁があれば」
「本当に! でもこうやってまた竹流君を知っている人に会えたんですもの」
「そうですね。本当に御縁ですね」
言葉の上手くない自分が、こうやって初めてお会いした人と話が出来る。
綾さんのお陰だ。
英語がそれほど上手くはない自分は、時々西野さんと日本語で会話した。
綾さんが気遣って、ジャクソンさんに通訳し、ジャクソンさんも会話に加わった。
西野さんたちは、あれからパムッカレの近郊まで移動したそうだ。
「竹流君にはついに話せなかったんですが、実は私たちは「国境なき医師団」なんです」
「ああ、その組織は自分も知ってます。戦場で医療活動をしているという」
「はい。でも私たちの団は少々特殊で。団長の独断で活動場所を選んでまして」
「そうなんですか」
「随分とあちこちに移動するんです」
綾さんが気付いた。
「あの、この辺りに紛争はありませんよね?」
「はい。でも、団長が近くこの辺りで戦争が起きるという情報を得たそうです。ですから準備も兼ねて、今から移動して来たんですよ」
「そうなんですね……」
「私にも分かりません。今はあまりやることもないので、ちょっとバカンス気分でよく街にも出てるんです」
「そうですか」
竹流君の話で盛り上がり、随分と話し込んだ。
「では、そろそろ戻らないといけませんので」
「そうですか、今日は楽しかったです」
「こちらこそ! 竹流君に宜しく御伝え下さい。頂いたスーツなどは大切にしていますと」
「分かりました。ああ、もしも本当にここで戦争が起きて危なくなったら、どうかすぐにパムッカレの基地へ避難して下さい。竹流君の「友人」であれば、いつでも中へ入れますから」
「そうですか! 何から何まで! その時はそうさせてもらいます」
西野さんは、竹流君が言っていた通り、明るく爽やかな方だった。
竹流君から西野さんが長い間恋人を探していると聞いたが、今日はその話は出来なかった。
自分などが知っていていい話でもないだろう。
素敵な方と知り合えた。
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