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蓮花研究所 防衛戦 Ⅱ

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 翌朝、8時に虎白さんから電話が来た。
 アラスカから手配した「タイガーファング」にこれから乗り込むそうだ。
 そして8時10分に、蓮花研究所に到着した。
 荷物は少ないとはいえ、随分と積み込みが早かった。
 戦場に行くとなり、非常に行動が早いのだろう。
 まあ、着替えを多少と大量の日本刀があればいい人たちだ。
 機体の後ろのハンガーが開いて虎白さんたちが出て来る。

 「虎白さん!」
 「高虎! 来たぜ!」

 虎白さんや剣士たちと挨拶する。
 あれ?

 「あの、また増えました?」
 「ああ、今130人になってるわ」
 「そんなに! 2週間前、96人でしたよね!」
 「そうだよ。百目鬼家が強い連中を寄越してくれた。それに御坂家もな」
 「えぇ!」
 「御坂家は全員だ。剣士はまだ半分くらいだけどな」
 「それを全部受け入れたんですか!」
 「もちろんだ。強い連中を集めて、お前の前に並べるって言っただろう?」
 「確かに言いましたけど!」
 「まだ全然足りねぇ。悪いな」
 「いいえぇ!」

 とんでもない人だ。
 俺はすぐに蓮花に言って宿泊所などの手配をさせた。
 幸い今後の拡張を見込んで部屋は結構余剰分があった。
 
 斬が近付いて来た。

 「虎白、以前は世話になった」

 俺が斬をからかう。

 「お前! 今、もしかして礼を言った?」
 「なんじゃ!」
 「妖魔に憑りつかれたか!」
 「ばかもの!」

 虎白さんが笑っている。

 「斬、また一緒にやろうや」
 「ああ、もちろんじゃ」

 斬は石神家本家に行っている。
 強くなろうとしている斬にとって、石神家に頭を下げることくらいなんでも無くなったようだ。
 そして斬は実際に強くなった。

 「「高虎さん!」」
 「おう! よく来てくれたな!」
 
 虎蘭と虎水だ。
 嬉しそうに俺の前に来る。

 「高虎さんのお役に立てるのならば!」
 「楽しみですよ!」
 「そうか、ありがとうな」

 「ちょっといいですか!」

 亜紀ちゃんが言った。

 「お二人はタカさんのことを「高虎さん」って言ってるんですか?」
 「そうだけど?」
 「なんでぇー!」
 「お前こそなんだよ!」
 「だってぇ! タカさんのことを「高虎」って呼ぶのは特別な女だけだってぇ!」
 「ばか!」

 めんどくさいことを覚えていやがる。
 俺を「高虎」と呼ぶのはお袋と奈津江と響子だけだ。
 そんな話を前にした。
 つまり、俺にとって特別な人間だけがそう呼んでいたのだと。
 その話をした時、亜紀ちゃんは自分も「高虎さん」と呼べば良かったと言って悔しがっていた。
 亜紀ちゃんたちを引き取った時にそうも言われたのだが、俺はお袋に呼ばれているようだから「タカさん」にして欲しいと言い、そのまま亜紀ちゃんは受け入れた。
 そのことを後悔しているらしい。
 ばからしい。

 「しょうがねぇだろう! 「石神さん」だらけなんだからよ!」
 「じゃあ「トラさん」でいいじゃないですか!」
 「「トラさん」もだらけだぁ!」
 「ハウッ!」

 亜紀ちゃんはせめて「タカさん」にと言ったが、うるさいので黙らせる。
 俺は栞と士王を紹介した。
 虎蘭と虎水が士王を見て夢中で可愛がる。
 士王は愛想よく二人に抱き着き、オッパイをさりげなく揉んでいた。

 「……」

 虎白さんたちは、さっそく研究所の状況を確認したいと言った。
 俺は部屋の追加をするのでと言い、一時的に荷物を集めて宿泊施設に置き、研究所を簡単に案内した。
 まずは防衛の感覚を掴んでもらいたい。
 最初に崩れた外壁を見せた。

 「おい、とんでもねぇな。この外壁は相当なもんだったろう」
 「はい。ジェヴォーダンの直撃も防ぎますし、《地獄の悪魔》は無理でも、中級妖魔の攻撃は全部跳ね返しますよ」
 「それによ、結構な妖魔の結界もあるよな?」

 虎白さんたちは「虎眼」で見ている。
 タヌ吉の結界までもわかるのだろう。

 「防御に関しては最高峰の結界だったはずなんですけどね。試しに撃った技が、霊的破壊力が何しろ桁違いで」
 「大したもんだ。「神雷」にも劣らねぇな」
 「はい」

 虎白さんは「オロチデストロイ」を学びたいとは言わなかった。
 剣士は「神雷」で十分なのだろう。
 剣技を磨く人間たちだ。
 その他の技は余技なのだ。
 ただ、自分たちに向けられることを考え、防御や返し技は研究するのだろうが。
 でも、多分もうそれは虎白さんの中で構築出来ている。
 だから何も聞かないのだ。
 双子の解析とは違った方法で、技のことを見抜いている。
 そういうことがある程度出来なければ、あの「見切り戦」も出来ないのだろう。
 それに、確かに「オロチデストロイ」は途轍もない技だが、万能ではない。

 その後も研究所を案内し、どういう研究施設なのか、また防衛機構も見せて行った。
 ヘッジホッグは石神家にもあるので、驚きはない。
 研究施設などは興味もないだろうから、ざっと説明しただけだ。
 最後に「武神」のハンガーを案内した。

 「高虎、これは……」

 虎白さんたちには分かるようだ。
 剣聖たちはみんな呆然としている。
 ただの巨大ロボットなどではないことが分かるのだ。

 「俺たちの決戦兵器です。これが出撃するのは、俺たちが「業」に勝てなかった時です」
 「お前、これは幾ら何でも……」

 あの虎白さんが絶句している。
 相当な所まで見えているのだろう。
 流石だ。

 「俺たちは勝てなくても、負けるわけにはいかないんです。「業」だけは絶対に斃さないと」
 「分かってる……」

 虎白さんたちが口を噤んだ。
 「武神」たちの兵装は、虎白さんたちには理解出来ないもののはずだ。
 しかし、それが無慈悲で冷徹な「機械」で運用されることが分かったのではないか。
 戦闘の集団である石神家には、直感で分かる。
 そうでなければ異様な能力を駆使する妖魔と初見で遣り合えない。
 もちろん、分かったとしても口にはしない。
 俺が「武神」をどのように運用するのかが分かっているからだ。
 本当に最後となった時に……






 俺たちは虎白さんたちに防衛を任せ、別荘に向かった。
 「業」の軍が侵攻して来たのは、六日後だった。
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