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カメカメ ぷぅー Ⅲ

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 「カメカメ(お腹空いたなー)」

 さっき食べたけど、ちょっとしか食べれなかった。
 下を見ると、人間が大勢いる。
 人間は食べちゃダメ。
 そういうことも、なんか刷り込まれてる気がする。

 「カメカメ!(あ、果物あるじゃん!)」

 お店の先で沢山の果物があった。

 「カメカメ!(スイカだぁー!)」

 スイカは大好き。
 すぐに降りてスイカに口吻を挿し込んだ。
 ちゅーちゅー。

 「ギャァァァァァーーーー!」
 「なんかスゴイのがいるぅー!」

 物凄い叫び声が響いた。
 人間が驚いてる。
 あまりに大声だったので、びっくりしてもらしちゃった。


 ぷぅー


 突然人間がバタバタを倒れて行く。
 あ、くっせぇー。
 すぐに飛び立った。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「新宿の東口で大量の昏倒者! あいつです!」
 「またか!」
 「青果店でスイカを!」
 
 知っている。
 アルタ脇に、夏場に果物をジュースにしたりしている店が東口駅前にある。
 
 「大部近いぞ!」

 カメムシ型は近い。
 俺たちももう西口の大ガードを潜ったところだ。
 デュールゲリエが5体、上空で探している。

 「デュールゲリエがレーダーで捉えた! 中央公園だ!」

 全員で急行した。
 新宿署の警官に連絡し、中央公園の人間を避難させるように早乙女さんが依頼した。
 たが、東口の青果店周辺での昏倒事件で、多分新宿署も大混乱だ。
 愛鈴さんがカマロをドリフトさせて左折した。

 「磯良、行くよ!」
 「分かった!」

 現場に着くと、まだ公園内の人間を避難させる警官は到着していなかった。
 デュールゲリエがカメムシ型が逃げないように周囲を警戒している。
 ハンターが全員車両から降りる。
 みんな防疫服を装着していた。
 新宿署の警官が数人やっと来た。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「カメカメ!(なんだこいつら!)」

 銀色の身体の人間がボクを追って来た。

 「カメカメ(こわいよー)」

 怖かったのでもれた。


 ぷぅー


 「カメカメ(あれ、寝ないぞ?)」

 銀色がそのままボクに迫って来る。
 下に木が生えてる場所があったので、そこに逃げた。

 「カメカメ(こわいよー)」

 あ、なんかぶつかった。
 続いてどんどんぶつかってくる。
 銀色が離れた場所から何かのエネルギーを飛ばしているのが分かった。
 全然痛くないけど怖かったのでもれた。


 ぷぅーぷぅーぷぅー


 「カメカメ(なんだ?)」

 銀色が近付いて来て、ボクを蹴った。
 身体が吹っ飛んで木にぶつかった。

 「カメカメ(なにすんだよー)」

 痛くないんだけど、怖いのでもれた。


 ぷぅーぷぅーぷぅーぷぅー


 逃げようとしたけど、結構速い奴だった。
 なんだよぉー。
 あんまりにも怖かったので、特別な奴をもらした。


 ぶっふぉ


 あ、銀色が倒れたぞ!





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「亜紀ちゃん! あそこだよ!」

 ハーが叫び、「アドヴェロス」のハンターたちが中央公園にいるのが分かった。
 一般の警官隊が中に入ろうとして倒れた。
 公園の中にも何人も倒れている。
 もう「Ωカメムシ」のガスが蔓延してるんだ。
 防疫服を着込んだハンターたちらしい5人が中に入って倒れた人間を救出して行く。

 「うわぁ! この辺、とんでもない臭いになってるよ!」

 手元の臭気計を握ったルーが叫ぶ。

 「どうする! もう「アドヴェロス」が捕まえちゃう!」
 「「Ωカメムシ」はどこ!」
 「多分あっち!」

 防疫服を着てない柳さんは離れてもらった。
 私とルーとハーが必死に探す。

 「亜紀ちゃん! この臭いはまずい! 犠牲者がどんどん出るよ!」
 「ハー! アレだよ!」
 「アレって何!」
 「ウンコだよ! この公園全体をウンコにして!」
 「なるほど!」
 「ウンコになれば、「Ωカメムシ」の臭いも取れるね!」
 「そういうこと!」

 ハーが「ウンコ100分身」を発動した。
 ウンちゃんの特殊能力で、中央公園をどんどんウンコ化していく。
 私と亜紀ちゃんで倒れている人たちを「アドヴェロス」の所へ運んだ。
 念のため仮面をかぶっているけど、早乙女さんには分かったと思う。

 「御協力、感謝します!」
 「あとは私たちでやりますから!」
 「でも、ハンターも連れて来ているので」
 「いいえ、あの悪臭は危険です! デュールゲリエも倒れてますよ?」
 「えぇ!」

 なんでか私にも分かんない。
 亜紀ちゃんがデュールゲリエを担いで来た。

 「うわ! なんだこの臭いはぁ!」
 「ね、危険ですから」
 「分かりました!」

 「早乙女さん、なんか公園がおかしいぞ!」
 
 早霧さんが早乙女さんに言った。

 「なんだ、あれ!」

 ハーの能力がこっちまで来た。

 「あ、臭いが変わった!」
 「ほんとだ! 臭いけどさっきよりマシだ!」
 「こりゃ、ウンコの臭いか?」

 遠巻きにしていた警官隊から声が聞こえる。
 やったね!

 ハーが上空へ飛んだ。
 ちゃんとケースを抱えているので、捕獲したんだ!

 「敵は回収しました!」
 「そうですか!」
 「では、我々はこれで!」
 「え、あの、この公園は?」
 「後処理はお願いしますね」
 「え?」
 「では!」

 亜紀ちゃんと一緒に飛んだ。
 もう知らないもん。

 「ちょ、ちょっとぉ!」

 下で早乙女さんが叫んでいるのが聞こえた。
 もう知らないもん。
 ほんと、ゴメンナサイ。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 家に帰ってからが大変だった。
 防疫服の臭いがまずきつくて、全員脱いだ。
 焼却しようと思ったけど、臭いが散りそうで結局ウンコにした。
 柳さんが絶叫してた。

 ケースも相当臭うけど、これはハーが一生懸命に洗った。
 便利屋さんからもらった特殊な洗剤を使った。
 事故物件の洗浄剤ということだった。
 防護服を脱いでも身体に臭いが付いてたので、庭で裸になってみんなで一生懸命に洗った。
 柳さんは「虎温泉」を準備してくれる。
 ウンコは全部ゴミ袋に入れて、佐藤家に持ってく。
 佐藤家で待機しているデュールゲリエに渡した。

 「これ、なんですか?」
 「ウンコ」
 「……」

 受け取ってくれた。
 早乙女さんから連絡が来た。

 「ルーちゃん! カメムシ型ってどうなったの!」

 ちょっと怒ってるよー。

 「はい、こちらで処分しましたー」
 「え!」
 「あれは保管できないんでー」
 「そうか。それはいいんだけど、中央公園、大変だよ!」
 「あはははははは」
 「いや、笑いごとじゃなくてね!」
 「だって、ああするしか被害を止められなかったじゃないですか」
 「そんなこと言っても! 全部ウンチになってるじゃないか!」
 「しょーがないですよー」
 「ルーちゃん!」
 
 電話を切った。
 まあ、また復興の資金は提供しよう。
 しかし、あの公園って、ぶっ壊れるの何度目だぁー?





 「虎温泉」に入ってると、タカさんからも電話が来た。

 「よう、大変だったようだな?」
 「うん、でも私たちで片付けたから」
 「そうか。早乙女が大分怒ってたぞ」
 「もう、しょうがないよ。物凄い悪臭のライカンスロープだったんだ」
 「あのブガッティのショウルームの奴だろ?」
 「そうそう。「アドヴェロス」でちゃんと保管してなくって」
 「しょうがねぇなぁ」

 よかった、タカさんには何もバレてない。

 「でもよ、臭いだけのライカンスロープなんて、よく作ったよなぁ」
 「うん、それでも強烈だよ? 気絶しちゃうほどなんだからさ」
 「そうかぁ。ああ、また中央公園がえらいことになったって?」
 「ハーがウンちゃんの能力でね。あの臭いは他に取りようがないからね」
 「よく思いついたな!」
 「ワハハハハハハハ!」
 
 わーい、タカさんに褒められたぁー!

 「早乙女たちは、結局ウンちゃんを運んでくるようだ」
 「なるほど!」

 ウンちゃんの能力で、ウンコを真水に変えるのかぁー。

 「今、防疫服を着た警官が、目隠しで周囲をブルーシートで覆っていくとこだって」
 「大変だね」
 「まあな。でもあそこもよ、何度も爆破されて、今回は全ウンコかぁ」
 「アハハハハハハハ!」

 ほんとだよねぇ。

 「まあ、お前らのお陰で助かった。よくやったぞ」
 「うん!」
 「じゃあ、引き続き留守を頼むな!」
 「はい!」

 タカさんは上機嫌だった。





 
 でもさー。
 なんか、助かったけど、ものすごーく不味いことになった気がするよ?
 これ、バレたら相当大変な事案なんじゃ……
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