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佐野誘拐 Ⅲ
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2時間が経過した。
もう、全員半分は回っているようだ。
まだ佐野さんは見つからない。
焦る自分を抑えながら、次の目標に向かっていると、ハーから連絡が来た。
「タカさん! ここっぽい!」
「ほんとか!」
「うん! 黒い波動がバンバン出てる! その中で、佐野さんの綺麗な波動がちょっとあるみたい!」
「分かった! よく見つけたぞ、ハー!」
念のために他の子どもたちには俺とハーの受け持ちも続けて探してもらい、俺はハーの行っている浮間舟渡の非公表施設へ向かった。
ハーが俺を見つけてすぐに飛んでくる。
「上から見たけど、警備が結構多いよ!」
「そうか!」
「さっき、《アイオーン》が周辺の監視カメラの映像を解析したの。昨日から警備の人間が集まってるっぽい」
「じゃあ、怪しいな!」
「ね!」
いい判断と対処だ。
ハーと一緒に中へ入った。
すぐに警報が鳴り、警備の人間が出て来た。
最初から隠れるつもりもない。
このまま強行突破で佐野さんを救出するつもりだ。
「「佐野さーん!」」
二人で叫びながら突っ込んで行った。
待ってて下さい、佐野さん!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
外が騒がしくなった。
大きな警報が鳴り響き、大勢の人間が走り回っているのも分かる。
どんどん怒号と悲鳴が聞こえて来た。
激しい銃声もする。
大勢の人間が銃を撃っている。
ここが誰かに襲われているのだろうか。
「佐野さーん!」
誰かが大声で叫んでいるのが聞こえた。
すぐにドアを思い切り叩いた。
「おーい! ここだぁー!」
「佐野さん!」
突然ドアが切り裂かれた。
慌てて飛びのく。
「うぉ!」
「あ、すみません!」
トラだった!
ハーちゃんも入って来る。
「助けに来てくれたのか!」
「はい! 遅くなって申し訳ありません!」
「いや、とんでもねぇ! ありがとうな!」
「いいえ!」
トラは素早く部屋の中を見回し、俺が裸なのを見た。
「お怪我はありませんか!」
「あ、ああ。大丈夫だ。突然攫われてさっき目が覚めた。まあ、ちょっと尻の穴が痛ぇ程度だ」
トラの顔が変わった。
物凄い形相になってる。
「おい、トラ?」
「あいつらぁ! 佐野さんによくもぉー!」
「トラ、大丈夫だって」
「ハー! 佐野さんのお尻の穴を調べろ!」
「はい!」
「おい! 何言ってやがんだぁ!」
ハーちゃんに抱えられて、強引に俺をベッドにうつぶせにした。
「なんなんだぁ!」
「佐野さん、大人しく!」
トラが叫び、ハーちゃんに尻の肉を押し広げられた。
「おい! やめてくれぇ!」
「あ、タカさん! ちょっと血が出てるよ!」
「佐野さん!」
「違うってぇ!」
「ハー! オロチ軟膏、持ってるな!」
「はい!」
「優しく塗って差し上げろ!」
「はい!」
「お前らぁ!」
塗られた。
ハーちゃんの指が、俺の肛門の周りと中までヌルヌルとしたものを丁寧に塗る。
尻の痛みが無くなった。
「佐野さん! あいつらのチンコ切り取って来ますから!」
「なんでだよ!」
「佐野さんによくも、あいつらぁ!」
「何もされてねぇよ!」
トラが悲しそうな顔で俺を見ている。
ハーちゃんも沈痛だ。
トラの奴が、俺に優しく微笑んで言った。
「佐野さん、奥さんには黙っていましょうね」
「何言ってんだよ!」
「犬にでも咬まれたと思って」
「だから何もされてねぇってよ!」
「かわいそうに」
「俺の話を聞けぇ!」
「佐野さん、もういいですから。ハーもこのことは誰にも言うなよな」
「うん!」
「……」
ハーちゃんが軟膏を仕舞いながら言った。
「佐野さんの服を探してきますね!」
「お、おう!」
すぐにハーちゃんが来た。
手に服を持っている。
おい……
「タカさん、これ!」
「おう!」
ハーちゃんが持って来た服を見た。
シャツとスラックスだったが。
「……」
「佐野さん、早く着て下さい!」
「いや、これはちょっと」
白いシャツは血まみれで、スラックスも血で濡れていた。
しかも、シャツの襟がねぇ。
スッパリと切り取られていた。
なんなんだ、こりゃ。
トラがハーちゃんの頭をはたいていた。
「だって! みんな首を斬っちゃったから!」
「このバカ!」
「……」
トラがベッドのシーツを外し、俺に巻き付けた。
「佐野さん、お尻はまだ痛みますか?」
「もういいってぇ!」
ハーちゃんがドアから廊下を見張り、合図した。
俺たちもすぐに廊下へ出る。
物凄い状況にぶったまげた。
「おい……」
廊下は数十人の男たちが折り重なって死んでいる。
どれもまともな死体ではない。
千切れ潰され、破壊されまくっていた。
多くの死体に首がねぇ。
床や壁、天井にも血飛沫が飛び散っていた。
トラたちは、一体何をしやがったんだ。
ハーちゃんが床に置いていた何かを拾って来た。
「タカさん、これ」
ハーちゃんが生首を4つ持って来た。
「こんなもの、いらねぇよ」
「エェー! 佐野さんに捧げるってタカさんが言ったから一生懸命斬ったのにぃー!」
「うるせぇ! あ、佐野さん、いります?」
「……もちろんいらねぇ……」
トラが呆然としている俺を見て、壁を破壊した。
大穴が空いて、俺はトラに抱えられて空中に飛び出た。
ハーちゃんも飛び出し、建物に向かって何かをした。
足の下で巨大な建物が爆発するように消えた。
「トラ! おい!」
そのまま空を移動する。
「ハー! 早乙女に連絡しろ!」
「はい!」
「おい、どこへ行くんだ!」
「このまま、「アドヴェロス」まで! 20分で行きます!」
「え?」
スピードが上がり、俺はもう風圧で何も喋れなくなった。
おい、トラ、こりゃ一体どういうことなんだよ……
それと、一つだけ言わせて欲しいんだが。
俺は尻に何かされたわけじゃねぇぞ!
でも、顔がひん曲がる程の風圧で何も喋れなかった。
トラを睨んだが、トラは俺を憐れむように見るだけだった。
このやろう。
もう、全員半分は回っているようだ。
まだ佐野さんは見つからない。
焦る自分を抑えながら、次の目標に向かっていると、ハーから連絡が来た。
「タカさん! ここっぽい!」
「ほんとか!」
「うん! 黒い波動がバンバン出てる! その中で、佐野さんの綺麗な波動がちょっとあるみたい!」
「分かった! よく見つけたぞ、ハー!」
念のために他の子どもたちには俺とハーの受け持ちも続けて探してもらい、俺はハーの行っている浮間舟渡の非公表施設へ向かった。
ハーが俺を見つけてすぐに飛んでくる。
「上から見たけど、警備が結構多いよ!」
「そうか!」
「さっき、《アイオーン》が周辺の監視カメラの映像を解析したの。昨日から警備の人間が集まってるっぽい」
「じゃあ、怪しいな!」
「ね!」
いい判断と対処だ。
ハーと一緒に中へ入った。
すぐに警報が鳴り、警備の人間が出て来た。
最初から隠れるつもりもない。
このまま強行突破で佐野さんを救出するつもりだ。
「「佐野さーん!」」
二人で叫びながら突っ込んで行った。
待ってて下さい、佐野さん!
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
外が騒がしくなった。
大きな警報が鳴り響き、大勢の人間が走り回っているのも分かる。
どんどん怒号と悲鳴が聞こえて来た。
激しい銃声もする。
大勢の人間が銃を撃っている。
ここが誰かに襲われているのだろうか。
「佐野さーん!」
誰かが大声で叫んでいるのが聞こえた。
すぐにドアを思い切り叩いた。
「おーい! ここだぁー!」
「佐野さん!」
突然ドアが切り裂かれた。
慌てて飛びのく。
「うぉ!」
「あ、すみません!」
トラだった!
ハーちゃんも入って来る。
「助けに来てくれたのか!」
「はい! 遅くなって申し訳ありません!」
「いや、とんでもねぇ! ありがとうな!」
「いいえ!」
トラは素早く部屋の中を見回し、俺が裸なのを見た。
「お怪我はありませんか!」
「あ、ああ。大丈夫だ。突然攫われてさっき目が覚めた。まあ、ちょっと尻の穴が痛ぇ程度だ」
トラの顔が変わった。
物凄い形相になってる。
「おい、トラ?」
「あいつらぁ! 佐野さんによくもぉー!」
「トラ、大丈夫だって」
「ハー! 佐野さんのお尻の穴を調べろ!」
「はい!」
「おい! 何言ってやがんだぁ!」
ハーちゃんに抱えられて、強引に俺をベッドにうつぶせにした。
「なんなんだぁ!」
「佐野さん、大人しく!」
トラが叫び、ハーちゃんに尻の肉を押し広げられた。
「おい! やめてくれぇ!」
「あ、タカさん! ちょっと血が出てるよ!」
「佐野さん!」
「違うってぇ!」
「ハー! オロチ軟膏、持ってるな!」
「はい!」
「優しく塗って差し上げろ!」
「はい!」
「お前らぁ!」
塗られた。
ハーちゃんの指が、俺の肛門の周りと中までヌルヌルとしたものを丁寧に塗る。
尻の痛みが無くなった。
「佐野さん! あいつらのチンコ切り取って来ますから!」
「なんでだよ!」
「佐野さんによくも、あいつらぁ!」
「何もされてねぇよ!」
トラが悲しそうな顔で俺を見ている。
ハーちゃんも沈痛だ。
トラの奴が、俺に優しく微笑んで言った。
「佐野さん、奥さんには黙っていましょうね」
「何言ってんだよ!」
「犬にでも咬まれたと思って」
「だから何もされてねぇってよ!」
「かわいそうに」
「俺の話を聞けぇ!」
「佐野さん、もういいですから。ハーもこのことは誰にも言うなよな」
「うん!」
「……」
ハーちゃんが軟膏を仕舞いながら言った。
「佐野さんの服を探してきますね!」
「お、おう!」
すぐにハーちゃんが来た。
手に服を持っている。
おい……
「タカさん、これ!」
「おう!」
ハーちゃんが持って来た服を見た。
シャツとスラックスだったが。
「……」
「佐野さん、早く着て下さい!」
「いや、これはちょっと」
白いシャツは血まみれで、スラックスも血で濡れていた。
しかも、シャツの襟がねぇ。
スッパリと切り取られていた。
なんなんだ、こりゃ。
トラがハーちゃんの頭をはたいていた。
「だって! みんな首を斬っちゃったから!」
「このバカ!」
「……」
トラがベッドのシーツを外し、俺に巻き付けた。
「佐野さん、お尻はまだ痛みますか?」
「もういいってぇ!」
ハーちゃんがドアから廊下を見張り、合図した。
俺たちもすぐに廊下へ出る。
物凄い状況にぶったまげた。
「おい……」
廊下は数十人の男たちが折り重なって死んでいる。
どれもまともな死体ではない。
千切れ潰され、破壊されまくっていた。
多くの死体に首がねぇ。
床や壁、天井にも血飛沫が飛び散っていた。
トラたちは、一体何をしやがったんだ。
ハーちゃんが床に置いていた何かを拾って来た。
「タカさん、これ」
ハーちゃんが生首を4つ持って来た。
「こんなもの、いらねぇよ」
「エェー! 佐野さんに捧げるってタカさんが言ったから一生懸命斬ったのにぃー!」
「うるせぇ! あ、佐野さん、いります?」
「……もちろんいらねぇ……」
トラが呆然としている俺を見て、壁を破壊した。
大穴が空いて、俺はトラに抱えられて空中に飛び出た。
ハーちゃんも飛び出し、建物に向かって何かをした。
足の下で巨大な建物が爆発するように消えた。
「トラ! おい!」
そのまま空を移動する。
「ハー! 早乙女に連絡しろ!」
「はい!」
「おい、どこへ行くんだ!」
「このまま、「アドヴェロス」まで! 20分で行きます!」
「え?」
スピードが上がり、俺はもう風圧で何も喋れなくなった。
おい、トラ、こりゃ一体どういうことなんだよ……
それと、一つだけ言わせて欲しいんだが。
俺は尻に何かされたわけじゃねぇぞ!
でも、顔がひん曲がる程の風圧で何も喋れなかった。
トラを睨んだが、トラは俺を憐れむように見るだけだった。
このやろう。
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