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取調べ机 Ⅱ

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 お茶を終えて、私とタカさんで料理の準備を始めた。
 今日は和食を中心にする。
 お鍋はみんなで食べやすいように寄せ鍋にし、様々な海鮮を用意している。
 流石に佐野さんの奥さんが手伝いに来て、一緒に食材のカットや下ごしらえをしていただいた。
 4時に早乙女さんと雪野さん、成瀬さんが来た。
 雪野さんと成瀬さんも手伝う気、満々だった。
 雪野さんはお料理が得意だけど、成瀬さんも結構やる人だった。
 本当は他のハンターの人たちも呼びたかったようだけど、まだタカさんのことは秘密なので、またの機会にしていただいた。

 和久井さんと早乙女さんは佐野さんに家の案内をしてもらっていた。
 三人で大笑いしている声が聞こえて来る。
 きっと佐野さんもこの家のことが気に入ってくれて、お二人に見せているのだろう。
 タカさんがあれだけ佐野さんご夫婦のために頑張ったんだ。
 絶対に気に入って下さっているに違いない。

 寄せ鍋をメインに、お刺身や鯛の焼き物、天ぷら、里芋などの煮物、雪野ナス、など。
 ご飯はタカさんの得意の油揚げ御飯!
 あれは絶対に美味しいんだぁぁー!

 そして特別な丼!
 私がトンカツを揚げてると、雪野さんが不思議そうに見てた。
 指を口にあてて、黙っててと合図する。
 タカさんはウッドデッキの七輪でこそこそ焼いてる。

 5時までに準備が出来て、みんなでリヴィングに集まった。
 大きなテーブルを入れているので、みんなでワイワイと鍋をつついていった。
 タカさんに言われ、私は中二階に置いたダンボールをはがした。
 みんなが鍋を食べながらこっちを見ている。
 タカさんは丼などの最後の仕上げをする。

 「おい、トラ、ありゃなんだ?」

 出て来たのは、中古のスチールデスクだ。
 タカさんがキッチンから丼と重箱を運んできた。

 「和久井署長、佐野さん! 奥さんも!」

 3人を呼ぶ。
 私は椅子を運んだ。
 佐野さんは事務椅子で、タカさんは折り畳み椅子。
 和久井さんと奥さんは食事テーブルの椅子を用意した。

 「おい!」
 「これは!」
 「なんですか?」

 「「エヘヘヘヘヘ」」

 佐野さんに事務椅子に座ってもらい、タカさんが反対側の折り畳み椅子に。
 両脇に和久井さんと佐野さんの奥さんに座っていただいた。

 「トラ!」

 佐野さんとタカさんにはかつ丼を、和久井さんと奥さんにはうな重を置く。

 「「ワハハハハハハハ!」」

 佐野さんと和久井さんが大笑いした。

 「ね、懐かしいでしょ?」
 「トラ! 何やってやがる!」
 「佐野さんとご飯って、これじゃないですか! 和久井署長にも、よくうな重をご馳走になって!」
 「そうだったな」
 「あの時のお礼です」
 「バカやろう!」

 佐野さんと和久井さんが嬉しそうだった。
 タカさんが子どもの頃に、警察署の取り調べでよくこうやって佐野さんや和久井さんにご馳走になっていたのだ。
 それを再現した。

 「お前、このためにわざわざ運んできたのかよ」
 「そうですよ?」
 「お前はよ!」

 佐野さんが本当に嬉しそうだった。

 「またお前とこうやって飯が食えるとはな」 
 「はい!」

 一緒に食べたことはあまりないだろうけど、懐かしそうだった。
 奥さんも理由が分かって笑っていた。
 丼もお重も量は少なめだ。

 早乙女さんたちも来た。
 『虎は孤高に』を見ているから、私たちが何をやっているのかはすぐに分かった。
 笑いながら見ていた。

 その後もテーブルに戻って楽しく食事をした。
 料理が美味しいとみなさんが言ってくれた。
 寄せ鍋だったけど、ハマチ、タイ、タラ、それに伊勢エビやタラバガニ、アワビにハマグリなどに名古屋コーチンに山形和牛のシャブシャブも入る。
 醤油ベースから途中で味噌仕立てに替わり、みんなが驚いた。

 食事が終わり、早乙女さんたちは帰って行った。
 和久井さんは今日は佐野さんのお宅に泊まると聞いた。
 お酒を飲み始め、佐野さんがタカさんをさっきのスチールデスクに呼んだ。

 「トラ、ここで飲もう」
 「えぇ!」
 「いいじゃねぇか。なんか懐かしいや」
 「もーう」

 タカさんは笑いながら、和久井さんと奥さんと一緒に向かった。

 「ラーメン、作りましょうか!」
 「もういいよ!」

 みんなが笑った。

 「いいな、これ!」
 「そうですか」

 おつまみを運んで、私もタカさんの隣に座った。

 「トラぁ、こんどは何をしやがったぁ!」

 私が佐野さんの真似をして言うと、みんなが爆笑した。

 「このやろう」
 「エヘヘヘヘヘ」

 タカさんの数々の取り調べの話になった。
 奥さんが爆笑だった。

 「こいつ、虎に乗って署に来やがったんだよ!」
 「あなた、もうやめて!」
 「俺が署に戻ったら、留置場で虎と一緒に寝てんの」
 「アハハハハハ!」

 「今なら大問題だな」
 「そうですよね。いい時代でした」
 「でも私たちだって、他の人間には違ったよな」
 「そうですよ。特別なのはトラだけで」
 「まったくだ」

 タカさんも本当に嬉しそうだった。






 夜も遅くなり、私たちも帰ることにした。
 お酒を飲んでいない私が帰りは運転する。
 スチールデスクを片付けようとすると、佐野さんに止められた。

 「トラ、それは俺にくれよ」
 「え? いいですけど?」
 「そこに置いておいてくれ」
 「でも、この家に似合いませんよ?」
 「バカ、ぴったりだ! 俺はそれがこの家で一番好きだ」
 「そうですか」

 梱包の段ボールなどだけ持って帰った。
 佐野さんと和久井さんが笑ってた。

 ハマーに荷物を積んで帰った。

 「タカさん、良かったですね!」
 「ああ、あんなもの、ちょっとしたジョークだから持ち帰るつもりだったんだけどなぁ」
 「凄く気に入ってましたよね」
 「そうだよな。まあ、良かったか」
 「はい!」

 運転しながらタカさんを見ると笑ってた。

 「あぁ!」
 「どうしたんですか?」
 「あのデスクによ!」
 「はい?」
 「引き出しに札束とかダイヤモンド詰め込んどきゃよかったぜぇ!」
 「「ワハハハハハハ!」」

 タカさんと大笑いした。

 「庭に埋めたもの、いつ気付くかなぁ」
 「楽しみですね!」

 今度真夜と遊びに行くと言うと、タカさんが爆笑した。
 「絶対やれ」と言われた。

 はーい!
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