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石神皇紀暗殺計画 Ⅳ

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 11月中旬。
 蓮花さんの研究所の外壁がいよいよ修復作業に入るというタイミングで、ここの軍事基地が襲われた。

 「霊素観測レーダーに感! ゲートが開き、妖魔とライカンスロープ3000万体が出て来ました!」
 
 レーダー観測員が基地司令の月岡さんに報告した。
 僕も丁度基地指令室にいた。
 月岡さんと今後の防衛システムの建設予定について話し合っていたのだ。
 敵の出現場所は、基地のある山の反対側だった。

 「多いな! アラスカへ連絡! 作業員の避難を急げ!」
 「月岡さん! 僕が出ますよ!]
 「はい、皇紀さん、お願いします! 今いるソルジャーを出しますし、すぐにアラスカから応援も来ますから!」
 「はい!」

 およそ17分間の防衛戦になると、すぐに月岡さんが言った。
 いつもはもっと速いのだが、どうやら蓮花さんの研究所も襲撃されたらしい。
 その直後なので、こちらへ回す人員の招集に時間が掛かるようだ。
 研究所の方でも襲撃の可能性を予想していたので、アラスカでも派遣する精鋭部隊を用意していた。
 それが予想以上の大規模な襲撃だったため、精鋭部隊に加え、エマージェンシーの控え部隊まで派遣したのだ。
 こっちの基地はまだ建設中であり、襲われる可能性を低く見積もっていた。
 僕の他には、現在ソルジャー50人とデュールゲリエが300体。
 ルーとハーもその中にいる。
 僕が一人で行くと言うと、月岡さんが驚いた。

 「皇紀さん、大丈夫ですか?」
 「大丈夫です。迎撃は僕がやりますので、ソルジャーとデュールゲリエは作業員の人たちと基地の防衛に回して下さい」
 「え、でも! 皇紀さんお一人では!」
 「大丈夫です。必ず敵は殲滅しますよ」
 「そうですか! ではお気を付けて! でも無理はしないで下さいね」
 「はい、分かりました」

 「Ωコンバットスーツ」を着て、僕はすぐに外へ出た。
 「業」のゲートは10キロ先だ。
 基地の近くで開かないのは、出現と同時にゲートへの攻撃が始まるためだ。
 そうすると、外へ出る前にゲート内で殲滅されてしまう。
 北海道の悪魔島ではその状況だったので、僕たちでも対処出来たのだ。
 
 タカさんやお姉ちゃんたちは蓮花さんの研究所へ行っている。
 外壁の最も重要な作業があるためだ。
 タカさんは既に状況を把握している。
 だから誰も来ないのは、ここの防衛は僕に任せられると信頼してくれているということだ。
 3000万の妖魔は多いけど、何とかなるはずだった。
 既に山の反対側の防衛システムが迎撃を始めている。
 僕が前に出ると、殲滅戦装備のルーとハーが付いて来た。
 他のデュールゲリエたちも同じく殲滅戦装備で基地を守っているはずだ。
 
 「二人とも、基地を守って!」
 「いいえ、私たちは皇紀さんについて行きます」

 ルーが険しい表情で僕に言った。
 デュールゲリエは単なる機械ではない。
 本気で僕を守りたいのだろう。

 「分かった、じゃあ先陣を叩くよ! でも僕が命じたらすぐに下がってね!」
 「「はい!」」

 二人が嬉しそうに笑った。
 戦闘が大好きなのと、僕の傍にいるのが嬉しいのだ。
 そして、二人は僕を絶対に守ろうと思っているのが分かる。

 月岡さんから連絡が来た。
 どうやら山中で人間が大勢いるらしい。
 映像では襲撃者ではなく、一般人に見えるのだと。
 僕たちは、「飛行」でその場所へ飛んだ。
 本当に一般人と思われる人々が数百人いた。
 その大勢の人間が、逃げまどっている。
 どういうことだろうか。
 地上に降りた時、突然、両脇から攻撃された。
 咄嗟に「金剛花」と「流れ」で銃弾をかわす。
 僕の頭上を別な銃弾が通過して行った。
 僕は気配が無かったことに驚いていた。
 ルーとハーも気付いていなかった。

 「なんだよ、外したかぁ」

 ロシア語をルーが翻訳して通信してくれる。

 「いつもビビって飛び上がる奴って聞いてたのによ」
 「まあ、いいや。どんどんやるぞ」

 もちろん、銃弾など僕には効かない。
 なんだ?

 「皇紀様! 敵は一般人に紛れ込んでいるようです!」
 「なんだって!」

 ルーが僕に報告して来た。

 「敵は《デモノイド》のようですが、一般人に気配を紛れさせています」
 「区別はつく?」
 「いいえ。巧妙に気配を制御出来る連中のようです。でも、攻撃されればすぐに認識します」

 ルーが更に解析して僕に言った。

 「《デモノイド》は12体です。位置は常に移動していますが」
 「よく分かったね」
 「はい。《スズメバチ》のレーダーとリンクしましたので」
 「うん、じゃあ先にやるか」
 「いいえ、皇紀様はこのままハーと山を越えてゲートへ向かって下さい。あいつらは私が」
 「大丈夫? あいつら、結構強いよ?」
 「殲滅戦装備の我々がやられるわけもありません」
 「そっか」

 僕も決断した。

 「分かった。じゃあルーはそっちをお願い」
 「はい!」

 僕はハーを連れてゲートへ向かった。
 ルーが微笑んで飛んで行った。
 僕はハーを連れて斜面を駆け上がった。






 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 「おい、女が一人になったぞ!」
 「バカ、あいつはデュールゲリエの戦闘特化型だ! 油断するな!」
 「ハチが飛んでる。あれを展開しろ!」
 「おし!」

 《デモノイド》の通信を傍受している。
 会話の内容から、何か《スズメバチ》に対応するものを持って来ているらしい。
 一人の男が背中に大きな箱のようなものを背負っていた。
 それを地面に降ろし、何かをした。
 空中に黒い霧のようなものが散布され、拡がって行った。

 「おい、何も起きないぞ!」
 「なんだ! もう一度やれ!」
 「電子機器を破壊する妖魔の粒子だぞ!」
 「早く、もう一度だ!」

 そういうことか。
 生憎と、今展開している《スズメバチ》には、「Ωカメムシ」の粉末を練り込んである。
 石神様が、逸早くこの基地の《スズメバチ》に支給して下さった。
 あの方のやることは、本当に素晴らしく美しく無駄がない。
 《スズメバチ》は一体も欠けることなく、《デモノイド》に攻撃を始める。
 私も機械を背負っていた男の首を「カサンドラ」で刎ねた。

 流石に《スズメバチ》の攻撃は回避されることが多かった。
 それでも数で押して1体の《デモノイド》が焼け焦げて死んだ。
 連中が動揺して来るのが分かった。
 他愛無い奴らだ。

 3体の《デモノイド》が私に向かって来た。
 「ブリューナク」を放とうとし、気配を感じて咄嗟に空中へ上がった。
 超高速で何かが足の下を交差し、そのまま私を追って来る。
 マッハ4程度のスピードがある。
 殲滅戦装備の私でも、ダメージがありそうだ。
 私はレールガンを操作し、3つの何かを破壊した。
 解析で、何か円盤のような武器だと分かった。
 遠隔操作で誘導出来る新しい武器のようだ。

 「壊された!」
 「あいつには勝てない!」
 「撤退!」

 させるわけがあるか。
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