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退魔師 XⅡ
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「あのよ、彼女には出来ないけど、千鶴たちにはまた会うつもりだったんだ」
「それは、最初はお友達から、ということですか?」
「ちげぇよ!」
俺は六花に、全員分の紅茶を頼んだ。
喉が渇いた。
「小島将軍に言われたんだ。興味がある人間がいれば、連れて行けと」
「じゃあ!」
「彼女じゃねぇ! 今後の「虎」の軍に入ってもらいたい人間たちだよ。千鶴と御坂、それに榊には興味を持った」
「嬉しい!」
「それにボクシング部の今村や御坂と一緒にいた剣道部の連中、それに千鶴が率いるアーチェリー部なんかもな」
「流石は石神さん! うちのベストメンバーですよ!」
「それに久我にも少々な。あいつは操られていたとはいえ、なかなかの男だ」
「そうですね」
「ちょっと弱い面もあるけどな」
「そうですね!」
千鶴が笑った。
「私もタカトラと一緒に高校に行きたかったなー」
「響子が行けば大人気だったな」
「そう?」
「間違いねぇ!」
「ワハハハハハハハハ!」
千鶴が微笑んで響子の頭を撫でた。
「本当にカワイイ!」
「そうだろう?」
「あの双子ちゃんたちも可愛かった!」
「あいつらもな!」
鋭い千鶴は、もう俺と響子の関係性を理解していただろう。
俺が大切にする人間であり、また性的な関係にも無いことを。
双子の話を出したのは、俺が家族と響子でどのような愛情の違いを持っているのかを測ったのだ。
響子が俺の中心であり、同時に他の人間との愛情の比較は出来ないことを悟った。
「私たちに会って、どうするつもりだったんですか?」
「分からない。お前たちはまだ若い。だからすぐに戦闘に組み込むことは出来ないと思う。しかし、俺たちの戦いにいずれは加わって欲しいと思っている」
「それはもちろん! 一般部員はともかく、私や御坂は「虎」の軍のことを知っていますから。是非末席に加えて下さい!」
「そうか。榊というのはどういう男なんだ?」
千鶴が少し考えて話した。
「榊のことは、最初は葛葉家の技かと思っていたんです。でも多分違う。あれは自分で磨いたんですよ。間違いなく天才ですね」
「そうか」
そうだとすれば、凄まじい才能だ。
どれほど積み上げて来たことか。
千鶴の言う通り、葛葉家の「爆裂拳」は四肢を使った強烈な技だ。
しかし、榊の技はパンチの強力さは無い。
もちろんそこそこの威力はある。
だが、榊の技の本質は、あの殺気の分裂だ。
一流の戦士には、同じようなことが出来る奴はいる。
俺も戦場でそういう奴と出会ったことがある。
それでも攻撃の本体は一つなので、俺も聖も惑わされることなく戦うことが出来る。
榊の技の凄さは、攻撃の本体まで分裂したことだ。
恐らく、殺気の分裂まで仕上げた時に、更にその先へ向かおうとしたのだろう。
そしてそれを成し遂げた。
「榊の技は体系じゃないですね。あれは榊一代しか成し遂げられない特殊な技だと思います」
「なるほどな」
六花が紅茶を持って来て、みんなで飲んだ。
「おい、響子。俺の白ランはカッチョ良かっただろう?」
「うん! 裏地が虎だもんね!」
「な!」
「一杯写真も撮りましたよね」
「そうだよな! ああ、六花のセーラー服も作れば良かったなぁ!」
「いつでも着ますよ!」
響子が目を細めて俺たちを見ていた。
「きょ、響子もな!」
「うん!」
機嫌が直った。
響子がニコニコし、柏木さんと千鶴も笑った。
「妹さんたちは、石神さんの」
「ああ、子どもたちだよ。俺は19歳だけどな!」
「ウフフフフ。あの子たちも強かったですねぇ」
「まあ、「花岡」の上級者だからな」
「石神さんは「石神家」の技ですよね?」
「俺も「花岡」は習得してる。でも石神家で大分鍛えられたからなぁ」
「小さな頃からですか?」
「いや、最初は30代の最初に一度。去年にちょっとな」
「え! それだけですか!」
「とんでもねぇ鍛錬だよ! 俺マジで死にそうになったんだから!」
「全身血まみれでしたよね」
「な!」
「私の一番オッパイで助かったんですよね!」
「そうだよな!」
「?」
千鶴がよく分からないという顔をした。
分からないでいい。
「石神家は血なんだ。血の中に何か入ってんだよ」
「そうなんですか」
俺は難しい話はここまでだと言い、千鶴がどうして柏木さんの見舞いに来たのかを聞いた。
「大叔父さんは百目鬼家とは縁が切れたと言ってますけど、表本家の最後の生き残りですからね。ずっと連絡は取っていたんですよ」
「そうだったか」
「お会いするのは滅多にありませんが。でも少し前から連絡が取れなくなって、慌てて探したんです!」
「ああ、悪かったね」
「もう! ほんとですよ! 私、一生懸命に探したんですから!」
千鶴が怒った顔で柏木さんを見た。
「時々ふいっといなくなることはありましたけどね! でもこんなに長い間連絡が取れないなんて」
「悪かったよ、心配かけたね」
「そうですよ! 大叔父さんはずっと持病を抱えてたのは知ってるんですから! まさかと思いましたよ!」
「そうか」
「家に行って、誰もいなくてちょっと安心しましたけど」
「アハハハハハハ!」
家で死んだのかと心配したのだろう。
「いつも入院している病院に聞いても教えてくれないし。うちのネットワークを使いましたよ!」
「もう勘弁してくれよ」
千鶴が笑顔になった。
「でも許してあげます! 石神さんと再会出来ましたからね! 大叔父さんのお陰です!」
「そうだろう?」
みんなで笑った。
紅茶を飲み終え、俺たちは柏木さんの病室を出た。
「千鶴、近いうちにお前たちを呼ぶつもりだ」
「いつでも! 他の人間には話を通しておきます」
「最初はお前と御坂、榊にしてくれ」
「はい。久我はどうします?」
「うーん」
「ダメですか?」
「あいつってクライじゃん」
千鶴が大笑いした。
「そこ、重要ですか!」
「うちに呼ぶつもりだからなぁ。うちのノリって結構はっちゃけてるからよ」
「大丈夫ですよ。久我は動じない人間ですから」
「そうか。じゃあ、久我にも話してくれ」
千鶴は俺に握手を求め、響子と六花の手も握った。
「じゃあ、待ってますね!」
「おう!」
三人で正面玄関を出ていく千鶴を見送った。
「虎曜日ですかね?」
「ならねぇよ!」
響子が六花に「いい子だったね」と嬉しそうに言っていた。
まあ、その通りなのだが。
もちろん恋人にするつもりはないし、また今すぐ戦士にするつもりもなかった。
だが、俺は不思議と千鶴たちを仲間にしたいと思っていた。
自分でも、どういうつもりなのかは分からない。
小島将軍に勧められたからというわけでもない。
俺自身は、まず話をしてみようというつもりではあった。
しかし、それはどうして……
俺は自分で気持ちを持て余していた。
「それは、最初はお友達から、ということですか?」
「ちげぇよ!」
俺は六花に、全員分の紅茶を頼んだ。
喉が渇いた。
「小島将軍に言われたんだ。興味がある人間がいれば、連れて行けと」
「じゃあ!」
「彼女じゃねぇ! 今後の「虎」の軍に入ってもらいたい人間たちだよ。千鶴と御坂、それに榊には興味を持った」
「嬉しい!」
「それにボクシング部の今村や御坂と一緒にいた剣道部の連中、それに千鶴が率いるアーチェリー部なんかもな」
「流石は石神さん! うちのベストメンバーですよ!」
「それに久我にも少々な。あいつは操られていたとはいえ、なかなかの男だ」
「そうですね」
「ちょっと弱い面もあるけどな」
「そうですね!」
千鶴が笑った。
「私もタカトラと一緒に高校に行きたかったなー」
「響子が行けば大人気だったな」
「そう?」
「間違いねぇ!」
「ワハハハハハハハハ!」
千鶴が微笑んで響子の頭を撫でた。
「本当にカワイイ!」
「そうだろう?」
「あの双子ちゃんたちも可愛かった!」
「あいつらもな!」
鋭い千鶴は、もう俺と響子の関係性を理解していただろう。
俺が大切にする人間であり、また性的な関係にも無いことを。
双子の話を出したのは、俺が家族と響子でどのような愛情の違いを持っているのかを測ったのだ。
響子が俺の中心であり、同時に他の人間との愛情の比較は出来ないことを悟った。
「私たちに会って、どうするつもりだったんですか?」
「分からない。お前たちはまだ若い。だからすぐに戦闘に組み込むことは出来ないと思う。しかし、俺たちの戦いにいずれは加わって欲しいと思っている」
「それはもちろん! 一般部員はともかく、私や御坂は「虎」の軍のことを知っていますから。是非末席に加えて下さい!」
「そうか。榊というのはどういう男なんだ?」
千鶴が少し考えて話した。
「榊のことは、最初は葛葉家の技かと思っていたんです。でも多分違う。あれは自分で磨いたんですよ。間違いなく天才ですね」
「そうか」
そうだとすれば、凄まじい才能だ。
どれほど積み上げて来たことか。
千鶴の言う通り、葛葉家の「爆裂拳」は四肢を使った強烈な技だ。
しかし、榊の技はパンチの強力さは無い。
もちろんそこそこの威力はある。
だが、榊の技の本質は、あの殺気の分裂だ。
一流の戦士には、同じようなことが出来る奴はいる。
俺も戦場でそういう奴と出会ったことがある。
それでも攻撃の本体は一つなので、俺も聖も惑わされることなく戦うことが出来る。
榊の技の凄さは、攻撃の本体まで分裂したことだ。
恐らく、殺気の分裂まで仕上げた時に、更にその先へ向かおうとしたのだろう。
そしてそれを成し遂げた。
「榊の技は体系じゃないですね。あれは榊一代しか成し遂げられない特殊な技だと思います」
「なるほどな」
六花が紅茶を持って来て、みんなで飲んだ。
「おい、響子。俺の白ランはカッチョ良かっただろう?」
「うん! 裏地が虎だもんね!」
「な!」
「一杯写真も撮りましたよね」
「そうだよな! ああ、六花のセーラー服も作れば良かったなぁ!」
「いつでも着ますよ!」
響子が目を細めて俺たちを見ていた。
「きょ、響子もな!」
「うん!」
機嫌が直った。
響子がニコニコし、柏木さんと千鶴も笑った。
「妹さんたちは、石神さんの」
「ああ、子どもたちだよ。俺は19歳だけどな!」
「ウフフフフ。あの子たちも強かったですねぇ」
「まあ、「花岡」の上級者だからな」
「石神さんは「石神家」の技ですよね?」
「俺も「花岡」は習得してる。でも石神家で大分鍛えられたからなぁ」
「小さな頃からですか?」
「いや、最初は30代の最初に一度。去年にちょっとな」
「え! それだけですか!」
「とんでもねぇ鍛錬だよ! 俺マジで死にそうになったんだから!」
「全身血まみれでしたよね」
「な!」
「私の一番オッパイで助かったんですよね!」
「そうだよな!」
「?」
千鶴がよく分からないという顔をした。
分からないでいい。
「石神家は血なんだ。血の中に何か入ってんだよ」
「そうなんですか」
俺は難しい話はここまでだと言い、千鶴がどうして柏木さんの見舞いに来たのかを聞いた。
「大叔父さんは百目鬼家とは縁が切れたと言ってますけど、表本家の最後の生き残りですからね。ずっと連絡は取っていたんですよ」
「そうだったか」
「お会いするのは滅多にありませんが。でも少し前から連絡が取れなくなって、慌てて探したんです!」
「ああ、悪かったね」
「もう! ほんとですよ! 私、一生懸命に探したんですから!」
千鶴が怒った顔で柏木さんを見た。
「時々ふいっといなくなることはありましたけどね! でもこんなに長い間連絡が取れないなんて」
「悪かったよ、心配かけたね」
「そうですよ! 大叔父さんはずっと持病を抱えてたのは知ってるんですから! まさかと思いましたよ!」
「そうか」
「家に行って、誰もいなくてちょっと安心しましたけど」
「アハハハハハハ!」
家で死んだのかと心配したのだろう。
「いつも入院している病院に聞いても教えてくれないし。うちのネットワークを使いましたよ!」
「もう勘弁してくれよ」
千鶴が笑顔になった。
「でも許してあげます! 石神さんと再会出来ましたからね! 大叔父さんのお陰です!」
「そうだろう?」
みんなで笑った。
紅茶を飲み終え、俺たちは柏木さんの病室を出た。
「千鶴、近いうちにお前たちを呼ぶつもりだ」
「いつでも! 他の人間には話を通しておきます」
「最初はお前と御坂、榊にしてくれ」
「はい。久我はどうします?」
「うーん」
「ダメですか?」
「あいつってクライじゃん」
千鶴が大笑いした。
「そこ、重要ですか!」
「うちに呼ぶつもりだからなぁ。うちのノリって結構はっちゃけてるからよ」
「大丈夫ですよ。久我は動じない人間ですから」
「そうか。じゃあ、久我にも話してくれ」
千鶴は俺に握手を求め、響子と六花の手も握った。
「じゃあ、待ってますね!」
「おう!」
三人で正面玄関を出ていく千鶴を見送った。
「虎曜日ですかね?」
「ならねぇよ!」
響子が六花に「いい子だったね」と嬉しそうに言っていた。
まあ、その通りなのだが。
もちろん恋人にするつもりはないし、また今すぐ戦士にするつもりもなかった。
だが、俺は不思議と千鶴たちを仲間にしたいと思っていた。
自分でも、どういうつもりなのかは分からない。
小島将軍に勧められたからというわけでもない。
俺自身は、まず話をしてみようというつもりではあった。
しかし、それはどうして……
俺は自分で気持ちを持て余していた。
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