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双子と皇紀の修学旅行 Ⅷ

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 みんなで一通り周囲を回って、呆然と見ていた。

 「しかしこれは運べないな」
 「ここに置いておくしかないか」
 「でも、これはきっと意味が在る。是非「虎」に渡したいものだが」
 「山を削らなければならんぞ」
 「そうすれば、神域が喪われることになる」

 みんなが悩んでいた。
 ハーが言った。
 ニコニコしている。

 「大丈夫だよ。私、「1回クロピョン券」を持ってるから!」

 僕は思わす咳き込んだ。
 そんなものがあるのか!
 ルーは知っていたようで、一緒にニコニコしていた。

 「なんだって?」

 「ハー、クロピョン券ってなんだ?」

 僕が聞くと、ハーが外へ出て、カバンを持ってきた。
 中から紙の券を取り出して見せた。

 《何でも、1回だけクロピョンに運んでもらえる》

 マジックでタカさんの字が書いてあった。
 「使用上の注意」などもある。
 なんだ、コレ?

 「これ。タカさんに貰ったの!」
 「ミス・イシガミ、これで何が出来るのかね?」
 「クロピョンに頼んで、これを移動してもらうよ」
 「くろぴょん?」
 「うん、タカさんの舎弟の妖魔の王だよ」
 「頼めばどんなものでも移動してもらえるの」

 ルーとハーが話している。

 「なに! そんなことが出来るのかね!」
 「うん」

 ルーが言った。

 「でもね、距離は500メートル以内。あんまし使えないんだ」
 「それなら外まで運べる!」
 「山は崩さないで済むのか?」
 「もちろん!」
 「でも一体どうやって」

 「「まー、見てて!」」

 ルーとハーが笑った。
 ルーがみんなを連れて外へ一旦出した。
 どこにガラスの珠を持って来ればいいのかを相談する。
 場所が決まり、車両などを移動していく。
 準備が出来たのでみんなで広間に戻り、ハーが「1回クロピョン券」を持った手を前にかざした。

 「クロピョン! タカさんにもらった「クロピョン券」を使うね! このガラスの塊を外に出して!」

 その瞬間、中心で祈っていた能力者たちが悲鳴を挙げた。
 クロピョンの波動を感じたのだろう。
 ガラスの巨大な珠が地面に沈んだ。
 そのまま吸い込まれるように無くなり、床面が盛り上がった。
 最初にあった水晶がちゃんと降りて来て元通りになった。
 ご丁寧にも、倒れて壁に寄せられたパイプ椅子も元に戻り、絨毯も綺麗に敷かれていた。

 外で大騒ぎしている声が聞こえてきた。
 みんなで出てみると、あのガラスの巨大な珠が、指定した場所に移動していた。
 クロピョンがどのように移動しているのか、初めて見た。

 「「ヘヴンズ・フォール」と同じだぞ!」
 「ミス・イシガミ! 今のは何なのだ!」
 
 ハーが質問攻めになっていく。
 ルーが懸命に「シークレット」だと言っている。
 徐々に騒ぎが沈静化し、ローライさんが僕たちに言った。
 
 「この大きさだと、我々も運搬手段が無い。そちらで何とかなるか?」
 「大丈夫だよ!」
 「そうか、じゃあお任せして良いかな?」
 「「もっちろーん!」」

 みんなが笑った。
 大勢の人間が見て回り、可能な限りの映像を撮った。
 能力者の一人が、絶対にこれに触れてはならないと叫んでいた。

 「普通の人間が触れると吹っ飛ばされる!」

 みんなその注意を守った。
 本当に美しいもので、大小さまざまな紋様が表面や内部に拡がっている。
 金や銀、また他のメタリックに輝くものが紋様の素材になっており、黒い何かも多かった。
 枝の広がりや幾何学模様、また生物のもののようなものもある、
 一部文字のようなものも見えるが、誰も読めない。

 「これが水晶だとすると、あの金の部分は、アベンチュリン(砂金石)かもしれないな」
 「じゃあ、あの黒い部分はオブシディアン(黒曜石)か」
 「虹色に輝いているのはオパールのプレシャスの遊色か?」
 「でも、前にもあったが本物の金もありそうだな」
 「ほら、あそこ! あれは何だと思う!」
 「ああ、分からないな。また未知の金属か」
 「何よりもあの「虎」だな。見事な造形だ」
 「おい、虎が何か咥えていないか?」
 「見えないぞ?」
 「こっちから見てくれ。角度によって見え方が変わるようだ」

 全員が様々な方向で虎を観察し始めた。
 虎が見える幾つかの方向に散らばって、それぞれどのように見えるかを叫んで行く。

 「ここからは3メートルもの刀剣に見えるな」
 「こっちはスゴイぞ! オペラグラスでしか分からないが、五芒星が刀身にある!」
 「おい、こっちからは「北斗七星」のようだぞ!」
 「ここからは鍔が六芒星だ!」
 「こっちからは真っ黒な刀身だぞ!」
 「こっちは砂を散りばめたような美しい刀身だ」

 タカさんの持っている「虎王」と神剣だろうと思われる。
 僕たちも全部確認しながら驚いた。
 ローライさんが言った。

 「水晶だとして、重さは約20万トンにもなるだろうな」
 「「「!」」」

 他の人たちは平然としていたが、僕たちは驚いた。

 「間違いなく、これまでで最大だなぁ」
 「ああ、流石はタカトラ・イシガミだ」

 ルーも暗算をしたくて、ローライさんに水晶の比重を聞いていた。

 「確かに!」
 「ねえ、「タイガーファング」で運べる?」
 「無理だろうね」
 「じゃー、やっぱ「クロピョン便」かー」
 「タカさんに頼まないとね」

 大変なことになった。

 「またタカさんを呼ぶの?」
 「皇紀ちゃん、しょうがないじゃん」
 「でも、さっき帰ったばっかりだよ?」
 「しょうがないの!」

 まあ、そうなんだけどさ。

 僕たちは次の予定があると言うことで、取り敢えず魔法学園の皆さんで記録を取りながらここで待機してくれることになった。
 僕たちは街に戻って昼食にした。
 「人生研究会」の幹部たちは口も利けないほどにショックを受けていた。
 まあ、そうだろうねぇ。

 タカさんに僕が連絡した。
 丁度オペが終わってこれから昼食らしい。

 「あんだよ?」
 「あの、実はとんでもないことになってまして」
 「またかよ! 今度は何があった!」
 
 僕は「ヘヴンズ・フォール」の儀式のことを話した。
 タカさんは少し話を聞いているようだった。

 「今回は「虎」の軍のためにやったようでして」
 「ああ、麗星から聞いているよ」
 「それで、実際に未知のものが落ちて来たんですけど、最後のタカさん宛と思られるものが、とんでもなく大きくて」
 「なんだ?」

 僕がサイズと、恐らく20万トンになると言うと怒鳴られた。

 「お前らぁ! 何やってくれてんだぁ!」
 「すみません!」

 ひとしきり怒られ、タカさんは夕方に来ると言った。
 
 あー、また酷い目に遭ったぁー。
 でも、僕のせいじゃないんだけどー!
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