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《ハイヴ》襲撃 Ⅲ
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御堂の実家で一泊し、昼食を頂いてから出発した。
柳は数日、御堂の実家にいる。
響子と六花も同様に昼食後に出るはずなので、大体同じ時刻に別荘に着くだろう。
そう思っていると、六花から電話が着て、これから出るということだった。
「タカトラー!」
響子が電話を替わった。
「おう、楽しかったか!」
「うん! でも早くタカトラに会いたい!」
「俺もだ!」
隣でスマホを俺の耳に充てている亜紀ちゃんが笑った。
「竹流君がね、カッコ良くなってた!」
「お前! 浮気したのかぁ!」
「してないよ!」
後ろで子どもたちも笑った。
宴会の中で、「暁園」の子どもたちも来て、竹流がギター演奏をしたようだ。
それが良かったらしい。
「タカトラのね、『響子』を弾いてくれたの」
「やっぱり浮気じゃねぇか!」
「違うよ!」
響子が否定しながらも喜んでいるのが分かる。
俺が嫉妬していることが嬉しいのだ。
「でもカッコ良かったなー」
「あいつ! ぶちのめしてやる!」
「やめてよ!」
まあ、響子も分かっている。
会話を楽しんでいるだけだ。
運転中なので、電話を切った。
「響子ちゃん、元気そうですね」
「ああ。あいつ、本当に丈夫になって来たなぁ」
「結構、食べるようになりましたよね」
「ああ」
レイのお陰だ。
別荘に着き、子どもたちは荷物を降ろしながら掃除を始める。
俺はロボ当番だ。
ロボと一緒に別荘を見歩き、異常がないことを確認した。
「ロボ、ゴキブリいないな?」
なんか口に黒いものを咥えていたが、すぐになくなった。
「おう、いないな!」
「にゃ!」
3時を過ぎた頃に、響子と六花、吹雪が到着した。
みんなで荷物を降ろすのを手伝う。
響子を抱き締め、六花と吹雪も抱き締めた。
「竹流の匂いがすんな」
「しないよ!」
響子は淡いグリーンのワンピースを着ていた。
木々に映えて非常に美しかった。
そういう「女」になりつつある。
六花は鋲を散りばめたデニムに、生成りのシャツを着ている。
黒のタンクトップが透けて見えて色っぽい。
「お前も竹流の匂いがちょっとすんな」
「たまにはショタも」
「吹雪もすんな」
「BLですね」
中へ入ってお茶にする。
六花が持って来たイチゴ大福をみんなで食べた。
「やっぱ栃木は違うな!」
「はい!」
同じだった。
お茶を終えて亜紀ちゃんと買い物に出た。
響子と六花と吹雪は少し寝る。
スーパーで店長さんが「石神家専用駐車場」で待っていてくれた。
いつものことなので、外で長い時間を待たせないように、いつ着くのかを事前に連絡するようになった。
「石神様! 亜紀様!」
店長さんが嬉しそうに挨拶して来た。
「またお世話になりますね」
「いいえ、こちらこそ! どうぞ中へ!」
駐車場から中へ入って驚いた。
中学生の合奏団と合唱団が待っていた。
指揮者が演奏を始める。
もちろん、ワーグナーの『ワルキューレの騎行』だ。
亜紀ちゃんが大興奮で喜んだ。
「タカさん! スゴイですよ!」
わざわざ用意したのか。
店員たちも俺たちを向いて頭を下げている。
「店長さん、やり過ぎですよ」
「ワハハハハハハハ!」
店長さんも、俺たちが驚いているので嬉しそうだった。
「友人が、中学の音楽の教師をしていましてね。頼んだら喜んでやってくれました」
「またそんな」
「石神様が毎回お立ち寄り下さる店だと知って、全国からお客様がいらっしゃるようになりました」
「え?」
「私が、港区の大病院の有名な外科医の方、と言っておりましたが」
「はぁ」
俺の名前は出さないように頼んでいたのだが。
「その情報で、皆様石神様だとお分かりになったようで。もう大盛況で御座います」
「そうなんですか……」
「例えば、先日は和田商事の方々がいらして下さって」
「え!」
明彦の会社だ。
「なんでも、この近くに会社の保養所を建てられたそうで。社員の方々がいらっしゃる度にうちを利用して下さいまして」
「あいつらー」
「もちろん、石神様の別荘の御住所などは話しておりません」
「おねがいしまーす」
仕方ねぇ。
店長さんは他にも幾つかの団体の名前を挙げていた。
そのうちに、軽井沢のような保養地として有名になりそうだ。
亜紀ちゃんと買い物を済ませて、早々に帰った。
「タカさん、今晩からいよいよですね」
「ああ」
帰りの車内で亜紀ちゃんが行った。
日本時間で、今晩の夜中から虎白さんたちが、ブラジルの《ハイヴ》を攻撃する。
これまで生体研究所の攻略はあったが、本格的な《ハイヴ》の攻略は初めてだ。
それを虎白さんたちに任せた。
作戦としても、考え得る限りのサポートはしている。
通常の施設であれば、デュールゲリエと《ヨルムンガンド》の爆撃で十二分のはずだ。
周辺を防衛しているライカンスロープや妖魔は、虎白さんたちの敵ではないだろう。
妖魔を練り込んだ防壁は、俺たちが開発した「シャンゴ」によって破壊出来るはずだった。
「シャンゴ」は「ヴォイド機関」に似た特別なエネルギーにより、「桜花」と同等の破壊力を持っている爆弾だった。
周囲1キロを2億度のプラズマがうねり狂う。
同時に「オロチストライク」の波動を発し、妖魔の堅固な防壁ごと破壊して行く。
「シャンゴ」とは、アフリカのヨルバ族に伝わる雷と嵐の神の名だ。
だが、《ハイヴ》には未知の状況があると俺は考えていた。
《ハイヴ》という存在は、ロシアに潜入したアメリカの諜報員が最初に掴んだ。
「ローテス・ラント」もその情報を掴み、徐々にその内容が明らかになって行った。
《ハイヴ》では、特殊なライカンスロープの研究と改造、そしてジェヴォーダンとバイオノイドの育成が行なわれている。
但し、その規模は大きく、それだけに高度な研究開発もなされているようだった。
生体研究所では、俺たちを待ち構えての罠はこれまでもあった。
しかし、《ハイヴ》にはもっと本格的な存在がいる。
恐ろしく強い敵だ。
《ハイヴ》攻略には、「虎」の軍の強力な部隊が出動する。
それを撃滅する用意が敵にはあることが予想された。
だからのんびりとした攻撃では無く、最初から高火力で短時間に破壊する作戦を取った。
出来れば、強力な奴も一緒に殲滅したかった。
《ハイヴ》の構造や機能の情報も得たかったが、俺は危険だと考えた。
今回の第一回目の攻略は、一気呵成に行く。
それに、虎白さんたちは戦闘の達人だ。
死を恐れてはいないが、無意味に全滅はしない。
「見切り戦」はするが、それも場合によってだ。
今回のような、俺たちが様々な観測要員を備えている状況では、無理なことはしないで戻ってくれるだろう。
それが可能であれば、だが。
だから念のために聖にも頼んだ。
聖たちは、石神家の救出に専念してもらう。
聖ならば、戦況によって柔軟な行動をしてくれるはずだった。
「虎」の軍で、最も戦場に慣れている二つの組織に俺は委ねた。
場合によっては、もちろん俺も行く。
俺はハマーを運転しながら、作戦の無事を祈っていた。
柳は数日、御堂の実家にいる。
響子と六花も同様に昼食後に出るはずなので、大体同じ時刻に別荘に着くだろう。
そう思っていると、六花から電話が着て、これから出るということだった。
「タカトラー!」
響子が電話を替わった。
「おう、楽しかったか!」
「うん! でも早くタカトラに会いたい!」
「俺もだ!」
隣でスマホを俺の耳に充てている亜紀ちゃんが笑った。
「竹流君がね、カッコ良くなってた!」
「お前! 浮気したのかぁ!」
「してないよ!」
後ろで子どもたちも笑った。
宴会の中で、「暁園」の子どもたちも来て、竹流がギター演奏をしたようだ。
それが良かったらしい。
「タカトラのね、『響子』を弾いてくれたの」
「やっぱり浮気じゃねぇか!」
「違うよ!」
響子が否定しながらも喜んでいるのが分かる。
俺が嫉妬していることが嬉しいのだ。
「でもカッコ良かったなー」
「あいつ! ぶちのめしてやる!」
「やめてよ!」
まあ、響子も分かっている。
会話を楽しんでいるだけだ。
運転中なので、電話を切った。
「響子ちゃん、元気そうですね」
「ああ。あいつ、本当に丈夫になって来たなぁ」
「結構、食べるようになりましたよね」
「ああ」
レイのお陰だ。
別荘に着き、子どもたちは荷物を降ろしながら掃除を始める。
俺はロボ当番だ。
ロボと一緒に別荘を見歩き、異常がないことを確認した。
「ロボ、ゴキブリいないな?」
なんか口に黒いものを咥えていたが、すぐになくなった。
「おう、いないな!」
「にゃ!」
3時を過ぎた頃に、響子と六花、吹雪が到着した。
みんなで荷物を降ろすのを手伝う。
響子を抱き締め、六花と吹雪も抱き締めた。
「竹流の匂いがすんな」
「しないよ!」
響子は淡いグリーンのワンピースを着ていた。
木々に映えて非常に美しかった。
そういう「女」になりつつある。
六花は鋲を散りばめたデニムに、生成りのシャツを着ている。
黒のタンクトップが透けて見えて色っぽい。
「お前も竹流の匂いがちょっとすんな」
「たまにはショタも」
「吹雪もすんな」
「BLですね」
中へ入ってお茶にする。
六花が持って来たイチゴ大福をみんなで食べた。
「やっぱ栃木は違うな!」
「はい!」
同じだった。
お茶を終えて亜紀ちゃんと買い物に出た。
響子と六花と吹雪は少し寝る。
スーパーで店長さんが「石神家専用駐車場」で待っていてくれた。
いつものことなので、外で長い時間を待たせないように、いつ着くのかを事前に連絡するようになった。
「石神様! 亜紀様!」
店長さんが嬉しそうに挨拶して来た。
「またお世話になりますね」
「いいえ、こちらこそ! どうぞ中へ!」
駐車場から中へ入って驚いた。
中学生の合奏団と合唱団が待っていた。
指揮者が演奏を始める。
もちろん、ワーグナーの『ワルキューレの騎行』だ。
亜紀ちゃんが大興奮で喜んだ。
「タカさん! スゴイですよ!」
わざわざ用意したのか。
店員たちも俺たちを向いて頭を下げている。
「店長さん、やり過ぎですよ」
「ワハハハハハハハ!」
店長さんも、俺たちが驚いているので嬉しそうだった。
「友人が、中学の音楽の教師をしていましてね。頼んだら喜んでやってくれました」
「またそんな」
「石神様が毎回お立ち寄り下さる店だと知って、全国からお客様がいらっしゃるようになりました」
「え?」
「私が、港区の大病院の有名な外科医の方、と言っておりましたが」
「はぁ」
俺の名前は出さないように頼んでいたのだが。
「その情報で、皆様石神様だとお分かりになったようで。もう大盛況で御座います」
「そうなんですか……」
「例えば、先日は和田商事の方々がいらして下さって」
「え!」
明彦の会社だ。
「なんでも、この近くに会社の保養所を建てられたそうで。社員の方々がいらっしゃる度にうちを利用して下さいまして」
「あいつらー」
「もちろん、石神様の別荘の御住所などは話しておりません」
「おねがいしまーす」
仕方ねぇ。
店長さんは他にも幾つかの団体の名前を挙げていた。
そのうちに、軽井沢のような保養地として有名になりそうだ。
亜紀ちゃんと買い物を済ませて、早々に帰った。
「タカさん、今晩からいよいよですね」
「ああ」
帰りの車内で亜紀ちゃんが行った。
日本時間で、今晩の夜中から虎白さんたちが、ブラジルの《ハイヴ》を攻撃する。
これまで生体研究所の攻略はあったが、本格的な《ハイヴ》の攻略は初めてだ。
それを虎白さんたちに任せた。
作戦としても、考え得る限りのサポートはしている。
通常の施設であれば、デュールゲリエと《ヨルムンガンド》の爆撃で十二分のはずだ。
周辺を防衛しているライカンスロープや妖魔は、虎白さんたちの敵ではないだろう。
妖魔を練り込んだ防壁は、俺たちが開発した「シャンゴ」によって破壊出来るはずだった。
「シャンゴ」は「ヴォイド機関」に似た特別なエネルギーにより、「桜花」と同等の破壊力を持っている爆弾だった。
周囲1キロを2億度のプラズマがうねり狂う。
同時に「オロチストライク」の波動を発し、妖魔の堅固な防壁ごと破壊して行く。
「シャンゴ」とは、アフリカのヨルバ族に伝わる雷と嵐の神の名だ。
だが、《ハイヴ》には未知の状況があると俺は考えていた。
《ハイヴ》という存在は、ロシアに潜入したアメリカの諜報員が最初に掴んだ。
「ローテス・ラント」もその情報を掴み、徐々にその内容が明らかになって行った。
《ハイヴ》では、特殊なライカンスロープの研究と改造、そしてジェヴォーダンとバイオノイドの育成が行なわれている。
但し、その規模は大きく、それだけに高度な研究開発もなされているようだった。
生体研究所では、俺たちを待ち構えての罠はこれまでもあった。
しかし、《ハイヴ》にはもっと本格的な存在がいる。
恐ろしく強い敵だ。
《ハイヴ》攻略には、「虎」の軍の強力な部隊が出動する。
それを撃滅する用意が敵にはあることが予想された。
だからのんびりとした攻撃では無く、最初から高火力で短時間に破壊する作戦を取った。
出来れば、強力な奴も一緒に殲滅したかった。
《ハイヴ》の構造や機能の情報も得たかったが、俺は危険だと考えた。
今回の第一回目の攻略は、一気呵成に行く。
それに、虎白さんたちは戦闘の達人だ。
死を恐れてはいないが、無意味に全滅はしない。
「見切り戦」はするが、それも場合によってだ。
今回のような、俺たちが様々な観測要員を備えている状況では、無理なことはしないで戻ってくれるだろう。
それが可能であれば、だが。
だから念のために聖にも頼んだ。
聖たちは、石神家の救出に専念してもらう。
聖ならば、戦況によって柔軟な行動をしてくれるはずだった。
「虎」の軍で、最も戦場に慣れている二つの組織に俺は委ねた。
場合によっては、もちろん俺も行く。
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