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皇紀&風花 結婚式 Ⅴ

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 音楽イヴェントが一旦終わり、ついにバトル大会になった。
 そしてアラスカのソルジャーたちのパフォーマンスと、「虎」の軍らしくエキシビション仕合。
 仕合に先立って、クロピョンが特殊な結界を張った。
 これは普通の人間には分からない。
 会場に被害が及ばないようにと、対戦者たちに大きな怪我が無いようにらしい。

 最初に、士王ちゃんと吹雪ちゃんの可愛らしい「花岡」の演舞から始まった。
 小さな二人が型を演舞をし、士王ちゃんは大きな岩を粉砕し、吹雪ちゃんは巻き藁を四散させた。
 そして天狼ちゃんが出て来て何かの演舞をし、会場の中心に巨大な白く輝く柱を出現させた。
 会場の人たちが、子どもたちに大きな拍手を歓声を送った。
 タカさんがステージに上がって、子どもたちを抱き上げて喜んでいた。
 一応、子どもたちがタカさんの実子とは公表されていない。
 分かる人間には分かるのだろうけど。

 続くシャドウさんと虎蘭さんの対決から凄まじかった。
 まず、シャドウさんの姿に会場がどよめいた。
 どういう存在なのかはアナウンスされない。
 タカさんが隣に立って、シャドウさんと肩を組んで手を振っていた。
 シャドウさんの耳元でタカさんが何か囁くのが見えた。

 虎蘭さんは日本刀、シャドウさんはもちろん素手だ。
 誰も、どういう戦いが始まるのか想像も出来なかった。
 虎蘭さんは石神家の剣技でシャドウさんに挑んだけど、シャドウさんが想像以上に強かった。
 虎蘭さんの攻撃をすべて捌いて跳ね返し、虎蘭さんはどんどん奥儀に切り替えて行った。
 それでも届かず、最後はシャドウさんに頭を撫でられて終わった。
 虎蘭さんは呆然としていたけど、最後に大笑いした。
 石神家の他の剣士たちが大興奮だった。
 虎白さんたちがタカさんに自分たちもやらせろと言って、タカさんが必死に宥めていた。
 蓮花さんの研究所で、シャドウさんも一緒に鍛錬していたはずだ。
 だけど、きっとシャドウさんは本気を出していなかったのではないか。
 今日は本気を出せとタカさんに言われたのかもしれないけど、優しいシャドウさんは虎蘭さんを一切攻撃しなかった。

 続いてミユキさん、前鬼さん、後鬼さん対羽入さん、紅さんの対決。
 固有武装の凄まじい戦いになった。
 ミユキさんたちはタカさんの用意した固有武装で挑んだが、紅さんの「バハムート」装備が凄まじく、また羽入さんの剣技が圧倒的だった。
 羽入さんは石神家本家で修行しており、奥儀に加えて「流星剣」を使いこなしていた。
 ミユキさんたちは、「虎」の軍の中でも強い方なのだけど、いつの間にか羽入さんと紅さんがそれ以上に強くなっていた。
 度々二人で死線を潜って来たことが大きいのだと思う。
 前鬼さんの大楯「鬼返し」が半ばまで羽入さんの流星剣に引き裂かれた。
 蓮花さんとジェシカさんが興奮して、もっと硬い楯を作ろうと言っていた。

 そして斬さんと虎白さんの対決。
 これは今回最大のバトルで、互いにアラスカくらい吹っ飛ばす威力の技がある二人だ。
 もちろんタカさんが加減するように二人には伝えているが、全然聞かない人たちだった。
 タカさんやソルジャーたちが防壁代わりに周囲を護り、クロピョンがすぐに結界を再展開した。
 凄まじい仕合にみんなが驚愕した。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「あの、虎白さん、会場がぶっ壊れるんで手加減して下さいね」
 「おう!」
 「おい、斬もだぞ!」
 「ふん!」
 「皇紀と風花の結婚披露宴なんですからね!」
 「「ワハハハハハ!」」
 「……」

 今回一番ヤバいカードだ。
 二人とも俺の言うことなんざ、聴きやしねぇ。
 一応言っといたけど、全然守る気がねぇのが分かる。
 マジもんのバトルジャンキーたちだ。
 まあ、こっちもそのつもりで準備しているが。

 二人が50メートル離れて、仕合が始まる。
 審判は俺が務める。
 他にやれる奴は聖くらいだ。

 初手から二人が全力なのが分かった。

 「おい! 加減しろってぇ!」

 思った通り、俺の言うことは聞かない。
 斬は最初から「螺旋鎧」を纏い、虎白さんは最初から奥義「連山」を繰り出す。
 斬の身体の周囲で「連山」が霧散して行く。
 斬は距離を「縮地」で詰め、虎白さんも「煉獄」を放ちながら急速接近する。
 石神家の奥義が斬に通用しないことに、虎白さんが嬉しそうに笑っていた。
 蓮花研究所で護衛を頼んだ際に、斬と散々一緒に鍛錬をしたせいだ。
 斬は石神家の奥義を解析し、その返し技を編み出していた。
 恐ろしい才能だ。
 
 斬は虎白さんの刀技を「花岡」の技で受け流し、一方で斬の「螺旋鎧」は虎白さんの刀を破壊出来なかった。
 虎白さんが「虎相」になった。
 すると、斬も「虎相」を纏った。
 やはりあいつも出来るようになっていたか!
 石神家の剣士たちが驚いて呻いていた。
 研究所では見せなかったのだろう。
 真白の施術を経ずに、斬が「虎相」を展開したのは本当に驚くべきことだ。
 斬の天才がよく分かった。
 ここからは本気で俺も対応しなければならない。
 二人が激突すると、巨大な電光が走り、時折太い稲妻が飛び散る。
 会場が圧倒され、どの技も凄まじい威力なのが実感として理解される。
 帯電して輝く竜巻が生まれ、地面が抉られて土ぼこりが舞う。
 斬が秘奥義「邪獄花」を繰り出し、虎白さんが「破天」でなんとか回避し斬の首に刃を充てた。

 「そこまでぇぇぇーーー! 虎白さん!」

 数秒、会場が静まり返り、やがて大きな歓声と拍手が湧いた。
 虎白さんと斬は激しく呼吸を乱していたが、虎白さんが刀を上に上げた。
 また会場が湧いた。

 「斬、負けたな」
 「ふん! 次は勝つ」
 「お前はよー」

 虎白さんが笑って斬の肩を叩いた。
 斬も笑った。

 「やっぱとんでもなく強ぇな」
 「お前もな」
 「ぎりぎりだったぜ」
 「当たり前じゃ」

 二人が下がり、崩壊した荒れ狂った会場をクロピョンが整地した。
 まったくよ、お前らやり過ぎだって!
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