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早乙女家 初キャンプ Ⅱ
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1時間ほどで丹沢の山に着いて、石神に言われた家の駐車場にハマーを入れた。
向かいの登り口に、デュールゲリエが3体待っていてくれた。
「早乙女様、お待ちしてました」
「喋れるんだ!」
「はい。ルー様とハー様がそのような仕様にして下さいました。本日は宜しくお願いします」
「こちらこそ! ああ、妻の雪野さんと、子どもの怜花と久留守です!」
「はい、皆様、宜しくお願いします」
ハマーの後ろからデュールゲリエたちが荷物を降ろし、担いでくれた。
テント、ダッジオーブンや鍋や飯盒などの調理器具、それに食材。
食器は小屋のものを使わせてもらうし、水は小川のものを沸騰させればいいと聞いた。
念のため、10リットルの水も用意した。
山道を登りながらデュールゲリエたちと少し話をした。
「アドヴェロス」でもデュールゲリエが数十体もいるので、慣れている。
顔は鏡面仕様だが、人間と変わらない感情を感じる。
俺たちを歓迎してくれているのが分かって有難く思う。
「お風呂の掃除は済んでおり、水も既に貯めています」
「そうですか! 何から何までありがとうございます!」
「いつでも言って下されば温めますので」
「はい、お願いします」
「私どもは、中腹の待機場所におります。小屋の通信機で呼んで頂ければすぐに参りますから」
「そうですか!」
何から何まで石神らしい気の使い方だった。
俺たち家族で楽しめるようにいろいろと考えてくれている。
小屋の場所には休憩しながら2時間かけて登った。
石神たちは数分らしいが。
怜花や久留守を休ませながらだからだ。
デュールゲリエたちも、俺たちのペースに合わせて一緒に昇ってくれた。
子どもたちは普段は接しない山の自然に喜んでいた。
夏場の山は生命に溢れている。
セミの鳴き声がし、草木が生い茂っている。
時々、小さなリスが樹を駆け上がる。
蝶が目の前を飛び交う。
怜花と久留守ばかりか、雪野さんも嬉しそうにそれらを眺めて楽しんだ。
中腹くらいなのだろうか。
突然景色が開けて、広い場所に出た。
整地されているように、平らな地面だった。
周囲を木々に囲まれ、吹く風が涼しい。
小川が流れているのも、涼しさの元なのだろうと思った。
綺麗な水で、そのまま飲めるそうだが、一応煮沸するように石神から言われている。
小屋の場所では、既に天幕が張られ、テーブルや椅子も用意され、バーベキューコンロの中には炭まで入れてあった。
全て小屋に常備しているらしい。
竈の薪まで積んである。
「燃料はご自由にお使い下さい」
「はい、助かります」
「あの、お料理もお手伝いしましょうか?」
「いいえ、それは俺たちでやりますので」
「そうですか。では我々はこれで。後でお風呂の用意の際にお呼び下さい」
「はい、お願いします」
デュールゲリエたちが去って行き、とにかく雪野さんと昼食を用意した。
家でサンドイッチを用意して来たので、スープだけ作った。
俺が火を起こし、雪野さんが具材をカットした。
小屋に冷蔵庫があるので、そこへ食材や飲み物を仕舞う。
調理用のテーブルまで用意してくれていた。
怜花には遠くまで行かないように言い、久留守は木陰で休ませた。
怜花は小川を珍しそうに眺め、手を水に埋めて楽しそうに笑っていた。
久留守も木陰に敷いたシートの上であちこちを眺めている。
暑い季節だが、ここは木陰が涼しかった。
木々を通る風のせいか、とてもいい香りがする。
すぐに昼食の準備が出来て、みんなで天幕の下のテーブルで食べた。
「いい所ですね!」
「そうだね。本当に自然の中で気持ちがいいよね」
怜花がサンドイッチを食べながら周囲をニコニコして見ていた。
今までにない風景で、珍しいのだろう。
サンドイッチはポテトサラダ、ハムチーズ、ツナ、ローストビーフ、スモークサーモンだ。
久留守はスモークサーモンが大好きだった。
怜花は苦手なのだが、久留守は子どもにしては珍しい味覚だ。
楽しく食事をし、冷たい麦茶をみんなで飲んだ。
本当に何もしなくても楽しい。
普段とは違った環境が、俺たちを気持ちよくさせてくれた。
食事の後、子どもたちは休ませ、俺と雪野さんで草を刈りに行った。
ルーちゃんとハーちゃんからススキの群生地を聞いていたので、そこに向かう。
鎌は小屋にあり、俺が刈りながら雪野さんが縛って行く。
背負子に山ほど積んで、持ち帰った。
「この砂地にテントを張ろうか」
「そうですね」
丁度木陰の下がいい塩梅の砂地だった。
石神たちも、ここにテントを張ったのだろうか。
草を敷くと、全然足りなかった。
「どうしようか」
「もう一度行きましょうよ。折角ならばちゃんとやってみたいです」
「そうだね!」
二人でまた出掛けた。
ススキは膨大に生い茂っている。
何度か往復しそうだ。
二回目のススキを持ち帰ると、小屋で寝ていたはずの久留守が外に出ていた。
「おい、どうした?」
「お父さん、ここ」
久留守が小屋の裏へ案内する。
大量のススキなどの枯れ草が積み上がっていた。
「え、こんなのがあったんだ!」
ありがたく使わせてもらった。
刈ったばかりのススキは青いいい匂いがし、枯れたススキからも別ないい匂いがした。
小屋にあった枯草の中にはいい匂いのするものも混ざっていたようだ。
ラベンダーなどの香りがほんのりとした。
これも、石神が用意してくれたのだろうか。
それを敷き詰め、雪野さんと一緒にテントを張った。
家でも練習したので、手際よく終わることが出来た。
「クーポラ」というテントだそうだが、非常にお洒落で中に入ると楽しい気分になる。
そうか、キャンプってこんなにいいものだったか。
みんなで水着に着替えて、デュールゲリエたちが用意してくれた風呂に入る。
随分と大きいものなので、ちょっとしたプールに出来た。
水は気温で多少温まっていて、いい感じの温度になっている。
怜花と久留守が喜んだ。
本来は風呂なので、深さが子どもに丁度いい。
石神に、そうやって遊ぶといいと言われていた。
浮き輪やビーチボールなどが小屋に置いてあった。
水鉄砲もあり、みんなで楽しんだ。
ハムちゃんが大興奮で泳いで、みんなで笑った。
風呂から上がって、少しテントの中で休んだ。
テントは綺麗で豪華で快適だ。
ほんのりと草の香りがしていい。
両側のシートをまくっているので、いい風が入る。
冷えた身体がすぐに涼しい感じになって気持ちがいい。
雪野さんが怜花たちに薄掛けを掛けてやっている。
俺も少しウトウトした。
雪野さんが笑って俺にも薄掛けを掛けてくれた。
下から雪野さんを抱き締めてキスをした。
「もう、寝て下さい」
「うん」
少し眠った。
1時間くらい眠ったようで、いい匂いがして目を覚ました。
テントの外に出ると、雪野さんが夕飯の支度をしている。
「なんだ、起こしてくれればいいのに」
「疲れていらっしゃるでしょう? まだ寝てていいですよ」
「いや、もう十分だ。俺もやるよ」
一緒に食材を切ったりした。
今日はバーベキューだが、石神の家とは全然違う。
子ども二人も小さいので、普段はそれほどは食べないが、今日はきっと食欲が出るだろうと思っていた。
スープはあっさりと海藻スープにした。
石神に教わったもので、幾つかの海藻からいい出汁が出る。
子どもたちも大好きだ。
「そういえばさ、磯良は来年高校生じゃない」
「ええ、そうですね」
「どうやら、石神の所のルーちゃんとハーちゃんと同じ高校に行くようだよ」
「そうなんですか!」
亜紀ちゃんも通った、有名な進学校だ。
「それで石神がね、高校生になったら磯良に会うって言ってたんだ」
「それは素敵ですね!」
「うん。本格的に磯良にも「虎」の軍との関りを明かしていくって」
「じゃあ、磯良君も「虎」の軍へ?」
「いや、そのつもりは石神には無いらしい。あくまでも「アドヴェロス」でハンターとしてやっていってもらいたいそうだ」
「そうなんですか。磯良君に抜けられると厳しいですものね」
「ああ。それに、日本国内でも、結構強敵が現われると石神は考えているようだ。先日の《デモノイド》などみたいにね」
「そうですね」
「だから石神も、「アドヴェロス」の戦力増強を考えているらしい」
「ありがたいことです」
「うん」
食事の準備をしながら、雪野さんと話した。
折角キャンプに来てのんびりしようとしているのに、つい仕事の話になってしまう。
俺がそういうことを言うと、雪野さんも笑っていた。
「本当にそうですね。でも、無理に仕事を忘れないでもいいじゃないですか」
「うん、そうだね」
楽しい話、気になった話、なんでも話せばいいのだ。
仕事から離れることだけが楽しみではない。
こんな素敵な場所で話せば、何でも楽しい。
それに相手は雪野さんだ。
本当に楽しいのだ。
向かいの登り口に、デュールゲリエが3体待っていてくれた。
「早乙女様、お待ちしてました」
「喋れるんだ!」
「はい。ルー様とハー様がそのような仕様にして下さいました。本日は宜しくお願いします」
「こちらこそ! ああ、妻の雪野さんと、子どもの怜花と久留守です!」
「はい、皆様、宜しくお願いします」
ハマーの後ろからデュールゲリエたちが荷物を降ろし、担いでくれた。
テント、ダッジオーブンや鍋や飯盒などの調理器具、それに食材。
食器は小屋のものを使わせてもらうし、水は小川のものを沸騰させればいいと聞いた。
念のため、10リットルの水も用意した。
山道を登りながらデュールゲリエたちと少し話をした。
「アドヴェロス」でもデュールゲリエが数十体もいるので、慣れている。
顔は鏡面仕様だが、人間と変わらない感情を感じる。
俺たちを歓迎してくれているのが分かって有難く思う。
「お風呂の掃除は済んでおり、水も既に貯めています」
「そうですか! 何から何までありがとうございます!」
「いつでも言って下されば温めますので」
「はい、お願いします」
「私どもは、中腹の待機場所におります。小屋の通信機で呼んで頂ければすぐに参りますから」
「そうですか!」
何から何まで石神らしい気の使い方だった。
俺たち家族で楽しめるようにいろいろと考えてくれている。
小屋の場所には休憩しながら2時間かけて登った。
石神たちは数分らしいが。
怜花や久留守を休ませながらだからだ。
デュールゲリエたちも、俺たちのペースに合わせて一緒に昇ってくれた。
子どもたちは普段は接しない山の自然に喜んでいた。
夏場の山は生命に溢れている。
セミの鳴き声がし、草木が生い茂っている。
時々、小さなリスが樹を駆け上がる。
蝶が目の前を飛び交う。
怜花と久留守ばかりか、雪野さんも嬉しそうにそれらを眺めて楽しんだ。
中腹くらいなのだろうか。
突然景色が開けて、広い場所に出た。
整地されているように、平らな地面だった。
周囲を木々に囲まれ、吹く風が涼しい。
小川が流れているのも、涼しさの元なのだろうと思った。
綺麗な水で、そのまま飲めるそうだが、一応煮沸するように石神から言われている。
小屋の場所では、既に天幕が張られ、テーブルや椅子も用意され、バーベキューコンロの中には炭まで入れてあった。
全て小屋に常備しているらしい。
竈の薪まで積んである。
「燃料はご自由にお使い下さい」
「はい、助かります」
「あの、お料理もお手伝いしましょうか?」
「いいえ、それは俺たちでやりますので」
「そうですか。では我々はこれで。後でお風呂の用意の際にお呼び下さい」
「はい、お願いします」
デュールゲリエたちが去って行き、とにかく雪野さんと昼食を用意した。
家でサンドイッチを用意して来たので、スープだけ作った。
俺が火を起こし、雪野さんが具材をカットした。
小屋に冷蔵庫があるので、そこへ食材や飲み物を仕舞う。
調理用のテーブルまで用意してくれていた。
怜花には遠くまで行かないように言い、久留守は木陰で休ませた。
怜花は小川を珍しそうに眺め、手を水に埋めて楽しそうに笑っていた。
久留守も木陰に敷いたシートの上であちこちを眺めている。
暑い季節だが、ここは木陰が涼しかった。
木々を通る風のせいか、とてもいい香りがする。
すぐに昼食の準備が出来て、みんなで天幕の下のテーブルで食べた。
「いい所ですね!」
「そうだね。本当に自然の中で気持ちがいいよね」
怜花がサンドイッチを食べながら周囲をニコニコして見ていた。
今までにない風景で、珍しいのだろう。
サンドイッチはポテトサラダ、ハムチーズ、ツナ、ローストビーフ、スモークサーモンだ。
久留守はスモークサーモンが大好きだった。
怜花は苦手なのだが、久留守は子どもにしては珍しい味覚だ。
楽しく食事をし、冷たい麦茶をみんなで飲んだ。
本当に何もしなくても楽しい。
普段とは違った環境が、俺たちを気持ちよくさせてくれた。
食事の後、子どもたちは休ませ、俺と雪野さんで草を刈りに行った。
ルーちゃんとハーちゃんからススキの群生地を聞いていたので、そこに向かう。
鎌は小屋にあり、俺が刈りながら雪野さんが縛って行く。
背負子に山ほど積んで、持ち帰った。
「この砂地にテントを張ろうか」
「そうですね」
丁度木陰の下がいい塩梅の砂地だった。
石神たちも、ここにテントを張ったのだろうか。
草を敷くと、全然足りなかった。
「どうしようか」
「もう一度行きましょうよ。折角ならばちゃんとやってみたいです」
「そうだね!」
二人でまた出掛けた。
ススキは膨大に生い茂っている。
何度か往復しそうだ。
二回目のススキを持ち帰ると、小屋で寝ていたはずの久留守が外に出ていた。
「おい、どうした?」
「お父さん、ここ」
久留守が小屋の裏へ案内する。
大量のススキなどの枯れ草が積み上がっていた。
「え、こんなのがあったんだ!」
ありがたく使わせてもらった。
刈ったばかりのススキは青いいい匂いがし、枯れたススキからも別ないい匂いがした。
小屋にあった枯草の中にはいい匂いのするものも混ざっていたようだ。
ラベンダーなどの香りがほんのりとした。
これも、石神が用意してくれたのだろうか。
それを敷き詰め、雪野さんと一緒にテントを張った。
家でも練習したので、手際よく終わることが出来た。
「クーポラ」というテントだそうだが、非常にお洒落で中に入ると楽しい気分になる。
そうか、キャンプってこんなにいいものだったか。
みんなで水着に着替えて、デュールゲリエたちが用意してくれた風呂に入る。
随分と大きいものなので、ちょっとしたプールに出来た。
水は気温で多少温まっていて、いい感じの温度になっている。
怜花と久留守が喜んだ。
本来は風呂なので、深さが子どもに丁度いい。
石神に、そうやって遊ぶといいと言われていた。
浮き輪やビーチボールなどが小屋に置いてあった。
水鉄砲もあり、みんなで楽しんだ。
ハムちゃんが大興奮で泳いで、みんなで笑った。
風呂から上がって、少しテントの中で休んだ。
テントは綺麗で豪華で快適だ。
ほんのりと草の香りがしていい。
両側のシートをまくっているので、いい風が入る。
冷えた身体がすぐに涼しい感じになって気持ちがいい。
雪野さんが怜花たちに薄掛けを掛けてやっている。
俺も少しウトウトした。
雪野さんが笑って俺にも薄掛けを掛けてくれた。
下から雪野さんを抱き締めてキスをした。
「もう、寝て下さい」
「うん」
少し眠った。
1時間くらい眠ったようで、いい匂いがして目を覚ました。
テントの外に出ると、雪野さんが夕飯の支度をしている。
「なんだ、起こしてくれればいいのに」
「疲れていらっしゃるでしょう? まだ寝てていいですよ」
「いや、もう十分だ。俺もやるよ」
一緒に食材を切ったりした。
今日はバーベキューだが、石神の家とは全然違う。
子ども二人も小さいので、普段はそれほどは食べないが、今日はきっと食欲が出るだろうと思っていた。
スープはあっさりと海藻スープにした。
石神に教わったもので、幾つかの海藻からいい出汁が出る。
子どもたちも大好きだ。
「そういえばさ、磯良は来年高校生じゃない」
「ええ、そうですね」
「どうやら、石神の所のルーちゃんとハーちゃんと同じ高校に行くようだよ」
「そうなんですか!」
亜紀ちゃんも通った、有名な進学校だ。
「それで石神がね、高校生になったら磯良に会うって言ってたんだ」
「それは素敵ですね!」
「うん。本格的に磯良にも「虎」の軍との関りを明かしていくって」
「じゃあ、磯良君も「虎」の軍へ?」
「いや、そのつもりは石神には無いらしい。あくまでも「アドヴェロス」でハンターとしてやっていってもらいたいそうだ」
「そうなんですか。磯良君に抜けられると厳しいですものね」
「ああ。それに、日本国内でも、結構強敵が現われると石神は考えているようだ。先日の《デモノイド》などみたいにね」
「そうですね」
「だから石神も、「アドヴェロス」の戦力増強を考えているらしい」
「ありがたいことです」
「うん」
食事の準備をしながら、雪野さんと話した。
折角キャンプに来てのんびりしようとしているのに、つい仕事の話になってしまう。
俺がそういうことを言うと、雪野さんも笑っていた。
「本当にそうですね。でも、無理に仕事を忘れないでもいいじゃないですか」
「うん、そうだね」
楽しい話、気になった話、なんでも話せばいいのだ。
仕事から離れることだけが楽しみではない。
こんな素敵な場所で話せば、何でも楽しい。
それに相手は雪野さんだ。
本当に楽しいのだ。
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