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双子と皇紀の修学旅行 Ⅶ
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やがて、儀式が始まると言われた。
最初の白衣のローライさんがまとめ役のようだった。
ローライさんは、改めて今回の「ヘブンズ・フォール」が「虎」の軍のために行なうものであることを説明した。
「予言者ブラヴァード氏の予言通り、日本のレイセイ・ドウマの紹介でイシガミ・ファミリーの方々がいらっしゃいました」
ローライさんが僕たちの方に手を向けて紹介した。
みなさんが拍手してくれる。
僕たちも頭を下げて応えた。
そうだったか。
予言者の人もいるんだ。
それで、いろいろと僕たちのことも知っているらしい。
そのブラヴァールさんらしい人が、僕たちに頭を下げていた。
「そのため、今日は最強の皆さんに集まって頂きました。これまでも「ヘヴンズ・フォール」は数々成功して参りましたが、今日は相当なものが降りて来るとブラヴァード氏はおっしゃっています。私も期待しております」
ローライさんは儀式中の諸注意を話し、いよいよ「ヘヴンズ・フォール」の儀式が始まった。
絨毯に座った20人ほどの人たちが、一斉に祈り出す。
呪文のようなことを声に出す人もいれば、ひたすらに拝んでいる人、人形や何かを手に取って祈っている人、坐禅を組んで瞑想しているだけの人もいる。
人種も性別も年齢もまったく違う。
一体、どういう基準で集まっているのだろう。
僕もルーとハーも、黙って目を閉じて手を合わせていた。
1時間も儀式は続いた。
僕たちも一心不乱に祈った。
自然にそうするようになっていた。
僕は妹たちとは違って何も感じられないけど、ここでは何かのエネルギー場があることは感じられた。
だから何故かはわからなかったが、自然にそういう祈る心になっていた。
やがて徐々に空間全体が熱くなってきて、何かが起きるのを感じ始めた。
観客たちも、小声で騒ぎだしている。
みんなも何かを感じているのだろう。
妹たちが、突然両側から僕の腕を掴んだ。
「皇紀ちゃん、スゴイよ!」
「スゴイのが来るよ!」
「おい! 来たぞ!」
白衣のローライさんが叫んだ。
全員が上を見る。
そしてルーとハーの前にそれぞれ何かが落ちてくる。
カラン、カラン
ルーとハーの前にそれぞれ落ちて来た。
金と水晶と未知の金属が絡まり合った腕輪のようだった。
ただ、腕輪ではない証拠に、円環の内側に飴色の細い棒が横切っている。
円を描く外形から、幾つもの細く枝分かれした銀色の枝状のものが飛び出して拡がっている。
妹たちの前に落ちたが、形は似ていても若干異なっていた。
どういうものなのか、さっぱりわからない。
「次だ!」
ローライさんが叫び、構えた僕の身体を後ろへ引っ張った。
グサッ
僕の座っていた前に、槍のようなものが降って来た。
まっすぐな3メートルもの長さ。
先端はまさしく槍で、引き抜くと長さ50センチほどの刃渡りが地面に突き刺さっていた。
床は岩盤だったけど、呆気なく突き刺さったのだ。
柄の部分には様々な模様が金色の何かで彩り、地は漆黒で小さな光る点がちりばめられている。
「槍に見えるな」
「こんなに形がはっきりしているのは珍しい」
みんなが集まって来て、引き抜いた槍を見ていた。
「ローライ、よく気付いたな」
「いや、私の前にコウキ・イシガミが気付いていたよ。槍を掴むつもりだったのか?」
僕がそうしようとしているのを見ていたようだ。
「はい。無茶でしたかね?」
「いや、分からない。でも万一を考えた」
「ありがとうございます」
優しい人のようだ。
年老いた竿頭衣の老人が叫んだ。
「まだだ! 「虎」宛のものが来る!」
「これはなんという波動だ!」
その時、巨大な波動が僕にも感じられた。
「おい! なんだこれは!」
「今までに無かったぞ!」
「相当大きいぞ! みんな、壁に移動しろ!」
中心にいた能力者たちが叫び、全員が壁に張り付いた。
「皇紀ちゃん! 気を付けて!」
ハーが叫び、ルーと僕の手を握った。
「来る!」
中心にあった水晶が盛り上がった。
下から巨大なガラスの珠のようなものが轟音と共にせり上がって来る。
「これはでかいぞ! まずい、退避しろ!」
誰かが叫び、出口に向かって壁を回りながらみんなが移動した。
あちこちで恐怖からか叫び声が聞こえる。
「どこまで来る!」
「急げ!」
僕と妹たちで人々を担ぎながら出口へ押し込んで行った。
みんな急いで外へ走って行く。
ガラスの巨大な珠がまだせり上がっている。
全ての人を出口に出して、僕たちも外へ出た。
地面が激しく揺れ、外に出てもみんな怖がっていた。
「上から降って来るんじゃないんですか!」
「いや、下からもある。壁からもな。中心にあった水晶は以前に下から出てきたものだ」
ローライさんが説明してくれた。
ようやく揺れが収まり、何人かで中へ入ってみた。
僕たちも一緒に行く。
どんな危険があるか分からない。
洞窟の崩落の可能性もあった。
「なんだ、これは!」
奥の広間一杯に、ガラスのようなものの塊があった。
横には円形に広がっているが、縦方向は球ではなく、上部は半球形で下部は分厚いおはじきのような形になっている。
直径150メートル、高さ40メートルほどのサイズだ。
あのまま壁に張り付いていれば、無事だっただろう。
「なんという大きさだ」
「しかし美しい。全体に描かれた紋様は見事なものだ」
「金色や様々な色の金属が内部に含まれているな」
「いや、見ろ! 中心には虎のようなものがいるぞ!」
「!」
体長5メートルほどの虎に見える黄金の金属のようなものが見えた。
表面に多数ある金属を張り付けたような紋様があり、その隙間から見えるのだ。
しかも、ある角度からしか見えないようだった。
それも不思議だった。
「これは「虎」への贈り物か!」
「そうに違いない。我々も、今日は「虎」の軍のために祈っていたからな」
「凄まじいものだ……」
みんなで周囲を一周した。
角度によって見えるものが違うことに、みんなで気付いた。
僕は、スゴイ現象が起きたことに感動しながら、別なことも考えていた。
ねぇ、これ、どーすんの?
最初の白衣のローライさんがまとめ役のようだった。
ローライさんは、改めて今回の「ヘブンズ・フォール」が「虎」の軍のために行なうものであることを説明した。
「予言者ブラヴァード氏の予言通り、日本のレイセイ・ドウマの紹介でイシガミ・ファミリーの方々がいらっしゃいました」
ローライさんが僕たちの方に手を向けて紹介した。
みなさんが拍手してくれる。
僕たちも頭を下げて応えた。
そうだったか。
予言者の人もいるんだ。
それで、いろいろと僕たちのことも知っているらしい。
そのブラヴァールさんらしい人が、僕たちに頭を下げていた。
「そのため、今日は最強の皆さんに集まって頂きました。これまでも「ヘヴンズ・フォール」は数々成功して参りましたが、今日は相当なものが降りて来るとブラヴァード氏はおっしゃっています。私も期待しております」
ローライさんは儀式中の諸注意を話し、いよいよ「ヘヴンズ・フォール」の儀式が始まった。
絨毯に座った20人ほどの人たちが、一斉に祈り出す。
呪文のようなことを声に出す人もいれば、ひたすらに拝んでいる人、人形や何かを手に取って祈っている人、坐禅を組んで瞑想しているだけの人もいる。
人種も性別も年齢もまったく違う。
一体、どういう基準で集まっているのだろう。
僕もルーとハーも、黙って目を閉じて手を合わせていた。
1時間も儀式は続いた。
僕たちも一心不乱に祈った。
自然にそうするようになっていた。
僕は妹たちとは違って何も感じられないけど、ここでは何かのエネルギー場があることは感じられた。
だから何故かはわからなかったが、自然にそういう祈る心になっていた。
やがて徐々に空間全体が熱くなってきて、何かが起きるのを感じ始めた。
観客たちも、小声で騒ぎだしている。
みんなも何かを感じているのだろう。
妹たちが、突然両側から僕の腕を掴んだ。
「皇紀ちゃん、スゴイよ!」
「スゴイのが来るよ!」
「おい! 来たぞ!」
白衣のローライさんが叫んだ。
全員が上を見る。
そしてルーとハーの前にそれぞれ何かが落ちてくる。
カラン、カラン
ルーとハーの前にそれぞれ落ちて来た。
金と水晶と未知の金属が絡まり合った腕輪のようだった。
ただ、腕輪ではない証拠に、円環の内側に飴色の細い棒が横切っている。
円を描く外形から、幾つもの細く枝分かれした銀色の枝状のものが飛び出して拡がっている。
妹たちの前に落ちたが、形は似ていても若干異なっていた。
どういうものなのか、さっぱりわからない。
「次だ!」
ローライさんが叫び、構えた僕の身体を後ろへ引っ張った。
グサッ
僕の座っていた前に、槍のようなものが降って来た。
まっすぐな3メートルもの長さ。
先端はまさしく槍で、引き抜くと長さ50センチほどの刃渡りが地面に突き刺さっていた。
床は岩盤だったけど、呆気なく突き刺さったのだ。
柄の部分には様々な模様が金色の何かで彩り、地は漆黒で小さな光る点がちりばめられている。
「槍に見えるな」
「こんなに形がはっきりしているのは珍しい」
みんなが集まって来て、引き抜いた槍を見ていた。
「ローライ、よく気付いたな」
「いや、私の前にコウキ・イシガミが気付いていたよ。槍を掴むつもりだったのか?」
僕がそうしようとしているのを見ていたようだ。
「はい。無茶でしたかね?」
「いや、分からない。でも万一を考えた」
「ありがとうございます」
優しい人のようだ。
年老いた竿頭衣の老人が叫んだ。
「まだだ! 「虎」宛のものが来る!」
「これはなんという波動だ!」
その時、巨大な波動が僕にも感じられた。
「おい! なんだこれは!」
「今までに無かったぞ!」
「相当大きいぞ! みんな、壁に移動しろ!」
中心にいた能力者たちが叫び、全員が壁に張り付いた。
「皇紀ちゃん! 気を付けて!」
ハーが叫び、ルーと僕の手を握った。
「来る!」
中心にあった水晶が盛り上がった。
下から巨大なガラスの珠のようなものが轟音と共にせり上がって来る。
「これはでかいぞ! まずい、退避しろ!」
誰かが叫び、出口に向かって壁を回りながらみんなが移動した。
あちこちで恐怖からか叫び声が聞こえる。
「どこまで来る!」
「急げ!」
僕と妹たちで人々を担ぎながら出口へ押し込んで行った。
みんな急いで外へ走って行く。
ガラスの巨大な珠がまだせり上がっている。
全ての人を出口に出して、僕たちも外へ出た。
地面が激しく揺れ、外に出てもみんな怖がっていた。
「上から降って来るんじゃないんですか!」
「いや、下からもある。壁からもな。中心にあった水晶は以前に下から出てきたものだ」
ローライさんが説明してくれた。
ようやく揺れが収まり、何人かで中へ入ってみた。
僕たちも一緒に行く。
どんな危険があるか分からない。
洞窟の崩落の可能性もあった。
「なんだ、これは!」
奥の広間一杯に、ガラスのようなものの塊があった。
横には円形に広がっているが、縦方向は球ではなく、上部は半球形で下部は分厚いおはじきのような形になっている。
直径150メートル、高さ40メートルほどのサイズだ。
あのまま壁に張り付いていれば、無事だっただろう。
「なんという大きさだ」
「しかし美しい。全体に描かれた紋様は見事なものだ」
「金色や様々な色の金属が内部に含まれているな」
「いや、見ろ! 中心には虎のようなものがいるぞ!」
「!」
体長5メートルほどの虎に見える黄金の金属のようなものが見えた。
表面に多数ある金属を張り付けたような紋様があり、その隙間から見えるのだ。
しかも、ある角度からしか見えないようだった。
それも不思議だった。
「これは「虎」への贈り物か!」
「そうに違いない。我々も、今日は「虎」の軍のために祈っていたからな」
「凄まじいものだ……」
みんなで周囲を一周した。
角度によって見えるものが違うことに、みんなで気付いた。
僕は、スゴイ現象が起きたことに感動しながら、別なことも考えていた。
ねぇ、これ、どーすんの?
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