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パムッカレ 緊急防衛戦
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石神さんから、またヘンな指令が来た。
「諸見、元気か?」
「へぇ、元気でやってますよ?」
石神さんはいつでも諸見のことを聞いてくる。
あとは竹流のことも多いのだが、竹流とは直接も話しているようだ。
今は俺と一緒に諸見もアゼルバイジャンの基地で建設に携わっている。
一応、ここでは俺が司令官として任じている。
だからよく石神さんとは話すことが多い。
「こないだよ、《御虎》シティでとんでもねぇことがあったじゃん」
「はい、聴いてます。緘口令が敷かれてますが、天使の軍勢が現われたと」
「おう、俺もビックリしちゃった」
「アハハハハハハハハ!」
まったく、石神さんの周りはとんでもねぇ。
「それでな、あそこの防備を任せてるジェイな」
「はい、ジェイさん」
ジェイさんとは親しくしている。
アラスカで会うことも何度もあり、よく一緒に飲みに行ってた。
石神さんを若い頃から知ってて、ずっと尊敬している方だ。
あちらは海兵隊のエリートだったが、ヤクザだった俺のことも見下したりはしない。
俺が石神さんのお宅の増築をしていたと聞いて、本気で羨ましがった。
「ジェイにさ、お前、もういらねぇからって言ったの」
「それは石神さん!」
「ワハハハハハハ! もちろん冗談だ。でもパムッカレの基地がもうすぐ完成する。だからあっちのソルジャーの配置や訓練をしばらくやらせようと思ってな。まあ、マジで《御虎》は安全だし」
「はぁ、まあジェイさんも大変ですね」
「それでな」
「はい」
「諸見は全然遊び行ってねぇだろ?」
「まあ、綾を連れて時々出掛けてますが」
「アゼルバイジャンじゃ見るとこねぇだろう!」
「そんなことありませんよ。結構綺麗な場所も、街も楽しいですよ?」
「バカ! パムッカレは世界的な観光地だ!」
「はい!」
いきなり怒られた。
なんで?
「諸見に休暇をやってくれ。パムッカレ基地の視察とかでもいい」
「はぁ」
「基地周辺の街を見て回れって言っとけ。基地なんか入らなくていいからな」
「はぁ」
「あ、もちろん風光明媚な場所は全部見させろよ! お前、ちゃんと調べて教えとけ!」
「はい!」
石神さんの諸見好きも相当だ。
まあ、俺もあいつらには楽しんで来て欲しいと思った。
「竹流もいますが、一緒に行かせますか?」
「あー、どうしようかな。まあ、あいつはまた今度な」
「そうですか」
「若い頃から遊び回っちゃな。それに今回は諸見と綾の二人きりにしてやりてぇ」
「なるほどです。分かりました、お任せ下さい」
「おう、頼むな!」
俺は諸見を呼び出して、早速パムッカレの視察を命じた。
「綾を連れて、俺の指示する場所を見て回れ」
「でも、自分じゃ何も出来ませんが」
「見て回ればいい」
「はぁ。写真とか?」
「ああ、そうだな。でも、別にいらねぇなぁ。いや、綾との記念写真は沢山撮っとけ」
「はい?」
諸見が困っていた。
「あの、視察って何ですか?」
俺も笑うしかねぇ。
諸見も戸惑っているので、もう正直に話した。
「石神の旦那がよ、お前と綾に観光旅行をさせてぇんだよ」
「あの?」
「お前が綾を連れ出してねぇんじゃねぇかって、こないだ心配してた」
「そんな。自分は十分に」
「いいじゃねぇか、石神さんが喜ぶことだ。お前ら、目一杯に楽しんで来い」
「はぁ、そうですか」
「ああ、向こうには月岡もいる。司令官として就任する予定だが、最初はジェイさんが仕切るみてぇだ」
「月岡さんが! 分かりました。視察に行って来ます」
「おい、あくまでお前たちの観光旅行だからな!」
「いえ、そんな」
「バカヤロウ! お前らが観光旅行をしなきゃ、俺が石神さんに怒鳴られるだろう!」
「はい! アハハハハハハ!」
あの諸見が笑いながら部屋を出て行った。
まったく明るい奴になって来た。
一週間後、諸見は綾を連れてパムッカレに向かった。
一応視察なので、「タイガーファング」に乗って行く。
ジェイさんも月岡も万事心得ている。
きっと楽しい旅行になるだろう。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
困ったことに、石神さんのお陰で綾さんと思わぬ旅行に出かけることになった。
石神さんは今でも自分なんかのことを気に掛けて下さり、時々何かを下さったりさせて下さる。
有難過ぎて、いつも困ってしまう。
何か少しでもお返ししたいのだが、自分なんかが思いつくことはどれも安っぽく、結局何も出来ない。
でも、綾さんが喜んでくれ、まあ、だから俺も嬉しかった。
「タイガーファング」に乗せられ、15分後にはトルコのパムッカレに到着していた。
最初は基地内の発着場に降りたが、月岡さんが自ら出迎えてくれ、歓迎された。
月岡さんに、「視察」のスケジュールを渡され。
「東雲と一緒に作ったんだ。まあ、この辺の綺麗な場所と美味い店だ。ああ、一軒家を借りてるんで、お前たちはそこで食事をしてもいいからな。ああ、土産もちゃんと買えよな。写真も沢山撮れ」
「はい」
「石神さんが楽しみにしてんだ。お前ら、絶対に楽しんで帰れよな!」
「は、はい!」
なんだか命令だ。
俺は石神さんに感謝しつつ、綾さんを楽しませようと思った。
月岡さんがハンヴィを貸してくれ、自由に使えと言われた。
それと、念のために武装は必ず持つように言われた。
「この基地は狙われている可能性があるからな。油断はするな。何かあれば、すぐにこの基地へ飛んで来い」
「はい、必ず」
自分と綾さんは基地を出て、指令書(観光案内)にあった場所を回り始めた。
場所にはある程度の時間が書いてあったが、別にずれても構わないらしい。
道は綾さんが全て把握しているので、迷うことも無い。
それに、それぞれの場所には移動の時間は大分余裕があった。
要するに、本当に自分たちで楽しめということなのだろう。
お金も、東雲さんから「視察手当」という名目で、とんでもない金額が渡されている。
帰ったら、もちろんお返ししようと思っている。
綾さんと、ヒエラポリスに向かった。
広大で美しい白い大地に、圧倒された。
ここに来ただけでも、パムッカレに行くように言って頂いた価値があると思った。
石神さんたちに感謝した。
「綺麗ですね!」
「ええ」
綾さんも喜んでくれた。
恥ずかしかったが、綾さんに座ってもらい、スケッチブックに描かせてもらった。
綾さんが楽しそうに笑っていた。
描き終わったスケッチを、綾さんが見たがった。
一層恥ずかしかったが開いて見せた。
「素敵です!」
「そんな、いつまでも下手ですいません」
「とんでもない! これ、本当に素敵ですよ!」
「綾さんが綺麗だからです」
「そんなこと! 諸見さん、ありがとうございます!」
嬉しくなった。
写真も何枚か撮り、街に戻った。
綾さんの笑顔が眩しかった。
自分が普段、綾さんに何も出来ていなかったのだと思い至った。
石神さんの言う通りだったのだ。
綾さんが自分の腕を組んで歩きたがった。
綾さんが嬉しそうだ。
その綾さんが自分の顔を見て、また笑顔になった。
自分も笑っていたのだ。
「諸見、元気か?」
「へぇ、元気でやってますよ?」
石神さんはいつでも諸見のことを聞いてくる。
あとは竹流のことも多いのだが、竹流とは直接も話しているようだ。
今は俺と一緒に諸見もアゼルバイジャンの基地で建設に携わっている。
一応、ここでは俺が司令官として任じている。
だからよく石神さんとは話すことが多い。
「こないだよ、《御虎》シティでとんでもねぇことがあったじゃん」
「はい、聴いてます。緘口令が敷かれてますが、天使の軍勢が現われたと」
「おう、俺もビックリしちゃった」
「アハハハハハハハハ!」
まったく、石神さんの周りはとんでもねぇ。
「それでな、あそこの防備を任せてるジェイな」
「はい、ジェイさん」
ジェイさんとは親しくしている。
アラスカで会うことも何度もあり、よく一緒に飲みに行ってた。
石神さんを若い頃から知ってて、ずっと尊敬している方だ。
あちらは海兵隊のエリートだったが、ヤクザだった俺のことも見下したりはしない。
俺が石神さんのお宅の増築をしていたと聞いて、本気で羨ましがった。
「ジェイにさ、お前、もういらねぇからって言ったの」
「それは石神さん!」
「ワハハハハハハ! もちろん冗談だ。でもパムッカレの基地がもうすぐ完成する。だからあっちのソルジャーの配置や訓練をしばらくやらせようと思ってな。まあ、マジで《御虎》は安全だし」
「はぁ、まあジェイさんも大変ですね」
「それでな」
「はい」
「諸見は全然遊び行ってねぇだろ?」
「まあ、綾を連れて時々出掛けてますが」
「アゼルバイジャンじゃ見るとこねぇだろう!」
「そんなことありませんよ。結構綺麗な場所も、街も楽しいですよ?」
「バカ! パムッカレは世界的な観光地だ!」
「はい!」
いきなり怒られた。
なんで?
「諸見に休暇をやってくれ。パムッカレ基地の視察とかでもいい」
「はぁ」
「基地周辺の街を見て回れって言っとけ。基地なんか入らなくていいからな」
「はぁ」
「あ、もちろん風光明媚な場所は全部見させろよ! お前、ちゃんと調べて教えとけ!」
「はい!」
石神さんの諸見好きも相当だ。
まあ、俺もあいつらには楽しんで来て欲しいと思った。
「竹流もいますが、一緒に行かせますか?」
「あー、どうしようかな。まあ、あいつはまた今度な」
「そうですか」
「若い頃から遊び回っちゃな。それに今回は諸見と綾の二人きりにしてやりてぇ」
「なるほどです。分かりました、お任せ下さい」
「おう、頼むな!」
俺は諸見を呼び出して、早速パムッカレの視察を命じた。
「綾を連れて、俺の指示する場所を見て回れ」
「でも、自分じゃ何も出来ませんが」
「見て回ればいい」
「はぁ。写真とか?」
「ああ、そうだな。でも、別にいらねぇなぁ。いや、綾との記念写真は沢山撮っとけ」
「はい?」
諸見が困っていた。
「あの、視察って何ですか?」
俺も笑うしかねぇ。
諸見も戸惑っているので、もう正直に話した。
「石神の旦那がよ、お前と綾に観光旅行をさせてぇんだよ」
「あの?」
「お前が綾を連れ出してねぇんじゃねぇかって、こないだ心配してた」
「そんな。自分は十分に」
「いいじゃねぇか、石神さんが喜ぶことだ。お前ら、目一杯に楽しんで来い」
「はぁ、そうですか」
「ああ、向こうには月岡もいる。司令官として就任する予定だが、最初はジェイさんが仕切るみてぇだ」
「月岡さんが! 分かりました。視察に行って来ます」
「おい、あくまでお前たちの観光旅行だからな!」
「いえ、そんな」
「バカヤロウ! お前らが観光旅行をしなきゃ、俺が石神さんに怒鳴られるだろう!」
「はい! アハハハハハハ!」
あの諸見が笑いながら部屋を出て行った。
まったく明るい奴になって来た。
一週間後、諸見は綾を連れてパムッカレに向かった。
一応視察なので、「タイガーファング」に乗って行く。
ジェイさんも月岡も万事心得ている。
きっと楽しい旅行になるだろう。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
困ったことに、石神さんのお陰で綾さんと思わぬ旅行に出かけることになった。
石神さんは今でも自分なんかのことを気に掛けて下さり、時々何かを下さったりさせて下さる。
有難過ぎて、いつも困ってしまう。
何か少しでもお返ししたいのだが、自分なんかが思いつくことはどれも安っぽく、結局何も出来ない。
でも、綾さんが喜んでくれ、まあ、だから俺も嬉しかった。
「タイガーファング」に乗せられ、15分後にはトルコのパムッカレに到着していた。
最初は基地内の発着場に降りたが、月岡さんが自ら出迎えてくれ、歓迎された。
月岡さんに、「視察」のスケジュールを渡され。
「東雲と一緒に作ったんだ。まあ、この辺の綺麗な場所と美味い店だ。ああ、一軒家を借りてるんで、お前たちはそこで食事をしてもいいからな。ああ、土産もちゃんと買えよな。写真も沢山撮れ」
「はい」
「石神さんが楽しみにしてんだ。お前ら、絶対に楽しんで帰れよな!」
「は、はい!」
なんだか命令だ。
俺は石神さんに感謝しつつ、綾さんを楽しませようと思った。
月岡さんがハンヴィを貸してくれ、自由に使えと言われた。
それと、念のために武装は必ず持つように言われた。
「この基地は狙われている可能性があるからな。油断はするな。何かあれば、すぐにこの基地へ飛んで来い」
「はい、必ず」
自分と綾さんは基地を出て、指令書(観光案内)にあった場所を回り始めた。
場所にはある程度の時間が書いてあったが、別にずれても構わないらしい。
道は綾さんが全て把握しているので、迷うことも無い。
それに、それぞれの場所には移動の時間は大分余裕があった。
要するに、本当に自分たちで楽しめということなのだろう。
お金も、東雲さんから「視察手当」という名目で、とんでもない金額が渡されている。
帰ったら、もちろんお返ししようと思っている。
綾さんと、ヒエラポリスに向かった。
広大で美しい白い大地に、圧倒された。
ここに来ただけでも、パムッカレに行くように言って頂いた価値があると思った。
石神さんたちに感謝した。
「綺麗ですね!」
「ええ」
綾さんも喜んでくれた。
恥ずかしかったが、綾さんに座ってもらい、スケッチブックに描かせてもらった。
綾さんが楽しそうに笑っていた。
描き終わったスケッチを、綾さんが見たがった。
一層恥ずかしかったが開いて見せた。
「素敵です!」
「そんな、いつまでも下手ですいません」
「とんでもない! これ、本当に素敵ですよ!」
「綾さんが綺麗だからです」
「そんなこと! 諸見さん、ありがとうございます!」
嬉しくなった。
写真も何枚か撮り、街に戻った。
綾さんの笑顔が眩しかった。
自分が普段、綾さんに何も出来ていなかったのだと思い至った。
石神さんの言う通りだったのだ。
綾さんが自分の腕を組んで歩きたがった。
綾さんが嬉しそうだ。
その綾さんが自分の顔を見て、また笑顔になった。
自分も笑っていたのだ。
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