上 下
2,343 / 2,808

石神家 ハイスクール仁義 X

しおりを挟む
 家に帰り、夕飯を食べて子どもたちと打ち合わせた。
 いつもより遅い時間まで家に誰もいなかったので、ロボが俺から離れなかった。

 まず俺の「爆撃天使」とのことを話し、星蘭高校の頂点か、もしくはそれに近い位置に部団連盟があることを話した。

 「アーチェリー部のマンロウさんが教えてくれました!」
 「明日タカさんが剣道部の島津一剣と試合をさせられるって」
 「そうか」

 刈谷も似たようなことを俺に言っていた。
 亜紀ちゃんが「死愚魔」のことを話した。

 「全員ぶっちめて、傘下に置きました!」
 「何やってんだよ」
 「えー!」
 「あんな連中いらねぇだろう」
 「だってぇー!」

 まあ、「デミウルゴス」とは関りが無いらしいことは分かったのでよしとする。
 ただの不良集団のようだ。
 学校内で問題を起こせば部団連盟などから制裁を受けるのだろう。
 しかし、学校外のことであれば見逃されている。
 今回のように外で女性を拉致してきても、それは見逃しの範疇なのだろう。
 部団連盟は正義の味方ではない。
 ただ、どうしてあんな不良連中を野放しにしているのかが分からない。
 部団連盟であれば、いくらでも統制出来るだろうに。

 柳が「間宮会」の報告をした。

 「真面目な勉強熱心な人たちでした!」
 「そうか」
 「私も入れてもらえることになりました!」
 「なんで?」
 「え?」

 こいつも亜紀ちゃんと同じで勘違いをしている。
 怪しくない連中を支配したり潜入してもしょうがねぇのに。
 恐らく、学校法人としての建前のために、間宮などのような勉強に優秀な生徒も集めているのだろう。
 実際に星蘭高校の一流大学の合格率はそこそこある。
 トップクラスとは言えないが、結構優秀な上位校だとも言える。

 双子の「ノスフェラトウ」と「髑髏連盟」は不発だった。
 ただ、アーチェリー部のマンロウ千鶴と話したようで、いい情報が手に入った。
 双子も、マンロウ千鶴が信頼出来る人間だと言っていた。

 「ところでよ」

 俺はみんなに聞いた。

 「俺の白ランって、結構評判になってない?」
 「「「「……」」」」

 「おい、誰も聞いてねぇのか?」
 「カッコイイよ!」
 「たまんないよ!」
 
 ルーとハーが言った。

 「そうか!」
 「でも、年齢に無理があるよ!」
 「マンロウちゃんも言ってたよ」
 「……」

 なんだよ。
 じゃあ明日はもうちょっと子どもらしくするかぁー。
  





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■






 翌朝。
 俺は学校へ行く前に、病院へ入った榊を見舞った。
 ドゥカティのスーパー・レッジェーラに乗って行った。
 やっぱ高校生はバイクだよな!

 榊の病室は窓から明るい陽が入る上等な個室だった。
 金は部団連盟から出ているのだろうか。

 「よう!」

 榊は起きていて、ベッドの上に上半身を起こしていた。
 まだ全身の傷の治療があるので、病院支給の解放しやすい寝間着だった。

 左肩と左の肋骨を2本の骨折、左の脛骨にヒビ。
 左側を中心に全身に裂傷。
 左半身を前に出すボクサースタイルで俺の「轟雷」を防いだ結果だろう。
 あの状況で、まだ俺に反撃する気概があったのだ。
 大した奴だった。
 
 「猫神、来たのか」
 「ああ、一応俺がやっちまったからな」
 「あれは試合だ。気にするな」

 榊は笑っていた。
 明るいいい笑顔だった。
 元気そうだ。

 「骨はすぐにつながる。俺の身体はそうなっているんだ」
 「そうか」
 
 俺は見舞いに持って来た千疋屋のフルーツを渡した。

 「負けちまった」
 「そうだな」
 「お前、なんであんなに強いんだ?」
 「「花岡」を習っているからな」
 「「花岡」! でもお前のは相当上級のものだろう」
 「おかしいかよ?」
 「「花岡」のことは詳しくは知らん。だが、ある程度の年数を掛けなければ身に付かない拳法だってことは分かる」
 「へぇ」
 「お前、本当は幾つなんだ?」

 榊の額を小突いた。

 「年齢の話はすんな!」
 「あ、ああ、分かった」
 
 俺は睨みながら言った。

 「誰にも言うなよ」
 「おう」
 「実は俺は18歳じゃねぇ」
 「そうだろうな」
 「本当は19歳なんだ」

 榊が大笑いし、もう一度額を小突いた。

 「俺は喧嘩の天才だからな。「花岡」の習得も早かったんだ」
 「そうか」

 榊に聞いてみた。

 「お前のあの技だってものスゲェものだろう? 殺気を分裂させるなんざよ」
 「分かったのか?」
 「ああ。最後のはしかも4体だ。そのうちの2体が本物に感じた」
 「それでもお前に負けた」
 「ボクシングじゃねぇからな。お前は最後までボクシングの試合をしていた。俺は「花岡」を使った。だから俺の勝ちなんてもんじゃねぇよ」
 「フフフフ」

 榊が小さく笑った。

 「あの最後の技は封印していたんだ」
 「なに?」
 「前にな、部団連盟を裏切ろうとした奴を、お前と同じように公開試合をやった」
 「……」

 「そいつはボクシング部の部長だった人でな。俺が一年でその人が三年。強かったよ」
 「そうなのか」
 「あまりに強かったんで、あの技を使った」
 「……」

 「死んだよ。そんなつもりは無かったんだがな」
 「……」

 それで応援団長の郷間が「構わない」と言ったのか。
 あの技を使って俺を殺しても良いと。
 榊は部団連盟の制裁役として、どうしても俺を倒さなければならなかった。

 「あれが通じないとはな。お前には完敗だ」
 「そうか」

 俺はそろそろ学校へ行くと言うと、榊が呼び止めた。

 「ボクシング部は正式に部団連盟を脱退することにした」
 「なんだと!」

 俺は驚いた。
 そんなことが出来る組織とは思えなかった。
 あの久我が相当硬い組織にしていることは分かっている。

 「もう決めたんだ」
 「お前、それで大丈夫なのかよ!」
 「分からない。恐らく、島津一剣か郷原と戦わされるだろうよ」
 「おい!」
 
 榊が笑った。

 「俺も負けるつもりはない。これでも部団連盟の最強の一角を誇っていたんだからな」
 「お前、どうして!」

 榊が笑みを止めて話した。

 「もう嫌なんだ。久我さんの下で自分の意志とは違うことをさせられるのがな」
 「……」

 「猫神、お前に負けてやっと分かった。何か不利益があるとしても、自分が正しいと思ったことをしなきゃな」
 「榊、お前……」
 「俺個人が抜けようと思ったんだ。でも他の部員たちも俺と一緒に出るって言ってる」
 「部団連盟に逆らうのか」
 「そういうつもりもないんだけどな。でも久我さんたちはそう思うだろうな」
 
 榊の決意は固いようだった。

 「榊、お前らは俺が護ってやるよ」
 「なに?」
 「俺が部団連盟を潰してやる」
 「おい、猫神!」
 「ああ、今日は島津一剣とやらされるようだ」
 「もうか! おい、あいつは……」

 俺は手で制した。

 「聞かなくてもいい。お前との試合もそうだったしな」
 「猫神! 待て!」

 「俺はよ、世界最強の剣術集団に鍛えられてんだ」
 「「花岡」じゃねぇのかよ!」
 「むしろ剣術の方がすげぇよ。島津がどんな奴かは知らないが、俺の剣術より上ってことは絶対にねぇ」
 「猫神、お前……」

 笑って手を振った。

 「また来るわ。島津をどうやって倒したか聞かせてやる」

 榊も笑った。
 
 「そうか、待ってる」
 「おう! 任せろ!」

 俺は病院を出た。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お嬢様、お仕置の時間です。

moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。 両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。 私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。 私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。 両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。 新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。 私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。 海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。 しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。 海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。 しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。

まさか、、お兄ちゃんが私の主治医なんて、、

ならくま。くん
キャラ文芸
おはこんばんにちは!どうも!私は女子中学生の泪川沙織(るいかわさおり)です!私こんなに元気そうに見えるけど実は貧血や喘息、、いっぱい持ってるんだ、、まあ私の主治医はさすがに知人だと思わなかったんだけどそしたら血のつながっていないお兄ちゃんだったんだ、、流石にちょっとこれはおかしいよね!?でもお兄ちゃんが医者なことは事実だし、、 私のおにいちゃんは↓ 泪川亮(るいかわりょう)お兄ちゃん、イケメンだし高身長だしもう何もかも完璧って感じなの!お兄ちゃんとは一緒に住んでるんだけどなんでもてきぱきこなすんだよね、、そんな二人の日常をお送りします!

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~

菱沼あゆ
キャラ文芸
 突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。  洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。  天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。  洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。  中華後宮ラブコメディ。

[完結済み]男女比1対99の貞操観念が逆転した世界での日常が狂いまくっている件

森 拓也
キャラ文芸
俺、緒方 悟(おがた さとる)は意識を取り戻したら男女比1対99の貞操観念が逆転した世界にいた。そこでは男が稀少であり、何よりも尊重されていて、俺も例外ではなかった。 学校の中も、男子生徒が数人しかいないからまるで雰囲気が違う。廊下を歩いてても、女子たちの声だけが聞こえてくる。まるで別の世界みたいに。 そんな中でも俺の周りには優しいな女子たちがたくさんいる。特に、幼馴染の美羽はずっと俺のことを気にかけてくれているみたいで……

俺の幼馴染がエロ可愛すぎてヤバい。

ゆきゆめ
キャラ文芸
「お〇ん〇ん様、今日もお元気ですね♡」  俺・浅間紘(あさまひろ)の朝は幼馴染の藤咲雪(ふじさきゆき)が俺の朝〇ちしたムスコとお喋りをしているのを目撃することから始まる。  何を言っているか分からないと思うが安心してくれ。俺も全くもってわからない。  わかることと言えばただひとつ。  それは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いってこと。  毎日毎日、雪(ゆき)にあれやこれやと弄られまくるのは疲れるけれど、なんやかんや楽しくもあって。  そしてやっぱり思うことは、俺の幼馴染は最高にエロ可愛いということ。  これはたぶん、ツッコミ待ちで弄りたがりやの幼馴染と、そんな彼女に振り回されまくりでツッコミまくりな俺の、青春やラブがあったりなかったりもする感じの日常コメディだ。(ツッコミはえっちな言葉ではないです)

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

イケメン歯科医の日常

moa
キャラ文芸
堺 大雅(さかい たいが)28歳。 親の医院、堺歯科医院で歯科医として働いている。 イケメンで笑顔が素敵な歯科医として近所では有名。 しかし彼には裏の顔が… 歯科医のリアルな日常を超短編小説で書いてみました。 ※治療の描写や痛い描写もあるので苦手な方はご遠慮頂きますようよろしくお願いします。

処理中です...