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石神皇紀暗殺計画 Ⅲ
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「どうだ、タイニー・タイド。何か掴めたか?」
「そうですね。石神皇紀の大体の反応のパターンは分かりましたかね」
「そうか」
何度かの襲撃記録を見て、タイニー・タイドは石神皇紀の気配感知の癖や回避、攻撃の癖などを解析していた。
そこからパターンを見出し、石神皇紀の弱点を掴もうと考えていた。
タイニー・タイドによれば、石神皇紀は最初に距離を取りたがる傾向が分かった。
空中へ逃げて、上空から地上の敵を攻撃する。
彼がより安全と判断する戦闘の傾向なのだろう。
それに、攻撃が範囲攻撃ではなく、個別撃破が多い。
要するに、他になるべく被害を出さないやり方だ。
「恐らく、防御を優先する傾向があります」
「なるほど」
「ならば、隙も多い。今まで観てきた戦闘でも、幾らでも斃せそうな場面を見出しました。恐らく無関係の人間を紛らわせれば、有効でしょう」
「そうか」
タイニー・タイドの分析は完璧だ。
「何よりも、敵を殺さない者のようですね」
「そうだな。心が弱い」
「ええ。その点も大いに衝いてやりましょう」
「フフフフフ」
私はタイニー・タイドを見て言った。
「ではいよいよだな」
「ええ」
私は妖魔を手配し、「業」様に承諾を得て《地獄の悪魔》を送り出せることになった。
石神家の中では戦闘力が最も低い石神皇紀に《地獄の悪魔》は斃せない。
しかも、タイニー・タイドが解析した戦闘パターンによって、他の妖魔を配置する。
妖魔3000万体を配し、《デモノイド》12体を人質を使った誘導役とした。
そして《地獄の悪魔》は2体用意する。
万全の体制が整った。
これまで石神の子どもたちが《地獄の悪魔》を撃破したことはない。
石神家本家の異常な剣技が通用したことはあるが、石神の子どもたちは「花岡」のみしか扱えない。
ついに、石神の大切な、そして「虎」の軍にとって重要な人間を殺すことが出来る。
見ていろ、石神。
そして悔しがれ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
皇紀からマニラでの襲撃の連絡を受け、俺は聖に電話した。
「トラぁー!」
「よう!」
お互いに近況は分かっている。
俺たちは度々連絡を取り合い、共闘している。
「ちょっと皇紀から気になる連絡があってな」
「なんだ?」
俺は皇紀がマニラ市内で3度三合会に襲撃されたことを話した。
「大体100人くらいで来るらしいんだけどよ。いつもアサルトライフルか、せいぜい対物ライフルくらいなんだよ」
「なんだ、それじゃあいつはヤレねぇだろう?」
「そうなんだ。何のためにそんなことをしているのか。ああ、そいつらは全員中国本土の三合会だ」
「あいつらか」
「ああ。フィリピンの三合会は全員俺たちの下についてる。逆らうことはないよ」
「前にも本土の三合会がちょっかい出して来たな」
「そうだ。その時にも皇紀がしっかりけじめを付けたはずなんだけどな」
「まだ逆らうのか」
フィリピンに「虎」の軍の基地を建設する時に、中国本土の三合会が襲って来た。
皇紀がデュールゲリエのルーとハーと共に、本土の拠点を潰して回ったのだ。
「どうも状況が分からん。お前、三合会に親しい奴がいたよな?」
「ああ、ヤンか。分かった、聞いてみるよ」
「頼む」
電話を切って、2時間後に聖から連絡が来た。
あいつ、すぐに動いてくれたのだろう。
「分かったよ、どうも三合会の一部が割れたようだ」
「なるほど」
「それまで最大規模の派閥だった連中が、トラに散々やられた。ああ、「ガンドッグ」のこともそいつらだ」
「ああ」
「どうも組織内で求心力を喪って、その連中は「業」に完全になびいたらしいぞ」
「そうか。他の三合会はどうなってる?」
「もう別な派閥が上に立ってる。ヤンの親父さんの派閥だそうだ」
「なるほど」
「共産党も割れてるらしい。「業」についている連中と、「虎」の軍につこうとする連中だ」
「割合は?」
「2対1だな。あっちの方が多い」
「そっか。分かった、ありがとうな」
「いや、何でも言ってくれ。今度ニューヨークにはいつ来る?」
「来月かな。楽しみだぜ」
「俺もだぁー!」
笑って電話を切った。
聖は俺が知りたいことを全て聞いてくれていた。
まったく頼りになる奴だ。
そして俺は今回の皇紀への襲撃の意図が見えた。
但し、皇紀にはそれを伝えないことに決めた。
あいつならば、自分で罠を噛み裂いて切り抜けるだろう。
これも経験だ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
僕のマニラでの襲撃に関しては、タカさんに報告し、警戒しておくように言われた。
もちろん油断するつもりもないけど、どうにも理解出来ない襲撃で、そのことが不安でもある。
今僕は、マニラ郊外の「虎」の軍の基地建設の護衛に付いている。
「虎」の軍の軍事基地は順調に建設が進んでいた。
ただ現在は、蓮花さんの研究所の外壁修復に技術者と作業員の中核の人たちが帰国しているので、こっちは一旦作業が止まっていた。
もちろん、他の部分の建設は進んでいるが。
いずれ本格的に蓮花さんの研究所の外壁を創り上げる過程で、僕も一度戻る予定だ。
その時には、ここは聖さんの部隊が駐在することになっている。
東南アジア最初の「虎」の軍の軍事基地ということもあり、タカさんも重視している場所だ。
既に霊素観測レーダーは備わっているので、襲撃自体は感知出来る。
しかし、戦闘要員がまだ不足しているので大規模の襲撃には厳しい状況だった。
むしろ、この間の防衛任務も兼ねて、僕が現地に滞在しているのだ。
基地が本格的に稼働すれば、アラスカからソルジャーが常駐するのだが、まだ建設中の今の段階では戦闘要員は少ない。
それは、まだこの基地には守るべきものが無いということだ。
霊素観測レーダーくらいで、「ヴォイド機関」も様々な防衛システムもまだだ。
多少は基地内とそれがある山全体に防衛武装はある。
でもそれは、通常兵器のままだ。
ミサイルや重機関砲など。
僕がいるのは、主に作業員のためだ。
基地自体は破壊されても、作業員は守らなければならない。
そういう任務だった。
そして、僕はそれを絶対にやり遂げるつもりでいる。
「そうですね。石神皇紀の大体の反応のパターンは分かりましたかね」
「そうか」
何度かの襲撃記録を見て、タイニー・タイドは石神皇紀の気配感知の癖や回避、攻撃の癖などを解析していた。
そこからパターンを見出し、石神皇紀の弱点を掴もうと考えていた。
タイニー・タイドによれば、石神皇紀は最初に距離を取りたがる傾向が分かった。
空中へ逃げて、上空から地上の敵を攻撃する。
彼がより安全と判断する戦闘の傾向なのだろう。
それに、攻撃が範囲攻撃ではなく、個別撃破が多い。
要するに、他になるべく被害を出さないやり方だ。
「恐らく、防御を優先する傾向があります」
「なるほど」
「ならば、隙も多い。今まで観てきた戦闘でも、幾らでも斃せそうな場面を見出しました。恐らく無関係の人間を紛らわせれば、有効でしょう」
「そうか」
タイニー・タイドの分析は完璧だ。
「何よりも、敵を殺さない者のようですね」
「そうだな。心が弱い」
「ええ。その点も大いに衝いてやりましょう」
「フフフフフ」
私はタイニー・タイドを見て言った。
「ではいよいよだな」
「ええ」
私は妖魔を手配し、「業」様に承諾を得て《地獄の悪魔》を送り出せることになった。
石神家の中では戦闘力が最も低い石神皇紀に《地獄の悪魔》は斃せない。
しかも、タイニー・タイドが解析した戦闘パターンによって、他の妖魔を配置する。
妖魔3000万体を配し、《デモノイド》12体を人質を使った誘導役とした。
そして《地獄の悪魔》は2体用意する。
万全の体制が整った。
これまで石神の子どもたちが《地獄の悪魔》を撃破したことはない。
石神家本家の異常な剣技が通用したことはあるが、石神の子どもたちは「花岡」のみしか扱えない。
ついに、石神の大切な、そして「虎」の軍にとって重要な人間を殺すことが出来る。
見ていろ、石神。
そして悔しがれ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
皇紀からマニラでの襲撃の連絡を受け、俺は聖に電話した。
「トラぁー!」
「よう!」
お互いに近況は分かっている。
俺たちは度々連絡を取り合い、共闘している。
「ちょっと皇紀から気になる連絡があってな」
「なんだ?」
俺は皇紀がマニラ市内で3度三合会に襲撃されたことを話した。
「大体100人くらいで来るらしいんだけどよ。いつもアサルトライフルか、せいぜい対物ライフルくらいなんだよ」
「なんだ、それじゃあいつはヤレねぇだろう?」
「そうなんだ。何のためにそんなことをしているのか。ああ、そいつらは全員中国本土の三合会だ」
「あいつらか」
「ああ。フィリピンの三合会は全員俺たちの下についてる。逆らうことはないよ」
「前にも本土の三合会がちょっかい出して来たな」
「そうだ。その時にも皇紀がしっかりけじめを付けたはずなんだけどな」
「まだ逆らうのか」
フィリピンに「虎」の軍の基地を建設する時に、中国本土の三合会が襲って来た。
皇紀がデュールゲリエのルーとハーと共に、本土の拠点を潰して回ったのだ。
「どうも状況が分からん。お前、三合会に親しい奴がいたよな?」
「ああ、ヤンか。分かった、聞いてみるよ」
「頼む」
電話を切って、2時間後に聖から連絡が来た。
あいつ、すぐに動いてくれたのだろう。
「分かったよ、どうも三合会の一部が割れたようだ」
「なるほど」
「それまで最大規模の派閥だった連中が、トラに散々やられた。ああ、「ガンドッグ」のこともそいつらだ」
「ああ」
「どうも組織内で求心力を喪って、その連中は「業」に完全になびいたらしいぞ」
「そうか。他の三合会はどうなってる?」
「もう別な派閥が上に立ってる。ヤンの親父さんの派閥だそうだ」
「なるほど」
「共産党も割れてるらしい。「業」についている連中と、「虎」の軍につこうとする連中だ」
「割合は?」
「2対1だな。あっちの方が多い」
「そっか。分かった、ありがとうな」
「いや、何でも言ってくれ。今度ニューヨークにはいつ来る?」
「来月かな。楽しみだぜ」
「俺もだぁー!」
笑って電話を切った。
聖は俺が知りたいことを全て聞いてくれていた。
まったく頼りになる奴だ。
そして俺は今回の皇紀への襲撃の意図が見えた。
但し、皇紀にはそれを伝えないことに決めた。
あいつならば、自分で罠を噛み裂いて切り抜けるだろう。
これも経験だ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
僕のマニラでの襲撃に関しては、タカさんに報告し、警戒しておくように言われた。
もちろん油断するつもりもないけど、どうにも理解出来ない襲撃で、そのことが不安でもある。
今僕は、マニラ郊外の「虎」の軍の基地建設の護衛に付いている。
「虎」の軍の軍事基地は順調に建設が進んでいた。
ただ現在は、蓮花さんの研究所の外壁修復に技術者と作業員の中核の人たちが帰国しているので、こっちは一旦作業が止まっていた。
もちろん、他の部分の建設は進んでいるが。
いずれ本格的に蓮花さんの研究所の外壁を創り上げる過程で、僕も一度戻る予定だ。
その時には、ここは聖さんの部隊が駐在することになっている。
東南アジア最初の「虎」の軍の軍事基地ということもあり、タカさんも重視している場所だ。
既に霊素観測レーダーは備わっているので、襲撃自体は感知出来る。
しかし、戦闘要員がまだ不足しているので大規模の襲撃には厳しい状況だった。
むしろ、この間の防衛任務も兼ねて、僕が現地に滞在しているのだ。
基地が本格的に稼働すれば、アラスカからソルジャーが常駐するのだが、まだ建設中の今の段階では戦闘要員は少ない。
それは、まだこの基地には守るべきものが無いということだ。
霊素観測レーダーくらいで、「ヴォイド機関」も様々な防衛システムもまだだ。
多少は基地内とそれがある山全体に防衛武装はある。
でもそれは、通常兵器のままだ。
ミサイルや重機関砲など。
僕がいるのは、主に作業員のためだ。
基地自体は破壊されても、作業員は守らなければならない。
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