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挿話: 高木さんの光と闇
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少しさかのぼって、タカさんと双子が盛岡の石神家本家へ出かけて行っている時。
焼肉を食べ過ぎた私と柳さんは、酷い下痢になっていた。
わざわざうちに来て下さった一江さんたちは先ほど帰られた。
本当に申し訳ない。
チャイムが鳴った。
もう9時半になっているが、一体誰だろう?
インターホンの画面を確認すると、不動産屋さんの高木さんだった。
あの人は時々夜の遅い時間にも来られる。
タカさんが夜にいることが多いからだ。
「はい、今開けますね!」
門を開けて玄関に降りて待った。
高木さんは分厚いファイルを抱えて来た。
「高木さん、すいません、タカさんは出掛けているんです」
「そうなんですか。じゃあ、この資料を石神先生にお渡しください。こんな時間にすみませんでした」
「いいえ、こちらこそいつもありがとうございます」
高木さんは汗まみれだった。
高木さんがこの辺りの土地を時々見て回っているのは知っている。
タカさんの土地が多いので、何か不味いことは無いかと監視してくれているのだ。
もちろん無償で高木さんはやっている。
タカさんの役に立ちたいと考えているとっても良い人なのだ。
だから私も、少しでもお礼がしたいと思った。
「あの、どうか上がって、ちょっと冷たい物でも飲んで行って下さい」
「え、でも遅い時間ですし」
非常に遠慮深い人だ。
「そんなことおっしゃらずに! 今日もこの近所を見回ってくれてたんですよね?」
「いや、まあ、自分の趣味みたいなものですから」
「さあ、どうぞどうぞ!」
お誘いすると、高木さんはにこやかに笑われて入ってくれた。
2階のリヴィングへ上がってもらう。
冷房の効いた室内で、高木さんは穏やかな顔で気持ちよさそうにしてくれた。
柳さんが、先ほど一江さんたちから頂いた止瀉薬を飲もうとしていた。
私もすぐに飲もう。
「柳さん、高木さんが暑い中をわざわざタカさんに資料を持って来てくれたんです」
「そうなんですか! いつもすみません」
「いえいえ。石神先生はお出掛けということで、夜分にお邪魔してすみません」
「いいんですよ! 明後日には戻りますが」
「そうですか」
柳さんが高木さんと話してくれている間に、私はアイスティを淹れた。
「高木さん、どうぞ。お替りもありますからね」
「これは有難い。いただきます」
半分ほどゴクゴクと一気に呑み干された。
やっぱり喉が渇いていたんだ。
私はさっき焼肉屋で食べ過ぎた話をし、高木さんが笑ってくれた。
「あ、ちょっとすみません」
柳さんが席を立った。
私が柳さんが中座した説明をした。
「ちょっと食べ過ぎでお腹を壊してしまって」
「え!」
「あ、すみません、こんなお話を」
「い、いえ!」
ちょっと強めの口調だった。
心なし、高木さんの目が輝いている。
ん?
しばらくして柳さんがトイレから戻って来た。
「あの、僕もお手洗いをお借りしますね」
「え」
高木さんがリヴィングを出て行こうとする。
うちのトイレの場所は知っている人だ。
「あ、あの、ちょっとだけ待ってください」
「いえ、僕もちょっと不味い感じで」
「あの、じゃあ1階のトイレで」
「いえ、間に合いませんので、すみません」
柳さんが高木さんの腕を掴んでいる。
今はまだ2階のトイレは柳さんのアレの臭いがこもっているはずだ。
だから当然恥ずかしい。
あ、思い出した!
タカさんが、高木さんはとっても良い人なのだけど、とんでもないヘンタイなんだと言ってた。
まさかとは思うけど、柳さんのウンチの臭いを嗅ぎたいのだろうか!
うわぁぁー!
「あ! 私もちょっと行きたいんで、すみません、高木さんは1階で!」
有無を言わさずに私はリヴィングを飛び出してトイレに向かった。
「あの! 先にちょっとだけぇ!」
「イヤですよ!」
「中をほんのちょっとだけぇ!」
「何言ってんですかぁ!」
一瞬振り返ると、高木さんが悔しそうな顔をしていた。
やっぱヘンタイさんなんだぁ!
さすがに高木さんは1階に行っただろうから、私もちょっと催してトイレで済ませた。
手を洗ってリヴィングに戻ると、高木さんが柳さんと揉めてた。
もうとっくに柳さんも高木さんの「目的」は察している。
柳さんも、高木さんがヘンタイさんなのだと知ってる。
「早く1階のトイレへ!」
「いえ、なんか引っ込んじゃいましたので」
「そんな!」
「いえいえ、どうぞお気遣いなく」
「でも!」
やっぱり嘘だったんだ。
危ないなー。
「高木さん、紅茶のお替りを淹れましょうか?」
「ああ、お願いします」
私はキッチンで残りの……
「ちょっとお手洗いをお借りします!」
高木さんが素早い動きで立ち上がって走った。
「「ギャァァァァァァーーー!」」
「じゃ、そういうことで!」
「あ、まてぇー!」
「あーもうモレそうだー」
「いやダメェ!」
「高木さん! 1階のトイレに!」
「臭いがしないじゃないですか!」
もう隠す気も無いようだった。
なんてヘンタイさんだぁ!
柳さんが捕まえてくれた。
「モレちゃいそうです!」
「1階に行ってください!」
「もう駄目です」
「それならそれでもいいですからぁ!」
臭いを嗅がれるより、漏らしてもらった方がいい!
高木さんはいきなり下を脱ぎ始めた。
「「ギャァァァァァァーーー!」」
「真面目に間に合いません!」
この人、他人の家で何やってんのぉー!
私と柳さんで担いで1階に連れてった。
「「どうぞ!」」
「……」
高木さんが不満げな顔で私たちを見た。
二人で見張った。
ブリビリ……ブピピピピピ……プゥー……ボヴァ、シャー……ププププププ……
「「……」」
高木さんが出てきた。
「あ、入ります?」
「「いいえ……」」
高木さんは紅茶のお礼を言って帰って行った。
佐野さんのこととか、焼き肉屋の失敗、それに庭のナゾ物体などでタカさんにはしばらく話す機会がなかった。
今回の蓮花さんの研究所への旅行の途中でやっと話した。
タカさんは爆笑していた。
高木さん、いい人なんだけどなー。
焼肉を食べ過ぎた私と柳さんは、酷い下痢になっていた。
わざわざうちに来て下さった一江さんたちは先ほど帰られた。
本当に申し訳ない。
チャイムが鳴った。
もう9時半になっているが、一体誰だろう?
インターホンの画面を確認すると、不動産屋さんの高木さんだった。
あの人は時々夜の遅い時間にも来られる。
タカさんが夜にいることが多いからだ。
「はい、今開けますね!」
門を開けて玄関に降りて待った。
高木さんは分厚いファイルを抱えて来た。
「高木さん、すいません、タカさんは出掛けているんです」
「そうなんですか。じゃあ、この資料を石神先生にお渡しください。こんな時間にすみませんでした」
「いいえ、こちらこそいつもありがとうございます」
高木さんは汗まみれだった。
高木さんがこの辺りの土地を時々見て回っているのは知っている。
タカさんの土地が多いので、何か不味いことは無いかと監視してくれているのだ。
もちろん無償で高木さんはやっている。
タカさんの役に立ちたいと考えているとっても良い人なのだ。
だから私も、少しでもお礼がしたいと思った。
「あの、どうか上がって、ちょっと冷たい物でも飲んで行って下さい」
「え、でも遅い時間ですし」
非常に遠慮深い人だ。
「そんなことおっしゃらずに! 今日もこの近所を見回ってくれてたんですよね?」
「いや、まあ、自分の趣味みたいなものですから」
「さあ、どうぞどうぞ!」
お誘いすると、高木さんはにこやかに笑われて入ってくれた。
2階のリヴィングへ上がってもらう。
冷房の効いた室内で、高木さんは穏やかな顔で気持ちよさそうにしてくれた。
柳さんが、先ほど一江さんたちから頂いた止瀉薬を飲もうとしていた。
私もすぐに飲もう。
「柳さん、高木さんが暑い中をわざわざタカさんに資料を持って来てくれたんです」
「そうなんですか! いつもすみません」
「いえいえ。石神先生はお出掛けということで、夜分にお邪魔してすみません」
「いいんですよ! 明後日には戻りますが」
「そうですか」
柳さんが高木さんと話してくれている間に、私はアイスティを淹れた。
「高木さん、どうぞ。お替りもありますからね」
「これは有難い。いただきます」
半分ほどゴクゴクと一気に呑み干された。
やっぱり喉が渇いていたんだ。
私はさっき焼肉屋で食べ過ぎた話をし、高木さんが笑ってくれた。
「あ、ちょっとすみません」
柳さんが席を立った。
私が柳さんが中座した説明をした。
「ちょっと食べ過ぎでお腹を壊してしまって」
「え!」
「あ、すみません、こんなお話を」
「い、いえ!」
ちょっと強めの口調だった。
心なし、高木さんの目が輝いている。
ん?
しばらくして柳さんがトイレから戻って来た。
「あの、僕もお手洗いをお借りしますね」
「え」
高木さんがリヴィングを出て行こうとする。
うちのトイレの場所は知っている人だ。
「あ、あの、ちょっとだけ待ってください」
「いえ、僕もちょっと不味い感じで」
「あの、じゃあ1階のトイレで」
「いえ、間に合いませんので、すみません」
柳さんが高木さんの腕を掴んでいる。
今はまだ2階のトイレは柳さんのアレの臭いがこもっているはずだ。
だから当然恥ずかしい。
あ、思い出した!
タカさんが、高木さんはとっても良い人なのだけど、とんでもないヘンタイなんだと言ってた。
まさかとは思うけど、柳さんのウンチの臭いを嗅ぎたいのだろうか!
うわぁぁー!
「あ! 私もちょっと行きたいんで、すみません、高木さんは1階で!」
有無を言わさずに私はリヴィングを飛び出してトイレに向かった。
「あの! 先にちょっとだけぇ!」
「イヤですよ!」
「中をほんのちょっとだけぇ!」
「何言ってんですかぁ!」
一瞬振り返ると、高木さんが悔しそうな顔をしていた。
やっぱヘンタイさんなんだぁ!
さすがに高木さんは1階に行っただろうから、私もちょっと催してトイレで済ませた。
手を洗ってリヴィングに戻ると、高木さんが柳さんと揉めてた。
もうとっくに柳さんも高木さんの「目的」は察している。
柳さんも、高木さんがヘンタイさんなのだと知ってる。
「早く1階のトイレへ!」
「いえ、なんか引っ込んじゃいましたので」
「そんな!」
「いえいえ、どうぞお気遣いなく」
「でも!」
やっぱり嘘だったんだ。
危ないなー。
「高木さん、紅茶のお替りを淹れましょうか?」
「ああ、お願いします」
私はキッチンで残りの……
「ちょっとお手洗いをお借りします!」
高木さんが素早い動きで立ち上がって走った。
「「ギャァァァァァァーーー!」」
「じゃ、そういうことで!」
「あ、まてぇー!」
「あーもうモレそうだー」
「いやダメェ!」
「高木さん! 1階のトイレに!」
「臭いがしないじゃないですか!」
もう隠す気も無いようだった。
なんてヘンタイさんだぁ!
柳さんが捕まえてくれた。
「モレちゃいそうです!」
「1階に行ってください!」
「もう駄目です」
「それならそれでもいいですからぁ!」
臭いを嗅がれるより、漏らしてもらった方がいい!
高木さんはいきなり下を脱ぎ始めた。
「「ギャァァァァァァーーー!」」
「真面目に間に合いません!」
この人、他人の家で何やってんのぉー!
私と柳さんで担いで1階に連れてった。
「「どうぞ!」」
「……」
高木さんが不満げな顔で私たちを見た。
二人で見張った。
ブリビリ……ブピピピピピ……プゥー……ボヴァ、シャー……ププププププ……
「「……」」
高木さんが出てきた。
「あ、入ります?」
「「いいえ……」」
高木さんは紅茶のお礼を言って帰って行った。
佐野さんのこととか、焼き肉屋の失敗、それに庭のナゾ物体などでタカさんにはしばらく話す機会がなかった。
今回の蓮花さんの研究所への旅行の途中でやっと話した。
タカさんは爆笑していた。
高木さん、いい人なんだけどなー。
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