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カメカメ ぷぅー Ⅱ

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 「カメカメ(ちょっとお腹減ったなー)」

 ボクは自分の能力は理解していた。
 自分に何が出来るのか。
 そしてどうやって生きていくのか。
 自分でもよく分からないけど、自分に「知性」というものが芽生えたことを認識していた。
 ただ、その「知性」がどういうものかはまだ分からない。

 「カメカメ(あ、美味しそうだぞ)」

 大勢の人間が集まってる。
 その中で、小さな魚が一杯泳いでいるのを見つけた。
 飛んで行って、一匹に口吻を挿した。
 ちゅーちゅー。

 「ギャァァァァァーーーー!」

 物凄い叫び声が響いた。
 人間が驚いてる。
 あまりに大声だったので、びっくりしてもらしちゃった。


 ぷぅー


 「ぐわぁぁ! 臭ぇ!」
 「な、なんだこりゃぁ!」

 人間たちが叫んで、どんどん倒れていく。
 なんだよ。
 あ。

 小さな魚たちがプカプカ浮いてる。
 もう一匹食べようとしたら、臭くて食べれなかった。

 「……」

 ボクの臭いかぁー。
 しょうがないから飛んだ。
 くっさいし。

 どこに行っても良かったんだけど、なんか懐かしい方へ飛んでみた。
 「帰巣本能」っていうんだ。
 知らない言葉をボクは知ってた。
 まー、いいじゃん。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 「港区の三田町で悪臭による昏倒被害がありました!」
 「なんだと!」

 成瀬さんが早乙女さんに報告した。

 「縁日の金魚すくいの屋台だったようです! 突然巨大な銀色のカメムシが飛んできて、周囲の人間が次々に倒れました」
 「あいつかぁ!」

 234名が昏倒し、現場は大変な騒ぎになり救急車では足りずに警察車両も動員されて病院に搬送されているそうだ。
 もうあんな場所まで移動したのか。
 早乙女さんと早霧さんが話していた。

 「今、便利屋さんと連絡を取ってる」
 「あの人、どこにいるんです?」
 「家族旅行で京都に行ってるらしいよ」
 「じゃあ、戻るのは時間がかかるなぁ」
 
 俺が思いついて言った。

 「柏木さんはどうなんですかね?」
 「あぁ!」

 早乙女さんが叫び、他のハンターたちも同意した。

 「あの人、拝み屋でしょ? 失せ物探しも出来るんじゃないですかね?」
 「磯良、あったまイイ!」
 
 愛鈴さんが俺の頭を抱き締め、早乙女さんが早速連絡していた。
 柏木さんは今のところ「アドヴェロス」の外部嘱託の立場だ。
 普段は別な場所で何かをされているらしいが、詳しいことは聞いていない。
 ただ、信頼出来る人であることは、何度かお会いして全員が知ってる。

 「柏木さんはあと30分で来てくれるそうだ!」
 「「ファブニール」を準備します!」
 「成瀬、保管ケースもだ! それが一番重要だぞ!」
 「俺は液体窒素をもらってくる!」
 「鏑木、できるだけ量を揃えてくれ」
 「分かってます!」
 「他の人間は防疫服を探してくれ。出来れば人数分を手配」
 「はい!」

 早乙女さんが指示を飛ばしている。

 「羽入と紅はまだ時間は大丈夫か?」
 「はい、予定はありませんから」
 「あいつの捕獲はとにかく大変なんだ。一緒にいてくれ」
 「もちろんです!」

 柏木さんがタクシーで到着した。
 柏木さんがカメムシ型の行方を霊視し、それに霊素観測レーダーと《ぴーぽん》とが連携して捜索した。
 その結果、カメムシ型は新宿方面へ移動中であることが分かった。

 「新宿か!」
 「あそこは事件が多いよなぁ」
 「いいえ、多分その先です」

 柏木さんが言って、みんなが驚いた。

 「じゃあ、中野か杉並区ですか?」
 「多分。今は空腹のようで餌を探していますが、目的は帰巣本能のようなものかと」
 「帰巣本能? ではカメムシ型が生まれた場所ということですか?」
 「正確には分かりません。でも、何か懐かしい場所を目指しているような。特別な記憶があるのかもしれません」
 「そうですか……」

 早乙女さんも要領を得ないようだった。
 だが、柏木さんの言うことをみんな信じた。
 とにかく、全ハンターで向かうことになった。
 デュールゲリエも5体が同行する。
 攻撃的なタイプではなさそうだったが、なにしろあの悪臭は手に余る。
 臭気に影響されないデュールゲリエたちは頼りになるだろう。
 「ファブニール」の他にも車両を出すことにした。
 何カ所かに分かれる可能性もあるためだ。
 俺と愛鈴さんはシボレー・カマロに、羽入さんと紅さんはマクラーレンのGTS、他の早乙女さんたちは「ファブニール」に搭乗した。
 もちろん、全員防疫服を着ている。
 早乙女さんは、念のために「虎」の軍にも連絡を手配したそうだ。
 万一の場合は手を借りることになるのだろう。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「亜紀ちゃん! 大変だよぉ!」
 「どうしたの?」
 「今、雪野さんから連絡があったの!」
 「だから何!」
 「「Ωカメムシ」が「アドヴェロス」から脱走したんだって!」
 「ゲェ!」

 今日は8月22日の土曜日。
 午後2時。
 私とハーが石神家本家の剣技を練習して一休みしてたところに、雪野さんから連絡が入った。
 タカさんにも連絡しているようだけど、なんと「Ωカメムシ」が「アドヴェロス」の冷凍保管庫から脱走したとのことで、念のため私たちの家にも連絡が来たようだ。
 もちろん、「Ωカメムシ」を私たちで飼育したことはタカさんも早乙女さんたちも知らない。
 「アドヴェロス」では捕獲した後でライカンスロープの一種として冷凍保存されていたはずだ。
 それは私たちが「昆虫型は冷凍すると大人しくなるよ」って早乙女さんに教えたからだ。
 早乙女さんはあの時蓮花さんの研究所に送るとか言ったけど、私が「標本でとっといた方がいいよ?」と言うと、早乙女さんはそのまま従ってくれた。
 だからタカさんもほとんど関わってない。
 「Ωカメムシ」って名前も誰も知らない。

 すっかり忘れてたよー。
 亜紀ちゃんも驚いて焦ってる。
 タカさんはロボとニューヨークに出掛けてる。
 皇紀ちゃんは蓮花さんの研究所だ。
 家には私とハー、亜紀ちゃんと柳ちゃんしかいない。
 まあ、最強だけど。
 でも、あの「Ωカメムシ」はまずいよー!
 この家であのオナラしたら大変なことになる。
 何が一番大変って、タカさんにバレたら恐ろしいことになる!!
 だって、「Ωカメムシ」ってタカさん、知らないんだもーん!!!

 「亜紀ちゃん、どうしよう!」
 「とにかく、ここに来させないようにしないと!」
 「もう、「アドヴェロス」が捕まえる前に私たちで処分した方がいいよ」
 「うーん、前回も大変なことになったもんね」
 「磯良、気絶したもんね」

 4人で話し合った。

 「ここに来たらどうする?」
 「冷凍保存だよね?」
 「液体窒素は2瓶あるよ!」
 「「Ωカメムシ」のケースはまだあるよ」
 「取り敢えず準備しておこう」
 「とにかくさ、絶対にオナラさせないように」
 「あ、ガスマスクも用意するかー」
 「必須だよね」
 「あと、防疫服もいるよ! 今3人分ある!」
 「接近は分かる?」
 「勘だね」
 「「「うーん」」」

 それしかないじゃん。
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