富豪外科医は、モテモテだが結婚しない?

青夜

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院長夫妻と別荘 Ⅱ

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 別荘に着いて、2時半になった。
 みんなで大歓迎し、ロボが大好きな静子さんに甘えた。
 お二人を部屋へ案内し、少しゆっくりしていただく。
 3時のお茶の用意をし、双子に呼びに行かせた。

 グラマシーニューヨークの杏仁豆腐とダージリンの紅茶を淹れた。

 「随分と広い別荘だな」
 「後でご案内しますよ。ここは何もない場所なので、のんびりして下さい」
 「ああ」

 院長たちはグラマシーニューヨークの杏仁豆腐は初めてなので、感動して召し上がっていた。

 「ここは中山さんに管理してもらうために建てたんだよな」
 「はい。管理はちゃんとやってくれますし、拡張工事なんかで随分とお手数をお掛けしました」
 「まあ、一時は財産をなんて言っておられたものなぁ」
 「そうでしたよね。焦りましたよね」
 
 俺と院長で笑った。
 院長は静子さんに当時の話をする。

 「まあ、石神さんは若い頃から大変ね」
 「本当にねぇ。でも今じゃこいつらと毎年来てますからね。良かったんですよ」
 「お前が毎年一人で来ていたよな」
 「はい」
 「帰って来ると、何だかスッキリしていてなぁ。何なのかと思っていたぞ」
 「そうだったんですか!」
 「お前はのんびりするなんて性格じゃ無かったからぁ。俺たちも心配していたんだ」
 「なんですか!」

 別荘を建てる前に、一度だけ一緒に旅行でも行くかと誘われた。
 当然、気を遣うので断った。

 「一度旅行に誘われましたよね?」
 「そうだよ。お前をのんびりさせたくてな」
 「冗談じゃないですよ! 院長と一緒でのんびりなんて出来るわけなかったでしょう!」
 「お前! そうだ、お前酷い断り方をしたよな!」
 「そりゃそうですよ」

 静子さんがどう言われたの聞いた。

 「本物のゴリラと行った方がましとかな。それとお前と二人なら問題ないとかよ!」

 みんなが笑った。

 「じゃあ、石神さんと一緒に行けば良かった」
 「お前なぁ」

 お茶を飲んで、院長と静子さんを案内した。
 それほどのものはない。
 ウッドデッキと風呂場くらいだ。
 お疲れだろうから、外へは案内しない。
 部屋で休んでもらうように言った。

 「夕飯にはお呼びします。5時くらいです」
 「ああ、分かった」
 「別荘はご自由に観て下さい。でも屋上だけは行かないように」
 「なんだ?」
 「特別な場所なんですよ。暗くなってからご案内します」
 「そうなのか。じゃあ、のんびりさせてもらおう」

 ルーとハーがお二人を部屋へ連れて行き、そのまま帰って来なかった。
 何かお二人を楽しませる話でもしているのだろう。
 俺は響子と六花を連れて散歩に出た。
 亜紀ちゃんと柳は庭で鍛錬。
 皇紀はアラスカや連関研究所、フィリピンやパムッカレなどと連絡し、色々と打ち合わせや指示を出していた。
 
 響子は電動移送車に乗っている。
 時々俺と六花で響子のお尻を撫でた。

 「やめてよ!」
 「お前は電車で痴漢に遭うこともないからな」
 「なんでよ!」
 「たまには味わえ」
 「やだよ!」

 六花が笑った。

 「そう言えば、前に痴漢電車ごっこ、しましたね!」
 「そうだな!」
 「もう!」

 倒木の広場でのんびりし、帰りはまた痴漢ごっこをした。
 響子はパンツも脱がされ、怒っていた。




 子どもたちが、夕飯の準備を始める。
 今日は海鮮バーベキューだ。
 響子は六花と映画を観始める。
 院長たちも降りて来て、一緒に観た。
 ロボも一緒だ。

 『猫侍』だった。

 夕飯の支度が出来、みんなでウッドデッキに出る。
 いつものように子どもたちは肉の饗宴から始めるが、今日はすぐに終えて、みんなで海鮮を味わった。
 院長と静子さんも伊勢海老やホタテを喜んでくれる。
 双子がお二人のために、海鮮を用意していく。

 「このスープが美味しいわ」
 
 静子さんが貝を中心にした海鮮スープを褒めた。
 
 「あのね、干した食材で出汁を採ってるの!」
 「鮑とか海老とかね! それと干しシイタケ!」
 「へぇー、そうなの。大変ね」
 「「全然!」」

 双子が嬉しそうに静子さんに説明していく。
 院長も楽しそうに聞いている。
 いつもは俺がお二人に焼き上がった物を渡していくのだが、今日は双子がやっていた。
 ゆっくりと召し上がる二人のペースに合わせて、お好きそうなものを焼いて渡していく。
 俺は響子と吹雪に喰わせていく。
 六花がニコニコして俺を見ていた。

 「お前は自分で焼けよ」
 「はやくー」

 俺は笑ってホタテのバター焼きを六花にやった。

 「吹雪、美味しいね!」
 「うん!」

 響子と笑った。

 食事を終え、院長たちを風呂へ案内した。
 一緒に入るのに抵抗するかと思ったが、何も言わずに二人で脱衣所に入った。
 院長たちが出て、子どもたちが片づけをしている間に俺と響子、六花、吹雪で入る。
 吹雪がいるので長風呂はせず、片づけを終えた子どもたちと交代する。
 リヴィングにいる院長たちに声を掛けた。
 もう寝間着に着替えてもらっており、お二人は浴衣だった。

 「石神、素晴らしい風呂だな!」
 「そうですか。本当は夕暮れ時が一番綺麗なんですけどね」
 「そうか。でも少し観れたぞ」
 「はい」

 夏場であれば夕暮れも遅いのでのんびり観て頂けるのだが。
 他愛無い話をしていると、子どもたちも風呂から出て来て、すぐにつまみを作っていく。
 今日は海鮮が結構あるので、それを使って行った。
 
 トリガイの甘辛煮。
 エビのオーロラソース。
 各種刺身。
 マグロとアボカドサラダ。
 海鮮鍋。
 唐揚げ(いつもの獣用)。

 みんなで屋上へ運ぶ。
 院長と静子さんを先頭に。

 ドアを開けて頂いた。

 「石神!」
 「これは素敵ね!」

 お二人が喜んでくれた。
 双子が押して席に付いてもらった。

 「お前の家のあそこか……」

 院長が息を呑んで感動してくれた。

 「ここの空間を少しでもと思ったんですけどね。でも、やっぱりここが最高です」
 「そうだな」

 周囲は街灯もなく、まったくの暗闇だ。
 そうでなければ、このガラスの閉鎖空間は本当には味わえない。
 暗闇の中にある、俺たちの居場所。
 そういう感覚が存分に味わえる。
 飲み物を配り、しばらく全員で雰囲気を感じた。
 ロボは静子さんの足元で寝そべった。

 「文学ちゃんは、ペットは飼わないの?」

 ルーが聞いた。

 「いや、俺はあまり動物はなぁ」

 ロボが起き上がり、院長の背中に回って「やんのかステップ」を刻む。

 「あ! ロボが怒ってるよ!」
 「「やんのかステップ」が出ちゃったよ!」
 「文学ちゃん、すぐに謝って!」
 「え? あ、ああ! ロボちゃんみたいなカワイイ猫なら飼いたいよ!」

 「にゃう」

 ロボが静子さんの足元へ戻った。
 静子さんが大笑いしている。

 「そう言えば、随分と前にありましたねぇ」
 「おい、石神!」
 「なんですか?」
 
 亜紀ちゃんが聞いてくる。

 「院長、ほら」
 「おい、やめろ!」
 
 静子さんも思い出してクスクス笑った。

 「えー! 教えてくださいよー!」

 「あれはまだ院長が第一外科部の部長だった頃ですよね?」
 「石神! お前!」





 慌てる院長を尻目に、俺は語り出した。
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