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再び「カタ研」サバイバルキャンプ Ⅶ

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 結局、三人がかりで押さえ込まれ、私も抵抗出来なくなった。
 本気で抵抗すれば、三人に大怪我を負わせることになる。
 仕方なく、一度地上に戻った。
 パレボレが抱き着いて来る。
 パレボレも泣いている。
 非力な両腕で掴まれ、私は身動き出来なかった。

 「亜紀さん! もう行かせませんよ!」
 「パレボレ!」

 思わず泣きそうになった。
 そんな場合じゃないんだけど、涙が溢れて来た。

 「分かった! みんなで頑張るよ!」

 「神」はその巨体で進んで来る。
 その後ろから、多数のバイオノイドが疾走して来るのが分かった。
 「神」に私たちを抑えさせ、あの光の柱に向かおうとしているのだ。
 私たちは必死でバイオノイドたちを攻撃したが、「神」の攻撃に振り回された。
 縄文紋様のような身体の腕を振るうと、重力が変わるのを感じる。
 全身が何十倍も重くなり、「花岡」の動きを乱される。
 ルーとハーも石神家の剣技を振るおうとするが、それが出来なくなる。
 「神」への攻撃はみんなにはさせず、私と柳さんで何とか妨害程度の攻撃をした。
 でも、なかなか通じない。
 バイオノイドたちは、もう森の中へ入ろうとしている。
 このままじゃダメだ!






 その時、上空で轟音が響いた。
 大きな穴が空いて、「タイガーファング」が降りて来た。
 別に一人、誰かが「飛行」で向かって来る。
 その人が「神」を攻撃する。
 その攻撃で、巨大な「神」の身体が揺らいで手が千切れ飛んだ。
 私たちはすかさず、森へ入ろうとするバイオノイドたちを一掃した。
 降りて来た人の姿が確認できた。

 「お前ら! 無事かぁ!」

 「「聖さん!」」
 「「聖!」」

 四人で同時に叫んだ。
 もう助かったと思った。
 聖さんが来たら、もう大丈夫だ!

 そして「タイガーファング」の向こうから見たこともない五角形の飛行体が来た。
 その飛行体から何かが飛び出して、「神」を両断した。

 「「「タカさん!」」」
 「石神さん!」
 「ニャー!」
 「「「「ロボぉー!」」」」






 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■




 

 バトルシップで悪魔島の上空に着くと、救援チームの「タイガーファング」が上空にいた。
 一人が外へ飛び出したのが見える。

 「聖か!」

 こちらの「大銀河連合」のバトルシップに驚いていたようだが、グランマザー(分体の分体)が通信を開き俺が説明した。

 「聖、俺だ!」
 「トラかぁ! 驚いたぜぇ!」
 
 すぐに聖と状況を共有する。
 俺が島で《宇宙の悪魔》が結界を張っていることを聖に伝えると、聖はすぐに把握する。
 そして《宇宙の悪魔》はあと10分も経たずに消滅することを話す。

 「「聖光」で結界をぶっ飛ばせ!」
 「おう!」

 それだけで聖はやるべきことを理解した。
 俺たちはそのように出来ている。
 聖は「聖光」を直下にではなく、地上と45度の角度に構えた。
 銃弾の威力が島に向かないようにだ。
 一発目で島を覆う竜巻が千切れ、もう一発で穴が空いた。
 未知の現象に対して、聖は正確に達成した。
 聖が先に飛び込み、「タイガーファング」が続いた。
 バトルシップもその後を追う。
 結界の中に入り、俺とロボもバトルシップの外に出た。

 聖は「神」の身体の一部を吹っ飛ばし、子どもたちの傍に降りて、「業」のゲートに向けて構える。
 俺はそのまま「神」を七星「虎王」で両断した。
 聖は森の中のバイオノイドを駆逐していく。
 そういうことも互いに話さずとも連携した。
 「タイガーファング」からソルジャーたちが降下し、デュールゲリエも展開する。
 バトルシップも砲口を開き、地上の敵を駆逐していく。

 「ロボ、行けるか?」
 「にゃ!」

 ロボが光の柱に向かって「ばーん」を放つ。
 これまでの光の球を飛ばすのではなく、直線状に光が伸びて行く。
 いつもの「バーン」では狭い島では不味い。
 ロボもちゃんと理解している。
 

 ドッグゥゥォォォーーーーーン!


 山頂が吹っ飛び、光の柱が消えた。

 子どもたちと「カタ研」のメンバーは全員無事だった。
 予想外もいいような厳しい展開に、こいつらは耐え切った。
 大した奴らだ。
 グランマザー(分体と分体の分体)たちが驚いていた。
 ロボが《宇宙の悪魔》を消し去ったからだ。
 全員で、ゲートを攻撃した。
 数分でゲートは崩壊し、全ての戦闘は終わった。




 
 
 救出チームの「タイガーファング」が島に降りた。
 聖が俺の傍に来た。

 「聖、また世話になったな」
 「いいって。あいつらのためならいつでもな」
 「ありがとう」
 「また近々会えるな」
 「ああ、楽しみだ」
 「俺もだぁ!」

 子どもたちと「カタ研」の連中が聖に礼を言って行く。

 「聖さん! ありがとうございました!」
 「まあ、無事で良かったぜ。お前らよく頑張ったな」
 『はい!』

 聖が見慣れない「大銀河連合」のバトルシップを見ていた。

 「トラ、あれなに?」
 「ああ、「大銀河連合」のバトルシップだよ」
 「へぇー」
 
 俺にも他に説明のしようがねぇ。
 何しろ俺も京都から乗って来ただけだ。

 「お前、乗ってく?」
 「いや、いいよ」
 「そう?」
 「うん」

 聖が笑って一人で飛んで帰って行った。
 まあ、あいつは気持ち悪いのだろう。
 それに、口には出さなかったが、聖は今非常に忙しいはずだ。

 「グランマザー、世話になったな」
 「いいえ、とんでもありません。むしろ力及ばず、申し訳ありませんでした」
 「いや、お前が結界の中に来てくれて、子どもたちが助かった。それに《ハイヴ》も一つ潰してくれたんだろう?」
 「はい。でも最初に《ハイヴ》を使って妖魔を送り込むことを阻止出来ませんでした。ああいうことは予測出来ましたのに」
 「いいよ。今回のことで「業」の軍のやり方が分かったしな。今後は対応も出来るようになったよ」
 「はい。わたくしたちも注意して参ります」
 「頼むな」

 グランマザー(分体)が俺を見て小声で言った。

 「石神様。今回の件、恐らくミレー星系にも影響があるかと」
 「なんだと?」
 「石神様は先日、トゥアハー・デ・ダナン星系に《リア・ファル》を送り込まれました」
 「ああ、そうだな」
 「恐らく、その対極平衡現象として、「業」に《宇宙の悪魔》がもたらされようとしたのではないかと」
 「何!」

 グランマザーは、宇宙規模の現象では、必ずバランスを取る動きがあるのだと語った。

 「じゃあ、それが失敗したということは……」
 「はい。石神様の軍勢が大きくリードしたことになるかと思います。「業」は機会をものに出来ませんでした」
 「そういうことか……」

 俺には分からない。
 しかし、俺の中でそのことが納得できるような気がした。
 グランマザーたちも子どもたちに礼を言われ、去って行った。

 俺は子どもたちから、詳しい状況の経過を聞いた。
 夜の10時頃に突然光の柱が現われ、すぐに脱出不可能になったと。
 そしてゲートが出現し、ロシア兵との交戦が始まり、グランマザーが救出に現われ、そして妖魔の軍勢との交戦。
 その時に、どこかの《ハイヴ》が使われたのだろう。
 グランマザーの分体の分体がそのことを観測し、更なる別な《ハイヴ》の活性化を逸早く潰してくれた。
 お陰で子どもたちは強大な「神」との交戦を避けられたが、ゲート内の大量殺戮によって「神」が顕現した。
 ルーが自分の判断のミスだと言ったが、俺はそうではないと伝えた。

 「お前がやらなければ、押し寄せる妖魔に対応出来なかったかもしれない」
 「うん、でも「神」が来たら手が出なかったよ」
 「俺たちがいる。あの状況だ。お前も救出作戦が展開していることは分かっていただろう? だからやったんじゃないのか?」
 「うん、そうだよ! 絶対にタカさんが来てくれると思ってた!」
 「そうだ、それでいい」

 俺はルーを抱き締めてやった。
 緊張が解けたルーが泣いた。

 「しかしよ、お前らの「サバイバルキャンプ」ってどうなってんだよ」

 俺が笑いながら言うと、「カタ研」の全員も笑った。

 「ほんとですよね」
 「ああ、一つ言っておくことがある」
 「なんですか?」
 「この島は、「悪魔島」と呼ばれているそうだ」
 「ん?」

 亜紀ちゃんの頭を掴んだ。

 「お前よ、多分現地の人間は「あ、悪魔島!」って言ったんだよ!」
 「はい?」

 「亜紀ちゃんは「ああ、クマ島!」って聞いたって言ってたよな?」
 「!」
 
 聞いていた全員が驚いていた。
 亜紀ちゃんが蒼白になる。

 「まあ、「悪魔島」って聞いてたとしても、この展開は予測出来るわけでもねぇけどな」
 「そ、それは……」
 「怪しい島だから辞めてたかもしれないけどな。でもお前らがいたお陰で、敵の強化作戦を防ぐことにもなった。結果論だが、聞きボケが活かされたということだ」
 「タカさーん!」

 俺は子どもたち以外の「カタ研」のメンバーに頭を下げた。

 「今回もまた、うちのボンクラたちが迷惑を掛けた。申し訳ない」

 子どもたちも一緒に頭を下げた。
 亜紀ちゃんは土下座している。

 「石神さん、とんでもありません。前と同じです。それに今回は全くの偶然でしたし」

 坂上君がそう言ってくれる。
 他のメンバーも同じだ。

 「それに、僕たちは全員、「虎」の軍に入るつもりです。ですから、こういう戦いは覚悟しています」
 「おい、坂上君……」
 「御堂部長、僕たちもちゃんと戦ってましたよね?」

 柳が笑顔で肯定した。

 「うん、立派だったよ!」
 「ルーちゃん、どうだった?」
 「みなさん、本当に立派でした!」

 みんなが笑った。

 「でも、グランマザーとかびっくりしました」
 「「虎」の軍って、地球外生命体とも関わっていたんですね!」

 みんなが口々に言う。
 俺はまだパレボレのことは話さなかった。
 パレボレは人間として「カタ研」で愛されている。
 正体を明かしても受け入れてもらえるだろうが、今は余計なことを考えずにいて欲しい。

 「タイガーファング」に全員を乗せて、東京へ戻った。
 俺の家で寝かせ、詫びはいらないと言われたが、子どもたちに翌日に「銀河宮殿」で食事をご馳走させた。
 俺は朝に京都へ戻り、ロボと一緒にのんびりと過ごした。







 「あなたさま」

 その夜、ベッドで麗星が俺に言った。
 とんでもないことを知らされた。
 
 トラちゃん、びっくり。
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