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佐野さんとの再会 Ⅸ

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 昼食は釜めしだった。
 双子が50もの鉄釜を購入し、様々な材料で作るようになった。
 俺が時々出前で釜めしを取るので、子どもたちも大好きになったためだ。
 バーベキュー台に、皇紀が専用の釜めし用の穴の空いた鉄板を作った。
 食に対するこいつらの執念は凄い。

 基本の鳥ごぼう、それにカニ、鮭、鯛、ウナギ、アサリ、海老、牛タンなどをメインで作っていく。
 子どもたちが釜めしの準備を始めた。
 佐野さんが俺のギターを聴きたいと言うので、早乙女達も誘って地下へ移動した。
 ロボが大好きな雪野さんから離れない。

 地下で『SAOTOME』など何曲か弾くと、早乙女たちも喜んだ。

 「次のCDはいつ出るんだ?」
 「よ、予定はないですよ!」
 「そうなのか?」
 「俺、医者ですからね!」
 「だってお前、もう2枚も出してるじゃんか」
 「あぁぁー!」

 みんなが笑った。
 早乙女が思い出したように俺に言った。

 「そういえば石神」
 「なんだ?」
 「何か庭にスゴイものが置いてあったけど」
 「アァァァァァァーーー!」

 「どうした!」
 「忘れてたぁ!」

 真夜が草むしりをしていて掘り出した物があった!

 「あ、あれはさ」
 「うん」
 「早乙女家に宅急便でさ」
 「おい!」
 「お前の家が留守だったみたいで、うちで預かった」
 「お前、いい加減にしろ!」

 ちきしょう、早乙女家の庭に放り込もうと思ってたのに!

 「《アイオーン》!」
 《はい、石神様》
 「亜紀ちゃんを呼んでくれ」
 《かしこまりました》

 今、ウッドデッキで釜めしをみんなで作っているはずだ。
 亜紀ちゃんがすぐに地下に来た。

 「はい、なんですかー」
 「おい、庭のアレを説明しろ」
 「ハゥッ!」

 亜紀ちゃんも忘れてたようだ。
 佐野さんが突然に訪ねて来たので、それどころじゃなかったのだろう。
 亜紀ちゃんが説明した。
 
 「麗星さんに聞いたんです」
 「またあちこちにてめぇ……」
 「す、すいません。それでですね、あれは「トゥアハ・デ・ダナーン(Tuatha De Danann)族の秘宝の一つで、《リア・ファル (Liath Fail、運命の石)》だろうって!」
 「タラの丘かぁ!」
 「タカさん、よく知ってますね!」
 「有名だろう!」

 早乙女の方を向くと、雪野さんと一緒に目を閉じていた。
 
 「ああ、『風と共に去りぬ』かぁ」
 「流石、佐野さん!」

 早乙女達が驚いて佐野さんを見た。
 亜紀ちゃんが喜んで佐野さんの肩をポンポンした。
 佐野さんが笑った。
 映画『風と共に去りぬ』では、主人公の一族がアイリッシュであることから、伝承の聖地「タラ」に深い郷愁を持っている。
 そのことが分かっていなければ、主人公のあの最後の台詞に感動出来ない。

 「まったくてめぇらはまたとんでもねぇものを!」
 「す、すいません!」
 「さて、どうすっかなぁ」
 「そうですね。蓮花さんの研究所ですかね」
 「なんでもかんでも送れるかぁ! あいつだって一杯一杯なんだ」
 「そうですか……」

 本当にいろんなものを送り付けてしまっている。
 真面目な蓮花のことだ。
 送れば徹底的に調べるに決まっている。

 「しょうがねぇ。後で調べて観るか」
 「はい!」

 亜紀ちゃんが食事作りに戻った。

 「石神、いつも大変だな」
 「うるせぇ!」
 「でもいつもうちの庭にっていうのは辞めてくれな」
 「うるせぇ!」

 佐野さんが笑っていた。
 俺は佐野さんに、今年の子どもたちの修学旅行の話をした。

 「双子と、今外国に行ってる皇紀が、中学の修学旅行に行ったんですよ」
 「ああ、そうなのか」
 「フィリピンでしてね」
 「すごいな」
 「そこで、向こうの魔法大学が「虎」の軍のために「ヘヴンズ・フォール」という儀式をしてくれたんです」
 「なんだ?」
 「何でも、神の国から何かが降って来るというものだそうですよ」
 「なんだ、そりゃ?」
 「それでね、腕輪とか槍とかが空中から本当に降って来まして」
 「おい、マジかよ」
 「はい。それで最後に、俺のために祈ったんです」
 「おう」
 「直径40メートルの水晶のでかい塊が出まして」
 「へ?」
 「数百トンですよ。参りました」
 「「「……」」」

 佐野さんも早乙女たちも驚いている。
 そういえば、早乙女たちには話してなかった。
 俺は上に行ってノートPCを持って降りた。

 「これです」
 「「「!」」」

 フィリピンでの儀式の洞窟前で撮影した写真を見せた。
 俺たちが一緒に写っているので、あれの大きさが分かる。
  
 「石神! なんだこれは!」
 「早乙女家宛のものが間違って……」
 「やめてくれよ!」
 「ワハハハハハハハハ!」

 俺は画像をスライドして、様々な角度から内部に見えるものを見せて行った。
 三人が声も無く驚いていた。

 「トラ、俺お前とやってけるかな」
 「ワハハハハハハハハ!」

 「《アイギスの宝玉》がまた降ったのですね」

 突然久留守が喋ったのでみんなが驚いた。
 またいつもの可愛らしい顔ではなく、やけに大人びた表情になっていた。

 「久留守、なんて言ったんだ?」

 久留守はまた黙ってしまった。
 今はまだ俺たちが知る必要もないものなのだろう。

 「百家の人間たちが予言していたんです」
 「百家!」
 「はい。俺たちはそのための土台というか神殿というか、そういうものを用意していただけなんですけど」
 「なんだか分からん」
 「俺たちもですよ。あるものを乗せるものかとは思っていたんですが、ピッタリなサイズのアレが出て来たんで俺がすぐに気付きました」
 「おい、そろそろ……」
 
 佐野さんが精一杯になって来た。
 俺は笑って話を終え、佐野さんたちを連れて上に上がった。
 丁度釜めしが炊き上がっていた。
 暑いのでリヴィングに運ばせる。

 蓋を開いて見せて、佐野さんに好きな釜を選んでもらい、佐野さんはカニとイクラのものを選んだ。
 俺はウナギと鮭の五目の二つをもらった。
 早乙女達もめいめいに好きな釜を選び、みんなで食べる。

 「トラ、これは美味いな!」
 「ルーとハーが料理好きになりましてね。毎日美味いものを喰わせてくれるんですよ」
 「そうか、二人とも偉いね!」
 「「エヘヘヘヘヘ!」」

 早乙女と雪野さんも二人を褒め称える。

 「ルーちゃん、ハーちゃん、本当に美味しい!」
 「うん、ますます腕が上がったね!」
 「「ありがとうございますー!」」

 亜紀ちゃんが帰って来た柳に、庭のアレを忘れてたと話していた。
 柳も顔が青くなる。

 「もういいよ! ちょっと考えてることがある」
 「「え?」」
 「「トゥアハ・デ・ダナーン」なんだろ? だったらな」
 「え、タカさん、当てがあるんですか!」
 「ああ。だから深刻にならなくていい」
 「「はい!」」
 
 亜紀ちゃんと柳が喜んだ。

 「でも、もう真夜に庭を掘らせるんじゃねぇぞ!」
 「「は、はい!」」





 まさか、こんなところでアレに繋がるとは思っていなかった。
 俺は無関係でいたかったのだが。
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