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双子と磯良 Ⅱ
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翌日から授業が始まった。
クラスの雰囲気は中学までと同じで、「人生研究会」のメンバーが私たちにかしずいている。
「ルーさん、ハーさん、おはようございます!」
「うん、おはよう」
「おはよう」
私たちの椅子を引いて座らせる。
幹部筆頭の柳川が活動報告をする。
みんな株や債券、金、プラチナ、ダイヤモンド、石油、ウラン、天然ガスなどの市場で投機活動をしている。
それに各国の政情も把握しており、それらについての報告。
特に日本国内では、外務省や経済産業省などに一部アドバイザーとして参画しており、その活動報告。
他の生徒にはちょっと異様に見えるだろうけど、すぐに慣れるだろう。
今日は山邑先生の数学の授業があった。
私もハーも、高校の数学はもう意味がない。
しかし、山邑先生は、なんとアポロの軌道計算の数式を黒板に書き始めた。
亜紀ちゃんからちょっとは聞いていたけど、最初からこれかー。
同級生たちは驚いているし、授業に関係ない内容に愚痴を言っている奴もいる。
だけど授業時間内に書き切れずに終わった。
黒板を消そうとする山邑先生を私たちが止めて、写真に撮らせてもらった。
その後で職員室に行き、質問した。
「さっきの軌道計算ですけど、あれ、別なものが入ってましたよね?」
「石神、よく気付いたな!」
「はい。軌道計算は幾つか前に検討したことがあるので」
「御幸」の衛星軌道の計算を、ミユキさんから頂いて自分なりにやったことがある。
「そうなのか! 石神はスゴイな!」
「エヘヘヘヘヘ」
「あれはな、実はスイングバイの計算式なんだよ」
「なんでスイングバイ?」
「アハハハハ! ちょっと火星を回って戻って来るようにしたんだ」
なんで?
「よく気付いたなぁ! 先生、嬉しいよ」
「アハハハハハ」
やっぱ面白い人だ。
昼休みの時間になり、胡蝶が私たちに声を掛けてきた。
いきなり接近して来るとは、私もハーも思っていなかった。
「ねえ、一緒に食べない?」
最初から感じていたけど、胡蝶は明るい性格だ。
だから誰とでも仲良くする。
ただし、決して無邪気で能天気な人間じゃない。
吉住連合の上位団体のヤクザの娘だ。
危険察知の感覚はそれなりに養っているに違いない。
世の中で注意しなければいけないのは、明るく優し気に振る舞う人間だ。
裏に悪意がある場合、恐ろしい結果になる。
まあ、胡蝶に関してはその心配はいらない。
私たちのことも、知っているはずだし。
あの「石神一家」の人間であることを。
滅多なことを仕掛けようなんて絶対に考えない。
あの稲城会がどうなったか、ヤクザの娘なら知らないはずがないよ。
だから、単に実力者である私たちにコネクションを付けたいのだろう。
それに、私たちのことを知り、今後の付き合い方を図りたいか。
タカさんが全国のヤクザの頂点に君臨していることは、裏社会の人間であれば十分に知っている。
そして私とハーがその娘であることも。
そのくらいの情報は、絶対に胡蝶は入学する前に調べ上げている。
それでも、平然と声を掛けてきた。
なかなか肝が据わっているぞ?
まー、自分もヤクザの娘だから平気なのかな?
タカさんから磯良に身分を明かすって聞いているので、向こうから接近してくるのはいいだろう。
少し話をして、きっと私たちに接近して、仲良くしておきたいのだろうと判断した。
堂前組の人間として、石神家と敵対するのはもってのほかで、仲良くしておきたいんだろうな。
まー、私たちもそのつもりだしね。
ということで学食へ行った。
「人生研究会」の連中とも一緒に行く。
この学校の学食は豪華だと聞いている。
タカさんと亜紀ちゃんのお陰だ。
私たちは利用前に伝えるように山邑先生に言われていたけど、無視してどんどん注文した。
お腹空いたもん。
食券の券売機の前で「人生研究会」のメンバーが買いまくり、受け出しのカウンターで待っててどんどん運んでくる。
テーブルに置かれる端から、私とハーで食べて行く。
私とハーの「喰い」に驚いている。
まー、普通だよ?
胡蝶には注文を聞いてハンバーグ定食を置いた。
もちろん、自分の分はお金を払ってもらってる。
磯良は手弁当を持って来てた。
へぇー、自分で作るんだー。
二人がゆっくり食べているので、胡蝶のハンバーグを食べたら、胡蝶が驚いていた。
磯良のもハーが奪おうとしたけど、迎撃された。
流石だ。
「喰い」もひと段落したので、ちょっと話をした。
向こうの意図もあるだろうけど、こっちもあるからね。
「あなた、神宮寺磯良だよね?」
「ああ、そうだけど」
「タカさんには劣るけど、なかなかいい顔だよね」
「え?」
「ルー、比較の対象が桁違い過ぎだよ」
「あー、そうか」
磯良はまるで女の子みたいな顔をしている。
それも、とびきりの美人だ。
怪しい雰囲気さえある。
タカさんは綺麗な顔立ちなんだけど、精悍で迫力がある。
そこが違った。
それに磯良は180センチだけど、痩せている。
タカさんは逞しい肉体だー!
「まあ、100人は超えてるみたいだけど、1000人を超えてからかな」
「!」
磯良が驚いた顔をしていた。
私が言ったのは、人間の「殺し」の数だ。
磯良も修羅の道を歩んできた。
でも、タカさんには到底及ばない。
そういう数を口にしたことが、磯良には伝わった。
胡蝶の方も気付いていたようだ。
まー、ヤクザだもんな。
クラスの雰囲気は中学までと同じで、「人生研究会」のメンバーが私たちにかしずいている。
「ルーさん、ハーさん、おはようございます!」
「うん、おはよう」
「おはよう」
私たちの椅子を引いて座らせる。
幹部筆頭の柳川が活動報告をする。
みんな株や債券、金、プラチナ、ダイヤモンド、石油、ウラン、天然ガスなどの市場で投機活動をしている。
それに各国の政情も把握しており、それらについての報告。
特に日本国内では、外務省や経済産業省などに一部アドバイザーとして参画しており、その活動報告。
他の生徒にはちょっと異様に見えるだろうけど、すぐに慣れるだろう。
今日は山邑先生の数学の授業があった。
私もハーも、高校の数学はもう意味がない。
しかし、山邑先生は、なんとアポロの軌道計算の数式を黒板に書き始めた。
亜紀ちゃんからちょっとは聞いていたけど、最初からこれかー。
同級生たちは驚いているし、授業に関係ない内容に愚痴を言っている奴もいる。
だけど授業時間内に書き切れずに終わった。
黒板を消そうとする山邑先生を私たちが止めて、写真に撮らせてもらった。
その後で職員室に行き、質問した。
「さっきの軌道計算ですけど、あれ、別なものが入ってましたよね?」
「石神、よく気付いたな!」
「はい。軌道計算は幾つか前に検討したことがあるので」
「御幸」の衛星軌道の計算を、ミユキさんから頂いて自分なりにやったことがある。
「そうなのか! 石神はスゴイな!」
「エヘヘヘヘヘ」
「あれはな、実はスイングバイの計算式なんだよ」
「なんでスイングバイ?」
「アハハハハ! ちょっと火星を回って戻って来るようにしたんだ」
なんで?
「よく気付いたなぁ! 先生、嬉しいよ」
「アハハハハハ」
やっぱ面白い人だ。
昼休みの時間になり、胡蝶が私たちに声を掛けてきた。
いきなり接近して来るとは、私もハーも思っていなかった。
「ねえ、一緒に食べない?」
最初から感じていたけど、胡蝶は明るい性格だ。
だから誰とでも仲良くする。
ただし、決して無邪気で能天気な人間じゃない。
吉住連合の上位団体のヤクザの娘だ。
危険察知の感覚はそれなりに養っているに違いない。
世の中で注意しなければいけないのは、明るく優し気に振る舞う人間だ。
裏に悪意がある場合、恐ろしい結果になる。
まあ、胡蝶に関してはその心配はいらない。
私たちのことも、知っているはずだし。
あの「石神一家」の人間であることを。
滅多なことを仕掛けようなんて絶対に考えない。
あの稲城会がどうなったか、ヤクザの娘なら知らないはずがないよ。
だから、単に実力者である私たちにコネクションを付けたいのだろう。
それに、私たちのことを知り、今後の付き合い方を図りたいか。
タカさんが全国のヤクザの頂点に君臨していることは、裏社会の人間であれば十分に知っている。
そして私とハーがその娘であることも。
そのくらいの情報は、絶対に胡蝶は入学する前に調べ上げている。
それでも、平然と声を掛けてきた。
なかなか肝が据わっているぞ?
まー、自分もヤクザの娘だから平気なのかな?
タカさんから磯良に身分を明かすって聞いているので、向こうから接近してくるのはいいだろう。
少し話をして、きっと私たちに接近して、仲良くしておきたいのだろうと判断した。
堂前組の人間として、石神家と敵対するのはもってのほかで、仲良くしておきたいんだろうな。
まー、私たちもそのつもりだしね。
ということで学食へ行った。
「人生研究会」の連中とも一緒に行く。
この学校の学食は豪華だと聞いている。
タカさんと亜紀ちゃんのお陰だ。
私たちは利用前に伝えるように山邑先生に言われていたけど、無視してどんどん注文した。
お腹空いたもん。
食券の券売機の前で「人生研究会」のメンバーが買いまくり、受け出しのカウンターで待っててどんどん運んでくる。
テーブルに置かれる端から、私とハーで食べて行く。
私とハーの「喰い」に驚いている。
まー、普通だよ?
胡蝶には注文を聞いてハンバーグ定食を置いた。
もちろん、自分の分はお金を払ってもらってる。
磯良は手弁当を持って来てた。
へぇー、自分で作るんだー。
二人がゆっくり食べているので、胡蝶のハンバーグを食べたら、胡蝶が驚いていた。
磯良のもハーが奪おうとしたけど、迎撃された。
流石だ。
「喰い」もひと段落したので、ちょっと話をした。
向こうの意図もあるだろうけど、こっちもあるからね。
「あなた、神宮寺磯良だよね?」
「ああ、そうだけど」
「タカさんには劣るけど、なかなかいい顔だよね」
「え?」
「ルー、比較の対象が桁違い過ぎだよ」
「あー、そうか」
磯良はまるで女の子みたいな顔をしている。
それも、とびきりの美人だ。
怪しい雰囲気さえある。
タカさんは綺麗な顔立ちなんだけど、精悍で迫力がある。
そこが違った。
それに磯良は180センチだけど、痩せている。
タカさんは逞しい肉体だー!
「まあ、100人は超えてるみたいだけど、1000人を超えてからかな」
「!」
磯良が驚いた顔をしていた。
私が言ったのは、人間の「殺し」の数だ。
磯良も修羅の道を歩んできた。
でも、タカさんには到底及ばない。
そういう数を口にしたことが、磯良には伝わった。
胡蝶の方も気付いていたようだ。
まー、ヤクザだもんな。
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