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プテラノドンの涙
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少し遡る、皇紀がフィリピンで襲われた襲撃事件の後。
研究所で、蓮花と《ニルヴァーナ》について検討していた。
皇紀がフィリピンで襲われた際のウイルスの研究は既に済んでおり、ワクチンの開発も順調に進んでいる。
「石神様、これは以前に伺った、チェルノブイリ原発事故の直後に発生したものではないかと思うのですが」
「俺もそう考えていたよ。もう元の研究資料を手に入れることは出来ないだろうが、聞いている症状と同じだな」
「はい、感染者が狂暴化して他の人間を襲うという。それに感染の仕方も、粘膜の接触か血中にウイルスが侵入した場合。つまり噛まれるか爪で傷つけられる方法と思われます」
やはり蓮花も考えていたようだ。
以前に「業」が、あのウイルスを入手したであろうことは予想していた。
「但し、「業」はこれに更に妖魔の因子を混入してくるはずだ」
「はい。現状の医学では太刀打ち出来なくするということですね」
「そうだ。俺たちが妖魔因子に対抗できる方法を持っているとは思ってもいないはずだがな。ただ、「Ωカメムシ」が万能かどうかはまだ分からん。安心は出来ないな」
「はい」
蓮花も分かっている。
「業」が一筋縄で済むはずもない。
様々な解析結果を検討し、俺と蓮花は一応の結論に達していた。
話が終わり、蓮花が別な話題を出して来た。
「ところで石神様」
「なんだ?」
「ジェヴォーダンのことなのですが」
「ああ、なんだよ?」
「ついに予見していた飛行タイプが出現しましたが」
「ああ」
「どうにも数が少ないように思えるのですが」
「そうか?」
確かに、これまで数例しか遭遇していない。
最初にこの研究所が襲われた時に出現した。
翼竜プテラノドンに似た外見だった。
同時に「紅六花」の街を襲う際に3体が来た。
一体は「暁園」を襲い、竹流が空中戦で撃破した。
それらの死骸は回収し、この研究所で解剖し研究している。
「陸戦タイプや海戦タイプとは違って、生育が難しいんじゃないのか?」
「そのように考えることが妥当なのですが。ただ、「業」の培養技術は非常に高いと思われます。生体の設計図さえ決まれば、量産体制は整うのではないかとも思うのです」
「なるほどな」
確かに、他のジェヴォーダンは量産されていることが分かっている。
そして、蓮花は更に進めていた。
「それで、「御幸衛星群」を使って解析してみました」
「ほう、どうだった?」
「はい。ジェヴォーダンの霊素観測が判明しまして、そこから更に陸戦タイプ、海戦タイプ、そして飛行タイプの分類解析にも成功いたしました」
「そうか」
まだ報告に上がっていなかったということは、つい最近のことだからだろう。
「では、今後はジェヴォーダンの種類を交えて解析して行ってくれ」
「かしこまりました」
その時はそれで終わった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
フヨフヨ スン
愛しのタカトラがまた出掛けているので散歩に出た。
取り敢えずいつものように地球を周回する。
あ、またくさい。
「にゃ(あ、またいやがった)」
でかい翼を広げて飛んでる奴。
あいつ、臭くて嫌いなんだよなー。
シパッ
「ぎゃおー」
爪で一閃する。
泣き叫んで真っ二つに分かれて落ちて行った。
「にゃー(ざまぁ)」
最近、ロシア辺りを飛んでると、よく見かける。
くさいので、見つけたらすぐに真っ二つにすることにしてる。
スゥーっと落ちて行くのが面白い。
「にゃ?(あ、なんか町に落ちるぞ?)」
下から物凄い悲鳴が聞こえる。
あの姿だもんなー。
あ、建物に突っ込んだ。
あー、崩れたよー。
しーらない。
スン
喉がかわいたなー。
野薔薇にミルクを貰いに行った。
「にゃー(野薔薇ぁー)」
「いらっしゃい、ロボさん。あ、ミルクですね」
「にゃ(うん、ちょーだい)」
「はい!」
ペチャペチャ
「にゃ(皇紀は来る?)」
「はい、こまめにいらっしゃいますよ」
「にゃ(ヤッてる?)」
「いいえ、最近は風花ちゃんの身体を労わって」
「にゃ(ヤッてもらってる?)」
「はい!」
「にゃははははは(にゃははははは)」
「ウフフフフフ」
やっぱりね。
家に帰って、ちょっとクサいので柳に爪をこすりつけた。
「なーに、ロボ?」
柳がニコニコしている。
「にゃー」
「ウフフフフ」
爪が綺麗になったよ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ミハイル様、また飛行タイプが殺されました! まったく観測不可能の攻撃なので、また《謎のX》と思われます!」
「なんだと! またか!」
「はい。モスクワ近郊を飛行させていましたが、突然に! モスクワ宮殿に墜落しました!」
「なんということだ。それでは多くの人間に目撃されたのだな!」
「はい。急いで子飼いの陸軍に回収させましたが、なにしろ都会の中なもので」
「まあ、仕方がない。誰がどれほど騒いでも、もうロシアは「業」様が掌握する。マスコミが騒いだら粛清しろ」
「は!」
《謎のX》か。
しかし、《ハイヴ》への攻撃は分かるが、何故バイオビースト(※ジェヴォーダン)の中でも飛行タイプだけを目の敵のように狙うのか。
他の陸戦タイプや海戦タイプはそれほど襲われないのだが。
私はバイオビーストの軍団を構想している。
これまで陸上、海上の戦力は整ってきたが、ようやく飛行するバイオビーストが出来上がり、軍団の戦力構成が格段に上がったのだ。
ここで飛行タイプが少なくなれば、私の軍団構想が大きく削がれる。
私はバイオビーストの飛行タイプの量産を決意した。
敵の意図は分からないが、量産しておかなければならない。
他のバイオビーストよりも生育は難しいのだが。
しかし、他の生育を犠牲にしてでも為さなければならない。
私は中国の西安近郊の生産施設に飛行型のバイオビーストの大々的な量産を命じた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
蓮花から連絡が来た。
あれから「ジェヴォーダン」の飛行タイプの観測を続けている。
「石神様。3月2日にロシアのモスクワ近郊で「ジェヴォーダン」の飛行タイプが観測されました」
「そうなのか」
「それが、突然胴体が左右に割れて墜落しまして」
「なに?」
「そのままモスクワ宮殿に落下しました。建物の一部が崩壊したようです」
「ああ、なんかニュースで見た。まあ、宮殿の崩壊のことしか報道されてなかったけどな」
「はい。現地のニュースでは老朽化とのことでしたが、事実は飛行タイプの落下です」
「何が起きたんだろうなぁ」
「はい、本当に何が起きたのか。「御幸」の高性能のセンサーでも何も捉えられていません」
「そうか。まあ引き続き頼むわ」
「はい!」
蓮花から「御幸」の画像を送ってもらった。
「ジェヴォーダン」の飛行タイプの解剖は詳細に行なわれているが、特に構造上で左右に切れるようなものは何もない。
だが、俺たちに攻撃の手段を見せずに何者かがやったとは考えにくい。
「ジェヴォーダン」の飛行タイプは翼長で50メートル、体長で30メートルある。
その大きさを切り裂くのであれば、必ず「御幸」のカメラが捉えているはずだ。
しかし、実際には一瞬で左右に分かれて墜落していた。
まさか「業」たちが、折角育て上げた「ジェヴォーダン」を自ら死なせているとは考えにくい。
それとも、何かの実験なのだろうか。
分からない……
研究所で、蓮花と《ニルヴァーナ》について検討していた。
皇紀がフィリピンで襲われた際のウイルスの研究は既に済んでおり、ワクチンの開発も順調に進んでいる。
「石神様、これは以前に伺った、チェルノブイリ原発事故の直後に発生したものではないかと思うのですが」
「俺もそう考えていたよ。もう元の研究資料を手に入れることは出来ないだろうが、聞いている症状と同じだな」
「はい、感染者が狂暴化して他の人間を襲うという。それに感染の仕方も、粘膜の接触か血中にウイルスが侵入した場合。つまり噛まれるか爪で傷つけられる方法と思われます」
やはり蓮花も考えていたようだ。
以前に「業」が、あのウイルスを入手したであろうことは予想していた。
「但し、「業」はこれに更に妖魔の因子を混入してくるはずだ」
「はい。現状の医学では太刀打ち出来なくするということですね」
「そうだ。俺たちが妖魔因子に対抗できる方法を持っているとは思ってもいないはずだがな。ただ、「Ωカメムシ」が万能かどうかはまだ分からん。安心は出来ないな」
「はい」
蓮花も分かっている。
「業」が一筋縄で済むはずもない。
様々な解析結果を検討し、俺と蓮花は一応の結論に達していた。
話が終わり、蓮花が別な話題を出して来た。
「ところで石神様」
「なんだ?」
「ジェヴォーダンのことなのですが」
「ああ、なんだよ?」
「ついに予見していた飛行タイプが出現しましたが」
「ああ」
「どうにも数が少ないように思えるのですが」
「そうか?」
確かに、これまで数例しか遭遇していない。
最初にこの研究所が襲われた時に出現した。
翼竜プテラノドンに似た外見だった。
同時に「紅六花」の街を襲う際に3体が来た。
一体は「暁園」を襲い、竹流が空中戦で撃破した。
それらの死骸は回収し、この研究所で解剖し研究している。
「陸戦タイプや海戦タイプとは違って、生育が難しいんじゃないのか?」
「そのように考えることが妥当なのですが。ただ、「業」の培養技術は非常に高いと思われます。生体の設計図さえ決まれば、量産体制は整うのではないかとも思うのです」
「なるほどな」
確かに、他のジェヴォーダンは量産されていることが分かっている。
そして、蓮花は更に進めていた。
「それで、「御幸衛星群」を使って解析してみました」
「ほう、どうだった?」
「はい。ジェヴォーダンの霊素観測が判明しまして、そこから更に陸戦タイプ、海戦タイプ、そして飛行タイプの分類解析にも成功いたしました」
「そうか」
まだ報告に上がっていなかったということは、つい最近のことだからだろう。
「では、今後はジェヴォーダンの種類を交えて解析して行ってくれ」
「かしこまりました」
その時はそれで終わった。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
フヨフヨ スン
愛しのタカトラがまた出掛けているので散歩に出た。
取り敢えずいつものように地球を周回する。
あ、またくさい。
「にゃ(あ、またいやがった)」
でかい翼を広げて飛んでる奴。
あいつ、臭くて嫌いなんだよなー。
シパッ
「ぎゃおー」
爪で一閃する。
泣き叫んで真っ二つに分かれて落ちて行った。
「にゃー(ざまぁ)」
最近、ロシア辺りを飛んでると、よく見かける。
くさいので、見つけたらすぐに真っ二つにすることにしてる。
スゥーっと落ちて行くのが面白い。
「にゃ?(あ、なんか町に落ちるぞ?)」
下から物凄い悲鳴が聞こえる。
あの姿だもんなー。
あ、建物に突っ込んだ。
あー、崩れたよー。
しーらない。
スン
喉がかわいたなー。
野薔薇にミルクを貰いに行った。
「にゃー(野薔薇ぁー)」
「いらっしゃい、ロボさん。あ、ミルクですね」
「にゃ(うん、ちょーだい)」
「はい!」
ペチャペチャ
「にゃ(皇紀は来る?)」
「はい、こまめにいらっしゃいますよ」
「にゃ(ヤッてる?)」
「いいえ、最近は風花ちゃんの身体を労わって」
「にゃ(ヤッてもらってる?)」
「はい!」
「にゃははははは(にゃははははは)」
「ウフフフフフ」
やっぱりね。
家に帰って、ちょっとクサいので柳に爪をこすりつけた。
「なーに、ロボ?」
柳がニコニコしている。
「にゃー」
「ウフフフフ」
爪が綺麗になったよ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ミハイル様、また飛行タイプが殺されました! まったく観測不可能の攻撃なので、また《謎のX》と思われます!」
「なんだと! またか!」
「はい。モスクワ近郊を飛行させていましたが、突然に! モスクワ宮殿に墜落しました!」
「なんということだ。それでは多くの人間に目撃されたのだな!」
「はい。急いで子飼いの陸軍に回収させましたが、なにしろ都会の中なもので」
「まあ、仕方がない。誰がどれほど騒いでも、もうロシアは「業」様が掌握する。マスコミが騒いだら粛清しろ」
「は!」
《謎のX》か。
しかし、《ハイヴ》への攻撃は分かるが、何故バイオビースト(※ジェヴォーダン)の中でも飛行タイプだけを目の敵のように狙うのか。
他の陸戦タイプや海戦タイプはそれほど襲われないのだが。
私はバイオビーストの軍団を構想している。
これまで陸上、海上の戦力は整ってきたが、ようやく飛行するバイオビーストが出来上がり、軍団の戦力構成が格段に上がったのだ。
ここで飛行タイプが少なくなれば、私の軍団構想が大きく削がれる。
私はバイオビーストの飛行タイプの量産を決意した。
敵の意図は分からないが、量産しておかなければならない。
他のバイオビーストよりも生育は難しいのだが。
しかし、他の生育を犠牲にしてでも為さなければならない。
私は中国の西安近郊の生産施設に飛行型のバイオビーストの大々的な量産を命じた。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
蓮花から連絡が来た。
あれから「ジェヴォーダン」の飛行タイプの観測を続けている。
「石神様。3月2日にロシアのモスクワ近郊で「ジェヴォーダン」の飛行タイプが観測されました」
「そうなのか」
「それが、突然胴体が左右に割れて墜落しまして」
「なに?」
「そのままモスクワ宮殿に落下しました。建物の一部が崩壊したようです」
「ああ、なんかニュースで見た。まあ、宮殿の崩壊のことしか報道されてなかったけどな」
「はい。現地のニュースでは老朽化とのことでしたが、事実は飛行タイプの落下です」
「何が起きたんだろうなぁ」
「はい、本当に何が起きたのか。「御幸」の高性能のセンサーでも何も捉えられていません」
「そうか。まあ引き続き頼むわ」
「はい!」
蓮花から「御幸」の画像を送ってもらった。
「ジェヴォーダン」の飛行タイプの解剖は詳細に行なわれているが、特に構造上で左右に切れるようなものは何もない。
だが、俺たちに攻撃の手段を見せずに何者かがやったとは考えにくい。
「ジェヴォーダン」の飛行タイプは翼長で50メートル、体長で30メートルある。
その大きさを切り裂くのであれば、必ず「御幸」のカメラが捉えているはずだ。
しかし、実際には一瞬で左右に分かれて墜落していた。
まさか「業」たちが、折角育て上げた「ジェヴォーダン」を自ら死なせているとは考えにくい。
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