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《デモノイド》戦 Ⅱ
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早乙女から連絡が来た。
「石神! 愛鈴が襲われた!」
「どういう状況だ!」
早乙女は、愛鈴が獅子丸のマンションの駐車場で襲われたと話した。
5人の白人の若い男女だったと。
「対物ライフルで腹部を撃たれた。下半身が千切れかけるほどの攻撃だ」
恐らく弾頭に工夫があるのだろう。
人間を破壊するために、軟金属を使っている。
愛鈴だからこそ助かったに違いない。
「愛鈴の状態は?」
「なんとか。治療と愛鈴自身の再生能力で持ちこたえた。しばらくは動けないだろうけどな」
「そうか」
「愛鈴の話では、最初は普通の人間に見えたそうだ。ただ、カマロのボディを簡単にナイフで切り裂いたことで、尋常な相手では無いと気付いた。向かって行くと、愛鈴のメタモルフォーゼした腕も斬ったようだ」
「なんだと?」
愛鈴のメタモルフォーゼした腕は、銃弾ですら跳ね返す。
普通のナイフなどで斬れるわけもないのだが。
「特殊なナイフか?」
「分からない。でも愛鈴には普通のナイフに見えたようだ。大型のクックリナイフのようだったと言っている」
「そうか」
ならば扱う人間の技量とパワーが凄まじいということだ。
もちろんナイフ自体も相当なものなのだろう。
「愛鈴はすぐに逃げた。得体の知れない連中だったからな。まともにぶつかるよりも、情報を持ち帰ることを考えた」
「ああ」
「追手は無いと思っていた。しかし、長距離から対物ライフルで攻撃された」
「そうか」
「愛鈴も気付けなかった。腹を撃たれたんだ。獅子丸が救出した」
「分かった」
早乙女はまだ俺たちに救援を求めたわけではない。
第一報として、事件を知らせただけだ。
「連中を調べる。今、成瀬が入国管理局に問い合わせている」
「何か分かったら、また連絡してくれ」
「ああ。念のため、そっちも警戒しておいてくれ」
「ありがとうな」
電話を切った。
今の話だけでも、相当な手練れと分かる。
愛鈴も「アドヴェロス」のハンターだ。
戦闘経験もそれなりに積んでいる。
獅子丸のマンションであったので、多少の油断はあったかもしれないが、相手の力量を見て瞬時に対応した。
それを突破された。
愛鈴のメタモルフォーゼした腕を見て、ビビらなかった。
ということは、愛鈴のことを知っている連中だ。
嫌な予感がした。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「愛鈴さん!」
「磯良?」
目を覚ますと、ベッドの脇に磯良がいた。
すぐに自分の状況を思い出す。
「獅子丸は?」
「無事です。愛鈴さんを抱えて逃げてくれて。俺たちが到着して、一緒に収容しました」
「そっか」
「今は自分のマンションに戻りました。愛鈴さんが助かったのを見届けて」
「え! 獅子丸のマンションは敵に知られてるんだよ!」
磯良が微笑んで言った。
「早乙女さんが、大丈夫だと言っていました。俺にもよくは分かりませんが、あそこには相当な防衛システムがあるそうです」
「でも……」
磯良は私の手を取って言った。
「早乙女さんがあそこまで自信を持って言うということは、絶対に安全なんですよ。大丈夫です」
「そうなのかな」
確かに早乙女さんは私たちの安全を第一に考えてくれる。
不安な要素があれば、必ず対処する人だ。
「分かったよ。でも獅子丸にも注意するように言ってね」
「はい」
獅子丸は私の危機を察知してすぐに来てくれた。
それも、防衛システムのお陰だったのだろうか。
礼を言うことが出来なかったが、今は御互いの安全を優先すべきだろう。
「愛鈴さんの傷はすべて塞がってます」
「タフなことが取り柄だからね」
「良かったです。一時はどうなることかと」
「うん、強敵だった。ワニの妖魔とはまた違う強さだ。あいつらはヤバい」
「俺がやりますよ」
磯良であれば勝てるとは思う。
しかし、何か底知れない不安があった。
「磯良、油断しないで」
「はい」
「あいつらの強さは、何か恐ろしいものがあるよ。私の勘だけどね」
「はい。油断はしません。それに、愛鈴さんをこんな目に遭わせたことは忘れません」
「磯良……」
こんな場合だが、嬉しかった。
磯良は私が絶対に護る。
まともにぶつかれば、磯良に敵う者は少ないだろう。
あの連中もそうだ。
しかし、あの5人の男女は磯良の強さを回避しながら襲ってくる。
私にはそれが分かった。
夕方に「アドヴェロス」の作戦室に集合した。
私の身体は、もう何の問題も無い。
あれほどの負傷も、私は短時間で治癒してしまう。
敵はそのことも知っているのだろうか。
作戦室には早乙女さんと成瀬さん、そしてハンターの十河さん、早霧さん、葛葉さん、磯良、鏑木、獅子丸そして私。
今日はいつもお世話になっている便利屋さんもいた。
「みんなもう知っているだろうが、今日の午前中に愛鈴が5人の男女に襲撃された。敵がどういう連中かは全く分からない。今後の対応を話し合うために集まってもらった」
成瀬さんが、全員に私から聞いた特徴で似顔絵と全身の姿絵を配った。
「獅子丸のマンションには監視カメラがあっただろう?」
早霧さんが聞いて、成瀬さんが応えた。
「破壊されていました。他の駐車中のドライブレコーダーも確認しましたが、駐車監視機能があるものはありませんでした。周辺の監視カメラは今探っています」
目立つ5人組だ。
似顔絵も大分近いものが出来たと思っている。
「全員白人だな」
「はい。コーカソイド系のようですね」
「ということは、ロシア人か」
「まだ確定は出来ませんが、可能性は高いと思われます」
「「業」が送り込んだか」
「そうだとすれば、精鋭でしょうね」
「だな」
全員が真剣に似顔絵と姿絵を見ている。
「今、早乙女さんのお宅の「ぴーぽん」がこの似顔絵と姿絵から全身のCG、それに変装のパターンなどを作成しています。今後もっと情報が集まれば、より精確なものが出来るでしょう」
「外国人ならば入国の記録があるんじゃないか?」
「該当はありませんでした。多分密入国です」
「そうなるかぁ」
「対物ライフルも用意されていたことから、敵は武器も豊富に持っていると考えた方がいいでしょう」
「俺たちにライフルで来るのかよ?」
「実際に愛鈴が負傷しています」
私の気配察知は、早霧さん、葛葉さん、磯良には劣る。
でも、それなりのレベルであるはずだった。
私が狙撃されたということは、他のハンターも危うい可能性がある。
「便利屋さん。愛鈴が襲撃された時に、何か感じましたか?」
「申し訳ありやせん。特には。あっしは妖魔などを探るにはそこそこなんですが、人間の殺意は感じはしてもそれがこの連中かどうかまでは」
早乙女さんが言った。
「恐らく、この5人は妖魔も埋め込まれているだろう。相当隠蔽が上手いようだが、その力を使えば便利屋さんにも分かると思う」
「へい、お任せくだせぇ!」
「注意すべきは、妖魔の力を使わずとも相当な能力を持っているということだ。それに俺たちの情報も掴んでいるようだ。その前提で今後の対応を決めたい」
全員が早乙女さんに向いている。
「磯良。お前にはデュールゲリエを3体護衛に付ける。他の全員にも1体ずつ付ける。磯良以外は出来るだけ不要な外出は控えてくれ」
「磯良もここにいた方がいいんじゃないですか?」
私が聞いた。
「愛鈴さん、必要ありませんよ。俺はいつも通りに動きます」
「磯良!」
分かっていた。
「アドヴェロス」最強のハンターである磯良は、自分が囮になるつもりだった。
「俺たちは全員で待機する」
「あの、せめて獅子丸もここに!」
「獅子丸は大丈夫だ。でも、外出は最低限でな」
「はい、分かってます」
また獅子丸の護衛を断られた。
一体どのような防衛システムがあるのだろうか。
私はあのマンションで襲われたのだが。
「早乙女さん。俺もちょっとは外に出させてくれ」
早霧さんが言った。
磯良だけに囮を任せたくないのだろう。
「ここの飯も悪くはないが、やっぱ外でも喰いたいよ」
「分かった。でも一人では動くな」
「じゃあ、葛葉とか誘ってもいいか?」
「そうしてくれ」
「早霧さん! 私も一緒に!」
「分かったよ」
早霧さんが笑って私の同行も認めてくれた。
私の強い要望で、磯良はしばらくここから学校へ通うことになった。
「じゃあ、私の部屋に来なよ!」
「いや、それは……」
「いいじゃない!」
早乙女さんが笑って言った。
「愛鈴、磯良には別に部屋を用意するよ」
「えぇ!」
みんなが笑った。
「じゃあ、部屋に遊びに行くね!」
「分かりましたよ!」
磯良も笑った。
私は磯良を絶対に護る。
どんな敵が来ても。
私がどうなっても。
「石神! 愛鈴が襲われた!」
「どういう状況だ!」
早乙女は、愛鈴が獅子丸のマンションの駐車場で襲われたと話した。
5人の白人の若い男女だったと。
「対物ライフルで腹部を撃たれた。下半身が千切れかけるほどの攻撃だ」
恐らく弾頭に工夫があるのだろう。
人間を破壊するために、軟金属を使っている。
愛鈴だからこそ助かったに違いない。
「愛鈴の状態は?」
「なんとか。治療と愛鈴自身の再生能力で持ちこたえた。しばらくは動けないだろうけどな」
「そうか」
「愛鈴の話では、最初は普通の人間に見えたそうだ。ただ、カマロのボディを簡単にナイフで切り裂いたことで、尋常な相手では無いと気付いた。向かって行くと、愛鈴のメタモルフォーゼした腕も斬ったようだ」
「なんだと?」
愛鈴のメタモルフォーゼした腕は、銃弾ですら跳ね返す。
普通のナイフなどで斬れるわけもないのだが。
「特殊なナイフか?」
「分からない。でも愛鈴には普通のナイフに見えたようだ。大型のクックリナイフのようだったと言っている」
「そうか」
ならば扱う人間の技量とパワーが凄まじいということだ。
もちろんナイフ自体も相当なものなのだろう。
「愛鈴はすぐに逃げた。得体の知れない連中だったからな。まともにぶつかるよりも、情報を持ち帰ることを考えた」
「ああ」
「追手は無いと思っていた。しかし、長距離から対物ライフルで攻撃された」
「そうか」
「愛鈴も気付けなかった。腹を撃たれたんだ。獅子丸が救出した」
「分かった」
早乙女はまだ俺たちに救援を求めたわけではない。
第一報として、事件を知らせただけだ。
「連中を調べる。今、成瀬が入国管理局に問い合わせている」
「何か分かったら、また連絡してくれ」
「ああ。念のため、そっちも警戒しておいてくれ」
「ありがとうな」
電話を切った。
今の話だけでも、相当な手練れと分かる。
愛鈴も「アドヴェロス」のハンターだ。
戦闘経験もそれなりに積んでいる。
獅子丸のマンションであったので、多少の油断はあったかもしれないが、相手の力量を見て瞬時に対応した。
それを突破された。
愛鈴のメタモルフォーゼした腕を見て、ビビらなかった。
ということは、愛鈴のことを知っている連中だ。
嫌な予感がした。
■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■ ■
「愛鈴さん!」
「磯良?」
目を覚ますと、ベッドの脇に磯良がいた。
すぐに自分の状況を思い出す。
「獅子丸は?」
「無事です。愛鈴さんを抱えて逃げてくれて。俺たちが到着して、一緒に収容しました」
「そっか」
「今は自分のマンションに戻りました。愛鈴さんが助かったのを見届けて」
「え! 獅子丸のマンションは敵に知られてるんだよ!」
磯良が微笑んで言った。
「早乙女さんが、大丈夫だと言っていました。俺にもよくは分かりませんが、あそこには相当な防衛システムがあるそうです」
「でも……」
磯良は私の手を取って言った。
「早乙女さんがあそこまで自信を持って言うということは、絶対に安全なんですよ。大丈夫です」
「そうなのかな」
確かに早乙女さんは私たちの安全を第一に考えてくれる。
不安な要素があれば、必ず対処する人だ。
「分かったよ。でも獅子丸にも注意するように言ってね」
「はい」
獅子丸は私の危機を察知してすぐに来てくれた。
それも、防衛システムのお陰だったのだろうか。
礼を言うことが出来なかったが、今は御互いの安全を優先すべきだろう。
「愛鈴さんの傷はすべて塞がってます」
「タフなことが取り柄だからね」
「良かったです。一時はどうなることかと」
「うん、強敵だった。ワニの妖魔とはまた違う強さだ。あいつらはヤバい」
「俺がやりますよ」
磯良であれば勝てるとは思う。
しかし、何か底知れない不安があった。
「磯良、油断しないで」
「はい」
「あいつらの強さは、何か恐ろしいものがあるよ。私の勘だけどね」
「はい。油断はしません。それに、愛鈴さんをこんな目に遭わせたことは忘れません」
「磯良……」
こんな場合だが、嬉しかった。
磯良は私が絶対に護る。
まともにぶつかれば、磯良に敵う者は少ないだろう。
あの連中もそうだ。
しかし、あの5人の男女は磯良の強さを回避しながら襲ってくる。
私にはそれが分かった。
夕方に「アドヴェロス」の作戦室に集合した。
私の身体は、もう何の問題も無い。
あれほどの負傷も、私は短時間で治癒してしまう。
敵はそのことも知っているのだろうか。
作戦室には早乙女さんと成瀬さん、そしてハンターの十河さん、早霧さん、葛葉さん、磯良、鏑木、獅子丸そして私。
今日はいつもお世話になっている便利屋さんもいた。
「みんなもう知っているだろうが、今日の午前中に愛鈴が5人の男女に襲撃された。敵がどういう連中かは全く分からない。今後の対応を話し合うために集まってもらった」
成瀬さんが、全員に私から聞いた特徴で似顔絵と全身の姿絵を配った。
「獅子丸のマンションには監視カメラがあっただろう?」
早霧さんが聞いて、成瀬さんが応えた。
「破壊されていました。他の駐車中のドライブレコーダーも確認しましたが、駐車監視機能があるものはありませんでした。周辺の監視カメラは今探っています」
目立つ5人組だ。
似顔絵も大分近いものが出来たと思っている。
「全員白人だな」
「はい。コーカソイド系のようですね」
「ということは、ロシア人か」
「まだ確定は出来ませんが、可能性は高いと思われます」
「「業」が送り込んだか」
「そうだとすれば、精鋭でしょうね」
「だな」
全員が真剣に似顔絵と姿絵を見ている。
「今、早乙女さんのお宅の「ぴーぽん」がこの似顔絵と姿絵から全身のCG、それに変装のパターンなどを作成しています。今後もっと情報が集まれば、より精確なものが出来るでしょう」
「外国人ならば入国の記録があるんじゃないか?」
「該当はありませんでした。多分密入国です」
「そうなるかぁ」
「対物ライフルも用意されていたことから、敵は武器も豊富に持っていると考えた方がいいでしょう」
「俺たちにライフルで来るのかよ?」
「実際に愛鈴が負傷しています」
私の気配察知は、早霧さん、葛葉さん、磯良には劣る。
でも、それなりのレベルであるはずだった。
私が狙撃されたということは、他のハンターも危うい可能性がある。
「便利屋さん。愛鈴が襲撃された時に、何か感じましたか?」
「申し訳ありやせん。特には。あっしは妖魔などを探るにはそこそこなんですが、人間の殺意は感じはしてもそれがこの連中かどうかまでは」
早乙女さんが言った。
「恐らく、この5人は妖魔も埋め込まれているだろう。相当隠蔽が上手いようだが、その力を使えば便利屋さんにも分かると思う」
「へい、お任せくだせぇ!」
「注意すべきは、妖魔の力を使わずとも相当な能力を持っているということだ。それに俺たちの情報も掴んでいるようだ。その前提で今後の対応を決めたい」
全員が早乙女さんに向いている。
「磯良。お前にはデュールゲリエを3体護衛に付ける。他の全員にも1体ずつ付ける。磯良以外は出来るだけ不要な外出は控えてくれ」
「磯良もここにいた方がいいんじゃないですか?」
私が聞いた。
「愛鈴さん、必要ありませんよ。俺はいつも通りに動きます」
「磯良!」
分かっていた。
「アドヴェロス」最強のハンターである磯良は、自分が囮になるつもりだった。
「俺たちは全員で待機する」
「あの、せめて獅子丸もここに!」
「獅子丸は大丈夫だ。でも、外出は最低限でな」
「はい、分かってます」
また獅子丸の護衛を断られた。
一体どのような防衛システムがあるのだろうか。
私はあのマンションで襲われたのだが。
「早乙女さん。俺もちょっとは外に出させてくれ」
早霧さんが言った。
磯良だけに囮を任せたくないのだろう。
「ここの飯も悪くはないが、やっぱ外でも喰いたいよ」
「分かった。でも一人では動くな」
「じゃあ、葛葉とか誘ってもいいか?」
「そうしてくれ」
「早霧さん! 私も一緒に!」
「分かったよ」
早霧さんが笑って私の同行も認めてくれた。
私の強い要望で、磯良はしばらくここから学校へ通うことになった。
「じゃあ、私の部屋に来なよ!」
「いや、それは……」
「いいじゃない!」
早乙女さんが笑って言った。
「愛鈴、磯良には別に部屋を用意するよ」
「えぇ!」
みんなが笑った。
「じゃあ、部屋に遊びに行くね!」
「分かりましたよ!」
磯良も笑った。
私は磯良を絶対に護る。
どんな敵が来ても。
私がどうなっても。
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