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石神家 ハイスクール仁義 XⅣ

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 200台のバイクが正門から入って来た。
 連中がライカンスロープであろうことは予想していた。
 俺たちを皆殺しにするつもりなのだろう。
 《髑髏連盟》は、部団連盟が潰れたことを察知し、それを為した俺たちを抹殺して消そうと考えている。
 そしてそれが可能だと思っている。

 部団連盟が統制出来ない人間がいるとは想像していなかっただろう。
 確かに島津一剣のように超絶の技を持った人間がおり、普通の高校生では抗うことは出来ないはずだ。
 恐らくこれまで逆らったそこそこ強い連中も、簡単に潰すことが出来た。
 その手に余るということは、《髑髏連盟》にとっても脅威になる可能性がある。
 だからこれだけの大人数で攻めて来たのだ。

 まあ、もちろん俺たちの敵ではない。
 ライカンスロープが何百来ようとも、何のことも無い。

 「タカさーん! 私、前に出てもいいですかー!」
 「ああ、存分にやれ」
 「はい!」

 亜紀ちゃんが獰猛な笑みを浮かべて前に出て行った。
 校庭に入ったバイクがすぐに亜紀ちゃんを囲もうとしていく。
 瞬時に爆散し、反対に亜紀ちゃんから距離を取って行った。

 俺は双子に言って、バイク集団の後ろへ回り込むように指示した。
 逃がすつもりはない。

 「柳! お前も行け!」
 「はい!」

 俺は戦闘を子どもたちに任せ、早乙女に連絡した。
 事前に連携の準備は出来ている。
 俺たちの状況も常に早乙女にも伝えていた。

 「早乙女、《髑髏連盟》が「デミウルゴス」の主体だ! 奴らに連絡したら20分で星蘭高校までバイクで来た。20分圏内の施設を当たれ! Nシステムも使え!」
 「分かった!」

 早乙女もすぐに取りかかってくれる。
 200名ということは、星蘭高校の生徒以外の人間もいる、ということだろう。
 俺は指示を出した早乙女に続けて言った。

 「「ノスフェラトウ」が《髑髏連盟》と繋がっているらしい。「ノスフェラトウ」は「創世の科学」の内部組織だ。探した施設に「創世の科学」があれば、そこが臭いぞ」
 「そうか!」

 早乙女がすぐに探してくれるだろう。

 襲撃者は全員がメタモルフォーゼを終えていた。
 子どもたちがもう半分は斃している。
 予想通り、オーガタイプが多い。
 格技場の方を見ると、マンロウ千鶴や御坂が入り口に出て来ていた。
 子どもたちの戦いを眺めている。
 大体の趨勢が決まった頃、他の人間たちも出て来た。
 全員、子どもたちの戦闘に驚愕している。
 特に亜紀ちゃんの戦いぶりが目立つ。
 半分は亜紀ちゃんが屠っている。
 俺は入り口に行った。

 「凄いね!」

 マンロウ千鶴が俺に言った。

 「まあ、こんな程度はな」
 「猫神君たちって、本当に何者?」
 「《ケロケロ拳》の有段者だよ」
 「なにそれ!」

 マンロウ千鶴が笑った。
 俺が応えないことが分かっただろう。
 それ以上は聞かれなかった。

 間もなく、戦闘が終わった。
 膨大なライカンスロープの遺体が転がっている。
 もうすぐ「アドヴェロス」が来るはずだ。
 ハンターたちも来るだろうから、俺たちは顔を合わせないように部団連盟の本部建物へ移動した。






 奥の会議室に集まった。
 俺と子どもたち。
 マンロウ千鶴と御坂、今村。
 久我と気絶から覚めた郷間。
 それに「爆撃天使」の刈谷と「間宮会」の間宮、「死愚魔」の安藤。
 他の白ランたちは排除した。
 双子が何故か鳥かごを持っていた。
 底の無いものだ。
 なんだ?

 久我に問う。

 「久我、前にお前たちが殺した奴のことを話せ」

 久我はもう俺に逆らう気持ちはない。
 それに必要以上に、もう《髑髏連盟》に怯えてもいなかった。
 俺が気になっていたのは、高校生のこいつらが本当に殺人を犯したのかどうかだ。
 郷間はやる気満々だったが。

 「最初はボクシング部の主将の谷屋だった。部団連盟の総帥になると言って来た」
 「だから殺したのか?」
 「あれは事故だった。榊が強すぎたことと、それに見合う強さを谷屋も持っていた。だから榊が本気を出し、谷屋は脳挫傷で死んだ」
 「そうか」

 それは仕方がない。
 それ相応の死闘だったのだろう。
 榊が本気を出したのは、恐らくはその時だけだっただろう。
 俺との試合までは。

 「相撲部の奴はどうだったんだ?」

 久我が少しの間を置いて話した。

 「相撲部には三人が君臨していた。主将の前田と副将二人だ」
 「そいつらも部団連盟に逆らったのか?」
 「そうじゃない。我々が脅されたのだ」
 「脅された?」

 久我は青い顔をしていた。
 思い出しているのだろう。

 「2年前に《髑髏連盟》という組織が出来た。実態は分からなかったが、ある麻薬を学校内で扱うと言って来た」
 「「デミウルゴス」か」
 「そうだ。その時はどういうものか分からなかった。だが、《髑髏連盟》の人間が俺たちの前に現われ、あの怪物に変身した」
 「見せられたのか」

 久我たちも驚いただろう。

 「警察には届けなかったのか?」
 「動けば殺すと言われた。もちろん我々もそういうことは考えていた。でも、我々も自分たちの力を思い上がっていたのだ。我々で対処できると。だから脅威を取り除いた上で、警察なりを呼ぼうと考えた」

 確かに部団連盟は超絶の力を持った組織だ。
 自分たちで星蘭高校を護ろうと考えても不思議ではない。

 「しかし、部団連盟の中に既に《髑髏連盟》が入り込んでいた。さっき話した相撲部の三人だ。前田たちが我々に警察を介入させないことを強要して来た。そして自分たちが部団連盟を支配すると言った」
 「だから殺したのか」
 
 久我の顔がまた歪んだ。
 
 「そうじゃない。対抗出来ることを示そうとしただけだ。相撲部の主将の前田も同じ化け物だった。あの時は我々も他の生徒を護ろうとしていたんだ。だから部団連盟最強の島津に屈服させようと思ったんだ!」
 「他のチームも呼ばれての公開処刑だったそうだが?」
 「だから違うのだ! 部団連盟があの怪物たちに対抗出来ることを示すつもりで、殺すことまで考えていなかった! でも、島津が暴走した。止めようとしたが、瞬時に前田を島津が斬ってしまった……」

 「その死体はどうしたんだよ?」
 「《髑髏連盟》が引き取って行った」
 「それで?」
 「報復された。何人も殺された。怪物化した奴らには、島津の剣も通じなかった。我々は従うしかなかった。数週間前にも生徒が殺された。《髑髏連盟》の秘密を知ってしまった生徒だ。だから自殺に見せかけて殺された」

 早乙女が言っていた焼身自殺をしたとされた生徒か。

 「何人も殺されている。我々には逆らえない。部団連盟の中にもまだ《髑髏連盟》がいて、警察にも届けられなかった」
 「……」

 まあ、久我も悩んでいたのだろう。
 大物ぶってはいるが、所詮はまだガキだ。
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