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千鶴・鈴葉 石神家へ

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 8月1日。
 御坂鈴葉を連れて、石神家本家へ行く日だった。
 みんな夏休みに入っていて、俺の都合に合わせてこの日になった。
 俺も同行し、一応2泊の予定でいる。
 朝の8時に御坂がうちへ来た。

 「おはようございます!」
 「……おはよう」

 なんだ、こいつ。

 「石神さん! おはようございます!」
 「おい」
 「はい!」
 「なんでお前がいんだよ」
 「はい、ご一緒します!」
 「バカヤロウ!」
 「あれ? もう石神家の方には許可を得てますよ?」
 「俺は聞いてねぇよ!」
 「言うと断られると思いまして」
 「頭いいな!」
 「はい!」

 どうしてマンロウ千鶴がいる!
 しかも、虎白さんの許可は得ているということか。
 それならば、確かめなければならん。
 
 「石神家に確認する!」
 「石神さんがご当主なんですよね?」
 「その通りだ!」

 電話を持つ俺を、二人がキラキラした目で見る。
 あの最強の石神家の当主の俺を尊敬している。

 「おう、当主の高虎だぁ!」
 「てめぇ! 何のつもりだぁ!」
 「す、すいません」

 やっぱりダメだった。
 二人が何事かと俺を見ていた。

 「あのですね、今日御坂をそちらへ連れて行こうと思ってますが、マンロウ千鶴まで一緒に行く許可を取ってるって」
 「ああ、俺が聞いてるよ」
 「俺、知らないんですけど!」
 「それがどうかしたのか?」
 「いいえ! 当主の高虎でした!」
 「さっさと来い!」
 「はい!」

 呆れた顔で俺を見ている二人に言った。

 「いいんだってさ」
 「「……」」

 双子が荷物を持って外に出てきた。
 石神家本家には必須の二人だ。

 「「鈴葉ちゃーん!」」
 「こんにちはー! 今日は宜しくね!」
 「「うん!」」

 「マンロウちゃんだぁー!」
 「マンロウちゃんもよろしくね!」
 「うん、よろしくね」
 「「やったぁー!」」

 双子は大喜びだ。
 まあ、俺も別に不満があるわけではない。
 ロボも出てきた。
 千鶴と御坂の匂いを嗅いだのか。
 
 「ロボちゃん、おはよう」

 ロボが千鶴の足に突進し、御坂の足にも額をぶつける。
 ロボはハマーの方へ行って俺を見た。

 「おい、お前も行きたいのかよ?」
 「にゃ」
 
 もうどうでもいい。
 玄関を開け、柳を呼んだ。

 「柳! ロボの荷物も揃えてくれ!」
 「はーい!」

 柳がすぐにロボの食事皿、トイレなどを持って来る。
 道中のロボの御飯もだ。
 急いで焼いたササミや肉、刺身などがタッパーに入っている。
 ハマーに全員の荷物を積み込んだ。
 土産はもう前日に積んでいる。
 助手席にルーが座り、後ろに千鶴と御坂とハー。
 三人の脚の上にロボが乗った。

 「行くぞ」
 「「「「はい!」」」」
 「にゃー!」

 出発した。







 朝食を摂っていない千鶴たちのために、最初のサービスエリアで食事をした。
 俺も食べていないので家で作って来た稲荷寿司を出す。
 三人で食べ、朝食を食べている双子は朝食後の軽い(いっぱい)食事を買って来て一緒に食べた。

 「美味しいですね!」
 「ありがとさん」

 千鶴と御坂が稲荷寿司を喜ぶ。
 双子も欲しがるので、二つずつやった。
 まあ、こいつらが喰いたがるのは分かっていたので多めに作っている。
 千鶴が増えても問題ない。
 
 「おい、御坂は向こうでいろいろやることもあるけどよ、千鶴は何すんだよ?」
 「私だって石神家の皆さんと一緒にやりますよ!」
 「何を?」
 「鍛錬ですよ!」

 なんだ?

 「お前、刀とか使えんの?」
 「まー、少しは」
 「なんだよ?」
 「でも、石神家の方が私の技を見たいって」
 「ふーん」

 まあ、百目鬼家の神術を見たいということだろうか。
 でも、石神家ではほとんど知っているはずなのだが。
 虎白さんは、相変わらず俺には何も話してくれない。

 「おい、お前らなんか聞いてるか?」

 夢中で焼肉丼などを掻っ込んでいる双子に聞いた。

 「マンロウちゃんのね、「滑空足」とか見たいらしいよ?」
 「あとね、「神聖瞳術」とかだって」
 「なんでお前らは聞いてんだよ!」
 「だって、マンロウちゃんを一緒に連れてっていいか聞いたの私たちだもん!」
 「なんだと!」

 どうやら千鶴に頼まれて双子が間に入ったらしい。

 「ちきしょう! 俺はいつだって蚊帳の外だ!」
 「タカさんにも話とけって言われたよ?」
 「聞いてねぇぞ!」
 「忘れちゃった」
 「ごめんなさい」
 「!」

 千鶴と御坂が笑っていた。






 車の中で、俺は二人に石神家での注意事項を話した。

 「とにかく逆らうな。問答無用でぶった斬る人たちだからな!」
 「そうなんですか?」
 「おい、暢気に構えるな! 俺なんて酷かったよな?」

 双子に説明させる。

 「「虎地獄」ってあってね。奥義を教えるために、タカさんの身体に真剣をズブズブ刺すの」
 「「Ω」と「オロチ」の粉末があってね。治癒能力を高めるんだ。タカさん、いつもシュワシュワになってたよね」

 千鶴と御坂はよく分からない。

 「肉とか骨とか神経の再生を驚異的に高めるものなんだ。内臓まで刺されても、少し休むと修復する」
 「そんなものがあるんですか!」
 「まあな。お前らは使わないと思うけどよ」
 「そうして下さい!」
 「でも、来ちゃったからなー」
 「「!」」

 少しは脅えろ。

 「タカさんがキレちゃってね」
 「山の上のお城を吹っ飛ばしちゃったの」
 「そしたらみんな怒っちゃってね」
 「流石に死ぬかと思ったよね」
 「大丈夫だったの?」
 「うーん、まあ、ギリかな」
 「ほんとはもう「虎地獄」は終わってたのにね」
 「アホだったね」

 「バカヤロウ!」

 双子が笑った。

 「その時、私たちがやられそうになったのね」
 「もちろん冗談だったんだけどね」
 「そうしたらタカさんがキレちゃって」
 「でもやられちゃったの」

 今度は千鶴たちが笑った。

 「石神さんはいい人なんですね」
 「そんなことはねぇ」




 
 酷いことにはならないとは思うけど。
 まあ、何かあったらこいつら二人を守ってやらねぇと。
 でも、あんまし自信がねぇんだよなー。
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