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あの日、あの時: 過激派襲撃事件 Ⅲ
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俺は叫んだが、何人かの警官が立ったままだった。
銃声がして外の立ち番の警官と、中でも2人が散弾を受けて倒れる。
俺の声は聞こえていただろうが、警察署が襲撃されるという状況をみんなが受け入れていない。
俺は立ち番の警官を抱きかかえて中へ運び、中で撃たれた警官も他の署員が抱えて行った。
俺は侵入する連中に備えようとしたところ、鉛パイプが投げ込まれたのを見た。
今度は手製銃ではない。
10本ほど、中へ転がって行く。
鉛の側面に深い切れ込みが幾つも見えた。
導火線に火が付いている。
佳苗さんの近くにも落ちた。
「爆弾だぁ! 伏せろぉ!」
俺はまた佳苗さんに覆いかぶさった。
「カナさん! 耳を塞いで!」
佳苗さんの手を耳に当てさせ、俺も自分の耳を塞いだ。
幾つもの爆発音が響き、俺の背中に破片が喰い込むのを感じた。
署内で様々なものが吹っ飛んだ。
すぐにまた外から破裂音がし、手製銃が撃ち込まれて行くのが分かる。
20人近い連中が、次々と手製銃を持ち換えて撃って来た。
相当準備をして来たことが分かった。
容赦ない襲撃で、30人以上いた署員たちが動揺している。
爆弾のせいで半数がどこかに怪我をしていた。
動ける人間も多そうだったが、爆発音は人間の心理を動揺させるものだ。
まさか警察署が襲われることなど、誰も想定していなかっただろう。
上の階から新たに警官たちが駆け降りて来る。
「カナさん、大丈夫ですか!」
「うん」
佳苗さんの身体を確認すると、左のふくらはぎから血が出ていた。
爆弾の破片が喰い込んだのだ。
「怪我してるじゃないですかぁ!」
「大丈夫、大したことはないわ。トラちゃんが守ってくれたお陰よ」
俺は立ち上がって叫んだ。
「テッメェラァァァァァァーーーー!」
「トラちゃん! 背中が酷い怪我!」
俺の制服の背は破れ、すだれのように生地が垂れ下がっていた。
幾つもの爆弾の破片が喰い込んでいるのは分かっている。
傷の具合は自分で判断出来た。
それほどのダメージはない。
俺は外へ飛び出した。
激怒してはいたが、同時に冷静に敵の戦力を把握していた。
俺はいつもそうだ。
戦いになると、まるで専用の脳神経が独立して働く感覚がある。
敵の数は18人。
軽トラ3台に分乗して来ている。
うち2台は正面につけ、もう1台がその後ろにいた。
主な武器は手製銃と鉛パイプ爆弾か。
だがその威力は本物の銃や爆弾に比べて断然低い。
俺は別荘で観たものを覚えている。
木炭と硫黄、それに確認はしていないが硝石だろう。
原始的な黒色火薬の材料だ。
俺は中学生の時に矢田とロケット製作をし、火薬類の知識があった。
威力が低いのは黒色火薬のせいだと判断した。
しかも銃は鉛パイプを使った照準もいい加減なものだ。
グリップも無く、片手で鉛パイプを突き出すように撃って来るために的を狙っても当たりにくい。
散弾にしたのは、ある程度の範囲に拡げるためだろう。
単発の弾頭であれば殺傷力も増すが、多分全然当たらない。
そのために、広範囲に広げる散弾にしたのだ。
恐らく5ミリ程度のベアリングを使っている。
あの日手製銃で撃たれた一番隊の仲間はみんな内臓には届かず肉で弾が留まっていた。
もちろん油断は出来ないが殺傷力は低い。
爆弾も同じだ。
鉛パイプを破片とすることで多少の威力はあるが、俺の背中に喰い込んだ破片も全て筋肉で止まっている。
俺は外へ飛び出し、過激派の中に飛び込んだ。
俺に手製銃を向けようとするが、仲間に当たる危険があるために発射出来ないでいる。
それを見越しての俺の行動だった。
最初の一人の顔面にブロウを入れ、顔面をへこませて吹っ飛ぶ。
すぐに移動して右の男のレバーに蹴りを入れる。
すぐにその向こうの男に襲い掛かる。
周囲の連中を薙ぎ倒していく。
手製銃をこん棒のように振り回すが、俺に当たるわけもない。
無茶苦茶なことをする連中だが、肉弾戦は弱い。
暴走族たちの方が余程強い。
俺は武闘派ヤクザ相手に喧嘩して来た人間だ。
今度は長い鉄パイプで襲って来たが、それも余裕で避ける。
「こいつ、背中にも目があるのかよ!」
5人を斃した所で俺を恐れて連中は俺を襲わなくなって来た。
入れ替わりに他の人間が警察署内に飛び込んで行く。
みんな手に手製銃を持っていた。
腰にも何本もぶら下げている。
爆弾も身に着けているのが見えた。。
俺も外の連中から離れ、中へ再び飛び込んだ。
俺一人で暴れているので、連中に逃げられると潰すスピードが落ちる。
俺と距離が取れれば、連中は手製銃や爆弾を使う。
俺は段々焦って来た。
「こいつ、赤虎だぞ!」
誰かが俺に気付いて叫んだ。
「赤虎には近づくな!」
「日浦さんを探せ!」
俺は戦いながら、日浦という人物を取り返しに来たことが分かった。
先日俺たちが警察署に運び込んだ奴か。
佐野さんからは取り調べを受けているが、一切黙秘していると聞いていた。
多分、俺を別荘の2階で銃撃した奴だ。
あいつは一切の躊躇が無かった。
過激派が俺からますます逃げ始める。
他の署員も過激派に対応していくが、銃を持っているので迂闊に近づけない。
当時の警察官は銃を携行していても、それを使用できないことになっていた。
異常に銃に対する反発が当時の国民には強く、上からの命令でそうなっていたのだ。
だからこのような襲撃でも、誰も銃を手にしていない。
みんな素手と警棒で対抗しようとしていたが、相手はどんどん手製銃を使ってくるので近づけないでいる。
佐野さんが木刀を持って戦っているのが見えた。
剣道四段と前に聞いたことがある。
倒れた警官を守りながら助けて行っている。
流石だ。
俺は銃口の向きで回避出来るし、視界の外であってもプレッシャーで感知出来る。
外にいた連中も手製銃を持ってどんどん入って来る。
まだ警察署の1階で止めてはいるが、乱戦になった。
銃声がして外の立ち番の警官と、中でも2人が散弾を受けて倒れる。
俺の声は聞こえていただろうが、警察署が襲撃されるという状況をみんなが受け入れていない。
俺は立ち番の警官を抱きかかえて中へ運び、中で撃たれた警官も他の署員が抱えて行った。
俺は侵入する連中に備えようとしたところ、鉛パイプが投げ込まれたのを見た。
今度は手製銃ではない。
10本ほど、中へ転がって行く。
鉛の側面に深い切れ込みが幾つも見えた。
導火線に火が付いている。
佳苗さんの近くにも落ちた。
「爆弾だぁ! 伏せろぉ!」
俺はまた佳苗さんに覆いかぶさった。
「カナさん! 耳を塞いで!」
佳苗さんの手を耳に当てさせ、俺も自分の耳を塞いだ。
幾つもの爆発音が響き、俺の背中に破片が喰い込むのを感じた。
署内で様々なものが吹っ飛んだ。
すぐにまた外から破裂音がし、手製銃が撃ち込まれて行くのが分かる。
20人近い連中が、次々と手製銃を持ち換えて撃って来た。
相当準備をして来たことが分かった。
容赦ない襲撃で、30人以上いた署員たちが動揺している。
爆弾のせいで半数がどこかに怪我をしていた。
動ける人間も多そうだったが、爆発音は人間の心理を動揺させるものだ。
まさか警察署が襲われることなど、誰も想定していなかっただろう。
上の階から新たに警官たちが駆け降りて来る。
「カナさん、大丈夫ですか!」
「うん」
佳苗さんの身体を確認すると、左のふくらはぎから血が出ていた。
爆弾の破片が喰い込んだのだ。
「怪我してるじゃないですかぁ!」
「大丈夫、大したことはないわ。トラちゃんが守ってくれたお陰よ」
俺は立ち上がって叫んだ。
「テッメェラァァァァァァーーーー!」
「トラちゃん! 背中が酷い怪我!」
俺の制服の背は破れ、すだれのように生地が垂れ下がっていた。
幾つもの爆弾の破片が喰い込んでいるのは分かっている。
傷の具合は自分で判断出来た。
それほどのダメージはない。
俺は外へ飛び出した。
激怒してはいたが、同時に冷静に敵の戦力を把握していた。
俺はいつもそうだ。
戦いになると、まるで専用の脳神経が独立して働く感覚がある。
敵の数は18人。
軽トラ3台に分乗して来ている。
うち2台は正面につけ、もう1台がその後ろにいた。
主な武器は手製銃と鉛パイプ爆弾か。
だがその威力は本物の銃や爆弾に比べて断然低い。
俺は別荘で観たものを覚えている。
木炭と硫黄、それに確認はしていないが硝石だろう。
原始的な黒色火薬の材料だ。
俺は中学生の時に矢田とロケット製作をし、火薬類の知識があった。
威力が低いのは黒色火薬のせいだと判断した。
しかも銃は鉛パイプを使った照準もいい加減なものだ。
グリップも無く、片手で鉛パイプを突き出すように撃って来るために的を狙っても当たりにくい。
散弾にしたのは、ある程度の範囲に拡げるためだろう。
単発の弾頭であれば殺傷力も増すが、多分全然当たらない。
そのために、広範囲に広げる散弾にしたのだ。
恐らく5ミリ程度のベアリングを使っている。
あの日手製銃で撃たれた一番隊の仲間はみんな内臓には届かず肉で弾が留まっていた。
もちろん油断は出来ないが殺傷力は低い。
爆弾も同じだ。
鉛パイプを破片とすることで多少の威力はあるが、俺の背中に喰い込んだ破片も全て筋肉で止まっている。
俺は外へ飛び出し、過激派の中に飛び込んだ。
俺に手製銃を向けようとするが、仲間に当たる危険があるために発射出来ないでいる。
それを見越しての俺の行動だった。
最初の一人の顔面にブロウを入れ、顔面をへこませて吹っ飛ぶ。
すぐに移動して右の男のレバーに蹴りを入れる。
すぐにその向こうの男に襲い掛かる。
周囲の連中を薙ぎ倒していく。
手製銃をこん棒のように振り回すが、俺に当たるわけもない。
無茶苦茶なことをする連中だが、肉弾戦は弱い。
暴走族たちの方が余程強い。
俺は武闘派ヤクザ相手に喧嘩して来た人間だ。
今度は長い鉄パイプで襲って来たが、それも余裕で避ける。
「こいつ、背中にも目があるのかよ!」
5人を斃した所で俺を恐れて連中は俺を襲わなくなって来た。
入れ替わりに他の人間が警察署内に飛び込んで行く。
みんな手に手製銃を持っていた。
腰にも何本もぶら下げている。
爆弾も身に着けているのが見えた。。
俺も外の連中から離れ、中へ再び飛び込んだ。
俺一人で暴れているので、連中に逃げられると潰すスピードが落ちる。
俺と距離が取れれば、連中は手製銃や爆弾を使う。
俺は段々焦って来た。
「こいつ、赤虎だぞ!」
誰かが俺に気付いて叫んだ。
「赤虎には近づくな!」
「日浦さんを探せ!」
俺は戦いながら、日浦という人物を取り返しに来たことが分かった。
先日俺たちが警察署に運び込んだ奴か。
佐野さんからは取り調べを受けているが、一切黙秘していると聞いていた。
多分、俺を別荘の2階で銃撃した奴だ。
あいつは一切の躊躇が無かった。
過激派が俺からますます逃げ始める。
他の署員も過激派に対応していくが、銃を持っているので迂闊に近づけない。
当時の警察官は銃を携行していても、それを使用できないことになっていた。
異常に銃に対する反発が当時の国民には強く、上からの命令でそうなっていたのだ。
だからこのような襲撃でも、誰も銃を手にしていない。
みんな素手と警棒で対抗しようとしていたが、相手はどんどん手製銃を使ってくるので近づけないでいる。
佐野さんが木刀を持って戦っているのが見えた。
剣道四段と前に聞いたことがある。
倒れた警官を守りながら助けて行っている。
流石だ。
俺は銃口の向きで回避出来るし、視界の外であってもプレッシャーで感知出来る。
外にいた連中も手製銃を持ってどんどん入って来る。
まだ警察署の1階で止めてはいるが、乱戦になった。
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