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《ハイヴ》襲撃 Ⅶ

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 虎白さんたちを庭に案内した。
 大勢なのでウッドデッキにも収まらず、申し訳ないが庭にブルーシートを拡げて座ってもらう。
 虎白さんたち剣聖の人たちだけは、ウッドデッキのテーブルに座ってもらおうと用意した。
 響子と六花もウッドデッキだ。
 うちの子どもたちはもちろん庭。

 超特急で皇紀が座卓のようなものを作った。
 ただ、コンパネ板などに足を付けただけのものだが。
 
 「どうぞ座って下さい。蕎麦で申し訳ないですけど」

 子どもたちが大量の蕎麦と天ぷらを持ってテーブルに置いて行く。
 俺は虎白さんたちをウッドデッキに案内しようとした。

 「高虎、急に済まなかったな」
 「何言ってんですか! うちは全然大丈夫ですよ」

 虎白さんたちは動かなかった。
 誰も座ろうとしない。
 若い剣士たちが、虎白さんたちの後ろに立っている。

 「どうぞ皆さん、座って下さい。虎白さんたちはウッドデッキに」

 俺が声を掛けると、虎白さんが姿勢を正して頭を下げた。

 「高虎! 済まなかった!」

 他の剣士たちも一斉に頭を下げた。

 「なんですか!」

 他の子どもたちも驚いている。

 「俺たちは当主のお前に言われて戦場に行った! でも、何も出来なかった! 申し訳ない!」
 「ちょっと! 何言ってんですかぁ!」

 全員頭を下げたままだった。

 「あのね、虎白さん! 虎白さんたちじゃなかったら、本当にどうにもならなかったですよ! それはあそこでも言ったでしょう!」
 
 虎白さんが顔を挙げた。

 「高虎、済まなかった!」

 俺はいい加減に頭に来て怒鳴った。

 「うるせぇ! 何度も当主に言わせんなぁ! 俺がいいと言っているだろう! なんなんだてめぇらぁ!」

 子どもたちが驚いている。
 特に双子が。

 「いい加減にしろ! まったくいつまでもウジウジしやがって! 申し訳ねぇんならもっと強くなれ! 俺はお前らを飯に呼んだんだ! とっとと喰え!」

 全員が土下座した。

 『はい!』

 虎白さんたちがようやく食べ始めた。
 虎白さんと剣聖たちをウッドデッキに呼んだが、全員がブルーシートの上で食べ始めた。
 仕方なく、子どもたちを呼んで上で食べさせた。

 「タカさん、大丈夫?」
 「あ? 何が?」
 「だって、虎白さんたちにあんなこと言って」
 「フン! 文句があるなら来い! 今日という今日は思い知らせてやる!」
 「「へぇー!」」

 双子が俺をキラキラした目で見ていた。

 「俺だっていつまでも黙ってやられてねぇよ!」
 「そうなんだ!」
 「タカさん、カッコイイ!」
 「そうかぁ?」
 「「うん!」」

 物凄く気分よく蕎麦を食べた。

 「おい、急場でよくこれだけ作ったな」
 「頑張ったよー」
 「コッコ卵天ぷらもあるよ!」
 「おぉ、これかぁ!」

 ハーがくれた。
 物凄く美味かった。

 「美味いな、これ!」
 「ね!」

 「皇紀も御苦労さん」
 「いいえ、久し振りにDIYをやりましたよ」
 「そっか」

 うちにはコンパネがいつも数十枚置いてあるし、角材も多い。
 テーブルや台などで咄嗟に使うことが多い。
 そして白布も大量にある。
 テーブルクロスの代わりに敷くと、雰囲気がいいからだ。
 今も石神家のテーブルにはコンパネが使われ、白布が掛けられている。
 角材を等間隔に切って、コンパネの上から木ネジをインパクトドライバーで打ち込んだだけのものだが、皇紀が作ればしっかりとしている。
 15分で5台を作るのは、皇紀の技術の高さだ。

 虎白さんたちが、楽しそうに蕎麦をすすっている。
 天ぷらもガンガン食べている。

 食後にコーヒーを出した。
 
 「高虎、美味かった」
 「そりゃ良かった」

 虎白さんに呼ばれた。
 肩を組まれた。
 俺もニコニコして、虎白さんの肩に手を回そうとした。
 瞬間に首を極められ、足を絡められて動けなくなった。

 「てっめぇ! なんだあの口の利き方はぁ!」
 「えぇ!」
 「生意気なんだよ! おいみんな!」

 「ちょ、ちょっとぉーー!」

 虎白さんが大笑いして放してくれた。

 「まったくよ。気を付けろよな!」
 「はい!」

 双子が目を細めて俺を見ていた。

 「高虎さん!」
 
 虎蘭が俺の前に来て頭を下げた。

 「治療をありがとうございました!」
 「何言ってんだよ、お前が俺を護って怪我したんだろうが」
 「当主の高虎さんを護るのは当たり前です!」
 「虎白さんとか、一度もやってくれたことねぇぞ?」

 虎白さんたちが笑った。

 「虎蘭によ、先に逃げろって言ったんだよ」
 「ああ」
 「でもこいつは、高虎が来るまで戦線を崩せないってな」
 「そうだったんですか」
 「バカだろ?」
 「そうですね」

 虎蘭が赤くなってうつむいていた。

 「こいつな、高虎に惚れてやがんだよ」
 「虎白さん!」

 虎蘭が真っ赤になって怒っている。

 「違います、高虎さん! 私は高虎さんを尊敬しているだけで!」
 「おお、そう言えば千石を連れてった時に会ってるよな?」
 「はい! 覚えててくれたんですか!」

 虎蘭の顔が明るくなった。

 「女性の剣士がいて、驚いたんだ」
 「はい、あの時はまだ剣士見習いでしたが。今は私と虎水という女性剣士は二人います!」
 「そうか!」

 虎白さんが話した。

 「歴代の剣士の中でも、女がなったのはあまり多くない」
 「そうでしょうね」

 男尊女卑ではないのだ。
 筋肉の量と質が、男性と女性では圧倒的に違う。
 剣士を求める女性もいるのだろうが、実際には到達できないことも多いだろう。

 「虎蘭たちは、真面目でな。特に虎蘭はもしかすると剣聖になるかもな」
 「ほんとですか!」

 虎蘭が喜んだ。

 「虎蘭、見ての通り、俺の周りは女の戦士ばっかりなんだ。お前にも期待しているからな」
 「はい! 頑張ります!」

 虎蘭はうちの子どもたちや六花を見た。
 あいつらも虎蘭を見ていた。

 「虎蘭、お前虎白さんの命令に逆らったのか」
 「はい!」
 「よくやったぁ!」

 虎蘭の頭を撫でてやると、喜んだ。
 虎白さんが苦笑いをしていた。

 「お前さ、もっと虎白さんたちより強くなって、俺がいじめられそうな時は護ってくれな!」
 「はい! 必ず!」

 みんなが笑っていた。

 「この人らさー、本当にいつも無茶苦茶でよー! 前にも牛鬼を狩った時にさ……」
 「高虎、お前いい加減にしろよな」

 虎白さんがちょっとマジな顔になったので辞めた。






 みんなが「タイガーファング」に乗り込んで帰って行った。
 全員で見送った。

 「ふー」
 「タカさん、お疲れ様でした!」
 「夜までいたらどうしようかと思ったぜー」
 「アハハハハハ!」
 
 六花が寄って来た。

 「じゃあ、そろそろ訓練ですね!」
 「おう!」

 二人でスキップをしながら、訓練場へ向かった。
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