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蓮花研究所 防衛戦 Ⅴ
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「ミユキ、来るぞ」
「おう!」
私と前鬼、後鬼は石神様からいただいた専用武器を身に着けている。
《デモノイド》は強敵らしいが、何としてもこの研究所を護る。
思った通り、《デモノイド》はワイヤータイプのライカンスロープだった。
高速でしかも硬い。
今日の前鬼は専用戦車「グスタフ」に乗っている。
前鬼が後方支援で砲撃を担当する。
私と後鬼が前衛だ。
石神様と親友の聖様との必殺の戦闘パターンと伺っている。
だから、私たちもこのスタイルを極めようと努力して来た。
バイオノイドと《デモノイド》が主にこちらのゲートから出て来るようだった。
恐らく、妖魔を相手にする強力な防衛力を一箇所に集め、バイオノイドたちは研究所に突入して攪乱する役目だったのだろう。
虎白さんはそういうことも読んで、全方位に石神家の剣士を回しているのだ。
しかしとにかく数が多いので、侵入させないためには苦労する。
前鬼が攻撃ロッド《シャルア》を握り「ヴァジュラ」を前方に放った。
広範囲のバイオノイドたちが瞬時に潰れる。
しかし圧倒的な数で押して来るので、それで終わることは無い。
私と後鬼は、その開けた敵陣の中心に飛び込んで行く。
私は両腕のガントレット《フーファイト》と《ロンファイト》から「虚震花」と「無風花」を放ち、両足のソルレット《ランファイト》から「轟雷」を撒き散らしていく。
敵の攻撃や動きを見ながらの瞬時の判断だ。
私たちは何千回もこの訓練をしている。
後鬼は私から離れた場所で《アスラスレッド》を使い、周囲の敵を斬り斃して行く。
後鬼は数ミクロンの極細のチタン合金の糸を何本も操り、敵を斬り刻んでいる。
余りにも細いので、敵もその位置や気配すらも把握出来ない。
《デモノイド》は高速で移動しているが、私たちには位置も動きも掴んでいる。
それなりに強いようだが、今のところ私たちの敵ではない。
「アドヴェロス」のハンターたちとの戦闘はデータとして研究している。
ハンターの中では磯良という少年と愛鈴という女性が傑出していたが、私たちも難なく撃破できるようだ。
それも、三人での連携の賜物だ。
一対一でも戦えるが、連携で迎えればまったく危うさは感じない。
バイオノイドたちはヘッジホッグやデュールゲリエたちに任せた方が効率が良い。
アナイアレイターたちはまだ研究所内に残っており、最終防衛線を敷いている。
石神家の方々がいらして下さったが、ここは私たちの研究所だ。
私たちの手で本来は護るべきだろう。
石神家の方々に不足はないだろうが、私たちは本来の防衛戦をなぞるつもりだった。
そして蓮花様のお傍には士王様と一緒に栞様とシャドウさんがついている。
栞様はお強いし、またシャドウさんは何があっても蓮花様をお守りしてくれる。
それに桜花たちも一緒だ。
万が一の場合には、必ず安全な場所まで運んで下さるだろう。
「ミユキ!」
後鬼が叫んだ。
私も分かっている。
《デモノイド》のハイクラスの奴らだろう。
石神様が、そういうものがいるはずだと仰っていた。
まったく、あの方はいつでも見通しておられる。
私たちにも圧力でその強大さが分かった。
「ミユキ!」
突然、私の前面に高熱が来た。
景色が一瞬で歪む。
恐らく数千度の威力だ。
どんな生物も耐え切れない温度。
私の意識が飛んだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ウラ! 《地獄の悪魔》が撃破されているぞ!」
「待て、「タイニータイド」は石神の存在を確認していない!」
「どういうことだ!」
「研究所に石神はいないのだ! 他の奴が《地獄の悪魔》を殺している!」
「バカな!」
ミハイルが慌てている。
《地獄の悪魔》を投入した限り、それは無敵だったはずだ。
仮に石神がいたとしても、これまでの戦闘記録から、そう簡単に撃破されるはずもなかった。
石神が多くの《地獄の悪魔》と戦っている間に、他の戦力が研究所を駆逐するはずだった。
それが、現実に何体もの《地獄の悪魔》が簡単に迎撃されている。
そんなことはあり得ないはずだ。
下級神によって力を増大させた者たちだ。
これまでも、石神ですら苦戦させたこともある。
それが、今回ハイレベルの《ハイヴ》を解放して数十体の《地獄の悪魔》を戦場に放ったのだ。
石神ですら、その襲撃の全てを短時間に撃破出来るはずはなかった。
研究所の中に侵入し、栞様と死王様を取り返すことが出来るはずだった。
「謎のXか!」
「いや、違う。あの未知のエネルギーとは別なものだ。今あそこには石神家の人間が集まっている。そいつらが対妖魔の剣技を使っているとしか考えられない」
「石神家は《地獄の悪魔》に対抗できないはずだろう!」
「そうだったが、何か技を開発したのだ」
「何とかしろ!」
ミハイルは激高して言う。
「無理を言うな。私にも何も出来ん。今回「業」様が用意して下さった軍団を使うしかないのだ」
「この役立たずがぁ!」
ミハイルがいくら怒ろうとどうしようもない。
だが、まだ全体の5パーセントが喪われただけだ。
あの数に対し100人程度の人数でまともに戦えるはずもない。
機械兵士が何万いたとしてもどうしようもない。
数で呑み込まれるはずだ。
それに今回は《地獄の悪魔》の中でも最強クラスのヴァラクもいる。
人間が相手になるはずもない者だ。
いかに強力な技を編んだとしても、必ず蹂躙されるはずだった。
ヴァラクは大軍団を率いる大悪魔だった。
石神といえども、苦戦するはずだ。
石神がいなければ、敵対できる者はいない。
ミハイルは、ヴァラクの戦場への到達を待った。
「おう!」
私と前鬼、後鬼は石神様からいただいた専用武器を身に着けている。
《デモノイド》は強敵らしいが、何としてもこの研究所を護る。
思った通り、《デモノイド》はワイヤータイプのライカンスロープだった。
高速でしかも硬い。
今日の前鬼は専用戦車「グスタフ」に乗っている。
前鬼が後方支援で砲撃を担当する。
私と後鬼が前衛だ。
石神様と親友の聖様との必殺の戦闘パターンと伺っている。
だから、私たちもこのスタイルを極めようと努力して来た。
バイオノイドと《デモノイド》が主にこちらのゲートから出て来るようだった。
恐らく、妖魔を相手にする強力な防衛力を一箇所に集め、バイオノイドたちは研究所に突入して攪乱する役目だったのだろう。
虎白さんはそういうことも読んで、全方位に石神家の剣士を回しているのだ。
しかしとにかく数が多いので、侵入させないためには苦労する。
前鬼が攻撃ロッド《シャルア》を握り「ヴァジュラ」を前方に放った。
広範囲のバイオノイドたちが瞬時に潰れる。
しかし圧倒的な数で押して来るので、それで終わることは無い。
私と後鬼は、その開けた敵陣の中心に飛び込んで行く。
私は両腕のガントレット《フーファイト》と《ロンファイト》から「虚震花」と「無風花」を放ち、両足のソルレット《ランファイト》から「轟雷」を撒き散らしていく。
敵の攻撃や動きを見ながらの瞬時の判断だ。
私たちは何千回もこの訓練をしている。
後鬼は私から離れた場所で《アスラスレッド》を使い、周囲の敵を斬り斃して行く。
後鬼は数ミクロンの極細のチタン合金の糸を何本も操り、敵を斬り刻んでいる。
余りにも細いので、敵もその位置や気配すらも把握出来ない。
《デモノイド》は高速で移動しているが、私たちには位置も動きも掴んでいる。
それなりに強いようだが、今のところ私たちの敵ではない。
「アドヴェロス」のハンターたちとの戦闘はデータとして研究している。
ハンターの中では磯良という少年と愛鈴という女性が傑出していたが、私たちも難なく撃破できるようだ。
それも、三人での連携の賜物だ。
一対一でも戦えるが、連携で迎えればまったく危うさは感じない。
バイオノイドたちはヘッジホッグやデュールゲリエたちに任せた方が効率が良い。
アナイアレイターたちはまだ研究所内に残っており、最終防衛線を敷いている。
石神家の方々がいらして下さったが、ここは私たちの研究所だ。
私たちの手で本来は護るべきだろう。
石神家の方々に不足はないだろうが、私たちは本来の防衛戦をなぞるつもりだった。
そして蓮花様のお傍には士王様と一緒に栞様とシャドウさんがついている。
栞様はお強いし、またシャドウさんは何があっても蓮花様をお守りしてくれる。
それに桜花たちも一緒だ。
万が一の場合には、必ず安全な場所まで運んで下さるだろう。
「ミユキ!」
後鬼が叫んだ。
私も分かっている。
《デモノイド》のハイクラスの奴らだろう。
石神様が、そういうものがいるはずだと仰っていた。
まったく、あの方はいつでも見通しておられる。
私たちにも圧力でその強大さが分かった。
「ミユキ!」
突然、私の前面に高熱が来た。
景色が一瞬で歪む。
恐らく数千度の威力だ。
どんな生物も耐え切れない温度。
私の意識が飛んだ。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「ウラ! 《地獄の悪魔》が撃破されているぞ!」
「待て、「タイニータイド」は石神の存在を確認していない!」
「どういうことだ!」
「研究所に石神はいないのだ! 他の奴が《地獄の悪魔》を殺している!」
「バカな!」
ミハイルが慌てている。
《地獄の悪魔》を投入した限り、それは無敵だったはずだ。
仮に石神がいたとしても、これまでの戦闘記録から、そう簡単に撃破されるはずもなかった。
石神が多くの《地獄の悪魔》と戦っている間に、他の戦力が研究所を駆逐するはずだった。
それが、現実に何体もの《地獄の悪魔》が簡単に迎撃されている。
そんなことはあり得ないはずだ。
下級神によって力を増大させた者たちだ。
これまでも、石神ですら苦戦させたこともある。
それが、今回ハイレベルの《ハイヴ》を解放して数十体の《地獄の悪魔》を戦場に放ったのだ。
石神ですら、その襲撃の全てを短時間に撃破出来るはずはなかった。
研究所の中に侵入し、栞様と死王様を取り返すことが出来るはずだった。
「謎のXか!」
「いや、違う。あの未知のエネルギーとは別なものだ。今あそこには石神家の人間が集まっている。そいつらが対妖魔の剣技を使っているとしか考えられない」
「石神家は《地獄の悪魔》に対抗できないはずだろう!」
「そうだったが、何か技を開発したのだ」
「何とかしろ!」
ミハイルは激高して言う。
「無理を言うな。私にも何も出来ん。今回「業」様が用意して下さった軍団を使うしかないのだ」
「この役立たずがぁ!」
ミハイルがいくら怒ろうとどうしようもない。
だが、まだ全体の5パーセントが喪われただけだ。
あの数に対し100人程度の人数でまともに戦えるはずもない。
機械兵士が何万いたとしてもどうしようもない。
数で呑み込まれるはずだ。
それに今回は《地獄の悪魔》の中でも最強クラスのヴァラクもいる。
人間が相手になるはずもない者だ。
いかに強力な技を編んだとしても、必ず蹂躙されるはずだった。
ヴァラクは大軍団を率いる大悪魔だった。
石神といえども、苦戦するはずだ。
石神がいなければ、敵対できる者はいない。
ミハイルは、ヴァラクの戦場への到達を待った。
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