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麗星の出産(三人目!)
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亜紀ちゃんと柳が出掛け、皇紀もいない。
双子と過ごすのも楽しいのだが、ちょっと寂しかったので早乙女たちを呼んで俺が大好きな「人狼ゲーム」をやった。
またまた俺が負けた。
「……」
「タカさん、このゲームはもうよそうよ」
「……」
「タカさん、幾ら何でも弱すぎだよ」
「……」
早乙女と雪野さんが俺を困った目で見ている。
「早乙女は俺の親友だったはずだ」
「石神! これはゲームだろう!」
「雪野さんは優しくて真直ぐな人だと思ってた」
「いえ、あの、石神さん?」
「タカさん、いい加減にしてよ!」
「早乙女さんたち、困ってるじゃん!」
「にゃー」
どうしてこいつらは平然と俺を騙すのか。
「あー、麗星に会いたいなー」
「「もう!」」
「あいつは絶対に俺を裏切らない!」
「「タカさん!」」
「石神……」
「もう、ほんとに弱いくせにこのゲームが好きなんだから」
「毎回負けていじけるからめんどくさい!」
「う、うるせぇ!」
悔しい……
4月下旬の土曜日。
京都の道間家へ出掛けた。
麗星に3人目の子が生まれる予定だったからだ。
ただ、予定日は翌週であり、俺が行っている時には生まれないだろうと思っていた。
亜紀ちゃんと柳は中南米の戦場を回っており、双子も磯良のマンションへ行ったりしている。
ロボの世話をする人間がいないので、俺が京都に一緒に連れ出した。
早朝に起きて出掛けた。
ロボがお出掛けと知り、大喜びだ。
今日はシボレー・コルベットで出掛ける。
長距離をぶっ飛ばすのに、大使館ナンバーのコルベットは都合がいい。
俺も上機嫌で、歌を歌いながら走り、ロボも会わせて大声で鳴いている。
東名に入ってからサービスエリアに入り、朝食にした。
外にテラスがあり、そこでロボと一緒に食べた。
俺は作って来た稲荷寿司で、ロボは早乙女の上司の西条さんから送って来られたニジマスを焼いたもの。
普段は食べないものだが、ロボは大興奮でムシャムシャと食べた。
気に入ったようならば時々出したいが、ニジマスはそうそう手に入らない。
俺はゆっくりとコーヒーを飲み、ロボと車に戻った。
ロボがニジマスが嬉しかったか、俺にじゃれつく。
「おい、魚クセェ!」
俺の顔をペロペロ舐める。
ウェットティッシュで顔を拭っても、臭いは取れなかった。
「……」
ロボはひとしきり満足したか寝た。
もう俺も京都は慣れたもので、以前のように苦しむこともない。
念のために一江の顔面は出しているが。
早朝の4時頃出発し、大使館ナンバーのコルベットで行ったので、朝の8時半には道間家に着いた。
麗星に少しでも長く寄り添ってやりたかったからだ。
道間家の手前で連絡したので、五平所が天狼と一緒に玄関で待っていてくれた。
俺が度々来るようになって、門は自動で開閉出来るように改造された。
広い敷地で玄関から門までの距離が結構あるためだ。
以前は誰かが門の前で待っていて、大変だった。
「石神様、お待ちしていました」
「父上!」
俺は笑って天狼に手を振り、アクセルを吹かす。
天狼はスーパーチャージャーの回転を喜ぶ。
麗星が奈々を連れてゆっくりと玄関に出て来た。
「あなたさまー!」
「父上!」
俺は車から降りて、麗星にキスをし、奈々を抱き上げる。
「お前はいつも最高にカワイイな!」
「はい!」
奈々が俺の頬に自分の頬を摺り寄せて来る。
本当にカワイイ。
コルベットから俺の荷物を天狼が出してくれた。
頭を撫でてやると喜ぶ。
普段は顔を合わせることもないが、俺たちは確かに家族だ。
ロボも出て来て天狼や奈々に身体を擦り付ける。
麗星には後ろ足で立ち、そっとお腹をポンポンした。
麗星が嬉しがった。
「ありがとうございます、ロボさん!」
「にゃ!」
五平所が天狼から俺の荷物を預かって言った。
「石神様、御朝食の準備をしております」
「そうか、手間を掛けたな」
「とんでもございません」
五平所が中へ案内してくれる。
麗星たちと一緒に食堂へ行き、俺とロボだけ朝食を食べた。
やはり、ここは食事が違う。
俺の好きな米ナスの田楽と豆腐、鮎の塩焼きがメインで、味噌汁はタケノコだった。
ロボにも鮎が出て、好物のマグロも切ってある。
米も抜群に美味く、漬物などもどれも絶品だ。
俺もロボも少し前に食べたが、どんどん腹に入った。
麗星が給仕をしてくれ、それも嬉しい。
天狼と奈々は俺の向かいに座ってニコニコしている。
俺の食事中に甘えてくることは無く、しっかりと教育されているのが分かる。
「お前ら、いつもこんなに美味いものを食べているのか!」
「オホホホホ、あなた様も、どうかここでお暮し下さい」
「本当に迷うよなぁ!」
みんなが笑った。
食後にコーヒーをもらい、しばらく団らんする。
「あなた様、少しお休み下さい」
「いや、眠くはないよ。まあ、午後に少し横になるかな」
「はい」
庭に出て、天狼の技を少し見せてもらった。
道間家の跡取りとして、天狼はもう修行に入っている。
五平所が言うには、やはり相当な才能のようだ。
奈々はまだそれほどのことはしていない。
幼い身体は無理をしてはならない。
霊的な鍛錬になるので、身体がある程度出来上がってからになる。
肉体が整わないと、霊的な修行は悪影響を与えるそうだ。
麗星が俺の隣に座り、俺は奈々を膝にのせて天狼の動きを眺めていた。
道間家はあやかしを使役するが、そればかりではない。
妖魔に対しての攻撃技、防御技もある。
それは道間家の秘術なのだが、俺には一切隠すことも無かった。
俺自身も修行出来るそうだが、特に今は必要性が無い。
波動を使う術なのは何となく理解していた。
この世に存在する全てのものには固有の波動がある。
物理学者は波と粒と表現することもあるし、全てが光であると表現する人間もいる。
道間家は、波として捉え、それを操って技と成しているのだ。
天狼の演舞の後、道間家に仕える蓑原たちの演舞も見せてもらった。
蓑原を中心として、才能のある者たちを集めている。
大分数も増えて、今では総勢150名にもなるそうだ。
「以前の道間家に劣らない数になりました」
「そうか」
俺が小島将軍に頼んで、道間家に仕えられる人材を手配してもらった。
今では石神家本家との交流も盛んで、人間が行き来もしている。
「あなたさまのお陰で、以前よりも戦力は増したようです」
「良かったな」
道間家の血筋はまだ少ないが、本家の人間は4人になるのだ。
いずれまた盛り返しても行くのかもしれない。
俺も鍛錬に参加し、蓑原たちと遣り合った。
天狼も交えて、楽しく時を過ごした。
昼食は鰻だった。
俺が好物なので、毎回出してくれる。
俺の好みが関東風だと分かると、いつもわざわざそのように仕上げてくれた。
ロボも好物なので、白焼きを唸りながら食べる。
麗星も好きなので、ニコニコして食べた。
天狼と奈々も大好きなメニューだ。
俺の血なのだろうか。
食事の後で風呂を借り、麗星、天狼、奈々と一緒に入った。
子どもたちは先に上げて、麗星とゆったりと湯に浸かる。
「あなたさま」
「なんだ?」
「また是非、名付けをお願いいたします」
俺は笑って言った。
「おい、もうとんでもねぇ名前は残ってないんだよな?」
「はい、それはもう」
天狼にしても奈々にしても、道間家の伝承の名の中でも最高のものだったらしい。
俺はそんなとんでもねぇ名を子どもに付けたくはない。
だから事前に麗星に聞いて、伝承で残った名前があるのかを確認していた。
麗星はもう無いと言っていたが、こいつらは深い家系だ。
そのまま言葉を信じたかったが、俺には話せない何かがある可能性もある。
まあ、そうそう大当たりを引くことも、もうないだろうが。
幸せそうに微笑む麗星に優しくキスをした。
風呂を出て、ロボと少し休ませてもらった。
奈々が俺に甘えて来るので、一緒に寝た。
幸せな時間が流れる。
やはりここはいい。
美しく俺に優しい麗星がいて、俺に懐いている天狼と奈々がいる。
五平所たちも俺を気遣ってくれる。
何しろ飯が美味い。
俺の特別な場所だ。
双子と過ごすのも楽しいのだが、ちょっと寂しかったので早乙女たちを呼んで俺が大好きな「人狼ゲーム」をやった。
またまた俺が負けた。
「……」
「タカさん、このゲームはもうよそうよ」
「……」
「タカさん、幾ら何でも弱すぎだよ」
「……」
早乙女と雪野さんが俺を困った目で見ている。
「早乙女は俺の親友だったはずだ」
「石神! これはゲームだろう!」
「雪野さんは優しくて真直ぐな人だと思ってた」
「いえ、あの、石神さん?」
「タカさん、いい加減にしてよ!」
「早乙女さんたち、困ってるじゃん!」
「にゃー」
どうしてこいつらは平然と俺を騙すのか。
「あー、麗星に会いたいなー」
「「もう!」」
「あいつは絶対に俺を裏切らない!」
「「タカさん!」」
「石神……」
「もう、ほんとに弱いくせにこのゲームが好きなんだから」
「毎回負けていじけるからめんどくさい!」
「う、うるせぇ!」
悔しい……
4月下旬の土曜日。
京都の道間家へ出掛けた。
麗星に3人目の子が生まれる予定だったからだ。
ただ、予定日は翌週であり、俺が行っている時には生まれないだろうと思っていた。
亜紀ちゃんと柳は中南米の戦場を回っており、双子も磯良のマンションへ行ったりしている。
ロボの世話をする人間がいないので、俺が京都に一緒に連れ出した。
早朝に起きて出掛けた。
ロボがお出掛けと知り、大喜びだ。
今日はシボレー・コルベットで出掛ける。
長距離をぶっ飛ばすのに、大使館ナンバーのコルベットは都合がいい。
俺も上機嫌で、歌を歌いながら走り、ロボも会わせて大声で鳴いている。
東名に入ってからサービスエリアに入り、朝食にした。
外にテラスがあり、そこでロボと一緒に食べた。
俺は作って来た稲荷寿司で、ロボは早乙女の上司の西条さんから送って来られたニジマスを焼いたもの。
普段は食べないものだが、ロボは大興奮でムシャムシャと食べた。
気に入ったようならば時々出したいが、ニジマスはそうそう手に入らない。
俺はゆっくりとコーヒーを飲み、ロボと車に戻った。
ロボがニジマスが嬉しかったか、俺にじゃれつく。
「おい、魚クセェ!」
俺の顔をペロペロ舐める。
ウェットティッシュで顔を拭っても、臭いは取れなかった。
「……」
ロボはひとしきり満足したか寝た。
もう俺も京都は慣れたもので、以前のように苦しむこともない。
念のために一江の顔面は出しているが。
早朝の4時頃出発し、大使館ナンバーのコルベットで行ったので、朝の8時半には道間家に着いた。
麗星に少しでも長く寄り添ってやりたかったからだ。
道間家の手前で連絡したので、五平所が天狼と一緒に玄関で待っていてくれた。
俺が度々来るようになって、門は自動で開閉出来るように改造された。
広い敷地で玄関から門までの距離が結構あるためだ。
以前は誰かが門の前で待っていて、大変だった。
「石神様、お待ちしていました」
「父上!」
俺は笑って天狼に手を振り、アクセルを吹かす。
天狼はスーパーチャージャーの回転を喜ぶ。
麗星が奈々を連れてゆっくりと玄関に出て来た。
「あなたさまー!」
「父上!」
俺は車から降りて、麗星にキスをし、奈々を抱き上げる。
「お前はいつも最高にカワイイな!」
「はい!」
奈々が俺の頬に自分の頬を摺り寄せて来る。
本当にカワイイ。
コルベットから俺の荷物を天狼が出してくれた。
頭を撫でてやると喜ぶ。
普段は顔を合わせることもないが、俺たちは確かに家族だ。
ロボも出て来て天狼や奈々に身体を擦り付ける。
麗星には後ろ足で立ち、そっとお腹をポンポンした。
麗星が嬉しがった。
「ありがとうございます、ロボさん!」
「にゃ!」
五平所が天狼から俺の荷物を預かって言った。
「石神様、御朝食の準備をしております」
「そうか、手間を掛けたな」
「とんでもございません」
五平所が中へ案内してくれる。
麗星たちと一緒に食堂へ行き、俺とロボだけ朝食を食べた。
やはり、ここは食事が違う。
俺の好きな米ナスの田楽と豆腐、鮎の塩焼きがメインで、味噌汁はタケノコだった。
ロボにも鮎が出て、好物のマグロも切ってある。
米も抜群に美味く、漬物などもどれも絶品だ。
俺もロボも少し前に食べたが、どんどん腹に入った。
麗星が給仕をしてくれ、それも嬉しい。
天狼と奈々は俺の向かいに座ってニコニコしている。
俺の食事中に甘えてくることは無く、しっかりと教育されているのが分かる。
「お前ら、いつもこんなに美味いものを食べているのか!」
「オホホホホ、あなた様も、どうかここでお暮し下さい」
「本当に迷うよなぁ!」
みんなが笑った。
食後にコーヒーをもらい、しばらく団らんする。
「あなた様、少しお休み下さい」
「いや、眠くはないよ。まあ、午後に少し横になるかな」
「はい」
庭に出て、天狼の技を少し見せてもらった。
道間家の跡取りとして、天狼はもう修行に入っている。
五平所が言うには、やはり相当な才能のようだ。
奈々はまだそれほどのことはしていない。
幼い身体は無理をしてはならない。
霊的な鍛錬になるので、身体がある程度出来上がってからになる。
肉体が整わないと、霊的な修行は悪影響を与えるそうだ。
麗星が俺の隣に座り、俺は奈々を膝にのせて天狼の動きを眺めていた。
道間家はあやかしを使役するが、そればかりではない。
妖魔に対しての攻撃技、防御技もある。
それは道間家の秘術なのだが、俺には一切隠すことも無かった。
俺自身も修行出来るそうだが、特に今は必要性が無い。
波動を使う術なのは何となく理解していた。
この世に存在する全てのものには固有の波動がある。
物理学者は波と粒と表現することもあるし、全てが光であると表現する人間もいる。
道間家は、波として捉え、それを操って技と成しているのだ。
天狼の演舞の後、道間家に仕える蓑原たちの演舞も見せてもらった。
蓑原を中心として、才能のある者たちを集めている。
大分数も増えて、今では総勢150名にもなるそうだ。
「以前の道間家に劣らない数になりました」
「そうか」
俺が小島将軍に頼んで、道間家に仕えられる人材を手配してもらった。
今では石神家本家との交流も盛んで、人間が行き来もしている。
「あなたさまのお陰で、以前よりも戦力は増したようです」
「良かったな」
道間家の血筋はまだ少ないが、本家の人間は4人になるのだ。
いずれまた盛り返しても行くのかもしれない。
俺も鍛錬に参加し、蓑原たちと遣り合った。
天狼も交えて、楽しく時を過ごした。
昼食は鰻だった。
俺が好物なので、毎回出してくれる。
俺の好みが関東風だと分かると、いつもわざわざそのように仕上げてくれた。
ロボも好物なので、白焼きを唸りながら食べる。
麗星も好きなので、ニコニコして食べた。
天狼と奈々も大好きなメニューだ。
俺の血なのだろうか。
食事の後で風呂を借り、麗星、天狼、奈々と一緒に入った。
子どもたちは先に上げて、麗星とゆったりと湯に浸かる。
「あなたさま」
「なんだ?」
「また是非、名付けをお願いいたします」
俺は笑って言った。
「おい、もうとんでもねぇ名前は残ってないんだよな?」
「はい、それはもう」
天狼にしても奈々にしても、道間家の伝承の名の中でも最高のものだったらしい。
俺はそんなとんでもねぇ名を子どもに付けたくはない。
だから事前に麗星に聞いて、伝承で残った名前があるのかを確認していた。
麗星はもう無いと言っていたが、こいつらは深い家系だ。
そのまま言葉を信じたかったが、俺には話せない何かがある可能性もある。
まあ、そうそう大当たりを引くことも、もうないだろうが。
幸せそうに微笑む麗星に優しくキスをした。
風呂を出て、ロボと少し休ませてもらった。
奈々が俺に甘えて来るので、一緒に寝た。
幸せな時間が流れる。
やはりここはいい。
美しく俺に優しい麗星がいて、俺に懐いている天狼と奈々がいる。
五平所たちも俺を気遣ってくれる。
何しろ飯が美味い。
俺の特別な場所だ。
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