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「カタ研」無人島サバイバル Ⅵ

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 私たちは暗くなるまでにやることが沢山あった。
 みんなで話し合った。
 この島で生き抜くためのことと、その中で生活するためのものだ。
 食糧の確認は済んだ。
 次にトイレ問題だ。
 ちゃんと生きるためには絶対に必要なことだ。
 お風呂は諦めることが出来ても、トイレはそうは行かない。
 トイレは崖上の岩の間に作った。
 丁度岩が隠してくれる場所だ。
 下は砂地なので、ウンコの場合は穴を掘って埋める。
 まー、そのうち掘り返しちゃうだろうなー。
 しょうがないよ。
 石神家、スゴイしなー。
 亜紀ちゃんたちとそういう相談をしてたら、ハーちゃんが物凄い発見をしてくれた。

 「ウンちゃんが全部浄化してくれるよ!」
 「綺麗な水になるから飲めるよ!」

 いえ、それは結構です。
 試したら、「ウンちゃん能力」が一部使えることが分かった。
 敵をウンコにする能力は無理で、ウンコを浄化する能力は出来た。
 ウンコ分身も出来た。
 ルーちゃんも同じことが出来る。
 ウンコ浄化が出来るだけでも、本当に有難い。

 それに火を焚くことに決めた。
 私と亜紀ちゃんで海岸の流木を集めた。
 森側の黒いトゲを注意しながら結構な量を持って帰れた。
 焚火を起こしながら、またみんなで話し合う。

 「「花岡」が使えないこの状況って、多分妖魔の結界だよね?」
 
 ハーちゃんが自分の解析で話した。

 「そうだよね。地球とかのエネルギーと切り離されたんだね。だから、そういう力を使う「花岡」が出来なくなった」
 「中には使える技もあるよね?」
 「身体強化をして、普通の武道よりも威力は高いけど。でも、あの黒いトゲは触らない方がいいと思う」
 「ジョナサンのPK(サイコキネシス)が一番強力かな」
 
 ジョナサンの能力はまだ使っていない。
 敵は対処出来ないだろうが、念のためだ。
 私たちの生命線になるかもしれない。

 「石神さんと威力の調整は検証してます。任せて下さい!」
 「うん、お願いね」

 「あと、「オロチストライク」だよ」
 「他にももっと試しておこう」

 威力は小さくても、「螺旋花」などは使えるかもしれない。

 「武器はどうかな?」
 「亜紀ちゃんが持って来た火掻き棒と鉈かぁ」
 「包丁も幾つか」
 
 茜と陽菜が暗くなっている。

 「茜、陽菜、あなたたちは絶対に護るからね!」
 「はい、お願いします」
 「私たちも何か手伝いますよ」
 「うん!」

 自分たちが気に掛けられていることが分かり、少し安心したようだ。

 「バリケードを作れないかな」
 
 坂上さんが言う。
 坂上さんはこの異常な状況でも、冷静にいろいろ考えてくれている。

 「それはいいですね! じゃあ、どういうものを作ろうか?」
 「内側に岩を並べたらどうかな?」
 「無いよりいいよね!」
 「うん、早速作ろう!」

 敵について。

 「黒いトゲはみんな見ているけど、私と亜紀ちゃんは森の中でトゲ人間とも戦ったんだ」
 
 みんなに説明する。
 体長は人間と同じくらい。
 160センチから180センチまで。
 全身にトゲが生えていて、顔はカメレオンに似ている。

 「他にもいるかもしれないけど、問題は島に結界を引いた妖魔だよね」
 「「花岡」が通じないんじゃ、ちょっと不安かな」
 
 亜紀ちゃんが立ち上がって言った。

 「やるしかない! 私たちは絶対に生きて帰るの! どんな敵でも必ず勝つ!」

 みんなが亜紀ちゃんを見た。

 「タカさんも聖さんも、こういう絶体絶命の状況を何度も乗り越えたの! 諦めないで! 必ず勝つんだよ!」
 
 みんなが笑って拍手した。

 「そうだよね! 石神さんだったら諦めないぞ!」
 「うん、必ず生きて帰ろうね!」
 「私、何でもします! 言って下さい!」
 「諦めちゃダメなんだよね! うん、分かりました!」

 ジョナサンも立ち上がった。

 「僕は必ずみなさんを護るよ! 絶対だ! 僕も絶対に諦めない!」

 また拍手が起きた。
 亜紀ちゃんのお陰で、いい雰囲気になった。
 みんなでバリケードを作った。
 「花岡」は使えないけど、身体強化の「金剛」は少し使えた。
 大きな岩を集めて、並べて行った。

 それが完成した頃、日が暮れて暗くなって来た。

 破れてシートになってしまったボートを地面に敷いて、寝床にした。
 交代で見張りを立てる。
 バリケードの内側で二人ずつ。
 最初は上坂さんと亜紀ちゃん。
 次はルーちゃんと坂上さん。
 ハーちゃんとジョササン。
 私とパレボレ。
 3時間ごとの交代だ。
 
 灯の無い暗闇の中。
 下で波の音が聴こえる。
 みんな不安だろうけど、いつの間にか眠っていた。
 私も眠った。





 ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■





 「上坂さん、妖魔の狙いってなんだと思いますか?」
 「うん、あまり考えたくはないけど、私たちかな」
 「殺すつもりですよね?」
 「そうだね。しかも知能が高いよ。最初は簡単に島に入れて、すぐに通信機を壊した。あれが何なのか分かっていたということだよね?」

 その通りだ。
 でも、妖魔が通信機の存在をどうして知ったのか。

 「通信機だって、会話はしましたか?」
 「あ、うん! したよ! だから分かったのか!」
 「そうでしょうね。敵は私たちの言葉が分かる」
 「そうか!」
 「それだけじゃないですよ。私たちの「花岡」も理解した。海で放った技と、私が「飛行」で飛んで建物で撃った技で、地球の自転などのエネルギーを使っていることが分かったんです。だから結界で隔離した」
 「相当な知能だね」
 「はい」

 さっき、この話はみんなともしている。
 でも、私は不安でつい上坂さんとまた話していた。

 「亜紀ちゃん、あんまり気負わないでね」
 「え?」

 上坂さんが微笑んでいた。

 「亜紀ちゃんが強いのはよく知ってる。責任感が強いことも」
 「いえ、そんな」
 「でもね、みんな頑張るよ。亜紀ちゃん一人が背負わなくてもいいの。状況は良くないかもしれないけど、きっと大丈夫」
 「上坂さん……」
 「ね、みんなで帰ろう? 私たちは「カタ研」の仲間じゃない。みんなで力を合わせてさ」
 「はい!」

 上坂さんは私の不安を分かっていてくれた。
 
 「あの、私一つ考えていたことがあるの」
 「え、なんですか?」
 「「花岡」って、自分の外のエネルギーを借りて発揮するのよね?」
 「まあ、そんな感じです。地球の自転エネルギーを使うのが基本ですが、それ以外にも」
 「じゃあさ、この結界の中のエネルギーも使えないのかなって」
 「え!」

 とんでもなく驚いた。
 そんな発想は無かった。

 「だって、ここにも重力はあるし、光も温度もあるじゃない。あの黒いトゲや見て無いけどトゲ人間? それも動いているでしょ?」
 「そっか!」
 「「花岡」で使ってたエネルギーは遮断されたけど、それ以外のものはあるんだよ」
 「そうですよね!」

 確かにその通りだ。
  
 「上坂さん! やりましょう!」
 「え?」
 
 私は双子を起こした。
 柳さんも起こす。
 他のみんなを起こさないように、上坂さんの所へ連れて行った。

 「今ね、上坂さんからスゴイ話を聞いたの!」
 
 私は結界内のエネルギーで「花岡」が出来ないかを話した。

 「なるほどね!」
 「確かに理論的にはあるよね!」

 ルーとハーがノッって来た。

 「「オロチストライク」は「花岡」とは違う体系のエネルギーだからね」
 「柳さん、妖魔の存在エネルギーを使うことを思いついたもんね!」
 「スゴイよね!」
 「もう! みんなすぐに出来ちゃったじゃない!」
 「「「ワハハハハハハハハ!」」」

 「オロチストライク」は妖魔がこの世に存在するエネルギーを使った技だった。
 だからこそ、今この島でも使える。
 
 「確かに重力はあるんだよね」
 「でもそれは量子の平衡の崩れで……」

 ハーが押し黙った。
 みんな気にしないで話していく。

 「「オロチストライク」の利用で派生技が出来ないかな」
 「私も今思った! 「大オロチストライク」や「オロチブレイカー」もあるけどね」
 「妖魔の存在エネルギーは解析出来てるから、それを「花岡」に変換出来そうなんだけど」
 「どうやるの?」
 「例えば「螺旋花」。あれは地球の自転エネルギーを使うじゃない」
 「うん」
 「だから「オロチストライク」のさ……」

 みんなで意見を出し合う。
 上坂さんは「花岡」が分からないので参加できないが。
 その上坂さんが言った。

 「あのさ、「結界」ってそもそもどういうものなのかな?」
 「え?」

 ルーが説明した。

 「あのね、強力な力場を構成して、異次元空間を作るの」
 「そうなんだ」
 「だから地球の物理法則から外れちゃったんだよ」
 「うーん」
 「前にね、京都の道間家でクロピョンが作ったの。恐ろしく巨大な大妖魔がいてね、それを周辺に被害が出ないように討伐するために」
 「なるほどね」
 
 ハーが叫んだ。

 「それだぁー!」

 みんなが驚いてハーを見る。

 「なんか引っ掛かってたんだ! あの時のクロピョンの異次元空間と、今の状況は違うよ!」
 「なに、どういうこと?」
 「あの時、重力も違ってた。クロピョンが私たちが戦いやすいように疑似的に作ってたんだよ! 「花岡」は使えるように必要なエネルギーは遮断しなかったよ!」
 「?」
 「ねぇ、ルーも感じてたでしょ?」
 「うん。そっか!」

 二人には分かったらしい。

 「どういうことか説明して!」
 「あのね、結界を作ったらいろいろと遮断するんだよ!」
 「分かるよ、だから「花岡」が利用するエネルギーを遮断したんでしょ?」
 「そうなんだけど! 亜紀ちゃん、あの時の空とかどうだった?」
 「えーと、なんか薄暗い……そういうことかぁ!」
 
 私にも分かった。

 「ここは同じ世界だよ!」
 「だったら、遮断されてないんだよ!」

 上坂さんと柳さんが私たちを見ている。

 「ここは結界の中じゃない!」
 「そう思わされてた!」





 その時、離れた場所に巨大なプレッシャーが生じた。

 「「敵だ!」」

 双子が叫んだ。
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