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院長夫妻と蓮花研究所
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5月8日。
朝8時に全員で朝食を食べる。
今日から蓮花研究所へ行く。
朝食後に子どもたちが掃除をし、俺と六花はハマーとグランディアの洗車をした。
みんなが忙しくしているので、ロボが俺の所へ来て遊びたがった。
笑って静子さんに預かってもらった。
響子は寝ており、院長夫妻はウッドデッキでロボの相手をしてくれる。
10時には全ての作業を終え、俺たちは出発した。
「石神、本当に俺たちも一緒に行っていいのか?」
院長が不安そうに聞く。
「もちろんですよ。もう院長は「虎」の軍の中枢ですからね」
「そうなのか?」
「そりゃそうですよ。俺の一番大事な方々なんですから」
「おい!」
院長は怒って見せたが、顔が笑っている。
嬉しいのか。
助手席にルーが乗り、後ろのシートにハーと院長夫妻。
その後ろに亜紀ちゃんと柳。
皇紀は荷台のベンチシート。
ロボは自由だが、響子ベッドで寝ている。
響子と六花、吹雪はグランディアだ。
「蓮花さんの研究所は相当広いらしいな」
「そうですね。最初から広い敷地でしたが、更にガンガン拡張しましたからねぇ。元々は花岡家の土地なんですよ。あの辺一帯は全部ね」
「そうなのか。花岡さんの実家も相当凄いんだな」
「栞は見た目はおっとりしてますけどね。実家は日本を裏で操る暗殺拳の家系ですからね」
「うーん……」
院長は栞を気に入っていた。
あの美しく明るく優しく真面目な栞だ。
誰でも好きになる。
暗殺拳の家系とは誰も思わなかったが、まあ、斬に会えばすぐに分かる。
「院長には蓮花の研究所でいろいろ見てもらいますが、静子さんはゆっくりして下さいね」
「まあ、何かさせて欲しいわ」
「静子さんは今週の「ロボ当番」ですから」
「オホホホホホ!」
大笑いされた。
ロボがベッドから出て、静子さんの膝に甘えに来る。
「そうだぞー」と言っている。
「じゃあ、「ポッド」でも体験して頂きますかね」
「ぽっど?」
「ヴァーチャルで戦闘訓練をする装置なんですよ。六花の地元では、その技術でヴァーチャル体験の出来るアミューズメントがあるんです」
「そうなの!」
よくは分からないだろうが、楽しんでもらえるかもしれない。
12時前に、蓮花の研究所に着いた。
俺を感知して自動で門が開き、玄関で蓮花たちが待っていてくれた。
「石神様! お待ちしておりました!」
院長と静子さんは蓮花とはもう顔見知りで、ある程度親しい。
ニューヨークで俺のコンサートにお連れした時に、同じホテルで顔を合わせて仲良くなった。
「大院長と静子様もようこそ!」
「蓮花さん、お世話になります」
「お久し振りです」
子どもたちも挨拶する。
廊下の電動移送車に荷物を積み、乗り込んで移動した。
院長に説明した。
「アラスカの電動移送車は、ここの技術を応用しているんですよ」
「そうなのか」
「主に「セールスマン・ルート問題」をね。機械自体はどこでも組めますけど、効率よく運用するのは量子コンピューターがやってます」
「「セールスマン・ルート問題」って、数学の難問じゃなかったか?」
「そうです。「P≠NP問題」の一つですよね? 俺たちって結構スゴイんですよ」
「おい、とんでもないなぁ」
静子さんもいるので、簡単に説明した。
サラリーマンがどの経路で移動すると最も効率よく回れるか、という問題だ。
「沢山の営業場所を設定すると、とんでもない数の回り方が出来て、スーパーコンピューターでも100万年とか掛かるんですよ」
「そうなの!」
「数学では問題を単純化して一瞬で解ける問題と、そういう上手い方法がなくて一つ一つ試さなければならない問題があるとされているんです。それを「P≠NP問題」と呼んでいるんですね」
「はぁ」
「「NP問題」、つまり上手い方法がない問題も、実は解決法があるんじゃないかと。それをずっと探しているんです」
「石神さんはそれを見つけたのね?」
「まあ、俺自身じゃないですけどね。ルーとハーがいろいろやってくれてますよ」
「え! ルーちゃんとハーちゃんが!」
「こいつら、数学の天才でしてねぇ。おい! 今日も寝ないで考えるんだぞ!」
「「はーい!」」
院長と静子さんが笑った。
昼食は蓮花が用意してくれている。
俺と院長夫妻は子どもたちとは別だ。
鮎の塩焼き。
麦とろ。
シラス大根。
香の物。
それにけんちん汁。
子どもたちは肉とかだ。
「蓮花さん、美味しいです!」
静子さんが喜んだ。
院長が俺の食事を見て言った。
「おい、石神はもっと食べろよ」
「俺はいいですよ。あいつらが異常なんですって」
子どもたちがニコニコしながら大量のステーキや揚げ物を食べている。
院長たちにはこの二日間、バーベキューや鰻など、少々重いものを召し上がっていただいた。
だから朝や昼は出来るだけあっさりとしたものを食べてもらっている。
「今晩はカレーなんですよ。すみませんね。院長と静子さんには別なものも作りますから」
「俺たちのことはいいから、好きなものを食べてくれ」
「いや、俺、本当にこういうのが好きなんですって!」
すっかり俺まで肉バカと思われている。
昼食を終えて、子どもたちは戦闘訓練に行く。
皇紀はジェシカと幾つかのシステムの調整だ。
響子と吹雪は寝る。
六花とロボは、戦闘訓練に行った。
俺は院長を連れて施設を説明する予定だ。
静子さんを先に「ポッド」に案内した。
今は「ポッド」は専任の如月という女性がついている。
静子さんに簡単に説明した。
「ヴァーチャルリアリティという、仮想現実を脳内で再現する技術なんです。仮想現実で戦闘訓練をするわけですが、俺たちの技って結構強力で、実際にぶっ放すと大変なんですよ」
「なるほど!」
「だからこういう装置を使って、様々な戦闘訓練をしているんです」
「私が入るの?」
静子さんが不安そうだ。
俺は笑って言った。
「まあ、多少は戦闘も体験していただきますが。大丈夫ですよ、コンピューターでブーストをかけて最強モードにしてますから。それに他にも楽しんでもらえるように設定してます」
「そうなの? じゃあやってみようかしら」
「はい!」
事前に如月に静子さんを無敵モードに設定し、また「散策コース」のデータも入れさせた。
「散策コース」は、デュールゲリエたちが世界各国で記録したデータを基に、「飛行」で移動出来るようにした。
世界中を好きな場所へ行け、そこを散歩出来る。
ニューヨーク、ハワイを始め、フィリピン、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアなど、世界各国のデータがある。
静子さんは目の前のメニューでどこでも選べるし、「綺麗な場所」と言えば自動的に誘導してくれる。
昼も夜も、時間も自由に選択できる。
急いで組んだシステムだが、ここの量子コンピューター「ロータス」が一瞬で組み上げてくれた。
如月に静子さんを任せ、俺は蓮花と一緒に院長を連れて行った。
「院長。見たくもないものもありますが、今日は全部案内しますからね」
「ああ、分かっている」
俺は「ティーグフ」を呼んで、乗り込んだ。
朝8時に全員で朝食を食べる。
今日から蓮花研究所へ行く。
朝食後に子どもたちが掃除をし、俺と六花はハマーとグランディアの洗車をした。
みんなが忙しくしているので、ロボが俺の所へ来て遊びたがった。
笑って静子さんに預かってもらった。
響子は寝ており、院長夫妻はウッドデッキでロボの相手をしてくれる。
10時には全ての作業を終え、俺たちは出発した。
「石神、本当に俺たちも一緒に行っていいのか?」
院長が不安そうに聞く。
「もちろんですよ。もう院長は「虎」の軍の中枢ですからね」
「そうなのか?」
「そりゃそうですよ。俺の一番大事な方々なんですから」
「おい!」
院長は怒って見せたが、顔が笑っている。
嬉しいのか。
助手席にルーが乗り、後ろのシートにハーと院長夫妻。
その後ろに亜紀ちゃんと柳。
皇紀は荷台のベンチシート。
ロボは自由だが、響子ベッドで寝ている。
響子と六花、吹雪はグランディアだ。
「蓮花さんの研究所は相当広いらしいな」
「そうですね。最初から広い敷地でしたが、更にガンガン拡張しましたからねぇ。元々は花岡家の土地なんですよ。あの辺一帯は全部ね」
「そうなのか。花岡さんの実家も相当凄いんだな」
「栞は見た目はおっとりしてますけどね。実家は日本を裏で操る暗殺拳の家系ですからね」
「うーん……」
院長は栞を気に入っていた。
あの美しく明るく優しく真面目な栞だ。
誰でも好きになる。
暗殺拳の家系とは誰も思わなかったが、まあ、斬に会えばすぐに分かる。
「院長には蓮花の研究所でいろいろ見てもらいますが、静子さんはゆっくりして下さいね」
「まあ、何かさせて欲しいわ」
「静子さんは今週の「ロボ当番」ですから」
「オホホホホホ!」
大笑いされた。
ロボがベッドから出て、静子さんの膝に甘えに来る。
「そうだぞー」と言っている。
「じゃあ、「ポッド」でも体験して頂きますかね」
「ぽっど?」
「ヴァーチャルで戦闘訓練をする装置なんですよ。六花の地元では、その技術でヴァーチャル体験の出来るアミューズメントがあるんです」
「そうなの!」
よくは分からないだろうが、楽しんでもらえるかもしれない。
12時前に、蓮花の研究所に着いた。
俺を感知して自動で門が開き、玄関で蓮花たちが待っていてくれた。
「石神様! お待ちしておりました!」
院長と静子さんは蓮花とはもう顔見知りで、ある程度親しい。
ニューヨークで俺のコンサートにお連れした時に、同じホテルで顔を合わせて仲良くなった。
「大院長と静子様もようこそ!」
「蓮花さん、お世話になります」
「お久し振りです」
子どもたちも挨拶する。
廊下の電動移送車に荷物を積み、乗り込んで移動した。
院長に説明した。
「アラスカの電動移送車は、ここの技術を応用しているんですよ」
「そうなのか」
「主に「セールスマン・ルート問題」をね。機械自体はどこでも組めますけど、効率よく運用するのは量子コンピューターがやってます」
「「セールスマン・ルート問題」って、数学の難問じゃなかったか?」
「そうです。「P≠NP問題」の一つですよね? 俺たちって結構スゴイんですよ」
「おい、とんでもないなぁ」
静子さんもいるので、簡単に説明した。
サラリーマンがどの経路で移動すると最も効率よく回れるか、という問題だ。
「沢山の営業場所を設定すると、とんでもない数の回り方が出来て、スーパーコンピューターでも100万年とか掛かるんですよ」
「そうなの!」
「数学では問題を単純化して一瞬で解ける問題と、そういう上手い方法がなくて一つ一つ試さなければならない問題があるとされているんです。それを「P≠NP問題」と呼んでいるんですね」
「はぁ」
「「NP問題」、つまり上手い方法がない問題も、実は解決法があるんじゃないかと。それをずっと探しているんです」
「石神さんはそれを見つけたのね?」
「まあ、俺自身じゃないですけどね。ルーとハーがいろいろやってくれてますよ」
「え! ルーちゃんとハーちゃんが!」
「こいつら、数学の天才でしてねぇ。おい! 今日も寝ないで考えるんだぞ!」
「「はーい!」」
院長と静子さんが笑った。
昼食は蓮花が用意してくれている。
俺と院長夫妻は子どもたちとは別だ。
鮎の塩焼き。
麦とろ。
シラス大根。
香の物。
それにけんちん汁。
子どもたちは肉とかだ。
「蓮花さん、美味しいです!」
静子さんが喜んだ。
院長が俺の食事を見て言った。
「おい、石神はもっと食べろよ」
「俺はいいですよ。あいつらが異常なんですって」
子どもたちがニコニコしながら大量のステーキや揚げ物を食べている。
院長たちにはこの二日間、バーベキューや鰻など、少々重いものを召し上がっていただいた。
だから朝や昼は出来るだけあっさりとしたものを食べてもらっている。
「今晩はカレーなんですよ。すみませんね。院長と静子さんには別なものも作りますから」
「俺たちのことはいいから、好きなものを食べてくれ」
「いや、俺、本当にこういうのが好きなんですって!」
すっかり俺まで肉バカと思われている。
昼食を終えて、子どもたちは戦闘訓練に行く。
皇紀はジェシカと幾つかのシステムの調整だ。
響子と吹雪は寝る。
六花とロボは、戦闘訓練に行った。
俺は院長を連れて施設を説明する予定だ。
静子さんを先に「ポッド」に案内した。
今は「ポッド」は専任の如月という女性がついている。
静子さんに簡単に説明した。
「ヴァーチャルリアリティという、仮想現実を脳内で再現する技術なんです。仮想現実で戦闘訓練をするわけですが、俺たちの技って結構強力で、実際にぶっ放すと大変なんですよ」
「なるほど!」
「だからこういう装置を使って、様々な戦闘訓練をしているんです」
「私が入るの?」
静子さんが不安そうだ。
俺は笑って言った。
「まあ、多少は戦闘も体験していただきますが。大丈夫ですよ、コンピューターでブーストをかけて最強モードにしてますから。それに他にも楽しんでもらえるように設定してます」
「そうなの? じゃあやってみようかしら」
「はい!」
事前に如月に静子さんを無敵モードに設定し、また「散策コース」のデータも入れさせた。
「散策コース」は、デュールゲリエたちが世界各国で記録したデータを基に、「飛行」で移動出来るようにした。
世界中を好きな場所へ行け、そこを散歩出来る。
ニューヨーク、ハワイを始め、フィリピン、ドイツ、フランス、イギリス、イタリアなど、世界各国のデータがある。
静子さんは目の前のメニューでどこでも選べるし、「綺麗な場所」と言えば自動的に誘導してくれる。
昼も夜も、時間も自由に選択できる。
急いで組んだシステムだが、ここの量子コンピューター「ロータス」が一瞬で組み上げてくれた。
如月に静子さんを任せ、俺は蓮花と一緒に院長を連れて行った。
「院長。見たくもないものもありますが、今日は全部案内しますからね」
「ああ、分かっている」
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