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石神家 親子の縁切り Ⅱ

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 亜紀ちゃんと柳ちゃんが棒になってるんで、アジトまで運ばなきゃ。
 実は私とハーは、幾つかのアジトを持ってる。
 私たちが何かやってタカさんに怒られた場合の(自覚はあるんだよー)秘密の逃げ場所だ。
 こんなこともあろうかと、用意したの。
 タカさんも知らない。
 だから誰も知らない。
 不動産屋の高木さんを通さずに、自分たちのお金で探して手に入れた物件だ。
 中野駅に近い一戸建てで、パジェロロングのスーパーエクシードも入れてる。
 私が公園のベンチに二人を寝かせ、ハーがパジェロを取りに行った。
 家の鍵は13桁のキー入力と指紋認証なのだー!
 公演のベンチは真ん中に仕切があるので、ちょっとヘンな恰好だけど、亜紀ちゃんと柳ちゃんはベンチに立てかける形だ。
 特に亜紀ちゃんはパジャマだしー。
 散歩する人たちがみんな見て行った。

 「みんな見てるよー」
 「ヘンだもんね」
 「おい!」

 30分ほどでハーが戻って来た。
 亜紀ちゃんたちを担いでパジェロの荷台に入れて、取り敢えずアジトに向かった。

 「とにかくご飯だよ!」
 「お肉だね!」

 アジトに亜紀ちゃんたちを放り込んで、皇紀ちゃんに見ててもらった。
 私とハーで買物に出る。

 「「わしや」に行こう!」
 「いいね!」

 「わしや」は中野駅前のお惣菜の美味しいお店だ。
 二人でどんどん買った。
 駅前の肉屋さんで大量のお肉も買う。
 アジトへ戻った。

 「「ただいまー」」
 「ここは僕らの家じゃないよー」
 「うるさい! さあ、お肉を焼くよ!」

 三人でどんどんお肉を焼いて行く。
 その臭いで亜紀ちゃんと柳ちゃんが目を覚ました。

 「さあ、ご飯だよー!」

 みんなで食べた。
 亜紀ちゃんも柳ちゃんもまだ呆然としてるんで、一杯食べれたよ?
 食後にインスタントコーヒーを淹れてみんなで話し合った。

 「まずさ、お金は大丈夫だね」
 「うん、私たちがブラックカードを持ってるし、現金も20万円ある。現金は無くなったら銀行のカードもあるしね。」
 「口座には合計で4000万円は入ってるしね」

 私とハーは家出の経験者なので、お金の大事さは身に染みてる。
 だからタカさんに追い出された時にも、咄嗟にお財布とスマホを握って出て来た。
 亜紀ちゃんも柳さんも手ぶらだ。
 まー、亜紀ちゃんはショックで棒になっちゃったし。
 皇紀ちゃんは電話だけ持って来た。
 だから私たちと連絡して「花見の家」に来れたんだ。
 皇紀ちゃんの電話は特殊で、「皇紀通信」も出来る。
 まー、使わないけどね。

 あとは着替えとか買うかぁ。
 アジトには私とハーの着替えや下着のストックは多少あったけど、みんなで使うと足りない。
 皇紀ちゃんのも無い。
 柳ちゃんはオッパイが私たちよりおっきい。
 私とハーはTシャツに短パン。
 亜紀ちゃんはパジャマ。
 柳ちゃんは鍛錬してたんでTシャツとジャージ。
 皇紀ちゃんは「Ωコンバットスーツ」。
 えーと、あとどのくらいの日数分必要かな?
 1週間はいるだろーなー。
 タカさんマックスまじまじ怒りだしー。

 話し合いは主に私とハーでやっていた。
 あ、亜紀ちゃんと柳ちゃんが泣き出した。

 「あのさ、そういうことも必要だけどさ」
 「なーに、皇紀ちゃん?」
 「それよりも、タカさんにどう謝るのかってことを話し合わないと」

 いきなり正論をぶっ込んできやがった!

 「無理無理!」
 「皇紀ちゃん、あの時のタカさんを見てないからそんなこと言えるんだよ!」
 「すごかったよぉー!」
 「もう、私たちのこと全然見て無かったもん!」
 「眼中ナシ!」
 「多分、あの場で縋ってたら殺されてた」
 「真っ黒の波動だったよ!」
 「「業」だよ!」
 
 「エェーーーー!」

 しょうがないじゃん。
 何しろ、今のタカさんはコワすぎ。

 取り敢えず、またJR中野駅前に買い物に出ることにした。
 亜紀ちゃんはパジャマなんでお留守番にした。
 どうせ今は何も考えられないみたいだし。
 柳ちゃんもおかしかったけど、オッパイのことがあるんで連れて出た。

 「マルイでいっかぁー」
 「どうせ今だけだしね」

 マルイでガンガン買った。
 取り敢えず、1週間分の下着とTシャツとかパンツとか。
 夏場で良かったぁー。
 寸法直しは多めにお金を払って速攻でやってもらった。
 現金がほとんど無くなった。
 お金、おろしとくかぁー。
 1階に降りた時。

 「キャァー!」

 悲鳴が聞こえたよ?

 「金を出せぇー!」
 
 向こうの店舗で事件だ!
 みんなで向かった。
 覆面の2人の男たちがナイフを持って店員さん脅してる。
 強盗かぁー。
 私たちが近付くと、1人がナイフを向けて来た。
 ちゃっちぃ事件だなぁー。

 「おい、お前そんなもの持ってると怪我すんぞ?」
 「あ? なんだてめぇら!」
 
 まー、そんな反応かー。

 《プチ轟雷》

 ハーがいきなりぶっ放した。


 ばりばりばりばり…… 

 
 電撃が周囲に発生し、金属のナイフを持った男たちが感電して失神した。

 「ワハハハハハハ!」

 ハーが大笑いしていた。
 店員さんが何が起きたのか分からずに呆然としてる。
 みんなで離れて帰った。
 警察とか面倒だしぃー。

 「あ、ATMに寄ってこう。もう現金ないし」
 「うん」

 その時、後ろで声が聞こえた。

 「みっちゃん! すぐに警察を!」
 「はい、店長!」

 「あ、電話が通じません!」
 「なんで!」

 「「!」」

 物凄い、嫌な予感がした!
 ハーと走ってATMに行った。
 銀行カードで「引き出し」を選択。

 「出ないよー!」
 「ハー!」

 二人で全部のカードを試し、ブラックカードでキャッシングも試した。

 「「ダメだぁー!」」
 「どうしたの?」

 皇紀ちゃんが覗き込んで来る。

 「さっきの《プチ轟雷》でカードが壊れたよ!」
 「え?」

 ハーの頭を引っぱたいた。

 「ごめーん!」

 なんか前にもあったなー。
 メキシコだったかなー。
 とにかく、アジトへ戻ったよ。






 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 「えー、状況を説明します。無一文になりました」
 「「「「……」」」」

 私とハーのスマホもぶっ壊れてた。
 皇紀ちゃんの電話は無事だった。

 「「じゃぁー、サバイバルキャンプ! 行くよ!」」
 「「「……」」」

 そういうことになった。
 しょうがないじゃん!
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