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再び「カタ研」サバイバルキャンプ Ⅴ

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 「タイガー! 日本の北海道で異常な霊素反応があった!」

 アラスカのターナー大将からの連絡が入った。

 「どういうことだ!」
 「これまで観測されたことのないパターンと濃度だ。「業」の分体が出た時よりも強いぞ!」
 「北海道のどこだ?」
 「先ほど解析が出た。ワッカナイ沖の島らしい」
 「!」

 おい、それってまさか……

 「それと同時に、ディアブロたちの「コウキ通信」の信号が途絶えた。《ウラノス》に確認すると、彼女らもワッカナイ沖の島にいたらしいが」
 「その通りだ……」

 もうそれで分かった。
 事実関係が完全に繋がったわけではないが、この流れは「カタ研」のサバイバルキャンプの島だろう。
 あいつらの「妖魔引き」の強さはどうなっているのか。
 ターナー大将に事情を話した。

 「うちの子どもたちが大学の仲間と一緒に、その島にキャンプに行ってるんだ」
 「なんだって!」
 「あいつらが何かやったわけではないだろうけどな。それで俺は今、京都の道間家にいるんだよ」
 「おい、話が繋がらないぞ?」
 「さっき麗星から聞いた。今日は星の巡りが特別で、途轍もない妖魔が短時間出現するらしい」
 「なんだ?」
 「500年に一度のことらしい。今日が丁度その日だ。そしてその出現場所が、恐らく子どもたちが行っているその島なんだよ!」
 「タイガーが派遣したのか?」
 「違う! 単なる偶然だ」
 「おい、本当かよ!」

 まあ、驚くだろうなぁ。
 俺もびっくり。

 「タイガー、今偵察チームを派遣した。それならばこれから救援チームも送るぞ」
 「ああ、念のために頼む。全員で13名のはずだ」
 「分かった、前回と同じだな」
 「妖魔は大体30分ほどの出現らしい。これまでも被害らしいものは無いが、念のために警戒してくれ」
 「もちろんだ」

 ターナー大将は偵察チームの部隊編成を俺に報告した。
 まず偵察チームは霊素観測レーダーを積んだ「ウラール5」が飛ぶ。
 最新鋭のレーダーであり、詳細なデータを解析出来るはずだ。
 護衛でデュールゲリエや戦闘機「ニーズヘッグ」も出る。
 その後で、ターナー大将は救援チームも組織して送ると言ってくれた。

 「タイガーはどうする?」
 「念のために準備はしておこう。でもなるべくならあいつらに対処させたい」
 「分かった。では状況は詳細に送るようにする」
 「ああ、頼む」

 俺はそれほどの心配はしていなかった。
 あいつらならば、大抵の相手は撃破するし、また今回は「カタ研」のメンバーもいるので無理することなく撤退もするだろう。
 それは前回の教訓としてあいつらの中にもあるはずだ。
 
 今回は俺の考えが甘かった。
 そして、別な展開があった。






 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■



 


 敵の妖魔は島に出てくる前に大体を斃していた。
 私とハー、柳さんの攻撃を主軸に、「カサンドラ」はルーの指揮で1分ずつのガン・モードの連射を交代で行なっている。
 そうすることで、数人での面制圧を連続して実現していた。
 真夜と真昼は敵の攻撃迎撃に専念している。
 グランマザーの強力な結界があるが、二人のレジスト攻撃によって、全員が安全に攻撃に集中出来た。
 今のところ非常にいい感じだ。
 そして、あの光の柱には絶対に手を出さないようにしている。
 刺激してもしもあれが動けば、戦線はたちまち崩壊する可能性があった。
 それほどに強大な存在だ。
 ルーが新たな指示を出した。

 「ジョナサン! ゲート内に「マテリアルバースト」を撃って!」
 「いいんですか!」

 「マテリアルバースト」は、ジョナサンの最高の技で、反物質を任意に生じさせる能力だ。
 あまりにも強力な能力なので、通常はタカさんの許可がいる。
 でも、今は緊急事態だ!

 「うん! 威力は任せるよ。強い奴でもいいから!」
 「分かりました!」

 ルーは幾ら斃しても押し寄せる敵軍に対して決定的な手を打ちたかったのだろう。
 全員が全力で迎撃しているので、時間が長引けば不味いことになる。
 それにジョナサンの「マテリアルバースト」は非常に強力な技なのに対して、状況証拠を残さない。
 だからだろう。

 「全員一時対ショック準備! ジョナサン!」
 「はい!」

 ジョナサンがゆっくりと右手を前に向けた。
 数秒後、ゲートの内部で巨大な爆発が起きる。
 反物質が対消滅し、質量が全てエネルギーに変わったのだ。
 こっちにまで熱風が来た。
 多分放射線も来ているだろうが、グランマザーのバリアが防いでくれる。
 
 「ルー! ゲートの敵が消えたよ!」

 状況を観測していたハーが叫んだ。
 あれほどの数の妖魔が大量に消えたようだ。
 今のジョナサンの一撃で、数千万の妖魔が斃されたとハーが言った。
 タカさんはジョナサンの「マテリアルバースト」を重要視していたが、ここまでの威力があるとは私も思ってもみなかった。

 「ジョナサン! スゴイじゃない!」
 「いいえ。まだ抑えた力です。これ以上は自分でも恐ろしくて」
 「十分だよ! 本当に凄いよ!」

 ルーが叫ぶ。

 「亜紀ちゃん、油断しないで! まだまだ来るよ!」

 ゲートから、新たな敵が来るようだ。
 もうなんでも来い!
 謎の光の柱出現から21分経過。






 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 「ターナー大将、救援隊はどうしますか?」
 「先ほど向かった偵察隊は、非常に強力な結界に阻まれて何も分からないようだな」
 「はい!」
 「結界を突破する人間が必要だ。セイントに依頼しろ!」
 「分かりました!」

 セイントはタイガーと共に「虎」の軍の双璧だ。
 それに非常に忙しい。
 傭兵派遣の会社を経営しているが、今は「虎」の軍のためにいろいろと動いてくれている。
 各地の《ハイヴ》の調査やその他の「業」の軍事施設の偵察や破壊工作も担ってくれている。
 アラスカのソルジャーたちとの共同作戦も多い。
 それに、現在は新たに引き入れたあの「ガンスリンガー」たちの訓練に傾注しているはずだ。
 果たしてこの緊急出動に来てくれるかどうか。

 「セイントからの通信です!」
 「繋げ!」
 「はい!」

 セイントが「皇紀通信」で連絡してくれた。

 「セイント! タイガーの子どもたちが行った北海道の島で大変なことが起こっている!」
 「分かった、すぐに行くぜ!」
 「そちらの状況は大丈夫なのか?」
 「バカ! トラの子どもたちだろう! 急げよ!」
 「あ、ああ、分かった!」

 セイントは一切の都合を語らなかった。
 彼の中での優先度は、仕事の優先度ではないことが分かった。
 状況を一つも聞かなかったし、危険度も何も聞かなかった。
 ただ、タイガーの子どもたちが大変だと言っただけで、セイントはすぐに来ると言った。
 それが我々「虎」の軍なのだと、私も改めて思った。

 セイントはその言葉通りすぐに「Ωコンバットスーツ」でアラスカに来た。
 私も急いで集めた「虎」の軍の精鋭チームと共に「タイガーファング」でセイントと共に送り出した。
 そして確信した。
 セイントは必ずディアブロたちを救出すると。
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