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真夏の別荘 愛する者たちと Ⅱ

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 別荘に戻ると、3時になっていた。
 早乙女達も来ていて、みんなで挨拶した。
 怜花と久留守が俺に抱き着いて来る。

 「「いしがみさん!」」

 本当にカワイイ。

 「雪野さん!」

 俺が雪野さんに抱き着こうとすると、早乙女が泣きそうになったので謝った。
 みんなでお茶にする。
 グラマシーニューヨークの杏仁豆腐をみんなで食べた。
 亜紀ちゃんが、スーパーでのことをみんなに話した。

 「ローマ教皇も来たんだって!」

 みんなが笑っていた。

 「あの人、ヒマなのかな」
 「忙しいですよね?」
 「そのはずだよなー」

 柳が早速検索した。

 「あ、ありましたよ!」

 柳がスマホの画面を訳して読み上げる。
 ローマ教皇庁のニュースだ。

 《サイバ氏が絶賛されているイシガミ氏の懇意にしている別なお店に行きました》
 「何やってんだよ!」
 《長野の「マルイチ・スーパー」です。イシガミ氏がよく利用されるお店であると同時に、イシガミ氏が数々のアイデアを出している場所です》
 「何言ってんのぉー!」
 《興味を持ち、先日行ってまいりました。そこは広く清潔な店内で、沢山の新鮮な食料品が……》
 「普通のスーパーだろう!」
 《イシガミ氏の提案だという「子ども広場」という場所に行き驚きました。大勢の子どもたちが楽しそうにダンスを踊っていました。そこにあのイシガミ氏が恋人の女性と踊っている映像が……》
 「六花! お前のことも言われてんぞ!」
 「そうですか」
 「もっと怒れよ!」
 「いえ、別に」
 「……」

 《フードコートでタイヤキというスイーツをいただきました。それが非常に美味で驚き……》
 「普通のたい焼きだぞ!」
 「タカさん、あそこの美味しいよ?」
 「タカさん、前に店長さんに聞きましたけど、《日本たい焼きコンクール》で優勝したらしいです」
 「マジか!」
 《マネージャーの方が案内して下さり、イシガミ氏のお話を聞きました。彼は数々のアイデアを無償で下さるばかりか、昨年はお店が間違えて大量発注してしまったマツタケを全部購入してくれたのだと。お店は困っていたようなのですが……》
 「あれは俺が喰いたかっただけだぁ!」
 「でも随分と余ってあちこちに配りましたよね?」
 「……」

 柳が全文を読み上げて、俺はゲンナリした。
 柳はスマホの画面でニコニコのローマ教皇と店長さんが並んで写っている写真を見せてくれた。
 ニコニコのマクシミリアンもいた。

 「……」

 ローマ教皇の発表により、現在日本中のクリスチャンが押し寄せ、欧米からもたくさんの観光客が行っているそうだ。
 外国人にとっては新館の様々なアトラクションやフードコートでの安くて美味しい食事などが新鮮なようだった。
 スーパーでもその人気にあやかって《ISHIGAMI・SET》なるものを販売しているようだ。
 俺の顔と全身の写真、それに買い物中の光景の写真、たい焼きとアイスコーヒーのフードコートでの食事券、青い花火など。
 前に集客で俺の写真を使ってもいいかと店長さんに尋ねられ、俺が快諾したことはある。
 麻布のハンバーガー屋のこともあるので、スーパーの売上に貢献するのならと思った。
 どうせ滅多に行かないし、俺は芸能人でもないので、俺目当てに行く人間もまさかいないだろうと思っていた。
 しかし、甘かったようだ。
 俺たちの周囲に群がることこそなかったが、客たちは俺たちを見ていた。
 まあ、以前から大量に購入する目立つ客ではあったのだが。
 その上に、ローマ教皇の余計な話だ。
 青の「般若」のこともあり、クリスチャンからは俺のこと自体が大分注目されていたようだ。 
 だから地方のスーパーにも関わらず、大勢の巡礼のような気分の人たちが来ているようだった。
 青の店とは違って大勢が押し寄せても問題ないので構わないのだが。
 そういえば以前から「紅六花」の連中や千万組、ああ、和田商事の人たちなんかも来ていたな。
 
 もうしょうがねぇ。





 お茶の後で六花と軽い訓練に行き、響子とチェスをした。
 子どもたちは庭で鍛錬し、栞と鷹、桜花たちも加わっていた。
 士王と吹雪はロボと遊んだ。
 チェスで行き詰った響子が庭を見てウズウズしていた。

 「私も鍛錬に行こうかな」
 「やめとけよ」
 「私、強くなったよ!」
 「腹筋できるもんな(3回)!」
 「そうだよ!」

 負けそうな盤面を響子が勝手に片づけ、俺たちは庭に行った。
 士王と吹雪はロボと鬼ごっこをしていた。
 庭を駆け回っている。

 柳が俺と響子に気付いて近づいて来た。

 「リュウ、組み手をしよ!」
 「えぇー」

 柳が笑って響子の前に立った。

 「いくよー!」

 柳がゆっくりと響子に拳を伸ばす。
 響子が真剣な顔で受け止めようとした。


 ドッボォォォーーー!


 柳がぶっ飛んだ。

 「リュウ!」
 「レイだぁ!」

 俺がすぐに気付いた。
 響子のガーディアンのレイが柳をぶっ飛ばしたのだ。

 「なんでぇー!」

 柳が鼻血を出している。
 レイの攻撃はハスハも何もしないようだ。
 俺が助け起こして言った。

 「レイが護ったんだよ」
 「だって、傷つけるつもりはないですよー!」
 「だからそれで済んだんだ。危なかったな。俺も想定外だ」
 「そんなぁー!」

 響子が来た。

 「リュウ、レイがごめんねって」
 「うん、大丈夫だよ」
 「冗談のつもりだったって」
 「え、そうなの?」
 
 ロボが心配して近づいて来た。
 ロボは柳のことが大好きだ。
 柳はコンバットスーツをはたいて泥を落とした。
 ロボに降りかかった。


 ドッボォォォーーー!


 ロボの「暗黒星系ハリケーン・キック」を喰らって柳が吹っ飛んだ。

 「なんでぇー!

 「「……」」

 俺と響子は中へ戻った。

 「お前、鍛錬は難しいな」
 「うん」

 夕飯まで二人で大人しく映画を観た。
 『ベイビーわるきゅーれ』だ。
 面白かった。
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