2,445 / 2,840
愛する者の帰還 Ⅱ
しおりを挟む
11時になっていた。
俺たちは荷物を置いて、12時に昼食となる予定だ。
「斬、夕べは眠れたかよ?」
「フン!」
斬をからかうといつものごとく憮然とした顔を作ろうとした。
だが、失敗していた。
「お前、笑ってるぞ?」
「フン!」
鬼のような男が、楽しみで仕方がないのだ。
「もう、着くな」
「ああ」
「おい、だからお前、ニヤけてるって!」
「……」
斬の顔が面白くて仕方がない。
他の連中は遠目に見て、顔をそむけて笑っている。
俺たちは発着場へ移動した。
手の空いている者は全員来るが、一応警戒の人員は配備している。
「タイガーファング」が時間通りに到着した。
護衛のデュールゲリエ1000体と霊素レーダーを備えた「ウラール」、そして戦闘機「ニーズヘッグ」4機が同行している。
「タイガーファング」が着地すると当時に、デュールゲリエと支援機はアラスカへ戻った。
後部のハンガーが開く。
「あなたぁー!」
「おう!」
「お父さん!」
「よう!」
栞と士王が駆け寄って、俺が抱き締めた。
「やっとこれたよー!」
「ワハハハハハハハハ!」
桜花、椿姫、睡蓮も降りて来て、俺に挨拶した。
操縦席から青嵐と紫嵐も降りて来る。
「無事に届けてくれてありがとうな」
「はい! 何事も問題ありませんでした!」
「御苦労!」
斬が栞と士王の傍に来た。
嬉しそうに顔を綻ばせている。
「おじいちゃん!」
「おう、よく帰って来たな」
「うん!」
栞と士王も嬉しそうだ。
今日から、栞たちは蓮花研究所で暮らすことになる。
士王が「花岡」の技を完成させるためだが、俺が士王に日本を知っておいて欲しかった。
以前は蓮花研究所も、まだ防衛システムが弱かった。
アラスカ基地が完成していたので、そちらへ栞を送った。
実際、その後蓮花研究所は「業」によって侵入を許してしまっている。
タヌ吉の「地獄道」が防いだが、「業」が本気を出して来れば分からなかった。
だから已む無くアラスカへ住まわせたのだ。
不自由を掛けたが、もうこの蓮花研究所でも大丈夫だ。
アラスカほどではないが、そうそう引けは摂らない。
斬によって、士王は「花岡」の技を教わって行く。
恐らく士王にとって必要なことだ。
一江と大森が栞の傍へ行った。
「栞! 久し振りだね!」
「やっと帰って来たんだな」
「うん! やっとだよ! 本当に日本だよ!」
「「アハハハハハハハ!」」
栞たちは大勢と挨拶し、少し泣いていた。
悪かったとは思う。
蓮花の号令で、みんなで大食堂へ移動した。
大食堂で全員で食べる。
昼食は「石神家式海鮮丼」だった。
桜花たちが、新鮮な魚介類に狂喜する。
「栞様! 大きなハマグリが!」
「こちらはアワビでございます!」
「マグロが宝石のようですよ!」
楽しそうに好きな食材を選んで大丼に乗せて行く。
栞は桜花たちに自分たちを気にせずに楽しめと言った。
青嵐と紫嵐も、ブランたちに囲まれて嬉しそうだ。
「六花と響子、鷹は夕方に来るからな」
「そうなんだ、忙しいの?」
「ああ、ちょっと大使夫人会の昼食会があってさ。どうしても六花と響子が外せなくて」
「へぇー!」
「鷹はナースの研修会だ。新人のナースを引率してる」
「大変だね!」
「俺はヒマだからな!」
「あなたはもっと来てよ!」
「ワハハハハハハハハ!」
斬が士王の丼を作ってやっている。
士王が楽しそうに、どういう魚かを斬に聞いている。
「おじいちゃん、楽しそう」
「そうだな。今日は鍛錬に付き合わなくて済みそうだ」
「あなたも大変ね」
「そんなこともねぇよ。あいつとの鍛錬はいつも俺にとっても有用だ」
「しょっちゅう付き合ってたんでしょ?」
「まあ、ちょっとめんどくさかったな」
「もう!」
俺と栞と士王、蓮花、斬、一江と大森とでテーブルを囲んだ。
一江と大森は普段は斬に近づけないが、栞と士王がいれば安心だ。
「斬、それだけでいいのかよ?」
健啖なあいつが、随分と乗せる魚が少ない。
「幾らでも喰えるだろう」
「まあ、残ってればな」
俺が指で示した。
うちの子どもたちがガンガン喰っている。
斬は慌てて丼を掻き込み、また取りに行った。
「斬は随分と飯を喰うようになったんだよ」
「そうなの!」
「相当鍛えてるからな。身体も結構若返ったぞ」
「ほんとう!」
斬は地獄のような鍛錬をし、まるで身体が作り変えられるかのように変わって行った。
あの年であそこまで肉体が変化するのは相当なことだ。
俺たちは楽しく食事をし、栞はずっと日本に戻れた嬉しさを語った。
ブランたちや研究所の所員たちが、次々とテーブルに挨拶に来る。
みんな、今日から栞や士王たちと一緒にいられることを喜んでいるのだ。
蓮花に連れられ、シャドウも挨拶に来た。
「自分のような者まで、すみません」
「こいつはこの研究所の中で一番わしの相手になる」
「斬様!」
「そうなんだ!」
斬が嬉しそうにシャドウを褒めた。
「なかなかやるぞ。こいつの血を受けたせいらしいがな」
「シャドウさん、今後とも宜しくお願いします」
「いいえ、こちらこそ! お二人のことは、必ず私が守りますので!」
「宜しくね!」
シャドウも嬉しそうだった。
俺がいない間、斬はここにも鍛錬を兼ねて指導に来てくれている。
シャドウは中でも組み手の相手としては最上らしい。
シャドウは「花岡」も身に付けており、しかも相当なレベルにある。
特に斬の指導を受けてからは、その成長が目覚ましい。
「こいつはなかなか来ないからな」
「おい! 結構来てやってるだろう!」
「ふん!」
まあ、月に数回だが。
しかも毎回時間はそう長くは無い。
俺も忙しいのだ。
しかし、真剣勝負が出来る相手はお互いに滅多にいない。
俺も斬も互いにいい好敵手だった。
俺がいない時には、シャドウを相手に鍛錬をしているのだろう。
シャドウも大変だが、シャドウの様子には斬を遠ざけようとするものは無い。
厳しいことも当然あるだろうが、基本的に斬の指導が嬉しいのだろう。
何しろ、蓮花を護ることに繋がる。
その辺が本心か。
時差の関係で、栞と士王は少し休むことにした。
ロボも一緒に行く。
俺も一緒に寝ようと思ったが、当然のように士王のいない斬はヒマだ。
「おい、やるぞ」
「分かったよ!」
しょうがねぇーなー。
俺たちは荷物を置いて、12時に昼食となる予定だ。
「斬、夕べは眠れたかよ?」
「フン!」
斬をからかうといつものごとく憮然とした顔を作ろうとした。
だが、失敗していた。
「お前、笑ってるぞ?」
「フン!」
鬼のような男が、楽しみで仕方がないのだ。
「もう、着くな」
「ああ」
「おい、だからお前、ニヤけてるって!」
「……」
斬の顔が面白くて仕方がない。
他の連中は遠目に見て、顔をそむけて笑っている。
俺たちは発着場へ移動した。
手の空いている者は全員来るが、一応警戒の人員は配備している。
「タイガーファング」が時間通りに到着した。
護衛のデュールゲリエ1000体と霊素レーダーを備えた「ウラール」、そして戦闘機「ニーズヘッグ」4機が同行している。
「タイガーファング」が着地すると当時に、デュールゲリエと支援機はアラスカへ戻った。
後部のハンガーが開く。
「あなたぁー!」
「おう!」
「お父さん!」
「よう!」
栞と士王が駆け寄って、俺が抱き締めた。
「やっとこれたよー!」
「ワハハハハハハハハ!」
桜花、椿姫、睡蓮も降りて来て、俺に挨拶した。
操縦席から青嵐と紫嵐も降りて来る。
「無事に届けてくれてありがとうな」
「はい! 何事も問題ありませんでした!」
「御苦労!」
斬が栞と士王の傍に来た。
嬉しそうに顔を綻ばせている。
「おじいちゃん!」
「おう、よく帰って来たな」
「うん!」
栞と士王も嬉しそうだ。
今日から、栞たちは蓮花研究所で暮らすことになる。
士王が「花岡」の技を完成させるためだが、俺が士王に日本を知っておいて欲しかった。
以前は蓮花研究所も、まだ防衛システムが弱かった。
アラスカ基地が完成していたので、そちらへ栞を送った。
実際、その後蓮花研究所は「業」によって侵入を許してしまっている。
タヌ吉の「地獄道」が防いだが、「業」が本気を出して来れば分からなかった。
だから已む無くアラスカへ住まわせたのだ。
不自由を掛けたが、もうこの蓮花研究所でも大丈夫だ。
アラスカほどではないが、そうそう引けは摂らない。
斬によって、士王は「花岡」の技を教わって行く。
恐らく士王にとって必要なことだ。
一江と大森が栞の傍へ行った。
「栞! 久し振りだね!」
「やっと帰って来たんだな」
「うん! やっとだよ! 本当に日本だよ!」
「「アハハハハハハハ!」」
栞たちは大勢と挨拶し、少し泣いていた。
悪かったとは思う。
蓮花の号令で、みんなで大食堂へ移動した。
大食堂で全員で食べる。
昼食は「石神家式海鮮丼」だった。
桜花たちが、新鮮な魚介類に狂喜する。
「栞様! 大きなハマグリが!」
「こちらはアワビでございます!」
「マグロが宝石のようですよ!」
楽しそうに好きな食材を選んで大丼に乗せて行く。
栞は桜花たちに自分たちを気にせずに楽しめと言った。
青嵐と紫嵐も、ブランたちに囲まれて嬉しそうだ。
「六花と響子、鷹は夕方に来るからな」
「そうなんだ、忙しいの?」
「ああ、ちょっと大使夫人会の昼食会があってさ。どうしても六花と響子が外せなくて」
「へぇー!」
「鷹はナースの研修会だ。新人のナースを引率してる」
「大変だね!」
「俺はヒマだからな!」
「あなたはもっと来てよ!」
「ワハハハハハハハハ!」
斬が士王の丼を作ってやっている。
士王が楽しそうに、どういう魚かを斬に聞いている。
「おじいちゃん、楽しそう」
「そうだな。今日は鍛錬に付き合わなくて済みそうだ」
「あなたも大変ね」
「そんなこともねぇよ。あいつとの鍛錬はいつも俺にとっても有用だ」
「しょっちゅう付き合ってたんでしょ?」
「まあ、ちょっとめんどくさかったな」
「もう!」
俺と栞と士王、蓮花、斬、一江と大森とでテーブルを囲んだ。
一江と大森は普段は斬に近づけないが、栞と士王がいれば安心だ。
「斬、それだけでいいのかよ?」
健啖なあいつが、随分と乗せる魚が少ない。
「幾らでも喰えるだろう」
「まあ、残ってればな」
俺が指で示した。
うちの子どもたちがガンガン喰っている。
斬は慌てて丼を掻き込み、また取りに行った。
「斬は随分と飯を喰うようになったんだよ」
「そうなの!」
「相当鍛えてるからな。身体も結構若返ったぞ」
「ほんとう!」
斬は地獄のような鍛錬をし、まるで身体が作り変えられるかのように変わって行った。
あの年であそこまで肉体が変化するのは相当なことだ。
俺たちは楽しく食事をし、栞はずっと日本に戻れた嬉しさを語った。
ブランたちや研究所の所員たちが、次々とテーブルに挨拶に来る。
みんな、今日から栞や士王たちと一緒にいられることを喜んでいるのだ。
蓮花に連れられ、シャドウも挨拶に来た。
「自分のような者まで、すみません」
「こいつはこの研究所の中で一番わしの相手になる」
「斬様!」
「そうなんだ!」
斬が嬉しそうにシャドウを褒めた。
「なかなかやるぞ。こいつの血を受けたせいらしいがな」
「シャドウさん、今後とも宜しくお願いします」
「いいえ、こちらこそ! お二人のことは、必ず私が守りますので!」
「宜しくね!」
シャドウも嬉しそうだった。
俺がいない間、斬はここにも鍛錬を兼ねて指導に来てくれている。
シャドウは中でも組み手の相手としては最上らしい。
シャドウは「花岡」も身に付けており、しかも相当なレベルにある。
特に斬の指導を受けてからは、その成長が目覚ましい。
「こいつはなかなか来ないからな」
「おい! 結構来てやってるだろう!」
「ふん!」
まあ、月に数回だが。
しかも毎回時間はそう長くは無い。
俺も忙しいのだ。
しかし、真剣勝負が出来る相手はお互いに滅多にいない。
俺も斬も互いにいい好敵手だった。
俺がいない時には、シャドウを相手に鍛錬をしているのだろう。
シャドウも大変だが、シャドウの様子には斬を遠ざけようとするものは無い。
厳しいことも当然あるだろうが、基本的に斬の指導が嬉しいのだろう。
何しろ、蓮花を護ることに繋がる。
その辺が本心か。
時差の関係で、栞と士王は少し休むことにした。
ロボも一緒に行く。
俺も一緒に寝ようと思ったが、当然のように士王のいない斬はヒマだ。
「おい、やるぞ」
「分かったよ!」
しょうがねぇーなー。
0
お気に入りに追加
228
あなたにおすすめの小説
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
NPO法人マヨヒガ! ~CGモデラーって難しいんですか?~
みつまめ つぼみ
キャラ文芸
ハードワークと職業適性不一致に悩み、毎日をつらく感じている香澄(かすみ)。
彼女は帰り道、不思議な喫茶店を見つけて足を踏み入れる。
そこで出会った青年マスター晴臣(はるおみ)は、なんと『ぬらりひょん』!
彼は香澄を『マヨヒガ』へと誘い、彼女の保護を約束する。
離職した香澄は、新しいステージである『3DCGモデラー』で才能を開花させる。
香澄の手が、デジタル空間でキャラクターに命を吹き込む――。
双葉病院小児病棟
moa
キャラ文芸
ここは双葉病院小児病棟。
病気と闘う子供たち、その病気を治すお医者さんたちの物語。
この双葉病院小児病棟には重い病気から身近な病気、たくさんの幅広い病気の子供たちが入院してきます。
すぐに治って退院していく子もいればそうでない子もいる。
メンタル面のケアも大事になってくる。
当病院は親の付き添いありでの入院は禁止とされています。
親がいると子供たちは甘えてしまうため、あえて離して治療するという方針。
【集中して治療をして早く治す】
それがこの病院のモットーです。
※この物語はフィクションです。
実際の病院、治療とは異なることもあると思いますが暖かい目で見ていただけると幸いです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
人形の中の人の憂鬱
ジャン・幸田
キャラ文芸
等身大人形が動く時、中の人がいるはずだ! でも、いないとされる。いうだけ野暮であるから。そんな中の人に関するオムニバス物語である。
【アルバイト】昭和時代末期、それほど知られていなかった美少女着ぐるみヒロインショーをめぐる物語。
【少女人形店員】父親の思い付きで着ぐるみ美少女マスクを着けて営業させられる少女の運命は?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる