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蓮花研究所 防衛戦 Ⅲ

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 「今、高虎から連絡があった! 明日か明後日には来るぞ!」

 俺が鍛錬中の奴らに伝えると、全員が咆哮した。

 「敵はジェヴォーダンが40、バイオノイド4000で、そのうちの100体くらいは《デモノイド》だそうだ。ああ、ジェヴォーダンには空を飛ぶ奴が何匹かいるってよ!」
 
 全員が笑っている。
 なんのこともねぇ。

 「それと俺らが大好きな妖魔は8000万、《地獄の悪魔》も来るぜぇ!」
 『ワハハハハハハ!』

 いい感じだ。
 何人か死ぬかもしれねぇけどな。

 「虎白! 敵は破れた外壁から来るかな?」
 「ばかやろう! それだけの数だ。必ず全方位で来る!」
 「ああ、分かった」
 「作戦も何もねぇ! いつも通りやっぞ!」
 『おう!』

 若い剣士も多いが、どうでもいい。
 戦いで死ぬのなら、それで本望だ。
 俺たちは高虎の大事な人間たち、そして大事なこの研究所を護るだけだ。
 斬が俺に言った。

 「虎白、わしも出るぞ」
 「あ? 別に好きにしろよ。お前が隠れてるって言ったらびっくりだぜ」
 「ふん!」
 
 一緒に俺たちと訓練していたブランたちも言う。

 「私たちも出ます」
 「おう! よろしくな!」

 戦いたいって奴を止める気は毛頭ない。
 だから俺らは仲間なんだ。






 敵が来たのは、高虎から連絡があった二日後だった。
 もう何も準備することは無かったので、俺たちはいつも通り鍛錬をしていた。
 敵の軍団の動向は、監視衛星が見張っている。
 来るとなれば、すぐに分かる。
 まあ、空間転移で来るから、ほんの一瞬のことらしいが。
 ここは霊素観測レーダーがあるので、出現場所はすぐに分かる。
 そこから迎え撃てばいいだけだ。

 「虎白様! 来ます!」

 研究所の量子コンピューター《ロータス》が警報を鳴らし、俺にも直接デュールゲリエを通して伝えに来た。

 「全員! 敵が来るぞ!」
 『おう!』

 130名が全員で叫んだ。
 戦闘が初めての剣士も多いが、上の奴らがなんとか導くだろう。
 まあ、何も難しいことはねぇ。
 練り上げた技をぶち込むだけだ。
 それが出来る奴らだけが剣士になっているのだ。

 「敵! 南の方角にゲートを開きました! 距離50キロ!」
 
 《ロータス》が告げ、俺たちも整えた。

 作戦は無いと言ったが、それは俺たちが個々に戦場を分かっているからだ。
 もう全員が研究所の全方位に走って行く。
 バカでかい施設なので、持ち場に着くまでは数分はかかる。
 でも、最初に50キロ先で迎撃するのはデュールゲリエだ。
 超高速で飛んで行って、とにかく出て来る奴らを撃破していく。
 その時間で俺たちも全方位に到達できるはずだった。

 もう既にデュールゲリエは飛んでいる。
 《ロータス》から、2万機が出撃したと聞いた。
 あいつらも結構やるはずだが、とにかく敵の数が多い。
 きっと、膨大な数がここまで押し寄せるに違いなかった。
 流石の俺たちも、8000万もの妖魔を一度に相手にしたことはない。
 面白ぇ。
 
 デュールゲリエと敵との交戦が始まったと、《ロータス》が報告して来る。
 傍にいたデュールゲリエが端末を俺と隣にいた虎蘭に見せた。

 「おう、便利だな!」

 幅3キロに渡るトンネルのような靄(もや)が見えた。
 そこから続々と敵が出て来る。
 思った通り、最初は防御力に特化した連中のようだった。
 結界を張りながら外へ出て来て後続を守っている。
 
 しかしデュールゲリエの攻撃も相当で、防御結界は次々と破られて行った。

 「スゴイですね!」

 虎蘭が喜んでいる。
 防衛特化の妖魔がどんどん斃されて行った。
 次はハイスピードタイプの連中だ。
 音速でゲートを飛び出して、四方に散って行く。
 デュールゲリエも高速機動で追うが、30パーセントは逃れてこちらへ向かって来た。
 《ロータス》は逐次撃破数を端末に表示していた。
 まだ、全体の1パーセントも斃していない。
 画面では凄まじい殺戮なのだが。
 これが高虎の言っていた、数の脅威なのだ。

 「高濃度の霊素反応。デュールゲリエを一時戦闘域から離します」

 《ロータス》が告げた。
 端末の映像が一瞬小さくなり、すぐに元に戻った。
 上空へ移動し、望遠に切り替えたのだろう。
 見てすぐに分かった。
 《地獄の悪魔》だ!
 全身に激しい電光を閃かせながら、ゆっくりとそいつは出て来た。
 デュールゲリエの攻撃が一切通じない。
 続いて4メートルの細長い姿の奴が出て来た。
 身体の周囲に細い腕が10本以上生えている。
 前に巨大な一つ目と、普通のサイズの眼が無数に体中にある。
 細い奴が巨大な一つ目で上空を見上げた。
 一瞬でデュールゲリエが数十体消えた。
 デュールゲリエの半数以上が戻り、残りは散開した。
 研究所から、ヘッジホッグの攻撃が始まった。
 レールガンやレーザーなどの長距離攻撃の砲台が唸っている。
 ジェヴォーダンが出てきたが、レールガンの弾を浴び四散した。
 しかし、デュールゲリエの攻撃が少なくなったせいか、ゲートから出て来る敵の数が増大し、撃ち漏らした敵が研究所に押し寄せて来るのが分かった。

 「虎蘭! いよいよだぁ!」
 「はい!」

 虎蘭は口の端を吊り上げて笑った。
 
 「よし、やれ!」
 
 虎蘭が「魔法陣」を描く。
 
 《連山》

 俺たちの目の前の外壁がぶっ飛んで行く。
 他でも同様に外壁が破壊されて行く。

 「虎白様!」

 《ロータス》が叫んでいた。

 「どうせ壊す予定だったんだろう?」
 「そうですが!」
 「あれがあると見えなくて邪魔なんだよ」
 「でも!」
 「うるせぇ! 俺は高虎に任されてんだぁ!」
 「!」
 
 驚いて黙り込んだ。

 「ちゃんと話したよな?」
 「はい?」
 「敵が来たら外壁は壊すってよ」
 「いいえ、伺ってませんが」
 「チィ!」

 高虎と同じでノリが悪い。

 「まあ、見てろ! 必ずここは守り抜く!」
 「はい! 御武運を!」

 高速タイプが先に到達した。
 俺と虎蘭は前に出て撃破する。
 数はそれほどではないので、難なく終わった。
 しかし、向こうからまるで黒い津波がこちらへ向かってくるのが見えた。

 「お替り自由だな」
 「そうですね!」

 虎蘭が嬉しそうに笑った。
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