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ガンドッグ
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「ガンスリンガー」との接触を果たし、トラと一緒に襲撃を撃破した。
拉致したリリーは、その戦闘の後で解放した。
ジャンニーニが掴んだ「ガンドッグ」の火薬工場は即座に放棄され、俺が調べた時にはもぬけの殻になっていた。
想像以上に動きが速い。
その後もジャンニーニに流通の方を追って貰ったりもしているが、もう怪しい動きは見つかっていない。
CIAやNSA、FBIやその他の諜報機関にも協力を要請しているが、さっぱりだ。
元々足がつかないように、細心の注意をもって動いていた組織だ。
それは異常なまでだった。
金を欲しがる組織であれば、窓口は大きいし多い。
裏社会では同時に自分たちを守るために、窓口を小さくする場合もある。
しかし活動を制限してまで隠そうとはしない。
他にも組織を守る方法はいくらでもあるからだ。
通常は地下へ潜るにしても、幾つかの経路と関門を設ければ済むことだ。
それでほぼ拠点の場所は隠される。
また、他の大きな組織に守ってもらう方法、また公の機関にして非合法な組織を隠す方法もある。
「ガンドッグ」の在り様はあまりにも異常だった。
今回のように、折角作った拠点を大慌てで放棄するなど、あり得ない。
莫大な設備投資をしていたはずだ。
それに放棄した火薬工場は結構優秀な所で、ここで作られた火薬は「ガンドッグ」にとっても有用なものだったはずだ。
それを易々と手放してしまった。
俺たちの追及をかわすためだけに。
もちろん、俺たちは「ガンドッグ」に接触したかった。
しかしそれは組織を壊滅させるとか傘下に置きたいわけではない。
取引をしようとしただけだ。
もちろん、敵対すれば話は別だが、少なくとも現時点で多少のイザコザはあったが大した問題ではない。
優秀な施設を放棄してまで逃げることはないだろう。
「ガンドッグ」には相当隠したいものがあるのだ。
行き詰って、トラに連絡した。
「トラ、済まない。「ガンドッグ」は未だに掴めないよ」
「仕方ない。相当透明な組織なのは分かっていたしな。徹底しているよなぁ」
「ああ、でもこれだけ探して見つからないというのはどうにもおかしい。俺だってそれなりのネットワークを持ってるんだ。裏社会の事で本気になって何も掴めないというのは」
「もしかしたらよ、もうアメリカにはいねぇんじゃねぇか?」
「え?」
「三合会が窓口になったんだろう? だったらもう中国に拠点を移している可能性もあるよな」
「考えてもみなかったぜ!」
流石はトラだ。
俺が思いもよらない発想を持っている。
あいつは頭がいい。
「まあ、そうならば追っても無駄だろう。しかし分からねぇのは、金儲けの組織じゃねぇということだよなぁ」
「そうだな。過去の仕事の報酬の幾つかは分かっているけど、確かに高いよ。ハーマン事件の時には1000万ドルだったようだ」
「まあ、高いわな」
「でも、そうそう仕事を引き受けていない感じだぜ? もちろん俺が掴んでないものも多いだろうけどな」
「安売りはしないだろう。だから一回の報酬は高額になる。でも、仕事をどんんどん引き受けてはいない。何か金以外の目的がありそうだよな」
「そうだな。でもこうなるんなら、あの女を確保しておけば良かったかな」
「あいつはあれ以上は知らないよ。もう用なしだ。敵対していないことを示すためにも、解放して良かったさ」
「トラも襲ってきた奴を見逃したんだろ?」
「まあ、双子がなんかなぁ。石神家本家を思い出したってさ」
「アハハハハハハ!」
トラも向こうでちゃんと探ってから解放している。
こっちで捕らえたリリーと、情報は変わらなかったのだ。
「聖、いつも面倒なことを押し付けて悪いな」
「なんでもねぇよ。こっちこそ役に立たなくて済まない」
「情報が引っかかればでいいからな」
「分かった、注意しておくよ」
トラとの電話を切った。
トラに申し訳なかった。
俺がトラから頼まれて成し遂げられなかった仕事がある。
この「ガンドッグ」に関することと、もう一つは八木保奈美のことだ。
「ガンドッグ」はともかく、八木保奈美はトラが本当に大事にしていた女だ。
是非探してやりたいが、いまだに掴めないでいる。
トラは俺に経過を聞くことも、八木保奈美の名前を出すことも無い。
でも俺には分かる。
トラはずっと心の中で血を流すほど苦しんでいる。
俺がトラを傭兵に誘ったことを知り、八木保奈美は戦場へ行くために「国境なき医師団」に入った。
そんなもの、トラと戦場で巡り合うわけはない。
八木保奈美も分かっていて、でも僅かな可能性を求めてそうしたのだ。
八木保奈美とは高校時代に何度か顔を合わせていた。
トラの一番の女ということで、一緒にいることが多かった。
トラのために自分を擲って行動する女だった。
暴力団にトラが狙われていると知って、俺と一緒にトラを陰から守ったこともある。
トラも八木保奈美を特別に扱っていた。
俺がトラを戦場へ連れて行ったから、二人は今でも会えないでいるのだ。
「国境なき医師団」は戦闘は行なわないが、巻き込まれて死ぬことも多い。
生きていて欲しい。
俺はいつも思っている。
トラのために、生きていてくれ。
八木保奈美のことは今はどうしようもない。
だけど、「ガンドッグ」はまだ手があるんじゃないかと思う。
トラのために出来るだけのことをしたい。
俺は中国関係に強い連中に協力を求めた。
拉致したリリーは、その戦闘の後で解放した。
ジャンニーニが掴んだ「ガンドッグ」の火薬工場は即座に放棄され、俺が調べた時にはもぬけの殻になっていた。
想像以上に動きが速い。
その後もジャンニーニに流通の方を追って貰ったりもしているが、もう怪しい動きは見つかっていない。
CIAやNSA、FBIやその他の諜報機関にも協力を要請しているが、さっぱりだ。
元々足がつかないように、細心の注意をもって動いていた組織だ。
それは異常なまでだった。
金を欲しがる組織であれば、窓口は大きいし多い。
裏社会では同時に自分たちを守るために、窓口を小さくする場合もある。
しかし活動を制限してまで隠そうとはしない。
他にも組織を守る方法はいくらでもあるからだ。
通常は地下へ潜るにしても、幾つかの経路と関門を設ければ済むことだ。
それでほぼ拠点の場所は隠される。
また、他の大きな組織に守ってもらう方法、また公の機関にして非合法な組織を隠す方法もある。
「ガンドッグ」の在り様はあまりにも異常だった。
今回のように、折角作った拠点を大慌てで放棄するなど、あり得ない。
莫大な設備投資をしていたはずだ。
それに放棄した火薬工場は結構優秀な所で、ここで作られた火薬は「ガンドッグ」にとっても有用なものだったはずだ。
それを易々と手放してしまった。
俺たちの追及をかわすためだけに。
もちろん、俺たちは「ガンドッグ」に接触したかった。
しかしそれは組織を壊滅させるとか傘下に置きたいわけではない。
取引をしようとしただけだ。
もちろん、敵対すれば話は別だが、少なくとも現時点で多少のイザコザはあったが大した問題ではない。
優秀な施設を放棄してまで逃げることはないだろう。
「ガンドッグ」には相当隠したいものがあるのだ。
行き詰って、トラに連絡した。
「トラ、済まない。「ガンドッグ」は未だに掴めないよ」
「仕方ない。相当透明な組織なのは分かっていたしな。徹底しているよなぁ」
「ああ、でもこれだけ探して見つからないというのはどうにもおかしい。俺だってそれなりのネットワークを持ってるんだ。裏社会の事で本気になって何も掴めないというのは」
「もしかしたらよ、もうアメリカにはいねぇんじゃねぇか?」
「え?」
「三合会が窓口になったんだろう? だったらもう中国に拠点を移している可能性もあるよな」
「考えてもみなかったぜ!」
流石はトラだ。
俺が思いもよらない発想を持っている。
あいつは頭がいい。
「まあ、そうならば追っても無駄だろう。しかし分からねぇのは、金儲けの組織じゃねぇということだよなぁ」
「そうだな。過去の仕事の報酬の幾つかは分かっているけど、確かに高いよ。ハーマン事件の時には1000万ドルだったようだ」
「まあ、高いわな」
「でも、そうそう仕事を引き受けていない感じだぜ? もちろん俺が掴んでないものも多いだろうけどな」
「安売りはしないだろう。だから一回の報酬は高額になる。でも、仕事をどんんどん引き受けてはいない。何か金以外の目的がありそうだよな」
「そうだな。でもこうなるんなら、あの女を確保しておけば良かったかな」
「あいつはあれ以上は知らないよ。もう用なしだ。敵対していないことを示すためにも、解放して良かったさ」
「トラも襲ってきた奴を見逃したんだろ?」
「まあ、双子がなんかなぁ。石神家本家を思い出したってさ」
「アハハハハハハ!」
トラも向こうでちゃんと探ってから解放している。
こっちで捕らえたリリーと、情報は変わらなかったのだ。
「聖、いつも面倒なことを押し付けて悪いな」
「なんでもねぇよ。こっちこそ役に立たなくて済まない」
「情報が引っかかればでいいからな」
「分かった、注意しておくよ」
トラとの電話を切った。
トラに申し訳なかった。
俺がトラから頼まれて成し遂げられなかった仕事がある。
この「ガンドッグ」に関することと、もう一つは八木保奈美のことだ。
「ガンドッグ」はともかく、八木保奈美はトラが本当に大事にしていた女だ。
是非探してやりたいが、いまだに掴めないでいる。
トラは俺に経過を聞くことも、八木保奈美の名前を出すことも無い。
でも俺には分かる。
トラはずっと心の中で血を流すほど苦しんでいる。
俺がトラを傭兵に誘ったことを知り、八木保奈美は戦場へ行くために「国境なき医師団」に入った。
そんなもの、トラと戦場で巡り合うわけはない。
八木保奈美も分かっていて、でも僅かな可能性を求めてそうしたのだ。
八木保奈美とは高校時代に何度か顔を合わせていた。
トラの一番の女ということで、一緒にいることが多かった。
トラのために自分を擲って行動する女だった。
暴力団にトラが狙われていると知って、俺と一緒にトラを陰から守ったこともある。
トラも八木保奈美を特別に扱っていた。
俺がトラを戦場へ連れて行ったから、二人は今でも会えないでいるのだ。
「国境なき医師団」は戦闘は行なわないが、巻き込まれて死ぬことも多い。
生きていて欲しい。
俺はいつも思っている。
トラのために、生きていてくれ。
八木保奈美のことは今はどうしようもない。
だけど、「ガンドッグ」はまだ手があるんじゃないかと思う。
トラのために出来るだけのことをしたい。
俺は中国関係に強い連中に協力を求めた。
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